月90時間が“半分以下”に──EDAHAシステムが実現した業務時間50%削減の裏側

2025.06.18 12:30
基幹システムとの連携によるDX化ー老舗洋菓子メーカーと挑んだ間接部門DXのリアルストーリー
 FAXや紙の帳票に依存した処理業務。多くの製造業が直面するこの“古くて新しい課題”に、果敢に挑んだ企業がある──それが、愛知県豊川市に本社を構える老舗洋菓子メーカー・香月堂だ。


同社が今回導入したのは、企業間取引における発注から納品、請求までを一元管理するクラウドサービス「EDAHA(エダハ)」。開発元は福岡発のスタートアップ・株式会社EDAHA(本社:福岡市中央区、代表取締役社長:黒瀬 啓介 以下「EDAHA」)。契約から請求、決済までをデジタルで完結する“商流一括型プラットフォーム”を掲げ、特許取得技術を武器に急成長を遂げている。


注目すべきは、香月堂が「自社の基幹システムとEDAHAを連携させる」という、製造業界では前例の少ない大胆な構成で導入に踏み切った点だ。この柔軟な発想と取り組みは、製造業における間接部門のDX推進に新たな選択肢を提示している。
本記事では、株式会社香月堂経営管理部の榑林雅貴氏と、EDAHA代表・黒瀬啓介氏の対談を通じて、クラウド活用の真価、連携の裏側、業務改革のリアルを深掘りする。

榑林 雅貴 氏(株式会社香月堂 経営管理部)黒瀬 啓介 氏(株式会社EDAHA 代表取締役)
1|出会いは展示会、直感した「これが理想のシステム」
榑林: EDAHAさんを知ったのは、大阪で開催された業界向けの展示会でした。実は当時、私たち香月堂では仕入先様との取引における納品書・請求書の処理に大きな課題を抱えていました。FAXで届いた書類を手作業で確認・処理・照合・保管しなければならず、月に90時間以上もの時間が間接業務に費やされていたんです。何とか改善できないかと模索していた中で、EDAHAさんのブースに立ち寄ったのが出会いの始まりでした。
実際に話を聞いてみて、「これはまさに自分が理想としていたシステムだ」と直感しました。他にも複数のクラウドサービスを見て回っていましたが、どこも一長一短で決め手に欠けていた中、EDAHAさんのブースで見たUIや仕組みは、まさに求めていた形だったんです。
黒瀬: ありがとうございます。展示会では、香月堂さんが非常に明確な課題意識を持ってブースにお越しくださったことが今でも印象に残っています。こちらがサービスの説明をするよりも前に、「こういう機能があったら」「この部分を標準化できないか」といった具体的なご相談をいただいて、すでに構想が練られていることが伝わってきました。
そこからすぐに打ち合わせの依頼もいただき、実際の業務フローや基幹システムの構造についても共有していただきました。香月堂さん側の準備の早さ、明確さは本当に印象的でした。


榑林: 当社では常に「時間がかかる業務は減らせないか」という視点を持っていたので、展示会の後すぐに社内でもEDAHAさんの話題になり、課題解決への期待値が非常に高かったです。
2|既存システムと“つなげるDX”──全体最適を見据えた開発連携
榑林:導入にあたり、大手を含め5〜6社検討しましたが、最終的にEDAHAさんに決めた理由は大きく2つあります。1つ目は、発注〜納品〜請求までの一連の業務を、1つのシステム内で完結できること。他社のサービスだと、「発注だけ」「納品書は出せない」「請求までつながらない」など、どうしても部分最適に留まってしまうところが多かったんです。
2点目は、当社の基幹システムと連携するためのプログラム開発をEDAHAさん側で柔軟に対応いただけた点です。単なるクラウドツールの提供にとどまらず、カスタマイズや連携まで踏み込んでもらえることが、決定打になりました。


黒瀬:我々としても、「全体最適を見据えたDX」を本気で実現しようとしている香月堂さんとご一緒できたことは、本当に光栄でした。初回の打ち合わせの時から、「基本的に人の手を介さない仕組みを構築したい」という強い意志を感じていて、EDAHAとしても“全力で応えたい”という気持ちでしたね。


