【積水化学×アスクル】当初予測の30倍を売り上げた! 共創が生み出した、今までにない「高透明養生テープ」の開発秘話とは

2024.05.23 10:00
引越しや建築の現場に欠かせない養生テープ。作業性と汎用(はんよう)性の高さから、さまざまな場面で使われている。近年は掲示物に使われることも増え、透明度の高い製品を求める声も高まっていた。そこで、利用シーンとニーズを深掘して開発されたのが、「現場のチカラ 掲示用 高透明養生テープ」。事業所向け通販大手のアスクルと積水化学の共創によるものだ。簡単に貼ってはがせて手で切れる。しかも、透明で目立たない―― 。ニーズに刺さる画期的な製品はどのように生まれたのか。コラボレーションの内幕とチームの奮闘を追う。
コロナ禍の街で見た、テープの新たなニーズ
「三密回避」「一定の距離を保ちましょう」
ソーシャルディスタンスの確保を促す掲示が街にあふれた2020年のことだ。アスクルでMD(商品担当)を務める森まどか氏は、コロナ禍で張り詰めた街を歩き、ある気づきを得た。


「テープ関連のMDとして、商品が実際にどう使われているのかという意識で街を歩いています。そこで気づいたのが、ソーシャルディスタンスを喚起する掲示が養生テープで貼られていました。だけど、その見た目があまりきれいじゃないな、という印象も抱いていたのです」
アスクル マーチャンダイジング本部 MRO&DIY 包装・梱包資材 森 まどか氏


森氏の視点で顕在化したのは、掲示物に使われる養生テープのニーズだ。もともと、養生テープは建築や塗装の現場などでシートの仮固定やマスキングで用いられるものだ。作業後の撤去が前提となるため、適度な粘着力ではがしやすく、手で簡単にカットできる仕様だ。しかし、はがし忘れのない視認性の高さも求められるため、カラーは緑色や半透明色などがスタンダードだ。森氏が気づいたように、掲示に使うと色味が目立って美観を損ねてしまいがちである。


「私たちが行っていた顧客調査でも、掲示用途では養生テープが最も多く使われており、梱包用のOPPテープが次ぐという結果が出ていました。プラスチック系の素材を用いたOPPテープは透明で、掲示で使っても目立つことがありません。ただし、養生テープのようなはがしやすさ、手切れ性は備えていないのです。既存の養生テープやOPPテープでは、掲示の困り事を解決できていないのでは……。リサーチを経るうちに、そんな思いが強くなっていきました」


森氏は建築・塗装用途「じゃない方」の養生テープを思い描き、製品化を目指し始めた。アスクルで包装・梱包資材チームをリードする山科治氏が続ける。
アスクル マーチャンダイジング本部 MRO&DIY 包装・梱包資材 部長 山科 治氏


「法人のユーザーに話を聞いていくと、自分たちが使いやすいように建材や包装材を工夫されているケースが少なくありません。そのような現場の工夫をすくい上げ、製品化のヒントを見いだしていく。これがアスクルの風土なのです」


手切れ性や貼ってはがせるという養生テープの特長を生かしつつ、掲示をきれいにしたいというニーズを満たす製品が求められているのではないか? かくして、2021年5月に掲示用高透明養生テープの開発プロジェクトが始動する。
試作NGが相次ぐ中、共創から突破口がのぞく
高透明養生テープを構想した森氏は養生テープやOPPテープの製造元に試作を打診する。しかし、技術的に困難だったり、市場がない未知の製品ということで趣旨に賛同してもらえなかったりと、試作に手を挙げるメーカーは少ない。応じるメーカーがあっても、試作品は透明度か手切れ性のいずれかをあきらめざるを得なかった。パートナーを探し続けた森氏だったが、積水マテリアルソリューションズとのコンタクトから光明が見えた。同社から積水化学の機能テープ事業部に出向し、新たなテープ製品を模索していた藤井亮太が語る。
積水化学工業 高機能プラスチックスカンパニー 機能テープ事業部 営業推進G 住建チーム 課長 藤井亮太


「機能テープ事業部で向き合っていたのが養生テープ製品でした。機能テープ事業部の主力製品はクラフトテープで、シェアを拡大し、リードする存在です。強みを持つクラフトテープと、私が担当し始めた養生製品を掛け合わせた製品ができないか。そう考えて、クラフトテープと養生テープを掛け合わせたクラフト養生テープの開発を目指し、工場のメンバーと試作に励んでいました。そこに、アスクルの森さんから透明養生の打診が舞い込んできたのです」


アスクルが目指した透明養生テープのコンセプトと、藤井が追う新プロダクトの技術をブリッジしたのが、積水マテリアルソリューションズの営業チームだ。営業担当としてプロジェクトに携わった中村百花が語る。
積水マテリアルソリューションズ 第一営業本部 東京支店 コンシューマー営業所 中村百花


