石川県七尾市の寝具店スリープインは、眠りに関する専門知識をもったスタッフが寝具選びなどの睡眠環境はもちろんの事、運動や精神のリラックス・入眠する準備に至るまでの眠りをトータル的にサポートしています。
このストーリーでは、羽毛布団のリサイクルを通じて能登の地域復興を支援する私たちの取り組みについてお話します。
〇能登半島地震発生、避難者数は最大40,688人に達した。真冬の厳しい寒さに耐える避難初日の過酷な夜
元旦に発生した能登半島地震では、各地区で避難所が開設され、1月2日には避難者数が最大40,688人に達しました。地域の方々が避難所へ一斉に向かい、現場は混乱状態に陥りました。各自治体やボランティアの方々が懸命に物資を手配しましたが、地震の規模が大きく、必要な物資が行き届かない状況が続きました。特に真冬の厳しい寒さの中での避難生活は非常に過酷で、避難初日の1月1日の夜には毛布などの防寒対策が不十分で、多くの方々が寒さに耐えながら一夜を過ごしたと聞いています。
〇100年使える羽毛を防災グッズに再利用。羽毛布団リサイクルで地域復興へ貢献
この地震によって多くの家屋が倒壊し、災害ゴミの仮置き場には布団が山積みになりました。そこで、私たちは不要になった羽毛布団の引き取りサービスを強化し、リサイクルによって得られた収益の一部を復興支援金として和倉温泉観光協会へ寄付することにしました。またお客様ご自身が所有する羽毛布団を精製して寝袋を製造し、それを通じて復興支援を行うことを決定しました。
布団は家庭から出る粗大ゴミの中でも大きな割合を占めます。たとえば東京23区では、1年間に約62万枚の布団が粗大ごみとして捨てられており、毎日約1700枚の布団が捨てられているとされています。私たちは、災害ゴミの負担を軽減し100年使える貴重な資源である羽毛を、防災グッズへと再利用して循環させることで、地域の復興につなげていきたいと考えています。
〇避難者の意見を取り入れ、快適性と耐久性を追求した寝袋。高齢者や子供にも優しい、スムーズなファスナー設計
地震発生後、避難所での数日間を過ごした方々にご協力いただき、その貴重な意見をもとに寝袋の製作を進めました。例えば、開閉がスムーズにできるように、表裏両方にファスナーを取り付けるなど、高齢者やお子様にも快適にお使いいただけるよう改良を重ねました。また、寝袋としてだけでなく、羽毛ケットや敷き物としても使えるよう工夫しています。さらに、側生地には米軍のパラシュートや軍服などにも使用されている特殊加工素材「リップストップ」を採用しており、耐久性と快適性を兼ね備えた製品として完成しました。
・被災者の意見を元に超軽量生地でダウンの暖かさを発揮できるよう設計しました。
・全開ファスナーを広げると羽毛の肌布団としても活用可能です。
・表裏両方にファスナーを取付け、温まった空気が逃げないよう首元が閉まります。
〇倒壊した商品什器を修復し、震災から数日で営業再開へ。能登の温かさと支えに感謝、復興への強い思いを胸に
私たちのお店は、元旦1日に発生した地震から数日間で倒壊した商品什器を修復し、安全点検を行ったうえで、1月5日に通常の営業を再開しました。街の明かりが消えた状況で、私たちの店の明かりが少しでも皆さんの心を癒すことを願っての決断でした。地震の影響で断水が続く中、停電は免れたものの、多くの店舗が営業を再開できず、夜になると街は暗闇に包まれていました。その中で、比較的被害の少なかった当店がいち早く営業を再開することで、地域の方々に安心感を提供したいと考えました。
営業再開後、あるお客様は「地震の悲惨な光景ばかり見ていたので、ここに来るとホッとする」とおっしゃり、その言葉が今でも心に残っています。また、いつも明るく冗談を言って場を和ませてくれる年配のお客様が、地震の被害を受けて奥歯をかみしめ、涙をこらえながら話される姿を見て、私たちは地域のために何かしなければならないと強く感じました。その姿が、私たちの決意をさらに固め、地域復興への思いを新たにするきっかけとなりました。
能登は、私たちが生まれ育った大切な地です。「能登はやさしや土までも」という言葉が示すように、これまでの営業活動の中で、能登の方々の温かさに何度も触れてきました。たとえば、朝お店に出勤すると、大量の野菜が置かれていることがありました。後で調べると、ある方が届けてくださったことがわかり、お礼に伺うとさらにお土産をいただくこともありました。こうした地域の方々の温かい支えがあってこそ、私たちは営業を続けてこられました。
元旦の地震で深く傷ついた能登ですが、私たちにできることで、少しでも能登の皆さんが心から笑顔を取り戻せるよう、お手伝いしたいと考えています。
〇再生と癒しのシンボル「RENERU寝袋」。能登復興の願いを込めた、小さな寝具店の新たな一歩
能登半島地震の経験から生まれた「RENERU寝袋」は、羽毛リサイクルを通じて能登の復興を願う地元の小さな寝具店の新たなる挑戦です。再生(Rebirth)と眠り(Neru)を掛け合わせたこの名前には、地域の再生と癒し、そして困難な状況を乗り越えた私たちの強い思いとともに、能登の未来を照らす持続可能な未来への希望が込められています。
〇地震後の記憶が曖昧に、過酷な環境が与えた影響。心身の休息としての睡眠の重要性
能登地区の方の中には、地震発生から現在まで記憶が曖昧だという方もいます。正直に言って私も、地震発生時の記憶は鮮明にありますが、その後数か月にわたる記憶は曖昧です。それほど能登に住む私たちが、余震に怯えながら倒壊した家具や生活用品の片付け、極寒の中での長引く断水による給水作業という、日々過酷な環境下で生きていたことがわかります。
私は上級睡眠健康指導士として地域で活動しておりますが、地震という災害時の外部環境の変化が私たちの睡眠に与える影響を考察しました。大きなストレス下では、いつ何が起こってもすぐに対応できるように、心身が常に緊張し警戒しているため、十分な睡眠を得ることが難しくなります。通常、人は眠ることで記憶を定着させますが、それはネガティブな記憶をインプットさせないための防御反応とも言えます。そのため、ストレスから心や身体を守るために、記憶が曖昧になることがあるのではないかと考えています。
数か月が経過し、断水も解消し余震も落ち着いてきた中で、眠りも徐々に正常になりました。しかし、地震による緊張が解けたことで、気が緩んだり、疲れが一気に表れたりして、身体の不調を訴える方が多く見られるようになりました。私たちは、快適な眠りを提供する取り組みをさらに強化すると共に、地震という非日常の経験から、心身の休息である眠りの重要性を再認識しました。この経験を基に、今後の活動に役立てていきたいと考えています。
ねむりと暮らしに寄り添うSleepinn(スリープイン)
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