この記事をまとめると
■初代ロッキーはオフロード走行を期待させる小型クロカンモデルとしてラインアップされていた
■初代ロッキーからテリオスやビーゴにダイハツ小型クロカンの系譜は継承された
■1980〜90年代にはダイハツ以外に三菱やスズキも白ナンバーの小型クロカンをラインアップしていた
SUVブームのはるか以前のRVと呼ばれていたころの小型クロカン
クロスオーバーSUVが世界的ムーブメントといわれるようになって久しい。「猫も杓子もSUV」といえるほど、豊富なラインアップから好みのモデルを選べるのはユーザーにとっては、歓迎すべきうれしい状況といえる。
2024年夏の時点で、国産SUV全体を眺めたときのエントリーモデルといえるのはトヨタ・ライズ/ダイハツ・ロッキーの姉妹車だろう。
5ナンバー枠に余裕で収まるボディに1.2リッターエンジン(ハイブリッド)を中心に展開しているのもエントリーモデルらしいところだ。「SUVは4WDでなければ認めない!」というユーザー向けなのか、4WDは1リッターターボを積んでいるのは、とくにダイハツ版が採用している「ロッキー」という名前からすると納得感がある。
SUVという言葉が広まる以前、オフロード走行を期待させるモデルが、クロカン四駆やRV(レクレーショナルビークル)とカテゴライズされていた時代にも、ダイハツのラインアップに「ロッキー」というモデルは存在していた。
先代ロッキーが誕生したのは、まさに日本の自動車マーケットがRVブームに湧いていた1990年。ラダーフレームの3ドアボディだけの設定で、オープンボディにできるレジントップ仕様。全長4m未満のコンパクトサイズながら、自動車税制では不利になる1.6リッターエンジンを積み、トランスミッションも誕生当初は5速MTだけだった。
生まれたタイミングから、マツダ・ロードスターのようなスパルタンでマニアックなイメージさえあるクロカン4WDだったといえよう。
初代ロッキーの駆動方式は、もちろん四駆オンリーなのだが、古典的な副変速機付パートタイム4WDと、センターデフロック機構付きフルタイム4WDを設定したことは、オーソドックスなクロカン4WDとクロスオーバーSUVをつなぐものとして記憶に残る。
ロッキーの系譜はテリオスとビーゴに受け継がれた
その意味で、進化形SUVモデルとして1997年に誕生したのがダイハツ・テリオスだ。
のちにトヨタ・キャミという姉妹車も生まれたライトクロカンは、1.3リッターエンジンを縦置きにレイアウトしたフルタイム4WDのパワートレインだったのだ。しかも、センターデフロック機構をもっていたのは、初代ロッキーからの連続性を感じさせた。モデル後期にはFR仕様やターボエンジンを追加設定するなど、時代のニーズに合わせバリエーションを増やしていった。
その流れは、トヨタ・ラッシュ/ダイハツ・ビーゴの姉妹車へ受け継がれた。2006年にニューモデルとして生まれたラッシュ/ビーゴは引き続き5ナンバー枠のボディに、エンジンを縦置きにするSUVモデルだったのだ。エンジンは1.5リッターへグレードアップされたが、センターデフロック機構付きフルタイム4WDという駆動システムは踏襲した。
副変速機こそもたないが、センターデフロックをオンにすれば悪路走破性がレベルアップするのはご存じのとおり。ルックス的には街乗りメインのコンパクトSUVのように感じるかもしれないが、テリオスにしろ、ビーゴにしろ、中身は初代ロッキーからの血統をビンビンに感じさせるものだったのだ。
さて、ダイハツ・テリオスといえば、基本的に同じプラットフォームを利用した軽自動車版「テリオスキッド」の印象が強いかもしれない。現在でも、スズキ・ジムニーには1.5リッターエンジンを積んだ白ナンバーのジムニーシエラという兄貴分モデルが存在しているが、テリオスとテリオスキッドの関係も似たようなものだった。
1990年代、同様の関係を構築していたモデルとして印象深いのが、三菱のパジェロミニとパジェロジュニアの兄弟だ。3ドアボディは軽自動車のまま、オーバーフェンダーによりワイドボディとしたことで“パジェロらしさ”を強調。1.1リッターエンジンはもちろんフロント縦置きで、副変速機付パートタイム4WDの駆動システムは本格クロカンの正統派といったところ。前述したオーバーフェンダーにより205幅のタイヤを履いたことで、オールラウンドな走行性能をレベルアップしていたことも記憶に残る。
ダイハツ・ロッキーから始まったテリオス(キャミ)、ビーゴ(ラッシュ)という系譜。そしてパジェロジュニアと平成前期に輝きを放った、クロカン性能も感じさせる小型SUVを振り返ってみたが、このカテゴリーにおける元祖といえるのがスズキ・エスクードだ。
初代エスクードの誕生は1988年(昭和63年)とかなり昔の話。当初は3ドアボディだけの設定で、エンジンは1.6リッター直列4気筒だけ。全幅1635mmの5ナンバーボディでありつつ、外観はライトクロカン的な世界観を表現したものとして自動車史に残る存在といったらいい過ぎだろうか。
とはいえ、中身は本格クロカンのそれ。シャシーはラダーフレームであり、駆動システムは副変速機付パートタイム4WDとなっていた。
のちにロングホイールベース仕様のエスクードノマドを設定するなど、初代エスクードはバリエーションを拡大したことでも知られている。2リッターと2.5リッターのV6エンジンを積んだほか、マツダ製の2リッター直列4気筒ディーゼルもラインアップしていたことは、熱心なファンでなければ覚えていないかもしれない。