グンゼのクオリティオブライフ(QOL)向上への取り組み

2024.09.10 10:00
2022年5月、グンゼ株式会社は中期経営計画「VISION 2030 stage1」を公表し、「社会的価値」と「経済的価値」を両立するサステナブル経営により社会貢献とグンゼの持続的成長を実現することを宣言しました。
このニュースレターでは、ニュースリリースだけでは伝えきれないグンゼのサステナブル経営の取り組みについて、定期的に皆さまにお届けします。
第10回目は、さまざまな分野における、グンゼのQOL(生活の質)向上に資する活動についてご紹介します。


■繊維製品を通じ、患者さまのQOL向上を目指す
グンゼは、患者さまのQOL向上に貢献する健康・医療関連分野の成長をビジョンに掲げ、2014年QOL研究所を設立しました。高齢化が進む日本では、いかに健康に暮らし、社会活動に参加できる人々を増やしていくかが喫緊の課題となっています。そのような社会動向の中で、グンゼは、たとえ病気になっても、QOLの低下を軽減し、日常生活を取り戻したいと願う方たちの活動をサポートする取り組みを進めています。
グンゼの「メディキュア」は、アパレル事業で培った繊維加工技術と医療現場の声から生まれた、患者さま一人ひとりのセルフケアをサポートする低刺激アパレル製品ブランドです。人体生理学、感性工学などの知見と老舗肌着メーカーの技術力を生かし、素材開発からモノづくりにこだわっています。
グンゼ独自の生地接着技術で縫い目をなくし、生地をフラットにすることで、肌への刺激をなくすことを追究しています。また、痛みのある部位に当たる生地を切り取ったり、患者さまの使い方に併せて最適な長さや形にカットしたりできる切ってもほつれないカットオフ技術もその特長の一つです。これらの製品は主に、乳がんの術後や開腹手術後のキズへの刺激が気になる方、放射線治療で痛みや痒みのある肌状態になった方などにお使いいただいています。
さらに、より多くの患者さまのお悩み解消に応えるため、新たな技術を導入した製品開発も行っています。一例として、縫い目のまったくない長尺の筒状カバー製品に軽度の圧迫力を付加することで、浮腫やスキンテア(皮膚裂傷)など、様々な医療現場でのお悩みに対応できる製品を開発中です。
メディキュア製品群
開発中の筒状カバー製品


■メディキュア製品開発に対する思い
メディキュア製品開発において、私が目指していることは、疾病による機能低下や肌トラブルにより日常生活に支障がある方のQOL低下を軽減し、快適な生活を送っていただきたいということです。特に、そのような悩みを抱えながら働いている方々の社会復帰を支援したいと考えています。
メディキュアは、「術後の傷が痛む。放射線治療により肌が敏感になる。薬物療法による脱毛がつらい。」など、手術や治療により引き起こされる肌トラブルに悩む患者さまのセルフケアを応援することを目的に開発がスタートしました。そのため、新製品開発には、それらの方々のニーズを的確に把握することが重要となります。そのため、患者さまのニーズを客観的に把握されている看護師さんなどの専門家が集まる学会に定期的に参加するとともに、術後ケアのニーズ把握のため、アンケートなどを活用し情報収集に努めています。
また、学会などに参加されない方に製品情報をどのように提供するかが現在の課題です。そのため、レターの発行やソーシャルメディアの活用により、多くの皆さまに製品の特長を理解いただけるように努めています。
研究開発部 研究企画室 川崎陽子さん


