この記事をまとめると
■2021年の4月に2代目に代替わりして2024年4月に大がかりな改良を実施したホンダ・ヴェゼル
■2024年上半期SUV新車販売台数で1位を獲得するほど売れている
■マイナーチェンジでより魅力的に進化して快適性を高めた
走りと快適性の進化が著しいホンダ・ヴェゼル
2021年4月に2代目が登場したアーバンSUVのホンダ・ヴェゼルが、2024年4月に初の大がかりなマイナーチェンジを行った。ヴェゼル人気は堅調で、2024年現在でも、乗用車全体のブランド通称名ランキングで4月は4位、5月は6位。2024年上半期のSUV新車販売台数では1位を獲得したほどで、国産コンパクトSUVの売れ筋車種となっている。
マイナーチェンジの範囲は広く、エクステリアはフロントグリルとフロントバンパーのデザインやリヤコンビネーションランプを変更。
インテリアではスマートフォン2台を横並びに置け、2台分のUSBを備えた前席2段センターコンソールを設定するなど、見た目だけではない使い勝手のよさを進化させている。
また、同クラスのライバルにない、エクステリアにアウトドアテイストを与え、インテリアに撥水撥油ファブリックを採用したアクティブな「HuNT(ハント)パッケージ」をベースグレードのe:HEV Xに新設定。空前のアウトドアブームの今、待望の新グレードの登場である。
そして、走りにかかわる部分のアップデートにもぬかりなし。2モーターハイブリッドのe:HEVはIPUのエネルギーマネージメントを見直した最新バージョンを搭載。発進領域を含むバッテリーの使用範囲、EV領域を拡大するとともに、エンジンON/OFFの切り替え頻度を約30%低減。つまり、EV走行の粘り強さ、電動車としての魅力を一段と増したことになる。
快適性の進化にも注目で、マイナーチェンジ前では乗り心地面で重量がFFに対して約80㎏重い4WDのほうがしっとりマイルドだった一方、FFモデルは路面によってリヤからの突き上げが気になる乗り心地を示していたのだが、今回のマイナーチェンジでe:HEVのFFモデルの足まわり(主にダンパーの減衰力)を見直し、e:HEV FFモデルの乗り心地が改善されたのも嬉しいニュースである。
さらに、ボディ各所に配置される遮音材と防音材の厚み、配置を最適化することで、エンジン始動音やロードノイズを低減させ静粛性をより高めているのも大きな特徴となる。そう、より静かに走るヴェゼルになったということだ。
ホンダの安全運転支援システム「Honda SENSING」も全タイプに最新バージョンを搭載。これまで搭載されていた衝突軽減ブレーキ<CMBS>、路外逸脱抑制機能、渋滞追従機能付アダプティブクルーズコントロール<ACC>、車線維持支援システム<LKAS>の機能向上だけでなく、新たにトラフィックジャムアシスト(渋滞運転支援機能)、急アクセル抑制機能、アダプティブドライビングビーム6つの機能を追加しているから頼もしい。
ちなみに、マイナーチェンジ前のヴェゼルの最上級グレードとなるe:HEV PLaYはFFしか選べなかったのだが、マイナーチェンジでグレードを整理。それぞれでFF/4WDが選べるe:HEV X、e:HEV X HuNTパッケージ、e:HEV Z、e:HEV Z PLaYパッケージ、そしてガソリン車のZ(4WDのみに)というラインアップになっている。
ヴェゼルは本当に魅力的なクルマになったのかライバル車と比較
そんな最新のヴェゼルのライバルとして挙げられるのは、多少のクラスの上下はあるものの、トヨタ・ヤリスクロス、日産キックス、マツダCX-30などがすぐに頭に浮かぶが、じつは身内のホンダWR-Vも、ヴェゼルGのライバルと見ていい。
ヴェゼルはアーバン(都市型)といっても、紛れもないクロスオーバーSUVであり、コンパクトなボディサイズを生かした日常使いはもちろん、空前のアウトドアブームの最中だけに、アウトドアユースの資質にも注目だ。
まず、家族や仲間と出掛ける際に気になる後席居住空間について比較すれば、身長172cmの筆者のドライビングポジション基準でヴェゼルは頭上に115mm、膝まわりに驚愕の290mmというとんでもない広さとなる。CX-30は同100mm、130mm、ヤリスクロス同120mm、125mm、キックス同130mm、155mm。ちなみに身内ライバルのWR-Vは同160mm、240mmと、後席のゆとりを実感しやすい膝まわり空間でホンダ勢、ヴェゼルが圧倒していることになる。
