非IT人材のリスキリングやアップスキリングこそ、IT人材充実のカギーパーソルグループが取り組むIT人材育成

2024.02.15 11:00
パーソルグループでは
において、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」を目指すための事業成長のエンジンに「人的資本」を掲げています。中でもIT人材の獲得は重要指標となっており、2025年度にはパーソルグループ内のIT人材を2,000名にまで増やすという具体目標も掲げています。この目標達成に向け、多様な専門プログラムによるリスキリングやアップスキリングに取り組んでいます。


今回は、パーソルグループのリスキリング/アップスキリング施策の全体設計を担う、パーソルホールディングス 内田にインタビュー。外部からのIT人材採用に留まらず、非IT人材をIT人材へリスキリングする取り組みに注力している背景や現在の取り組み、そして今後の展望について聞きました。


パーソルホールディングスが運営するWebメディア「
 」では、パーソルグループ内で取り組んでいるITプロジェクト、IT人材向け制度を紹介しています。本記事と併せてぜひご覧ください。
リスキリングで非IT人材をIT人材へ育成
—パーソルグループがリスキリング/アップスキリングに注力する背景を教えてください。
パーソルグループは2023年に発表した中期経営計画において、「テクノロジードリブンの人材サービス企業」という経営の方向性を掲げました。実現に向け重要となるのがIT人材の拡充である一方で、IT人材採用の壁は非常に高いと言わざるを得ません。これまでと同様の採用活動を続けているだけでは、社内で必要とされる人数まで増員することができない可能性があります。こういった背景から、グループ内の非IT社員のリスキリング/アップスキリングを推進する運びとなり、まずはリスキリングからグループ全体を巻き込んだ取り組みを開始しています。
—なぜリスキリングに注力しているのでしょうか?
どのような職種にも当てはまることではありますが、IT人材が業務の中で結果を出すには、業界の特色や当社のビジネスモデルを理解している必要があります。しかし経験者採用で新たに入社した人材が一通りそれらを把握するには、どれだけ高いスキルを保有していても一定の時間を要します。グループ内非IT社員のリスキリングを進めているのは、社員はすでに業界特性や社内事情に精通していることに加え、これまでの現場経験を活かすことでIT部門との橋渡し役を担ってもらうことができ、「テクノロジードリブンの人材サービス企業」実現にドライブをかけたいと考えているためです。
リスキリングを成功させる4要件とは?
—IT人材といってもレベル感はさまざまです。どのような育成計画があるのでしょうか?
技術に精通し自ら主体的に業務改善を推進する「コアテクノロジー人材」と、コアテクノロジー人材と協力しながら業務部門との間を取りもつ「テクノロジー活用人材」の2つのセグメントでのリスキリング/アップスキリングを考えています。
パーソルホールディングス 中期経営計画2026より抜粋
—どのような領域をリスキリングによって学ぶのでしょうか?
パーソルホールディングスが主体となるリスキリングプログラムでは、グループ全体から、「セキュリティ」「ITマネジメント」「DX」の3領域について学ぶ意欲のある人材を募集しました。
この3領域は、既存の業務経験やビジネス知識を活かすことができ、スキル獲得の手段も揃っていると考えました。また、事業部サイドのニーズが高く、需給バランスにギャップがある領域を選びました。
—では、実際にどのようなプログラムを通じてリスキリングが行われていったのでしょうか? 
プログラムは大きく2つに分けられます。1つは業務を行う際の基礎となる知識を得るための資格取得を目標とした座学、もう1つはケーススタディやOJTで学ぶ実践教育です。
とくに後者に関しては、過去に実際に起こった事象を例に解決策を議論したり、コーチ役の指導の下、実際の案件に対応するといった実践的な内容が特徴です。大事なのは「聞いたことがある」「知っている」という状態で終わらせないこと。目指しているのは、刻々と変わる状況に合わせて対応できるプロフェッショナルを養成することです。即戦力となるように、実践教育に力を入れている点がこのプログラムのポイントといえます。
—現在、何名がこのリスキリングプログラムを受講したのでしょうか?
パーソルホールディングスが主体となるリスキリングプログラムでは、2022年度はグループ各社から7名のリスキリング希望者を募り、セキュリティ領域のリスキリングを行いました。半年間にわたる「セキュリティ人材育成プログラム」を受講後、現在は実際にセキュリティ領域の実務を担当しています。2年目となる2023年度は、セキュリティ領域に加え、DX領域とITリスクマネジメント領域の2プログラムを追加し、全13名がプログラムを修了しています。


