ホンダWR-Vに日産もスズキも続くか? インドから日本へと輸入の流れがトレンドになりそうな予感

2024.06.17 06:20
この記事をまとめると
■スズキのインド製コンパクトSUV「フロンクス」の日本導入が噂されている
■最近ではホンダもインド生産のWR-Vを完成車輸入して大ヒットを記録した
■今後はインドからの完成車を導入する流れが増えるかもしれない
ジムニー5ドアと同時デビューしたスズキ・フロンクス
  最近、ネット上ではスズキが新型コンパクトクロスオーバーモデルを日本で近々デビューさせるといった記事が目立っていた。その新型車とは、スズキがインドの子会社マルチスズキで生産し現地で販売している「フロンクス」というモデルだ。
  2023年1月にインドのデリー近郊で開催された、「オートエキスポ2023(通称デリーオートエキスポ)」において、スズキは「ジムニー5ドア」をワールドプレミアさせて世界に衝撃が走ったが、このときにフロンクスも発表されている。
  インド仕様車のスペックは全長3995×全幅1765×全高1550mm。1リッターターボと1.2リッターエンジンをラインアップし、1リッターターボはマイルドハイブリッド仕様となっている。1リッターターボには5速MTと6速AT、1.2リッターには5速MTとAGS(オートマニュアルシフト)が組み合わされる。ちなみにインドではトヨタブランドでも「アーバンクルーザー」という姉妹車がラインアップされている。
  仮にフロンクスが情報通りに日本国内で発売になれば、インドからの完成車を輸入して販売することになるだろう。「インド製」というと、最近ではホンダがWR-Vをインドから完成車輸入して販売しており、ヒットモデルと呼ぶにふさわしい売れゆきとなっている。
  タイミングからいけば、もちろんスズキがWR-Vの好調ぶりをみてフロンクスの国内導入を決めたということはないが、時をほぼ同じくしてホンダとスズキがインドからコンパクトクロスオーバーSUVを輸入して販売しようと考えていたとしたらじつに興味深い。
  フロンクスのデリー地区での最廉価モデル(1リッター)の価格は75万1500ルピー(約141万円)、一方のWR-Vの現地仕様となるエレベイトの最廉価モデルの価格は119万9000ルピー(約225万円)となっている。単純に価格だけを抜き出しているので、装備内容などは比較していないが、フロンクスはエレベイトよりもかなり割安な価格設定となっていることに驚かされる。
  ただ、インドにおいてフロンクスは、スズキのプレミアムモデルを扱う上級店の「ネクサ」扱いとなるモデルなので、けっして安っぽさが先行しているモデルではない。日本国内におけるWR-Vの廉価モデルでは支払総額で250万円もしないにもかかわらず、ホンダセンシングやオートエアコンなどの装備も充実しており、想定外に売れているとのこと。
  フロンクスのインド国内での価格設定を見る限り、もしも日本国内で発売されるとすれば、それはWR-V以上にインパクトのあるモデルになりそうである。
日本でも売れそうなモデルを完成車輸入する国産車が増える?
  しかし、インド製日系コンパクトクロスオーバーSUVにはさらなる伏兵がいた。その名は「日産マグナナイト」。ルノーの新興国向けコンパクトモデルの派生車ともいっていい存在で、このマグナナイトの最廉価モデルのインド国内での価格が59万9900ルピー(約112万円)というから、フロンクスより割安な価格設定となっている。
  インド以外には、インドネシアでもインド生産モデルが輸入販売されており、筆者はインドネシアのオートショーでたびたびマグナナイトの実車を見ているのだが、けっして安っぽさの目立つモデルではない。計器盤はWR-Vやフロンクスがアナログメーターなのに対し、全面液晶ディスプレイを採用し、最上級グレードではJBLオーディオシステムが選べるなど、意外なほど充実している。ちなみに搭載エンジンは1リッターターボとなっている。
  フロンクスやマグナナイトがインドから輸入され、日本で販売されるとすれば、「インド製コンパクトSUV三つ巴戦」といったことになり、自動車専門メディアも熱い視線を送ることになりそうである。
  ちなみにWR-Vは全長が4mをオーバーしているが、フロンクスとマグナナイトは4m以内に収まっている。インドでは全長が4m以内に収まると税制上の優遇を受けられることもあり、量販クラスとなっている。WR-Vとほか2車で価格に大きな違いがあるのは、微妙に車格が異なることも大きいようだ。
  マグナナイトは別としても、WR-Vが輸入販売され、フロンクスの国内導入が噂されるなど、インド製のコンパクトクロスオーバーSUVがなぜ注目されているのだろうか? WR-Vにはハイブリッドユニットはなく、フロンクスもマイルドハイブリッドのみと、日本ではストロングハイブリッドがないのではパンチが弱いようにも見える。
  ホンダディーラーでは、「ウチもロッキーやライズのようなクルマが扱えたらなあと思っていました」という話を聞いたことがある。
  直近ではダイハツのスキャンダルでしばらく生産停止や新規受注停止が続いていたライズ(ダイハツからのOEM車となる)だが、たとえば自販連(日本自動車販売協会連合会)統計による2022暦年(1月から12月)締め年間販売台数では8万3620台を販売し、登録車のみでの車名(通称名)別新車販売ランキングでは5位に入る人気モデルとなっている。
  他メーカーでは直接競合するモデルもほぼなく、とにかくよく売れているモデルなのである。5ナンバーサイズのクロスオーバーSUVスタイルを採用し、現行型は1.2リッターと1.2リッターベースのシリーズ式ハイブリッドユニットをラインアップ(ハイブリッドは本稿執筆時点ではまだ新規受注停止中)している。2019年にデビューしているが、2021年の一部改良まではハイブリッド車の設定はなかったものの、それでもデビュー直後からよく売れていた。
  つまり、「ロッキーやライズみたいなモデルが欲しい」というなか、トヨタ/ダイハツ以外のメーカーは、インドで生産されているサイズの小さい自社モデルに注目したようなのである。ロッキーやライズを見れば、いたずらにストロングハイブリッドを用意してコストアップになるよりは、ガソリンエンジンのみ(またはそれに近い)にして割安にしたほうが勝機ありとも考えているようである。
  価格設定をみると、ライズのガソリン車の価格帯は171万7000~204万9000円となっており、WR-Vと比較するとライズをかなり意識したものとなっているように見える。トヨタ系ディーラーで話を聞くと、一部改良により1リッターから1.2リッターにエンジン排気量が変更になったのは残念だとの話をよく聞く。「とくに一部改良まではFFの1リッターターボに根強い人気があったようです(改良後は4WDのみに設定)。一部改良直前にはちょっとした駆け込み需要もあったようですよ」とは事情通。
  フロンクスが仮に日本市場に導入され、しかも1リッターターボエンジンならば、いまどきCVTが当たり前のなか6速ATが組み合わされており、なかなか興味深いところでもあり、WR-Vやライズとは異なる個性で存在感を出せるかもしれない。
  ライズみたいなコンセプトのモデルが日本市場でいま「おいしい存在」となっている。国内専売モデルを開発するよりは、世界市場で日本でも売れそうなモデルを完成車輸入して国内導入するという流れが今後も目立ってくるのかもしれない。

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