なお、暑い時期の後席の快適性に直結する後席エアコン吹き出し口の装備があるのは、ヴェゼル、WR-V、CX-30ぐらいのものである。
アウトドアユースでは荷物の積載性も重要だが、この点についてはWR-Vが健闘。ラゲッジルームのフロアは奥行き840mm、最小幅1015mmとクラス最大級。CX-30は同800mm、1000mm。キックスは同890mm、980mm。ヤリスクロスは同790mm(ボード下段)、995mmとなる。
ヴェゼルはといえば、同755mm、1010mmとやや奥行不足。つまり、アーバンクロスオーバーSUVとして、ラゲッジルームより後席居住性優先のパッケージということだ。とはいえ、3名乗車で後席の片側を倒せばフロア奥行は1550mmに達するから、アウトドアの荷物もしっかりと積み込むことが可能となる。
さて、走行性能について、ヴェゼルのメインとなるハイブリッド同士で比較すると、EVモード/ハイブリッドモード/エンジンモードを切り替えられ、マイナーチェンジでEVモードの作動領域を拡大したヴェゼルのe:HEV、100%モーター駆動で電動車感の強いキックスのe-POWER、トヨタ自慢の2モーターハイブリッドシステム=THS IIを持つヤリスクロス、スポーティなハンドリングと乗り心地、静粛性のバランスの高さが魅力のCX-30のマイルドハイブリッドe-SKYACTIV G 2.0が並べられる。エンジンはそれぞれ4気筒1.5リッター、3気筒1.2リッター(発電専用)、3気筒1.5リッター、4気筒2リッターとなる。
動力性能について車格なりに不満のある車種などはないが、マイナーチェンジしたヴェゼルで際立つのが車内の静粛性だ。フルハイブリッドモデルなら、EVモード走行時のパワーユニットからのノイズはないに等しいが、エンジンが始動するハイブリッドモードになると、エンジン本体からのノイズ面で、4気筒が優位なのは当然。しかし、忘れてはいけないのが、ピュアEVでも気になるロードノイズ。この点では、さすがにマイナーチェンジで徹底的に静粛性を追求したヴェゼルがリードする印象だ。
乗り心地面でもヴェゼルはマイナーチェンジ前の4WDはいいが、FFは硬い……といったウィークポイントが解消され、FFモデルでもフラット感が高まり、首都高の段差乗り越えでも軽やかに「タン」といなしてくれるようになったのだから、乗員の快適性でひとつ抜きんでているのがヴェゼルということになる。
各車のWLTCモードによるハイブリッドFFモデルの最高燃費はヤリスクロス30.8km/L、ヴェゼル25.3~26.0km/L、キックスが23.0km/L、CX-30が16.2km/L(ディーゼルターボは19.5km/L)と、車重、車格を考えれば、ヴェゼルのモード燃費はじつに優秀ということになる。マイナーチェンジモデルで首都高約60%(主に最新制御のACCを使用)、一般道約40%の走行を行った際のe:HEV Z PLaYパッケージの実燃費は23km/L近くまで伸びたのである。
ただし、マイナーチェンジしたヴェゼルには足りないものもある。ひとつはトヨタ車のトヨタセーフティセンスに含まれるじつに有用な、一般道でもACCなしで先行車、カーブなどに対する減速支援などを行ってくれるプロアクティブドライビングアシスト的な機能がないことと、トヨタのハイブリッドに用意される、車内外で1500Wまでの家電品が使え、停電時には一般家庭の約5日分の電力を供給することが可能になる(ガソリン満タン、消費電力400W時)AC100V/1500Wコンセントが、ヴェゼルのe:HEV=ハイブリッドモデルにはないことである。
細かいことだが、オートブレーキホールド機能にメモリ―機能(エンジンを切ってもオートブレーキホールド機能のONが維持される/ホンダ車ではこのヴェゼルから採用/トヨタ車では不採用)が付く点も評価できる。
ヴェゼルが今回のマイナーチェンジでより魅力的に進化し、快適性を高めたことは間違いないところ。