「アスクルの森さんから相談をいただいたのは、私の前任者です。クラフト養生のトライアルがあったので、当社のOPPテープに養生のりを塗ることで、透明な養生テープができるかもしれませんと二つ返事し、サンプルの作成に向けて動き始めたのです。藤井をはじめ、技術陣が、面白そうな案件だと前向きになってくれた。ここから、透明養生テープを目指した取り組みが動き出しました」


まだ見ぬ養生テープを目指し、機能テープ事業部は工場と共に試作を繰り返していた。さまざまな粘着材や基材(粘着材を塗布するベースになるもの)でトライアルを重ねる中には、アスクルが望んだ透明養生と共通する基材もあった。藤井は「イメージに沿うテープを早く見ていただきたい」と、試作品の開発に没頭した。森氏はそのスピード感に目を見張ったという。


「積水化学はクラフトテープをリードするメーカーですが、養生テープの可能性を模索していたんですね。試作に挑戦してもらえたことに、そして何より初めの打ち合わせで即応の返事をいただけたことに驚きました。サンプルも完成まで半年以上かかるケースが多いのですが、藤井さんたちから第1弾が届いたのは1カ月足らず後のこと。このフットワークがプロジェクトを加速させたと感じています」
手切れ性と透明性を両立し、当初予測の30倍※を売り上げる
積水マテリアルソリューションズ 第一営業本部 東京支店 コンシューマー営業所 所長 作田謙一


テープの基材にOPPフィルムを採用し、養生のりを塗布する。これにより、「貼ってはがせる」「手で切れる」養生テープの特性と、OPPテープの「糸の織り目がなく透明」という特性が融合した、ハイブリッドな養生テープが視野に入ってきた。


解決すべき課題は、手切れ性の向上だ。「初めて触った人でも切れるのが理想」という森氏の要望を受け、機能テープ事業部と工場のメンバーが試作を繰り返す。アスクルと積水化学の開発陣による試行錯誤を見守りつつ、プロジェクトの推進を支えてきたのが、営業チームをリードする作田謙一だ。技術開発のみならず、ソフト面からも幾多のチャレンジがあった、と試行錯誤の日々を振り返る。


「藤井が工場と共に試作を繰り返し、アスクルに提出したサンプルは実に20種類以上に及びました。基材やのりだけではなく、テープの厚みや幅を変更し、試していました。テープカッターを同梱(どうこん)するなど、手切り以外のアプローチを検討したこともありました」


工場のメンバーは問題なくカットできたが、アスクルのトライアルでは手切りに時間を要することもあった。開発・製造の技術的なハードルを乗り越える中で、一同は森氏が目指した「初見の人でも手切りできる」生活者視点の原点を再確認した。山科氏が共創ならではのやり取りに触れる。


「透明性と手切れ性のバランスが取れたサンプルが完成しました。手切れ性は高まって森をはじめ大多数の人が切れるようになりましたが、手に取る人のすべてがストレスなく切れるかというと、そこまでは断言できません。そこで、切り方のコツをいかにユーザーに伝えるか、プロモーション方法を工夫しようという着地点に落ち着いたのです。藤井さんが積水化学の社内でテストを進め、口頭・イラスト・動画の中では、動画による説明が最も理解度が高くなることがわかりました」


二次元コードから切り方を解説する動画コンテンツへ誘導し、初めて触る方にも分かりやすいガイドを用意した。さらに、環境に配慮したグリーン商品を目指すアスクルの理念に基づき、パッケージにはバイオマス素材が採用される。ここに、生活者と社会に寄り添ったプロダクトが誕生。2023年11月―― ついに高透明養生テープがリリースされる。


SNSやメディアを起点としてインパクトは広がり、建築・塗装用「じゃない方」の養生テープとして注目を集めた。売り上げは当初予測の30倍※を超え、新たな市場を切り開いている。藤井は「現状が最終形ではありません。今後も基材やのりの厚みを再検討し、ブラッシュアップを重ねていければ」と前を向く。さらに、「開発陣のマインドシフトも目覚ましいものがあった」と、今後の期待を語った。


「今回のプロジェクトを経て、機能テープ事業部のアイデア出しは活発化し、提案型開発へのシフトが進んでいます。今回のOPPテープ×養生のりのように、既存技術の組み合わせでこれまでにない製品が生み出せるはずです」


森氏も「積水化学は総合テープメーカーとして、確かな技術と開発力を持っていますが、共同開発を経る中で、技術とニーズをマッチングする推進力や提案力も感じました。ユーザーの声を共創に還元しつつ、また新たな取り組みができればと期待しています」と、今後のパートナーシップに期待を寄せる。生活者の感覚を持ちつつ社会に価値をもたらす、新たなプロダクトへ。さらなる共創に向け、連携は続いていく。


※発売後1か月(2023年11月21日~12月20日)の月販数量
(関連リンク)
貼ってはがせて目立たない! 高透明の養生テープが登場!
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