——「基幹システムとEDAHAを連携させて使う」という構想は、いつごろから出てきたのでしょうか?
榑林:当社としては、もともとワークライフバランスを推進する中で、かねてより間接部門の業務効率化を図る必要があると感じていました。また、経理業務の標準化を進め、誰でも業務を引き継げる状態にしたいという思いもあり【基本的に人の手を介さない連携】という選択肢が必然的に出てきたという感じです。


黒瀬:システム連携の際は、EDIとの仕様調整や分納処理の定義づけなど、いくつか技術的なハードルもありましたが、香月堂さんが事前にしっかり条件を定義してくださっていたおかげで、プログラム開発も非常にスムーズでした。
3|“導入プロセス”の全貌──成功のカギは伴走型の進行管理
榑林:システム導入といっても、一度にすべてを変えるのは難しいですし、社内にも不安が広がってしまいます。だからこそ、私たちは段階を踏んで確実に進めていくことを意識しました。具体的には、以下のステップを踏んでいます。

システム検討・費用対効果確認
経営幹部 決裁取り仕入先説明会・参加意向アンケート社内システム概要説明会社内システム×EDAHAシステム連動仕様検討・EDAHA様プログラム開発仕入先初期登録フォローアップ説明会社内操作フォローアップ説明会直前案内・並行期間案内本格始動


黒瀬:プロセスがとても丁寧でしたよね。「こうやって合意形成をしていくんだ」と、我々も学ばせていただきました。導入を進める企業にとって、技術はもとより、実際に現場で使う方や関係部署メンバーの理解と協力が重要なんだと改めて実感しました。


榑林:説明会の後も、仕入先様へのアンケート実施やフォローアップなどを丁寧に重ねていったことで、社内での懸念の声なども特にあがりませんでした。少し時間はかかりましたが、スモールステップを繰り返すことで“社内外の納得感”を積み上げられたと思っています。
4|アナログからの脱却──現場が変わると、働き方も変わる
榑林: 実際に導入してみて、最も変わったのは「納品・受領の進捗管理」が圧倒的にスムーズになったことです。以前はFAXや紙の帳票を一枚ずつ確認しながら処理していたのですが、今ではすべての情報がシステム上で一元管理できています。


黒瀬: しかも、今回のプロジェクトでは「一括画面表示」や「インボイス対応の請求書機能」など、香月堂さん向けに開発した新機能も複数ありますよね。
榑林: はい。そうした機能が非常に役立っていますし、属人化していた業務も標準化され、若手スタッフでも業務をこなせるようになりました。私は経理や原価管理に加え、人事や採用活動にも関わっているのですが、こうした業務の効率化が副次的な効果として働き方改革や人材確保にもプラスに働いているという実感があります。チーム内でも「ミスが減った」「作業に追われなくなった」という声が多く、心理的な負担も大きく軽減できたと感じています。


黒瀬: 業務時間が月90時間から40時間まで削減されたという定量的な成果だけでなく、その裏側にある定性的な変化──つまり現場の働きやすさやモチベーションの向上こそが、DX成功の本質なんだと思います。


榑林: まさにその通りです。人材確保が難しい時代において、業務の標準化は“人的資本戦略”のひとつ。システム導入を通じて、企業の土台そのものを強くしていく必要があると感じています。
5|次は「物流DX」へ、広がる業務改革の輪
黒瀬: 間接部門での成功体験が社内に蓄積されると、「じゃあ他の部門でも」という展開が自然と起きてきますよね。


榑林: まさに今、物流部門にもDXを広げようとしているところです。今までは「属人的に対応するのが当たり前」だったような工程──例えば、得意先ごとの相殺処理や帳票のルールが違うことによるミスなど、複雑な作業にこそテコ入れしたいと考えています。


黒瀬: 物流って、本来は「データと現場の同期」が取れているべき領域なので、そこが最適化されると一気に変わりますよね。


榑林: 実際、今ではすでにEDAHAを全部署に展開できており、仕入先についても定期支払があるところには9割以上導入済みです。今後も新しい取引先が増えるたびに、順次EDAHAに展開していく予定です。
6|他社に先駆けて“変われた”理由とは?
黒瀬: ここまで踏み込んだ業務改革を進められたのは、本当に素晴らしいことだと思います。他社に比べて、一歩抜きん出た変化ができた背景には何があると思われますか?


