ホンダWR-Vはヒットの予感……だけど強すぎる同門「N-BOX」が立ち塞がる懸念が拭えない!

2023.12.29 06:20
この記事をまとめると
■ホンダが日本初登場となるSUVの「WR-V」を発売した
■日本におけるホンダのSUVラインアップはライバルに比べると選択肢が少ない
■商品力がないとN-BOXに食われて生き残れないかもしれない
ホンダ期待の新型コンパクトSUV「WR-V」
  ホンダのコンパクトクロスオーバーSUVとなるWR-Vは、日本国内にて2023年12月発表、2024年春発売予定となっている。なお、報道によると、インドより完成車輸入という形で国内展開されるようである。
  今回、国内投入されたWR-Vは、グローバルでは2代目となるモデル。初代は2016年11月にブラジルにおいてプロトタイプモデルを公開。南米地域及びインドで生産及び販売されており、新興国向けモデルといえるのが初代であった。
  筆者はかつて、インドの首都デリーで開催される「オートエキスポ(通称デリーオートエキスポ)」にて初代WR-Vを見た。当時のフィットをそのままクロスオーバーSUVにしたようなカジュアルな雰囲気にとても好感が持てた。
  そのとき、縁あって地元インドメディア向けのホンダによるプレス懇談会に参加させてもらったのだが、その場でホンダ関係者に「日本国内でも売れそうですが、国内投入予定はあるのですか」と聞くと、「日本国内への投入予定はない」との返事をもらった。
  しかしそのときに、「次世代モデルに期待してください」とも受け取れるコメントを得ていた。そして2代目国内投入の発表を見て「ああ、やっぱり」と思ったのだった。
  トヨタと比較するとホンダの日本国内におけるクロスオーバーSUVのラインアップは物足りないのが現状。トヨタは5ナンバーサイズのライズと3ナンバーサイズのヤリスクロスの二枚看板でコンパクトクロスオーバーSUVをラインアップし、ヤリスクロスの上にはカローラクロス、さらにはRAV4、ハリアー、そしてクラウンクロスオーバー、クラウンスポーツ、ランドクルーザープラド、ランドクルーザーとまさにフルラインアップ体制となっている。
  ところがホンダはヴェゼルとZR-Vのみ。国内販売シェアでトヨタに大差をつけられているとはいえ、「世界のホンダ」としては物足りないと言わざるを得ない。
  コンパクトサイズでは「なんちゃってクロスオーバーSUV」ともいえるフィット・クロスターがあり、現行フィット登場直後は販売現場も想定外なほど売れていたという話も聞いているが、あくまでクロスターはSUV風である。
  つまり、それだけホンダ車ではクロスオーバーSUVの選択肢が少ないともいえるのだ。その意味では今回のWR-Vの国内投入はウェルカムともいえるのだが、気になるところもある。すでにメディアでも指摘されているが、駆動方式はFFのみであり、しかもHEV(ハイブリッド車)の設定がないのだ。
ライバルは他社モデルではなく身内のN-BOXだ
  北米市場の様子を見ると、すでにホンダは明確に「EV(ここではBEV[バッテリー電気自動車]やFCEV[燃料電池車]などNEV[自然エネルギー車])シフト(将来的にはEVしか売らない)」を表明していることもあるのか、HEVのラインアップの積極的な拡大は行わないようにも見えるので、その流れでWR-Vもガソリンエンジン車のみということなのだろうが、日本国内でHEVがないというのはなかなかの大英断のようにも見える。
  たとえば、現行ライズではガソリン車のほかにeスマートというHEVもラインアップされている。ただ、モデルなかばで追加設定されたりしたことなどもあるが、街なかを走るライズは圧倒的にガソリン車が多い。一方でヤリスクロスではHEVが走っているのが目立つ。ライズとヤリスクロスでは支払総額で50万円近く差が出ており(ヤリスクロスのほうが高い)、同じコンパクトクロスオーバーSUVなのだが、微妙にユーザー層が異なるようにも見える。
  また、WR-Vに搭載されるエンジンが1.5リッターというのも気になる点と言える。ライズでは、eスマート追加時にそれまで1リッターだったガソリンエンジン車が1.2リッターとなり、販売現場を悩ませた。「ライズは1リッターということでご好評を得ていた部分も大きいです。とくに当時は1リッターターボがあり、こちらがとくに好評を得ておりました。1.2リッターになると聞いたときは少々とまどいました」とは現場のセールススタッフ。
  WR-Vは3ナンバーサイズということを考えれば、ヤリスクロスに近いキャラクターのように見える。その点ではヤリスクロスもガソリンエンジン車は1.5リッターなのでいいのかもしれないが、ヤリスクロスでは圧倒的にHEVが選ばれているので、どうせガソリンエンジン車のみとするならば、1リッターターボあたりを搭載しても良かったかもしれない(たとえばタイで販売されているシティ・ハッチバックの1リッターターボなど)。
  FFのみというのは、最近は日本国内でも2WDが選ばれることが多くなったので、あまり気にする必要もないかもしれないが、4WDがあるに越したことはないような気がする。
  インド生産ということをネガティブに捉える傾向もあるが、いまや新興国の生産拠点も製造品質が向上しているので、日本国内生産が昔ほど圧倒的に世界最高品質というわけでもない(タイでの生産は世界的にも品質が高いとされている)ので、品質自体を心配することはないだろう。
  ただし、もしも「インド生産だから4WDもHEVもない」というロジックが先行してしまうと、WR-Vではなくインド生産車全体がネガティブに映ってしまうことにもなりかねないので、そのあたりは少々気になってしまう。ホンダはとくに、今後は海外生産車の国内販売を積極的に行っていくようなので、そのあたりの配慮は慎重にしたほうがいいのではないだろうか。
  また、WR-Vに限らずホンダの販売現場あるあるともいえるのだが、たとえばWR-Vに興味があって来店したとしても、結果的にN-BOXを契約してお客が帰ってしまうといった現象がある。
  たとえばN-BOXカスタムでもっとも高い4WDモデル(つまりN-BOXで一番高いモデル)となる、「カスタムターボ・コーディネートスタイル・2トーン」の車両本体価格は236万2800円で、これを一般的なカスタムターボの4WDにすれば218万2400円となっている。販売現場では「カスタム系はオプションを奢ってつけると支払総額で300万円オーバーになる」と説明している。
  すでにフリードやフィット、はたまたステップワゴンの購入検討客までをN-BOXが食ってしまうケースが頻発しており、このケースがWR-Vでも目立ってしまう恐れも十分ある。
  ラインアップの充実は歓迎すべきことなのだが、ホンダの販売現場ではN-BOXへの依存が高いように見えるので、ここを改めない限りは魅力的なモデルを投入しても、ライバルメーカー車ではなくN-BOXに潰されてしまうともいえる傾向が続いてしまうのではないだろうか。

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