この記事をまとめると
■大ヒットした初代モデルの2代目は失敗しやすいというジンクスがある
■次世代モデルが登場しても初代モデルのよさを上まわることができない事例も多い
■初代モデルには時代を切り拓いたものが多く、それだけに人々の印象に残りやすい
何度モデルチェンジを繰り返しても初代モデルが忘れられない
どんなに人気があったクルマでも、売れているクルマでも、数年経てばどうしても古さや時代にそぐわない部分は出てきてしまうものですね。そこでフルモデルチェンジを行うことになりますが、必ずしも新型が同じように売れるとは誰も約束できないのが怖いところ。とくに、初代が大ヒットしたモデルの2代目は失敗しやすい、というエンジニアにとってはイヤなジンクスのようなものがあります。そこからまた3代目になって盛り返したモデルもあれば、フェードアウトしていったモデルもあり、クルマの進化とは本当に難しいものなのだと感じます。
今回ご紹介するのは、最新モデルはすごく進化していて売れているモデルもあるけれど、「やっぱり初代がよかったな」という根強いファンが多いモデルたちです。
1台目は、いまなお最小クラスの本格オープンスポーツカーの名車として語り継がれるほど、世界に衝撃を与えた初代ダイハツ・コペン。軽自動車でありながら、高級オープンカーに負けない電動開閉ハードトップを採用し、細部にまでこだわったインテリアや走りを手にしたクルマとして2002年に登場しました。
丸いヘッドライトやフェンダー、リヤのテールランプまでコロンとした雰囲気で統一されたシルエットは、キュートにもスタイリッシュにも見える「ティアドロップシェイプシルエット」と呼ばれるデザイン。でも、のちに追加されたアルティメットエディションにはビルシュタインダンパーやレカロシートを採用するなど、目の肥えたスポーツカー好きも思わず欲しくなるような、上質なインテリアと本格的な装備が魅力的でした。
収納スペースは限られていましたが、トランクにはゴルフバッグが積載可能という、実用性の高さもアピールされてたのが初代です。
もちろん、2代目モデルもカッコよく、3タイプのデザインが選べるようになったり、走りの剛性感などもかなり進化していますが、初代にはどんなクルマにも出せない味があると感じるファンが多いのも事実です。
2台目は、雪のなかを豪快にかっ飛んでいく姿が印象的なCMなどで、一躍大人気モデルとなった初代ニッサン・エクストレイル。2000年に登場しました。人気の理由はまず、大きすぎないボディサイズです。全長4445mm、全幅1765mmで市街地でも取りまわしがしやすく、それでいて室内は十分な広さと積載性の高いラゲッジを備えていたのです。
そしてなんといっても、随所に施されたタフなギア感。2種類の最高出力が異なる2リッターエンジンに、4速ATと5速MTが設定され、もちろんFFだけでなく4WDもありました。シートアレンジでは後席がフルフラットになり、スキーやスノーボード、サーフボードといったアクティブな趣味の道具がサッと積みやすくなっています。
この初代エクストレイルのコンセプトは2代目にも引き継がれたのですが、3代目からボディサイズが大型化。ギア感よりもプレミアム感が強まり、4代目ともなるとさらに大型化し、インテリアなども完全に上級志向のSUVになった印象です。
タフ&ワイルドなSUVだった頃のエクストレイルが忘れられない、という人が多いのもわかる気がしますね。
世界の自動車シーンに影響を与えたスポーツモデルもある!
3台目は、ふたり乗り小型オープンスポーツカーで生産累計世界一としてギネス認定されている、マツダ・ロードスターの初代です。もともとは、1960年代から欧州を中心に人気となっていたライトウエイトスポーツカーのような軽快なハンドリング、気軽なオープンエアモータリングの楽しさを提供するため、1989年に誕生しました。
重量1トンを切る軽さと、大人ふたりがゆとりを持って過ごせる室内。そして、自分の手足のように操ることができるスポーツカーとしての楽しさと、空と一体になるようなオープンカーの楽しさを融合したモデルとして、一躍人気者となりました。
その後、時代を取り巻く環境性能や安全性への要求に応えるため2代目、3代目とモデルチェンジをする上で、初代ほどの軽さは失われ、ドリンクホルダーなど快適装備が追加されたりと、ストイックさも少しゆるんでいったように感じます。
現行の4代目は原点回帰を目指し、時代の要求に応えながらも初代のようなライトウエイトスポーツカーを作り上げてきたため、再びファンが増えている状況ですが、初代を見て若い世代がレトロな魅力を感じたり、久しぶりに初代に乗った熟年世代がその低さ、軽さにあらためて感動するなど、いまだに初代ファンが多いモデルとなっています。
4台目は、2024年にF1参戦60周年を迎えたホンダが、F1参戦第二期を機に「世界に通用するHondaの顔を持ちたい」との願いから開発したという、1990年に登場した初代NSX。マクラーレンホンダが連戦連勝する姿がフジテレビで放映され、F1ドライバーのセナ、プロストは子どもたちにまで人気があった当時、NSXもまた憧れのスーパーカーとして人気を獲得しました。
世界初のオールアルミボディ、ミッドシップ・リヤドライブレイアウトに、美しい雄叫びをあげるエモーショナルなVTECエンジン。低く長いノーズをもつスタイリングで、路面に張り付くかのように駆け抜ける姿にも魅了される人が続出したものでした。
2005年に生産終了後、11年の時を経て新型が登場しましたが、中身はV6ツインターボ+3モーターのハイブリッドシステムに変貌を遂げた、新世代のハイパフォーマンススポーツカー。
デザインもそれに合わせ、未来的なフロントマスクが個性的で存在感も抜群でしたが、やはり初代とは別モノと捉える人も多く、いまでも初代を懐かしむ声が聞こえてきます。
5台目は、あまりにも初代のインパクトが強く、ロングセラーモデルとなっていただけに、新型が登場しても初代の存在感が大きすぎるモデルが、トヨタ・ハリアー。日本におけるラグジュアリーSUVの先駆け的存在として1997年に登場しました。
フロントマスクには、トヨタエンブレムではなくタカ科の鳥「チュウヒ」をモチーフとした独自のエンブレムを配置し、キャッチコピーは「WILD but FORMAL」ということで、ライオンの頭部にタキシードを着た紳士がイメージキャラクターとして登場。それが大きなインパクトを与え、初代ハリアーは都会的な雰囲気をもつエグゼクティブが乗るSUVというブランドを確立したのです。
一説には、「娘の彼氏に乗っていてほしいクルマ」として母親世代からの支持も厚かったのだとか。ハリアーは2代目以降も基本的なコンセプトは引き継いでおり、最新モデルもそのラグジュアリー感はしっかりと進化していますが、SUVなのにウッドをふんだんに使って仕上げたインテリアなど、当時はまだほかになかった世界観をもっていた初代の存在感が大きすぎて、いまだに語り継がれています。
こうして見てくると、初代というのはそれまで世界になかったもの、時代を突破して切り拓いたもの、というパワーがあるモデルばかり。それだけに、人の心にも強く残りやすく「やっぱり初代はよかったな」と感じるところもあるのかもしれませんね。