■腹腔鏡下手術でも操作しやすく簡便に使える癒着防止材
グンゼは、生体吸収性高分子材料加工技術を生かし、低侵襲治療、個別化治療(カスタムメイド治療)など、QOL向上に資する医療機器を製造のみならず、国内外の臨床現場との強いパイプを生かし、国内の医療現場のニーズに合った医療機器をスピーディに市場に普及できる体制を整えています。生体吸収性高分子材料を使用した製品としては、吸収性縫合糸、吸収性骨接合材、吸収性組織補強材、吸収性癒着防止材があります。今回は、この中で2022年3月に国内販売を開始した、吸収性癒着防止材をご紹介します。
この製品は、手術後の癒着を防ぐために使用される医療材料です。癒着とは、手術によって損傷した生体組織が修復する過程で、本来は離れている臓器同士がつながってしまう現象のことです。術式にかかわらず高頻度に発生し、腸閉塞や不妊症などの合併症の原因になり、次に受ける手術で癒着剥離などの処置が必要になることがあります。この癒着防止材は、合成高分子からなる薄い膜で、損傷部位に留置されることで、臓器同士の接触を防ぎ、癒着のリスクを軽減します。最終的には体外に排出されるため、取り除く手間がなく、安全に使用できます。主に腹部手術や婦人科手術において使用されています。
近年、手術による創が小さく、患者さまの身体への負担が少ない腹腔鏡下手術が年々増えています。また、高齢患者の増加に伴い、今後もその傾向は継続すると考えられます。この癒着防止材はこのような状況に対応するため、次のような特長があります。
(1)優れた操作性:グンゼ独自の特殊な加工技術により、細く筒状に丸められる柔軟性と展開しやすい適度なコシを有する。
(2)組織へのなじみ:腹腔内の水分でゲル化し、組織になじむ。
(3)位置調整:凹凸形状の点接触により位置調整が容易で、狙ったところに貼りやすい。
これらの特長が評価され、臨床現場での使用が増えています。
シート状癒着防止材


■国産初シート状癒着防止材を皆さまに知っていただくために
現在、市場にリリースされている癒着防止材にはシートタイプとスプレータイプがあり、グンゼの製品はシートタイプです。この製品の特長は、高い強度と簡便な操作性です。
癒着防止材は手術の最後、閉創前のタイミングで使用される製品です。言い換えれば、特に手術時間が長くなりやすく、心身ともに疲れやすい腹腔鏡下手術においては、医師やナースの疲労はピークに達しているとも言えます。そのような状況でも、グンゼの製品は手間や時間をかけずに癒着防止対策ができる点を評価いただき、使用例も順調に増加しています。
私は製品の立ち上げ時期から携わっています。国内の医療従事者が抱える課題やニーズを踏まえ、細かい仕様や製品サイズに至るまで決定し、特に腹腔鏡下手術やロボット手術などの低侵襲手術でメリットを感じていただきやすいと考えています。ただし、癒着防止材としては後発ですので、営業担当者が医療従事者の声をしっかり聞き、密にコミュニケーションを図れるよう、トレーニングにも力を入れています。
今後、早急に市場浸透率を向上させ、日本全国どこでも、医療従事者が症例に応じて当社の製品を選択できる環境を整えることが急務であると考えています。
グンゼメディカル マーケティンググループ 丸田麗子さん


■学校水泳授業受託を通じ、子どもたちに質の高い経験を提供
グンゼスポーツでは、小学校の水泳授業を受託しています。最近では、学校のプールが老朽化し、維持管理や教員の指導負担が増しているため、水泳授業を民間事業者に委託する自治体が増えています。
多くのスポーツクラブは水に慣れることや、クロール、平泳ぎなどの泳法指導を行っていますが、グンゼスポーツではそれに加えて、事故防止のための安全水泳指導も実施しています。
具体的には、授業カリキュラムに溺れた時の対処法として、
(1)パニックにならないように心構えを持つこと。
(2)救助を待つ間に浮いているのが難しい場合に備え、身近な物(例えば2リットルのペットボトル)を浮き具として使うこと。
の2点を教えています。これにより、事故の発生を防ぐことを目指しています。
グンゼスポーツ京都八幡店における水泳授業


■学校水泳授業受託に対する私の思い
学校水泳授業を受託する際、私が最も重視しているのは、子どもたちの安全と楽しさです。日本の学校水泳が始まったのは昭和初期のこと。海難事故を契機に、社会全体での安全意識が高まり、特に子どもたちに水泳を教えることが水難事故の防止に繋がると考えられました。こうした背景から、学校にプールを設置し、定期的に水泳教育を行う取り組みが進められました。
しかし、私の目標は単に水泳を教えることにとどまりません。子どもたちの水に対する恐怖心を取り除き、自信を持って泳げるようになることが最も重要だと考えています。そのため、授業では徹底した安全対策を講じ、個々の技術レベルや心理的状態に応じた指導を行っています。
また、授業を通じて子どもたちに水泳の楽しさを体験してもらうことも心がけています。そのため、授業の最後に5〜10分間の遊びの時間を設け、興味や意欲を引き出す工夫をしています。
私の目標は、ただ水泳の技術を教えるだけでなく、子どもたちが水泳を通じて自信を持ち、楽しみながら成長できるようサポートすることです。
グンゼスポーツ 営業統括部 村上雅彦さん

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