この記事をまとめると
■筆者がいままで乗ったクルマのなかで1番印象が強い国産車と輸入車をピックアップ
■初代NSXのエンジンの吹き上がりやシフト操作の感覚がたまらないと語る
■3代目トゥインゴはエクステリアデザインと機敏な走りに魅力があった
筆者がドライブしたクルマのなかで史上最高のモノを挙げてみる
「思い出は美化されていくもの」といわれますので、もしかしたら年月とともに印象が盛られているかもしれませんが、私にとって史上最高の名車を国産・輸入車1台ずつ、挙げてみたいと思います。
まず国産車では、ホンダ NSX(初代2型)です。誕生したのはフェラーリF40など数々の名車が生まれた1989年で、1990年代にはGT選手権(現SUPER GT)で大活躍していたNSX。ちょうどそんな1990年代後半に自動車メディア業界に飛び込んだ私にとって、NSXはまったく手の届かない存在でした。
編集部で撮影用に借りても、まだペーペーの新人だった私なんて運転するのさえおこがましく、助手席に乗せてもらうのがやっと。憧れつつも遠くで眺めているだけの日々を送っているうちに、ついにNSXは生産終了となってしまいました。
ところが、NSX誕生から20周年を迎えたときに、ホンダアクセスが新たなパーツを製作・販売したのをきっかけに、それらを装着した広報車両があることがわかり、1泊2日で借りられることになったのです。それは1997年式の2型と呼ばれるモデルで、20年目にふさわしい足まわりやドライカーボン製のトランクスポイラーなどが装着され、落ち着いたネイビーのボディカラーがとても大人っぽくて素敵でした。
ようやく座ることができたNSXの運転席は、イメージではもっと寝そべるように低いポジションだと想像していたのですが、意外とそこまでの低さではなく、しっかりと視界が確保できて車両感覚がつかみやすく、安心感があると感じたものです。
そして恐る恐るエンジンをスタートさせると、ブォォォンと背中から包み込まれるようにVTECエンジンサウンドが響き渡ります。その瞬間に、自分にもスイッチが入ったかのように、いつもの道がちょっと特別な道になったような感覚。
私の場合は足が短くてシートをかなり前にスライドさせるポジションになるため、シフトレバーが近すぎる位置になってしまいましたが、1発でカキッとキマるショートストロークのレーシーな操作感がもう、たまらない。
そのまま首都高を抜けて東名高速道路に入り、バビューンと高速域まで吹き上がる高揚感、フォーンッと甲高いサウンドに酔いしれます。
でもまたまた意外だったのは、挙動がとても紳士的で、走っていてどこにも不安がないのです。ひとつひとつの操作にクルマとしての誇り、スポーツカーとしての使命のようなものを感じ、涙が出そうなくらい感動したのを覚えています。
日本車が世界と闘い、魅了して日本車ファンを増やしていった時代のトップランナー。NSXこそが、私のなかの日本代表選手です。
おしゃれな見た目とは裏腹に元気いっぱいに走る最高のマシン
続いて輸入車では、生まれる前の名車に乗れた感動や奇想天外な走りに驚いた記憶などもあるのですが、惜しまれつつ生産終了が発表され、欲しいけど買えなかったことが悔やまれるルノー・トゥインゴ(3代目)にしたいと思います(編集部注:記事公開時点で受注再開)。
3代目トゥインゴは、「パリが仕立てたコンパクトカー」というコンセプトで登場しました。エッフェル塔、セーヌ川、シャンゼリゼのカフェテラス。どこを切り取っても絵になる街、それがフランスのパリ。パリに暮らす人々の高い美意識と、本物を見極める審美眼にもともと憧れがあったので、このコンセプトだけでズキュンと胸に響いたのは確かなんですが、それを差し引いてもなんて秀逸なデザインでしょうか。
いまなお愛される初代トゥインゴや往年の名車サンクから、多くのインスピレーションを得たという愛嬌のあるフロントマスクや、リヤフェンダーが張り出したフォルム。そして、ルノーのデザインアイデンティティであるブラックグリルとエンブレム、大きな1枚ガラス仕立てのリヤゲート。どこか懐かしくて、でも新しい、ただ可愛いだけじゃない個性と存在感に魅了されました。
さらに、外観からは思いもよらないことが、エンジンが荷室下に搭載されるRRレイアウトの採用です。エンジンがどいたフロントで前輪の切れ角を49度と大きくとり、最小回転半径は4.3mと、軽自動車並みの小まわり性能を実現しています。
0.9リッターの直列3気筒ターボと2ペダルMTとなる6速EDCとの組み合わせは、出だしからモリモリとしたトルクが涌き出るような、元気いっぱいの加速フィール。ほのかにフロントが軽く感じる挙動もキビキビしていて、東京のゴチャゴチャした街なかを走るだけでも、ゴーカートみたいで楽しすぎる! 乗れば誰でも、すぐに笑顔になれるコンパクトカーって、最高ですね。
そんなわけで、現時点での自分史上最高の名車。果たして今後、これが塗り替えられるのかどうか、自分でも楽しみです。