榑林: やはり「思考を止めないこと」だと思います。最初は難しそうだと放置してしまっていたんですが、現場の課題は積み重なる一方で「このままでいいのか」と自問自答を繰り返す中で、やはり何かを変えなければいけないという危機感があったんです。
黒瀬:その危機感を、実際に展示会での出会いから、導入という具体的なアクションにつなげられたというのが、香月堂さんのすごいところですよね。


榑林:ありがとうございます。あとは「社内の信頼関係」も大きかったと思います。経理や仕入先様はもちろん、物流、情報システム、製造、開発など、複数の部門が関わるプロジェクトだったので、全員が「業務をよくしたい」という想いを共有できていたことが大きかった。関係者が一丸となって取り組めたことが、前例の少ないチャレンジを実現できた理由だと思います。
7|製造業×デジタル──10年後のあるべき姿とは?
榑林: 人手不足が今後ますます深刻化する中で、業務の標準化や自動化は避けて通れないテーマになると思います。企業として持続的に成長していくためには、「人がやらなくていいことはシステムに任せる」という視点が必要不可欠です。


黒瀬: その通りですね。EDAHAとしても、単にシステムを開発・提供するだけでなく、「どうすれば人がもっと創造的な仕事に時間を使えるようになるか」という問いを常に大事にしています。


榑林: 10年後の理想を描くなら、「ミスが起きにくく、誰でもすぐに業務を引き継ぐことができる環境」。つまり、業務の可視化・仕組み化が当たり前になっている状態ですね。人材が流動化する時代だからこそ、属人化をなくすことが企業の生命線になると思います。


黒瀬: まさに「企業の競争力=どれだけ現場が進化できるか」ですよね。今回のような事例を通じて、業界全体の変化を後押しできたら嬉しいです。
8|「変えたい」と思ったときがチャンス──まずは一歩踏み出す勇気を
榑林: 最初は「仕入先も全部署も巻き込んだ改革なんて無理だろう」と思って、正直手をつけられずにいました。でも、今はサービスもテクノロジーも日々進化していますし、何よりEDAHAさんのように柔軟に寄り添ってくれる企業も存在します。「まだ形になっていない悩みでも相談してみる」。その一歩が改革の起点になるかもしれません。日々の業務でモヤモヤを感じている方こそ、ぜひEDAHAさんのような存在を頼ってみてください。


黒瀬: 本日はありがとうございました。香月堂さんのような企業とともに、これからの日本の製造業を支えるDXを広げていければと思っています。
(本記事は、2025年6月に取材・公開されたものです。)
EDAHA創業までの歩み
広島大学で環境工学を専攻し、2009年に博士号を取得した代表黒瀬は、福岡に戻ったのち、北九州市に本社を置く環境系ITベンチャー企業を創業。廃棄物管理システムの開発に従事しました。クライアント企業の多くが紙ベースでアナログに業務管理している状況を目の当たりにし、こうした現状を自らの手で改善していきたいという想いのもと、2021年7月に同志を持つ3社で株式会社EDAHAを設立。2024年には、「福岡市トライアル優良商品認定事業」において、取引支援システムが優良商品として認定されました。
2027年の株式上場に向け、各企業と連携してシステムの導入を進めています。
代表プロフィール
黒瀬 啓介(くろせ・けいすけ)1979年福岡県生まれ。広島大学在学中に環境工学を専攻し、2009年博士号を取得。2010年に北九州市で知人と共に廃棄物管理に特化した業務用の管理システムを開発した「株式会社グリーナー」を創業。2021年に新たな取り組みとして「株式会社EDAHA」を設立。現在までに5つの環境やシステムの特許を取得しており、EDAHAでは主にシステム開発を担当している。
企業概要
会社名 :株式会社EDAHA
設立  :2021年7月
代表者 :黒瀬 啓介
事業内容:企業間取引のマッチングプラットフォームの開発・提供
所在地 :〒810-0004 福岡県福岡市中央区渡辺通5-10-18 ibb Bloom Tenjin 206
電話番号:092-518-1403
HP    :
パートナー企業
株式会社グリーナー       (

アイユーコンサルティンググループ(

株式会社Re-Birth         (









<本件に関するお問い合わせ>
担当 赤時(あかじ)
090-8451-7520
akajim@taxlawyer328.com

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