このほかにアップスキリング施策にも着手しており、新卒向けのIT教育や内製エンジニアの育成、人事、財務といったさまざまな領域で年間83名にもおよぶテクノロジー人材を養成できました。彼らには今後、事業部やバックオフィス部門のテクノロジー活用の中核を担ってもらいたいと考えています。
—リスキリング/アップスキリングを推進する中での気づきがあれば教えてください。
アップスキリングについてはこれから…という面が大きいかと思いますが、リスキリングについては「リスキリングを成功させる4要件」に気付くに至りました。
リスキリングを成功させるためにまず必要となるのが、経営陣や組織のトップによる高いコミットメントです。また、参加者の集め方も指名ではなく広く希望者を募るべきで、講師、コーチ役による積極的な支援と仲間同志で助け合う環境の整備に加え、学習後、習得した知識が活かせる業務に就かせることも大事なポイントです。このプログラムに参加する社員は、もともと会社とのエンゲージメントが高い傾向があるのですが、この4要件を満たしたことで、プログラム修了後、さらにロイヤリティが高まっているのがうかがえます。
—参加者からはどのような声が聞こえてきますか?
半年間、業務から離れ学びに専念したことで「学ぶコツがわかった」「学ぶ習慣が身についた」という声をよく聞きます。現場では想定外の状況に直面することがあるので、プログラムの範疇を超える知識が問われることが少なくありません。そんな局面でも学び続けられるのであれば、きっと打開策を見つけられるはずです。そんな社員がチームに加われば、きっと周囲にいい影響を与えてくれるのではないかと期待しています。
―一方でリスキリングに取り組んだ結果、顕在化した課題があれば教えてください。
このプログラムを実施するには事務局や講師、コーチなど、多くの社員の手が必要なため、継続的な取り組みとするには、コストを抑えつつ効果的な体制をつくる必要がありそうです。また、集合研修型を採用することで、吸収が早い人にとってはカリキュラムの進捗を遅く感じてしまうという課題、すなわち実力者を見出せても、一歩先に進んだ課題に取り組んでもらう環境を持つことができなかった点は、今後の改善が必要だと考えています。


また、リスキリングのためのプログラムづくりには、グループ会社であるパーソルイノベーションが提供する伴走型DXラーニング『
(旧『学びのコーチ』2024年2月名称変更)』や、ITイベントの運営を手がける『
』が持つ技術勉強会の運営ノウハウなどが活かされています。優秀なメンバーが気兼ねなく現場を離れ研修に専念できる環境づくりのためにも、課題や対策を丁寧に精査し改善につなげていきたいですね。
パーソルには、時代の先を読み人を育てるDNAがある
—リスキリング/アップスキリングにおける今後の展望を聞かせてください。
新規ビジネスの創出や業務変革を担うテクノロジー人材は、現在グループ全体でおよそ1,500名を数えます。これをリスキリングや経験者採用などを通じて、2025年までに2,000名の大台に乗せるのが今後の目標です。さらに、コアテクノロジー人材と協働するテクノロジー活用人材についても改めて数値目標を設定し育成に力を入れていくほか、習得した知識を活用し続けられるよう、研修内容のアップデートや追加教育の実施、資格制度の創設などを検討しています。


われわれパーソルグループの源流の1つに人材派遣事業を展開するテンプスタッフがあります。テンプスタッフが大きな成功を収められたのは、オフィスのOA化を見越したタイピストの養成にいち早く取り組んだからにほかなりません。それが結果として女性の社会進出を後押ししたことを考えると、パーソルには時代の変化に合わせて人を育てるDNAがあるのを感じます。
—パーソルグループだからできる取り組みでもあると?
はい。そう思います。しかし現状はまだ「ITはIT部門の仕事」という先入観を完全に払拭しきれたとはいえません。一日も早く「業務に携わる自分たちこそが、テクノロジーを活用したサービスづくりの主役である」という認識に変えるためにも、1人でも多くのIT人材の養成に取り組まねばと感じています。生成AIの発達やノーコードツールの普及により、事業部門とIT部門の垣根は下がる一方です。


今後は「サービスを生み出す人材」と「サービスを生み出す人材を育てる人材」をいかに生み出すかが、企業としての成長を左右することになるのではないでしょうか。効率化や省力化による課題解決はもちろん、個人に対しては新たなはたらき方、社会に対しては新たな可能性を示せるよう、非IT人材のリスキリングをきっかけに、足もとの取り組みをさらに充実させていきたいと思っています。


※2024年1月時点の情報です。


パーソルホールディングスが運営するWebメディア「
」では、パーソルグループ内で取り組んでいるITプロジェクトを紹介しています。本記事と併せてぜひご覧ください。

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