[女性管理職対談] 海外出身の女性部長・副部長が語る、通信インフラ業界での挑戦と成長の軌跡

2025.03.12 11:53
京セラコミュニケーションシステム(KCCS)は、女性従業員の活躍を推進するためにさまざまな取り組みを行っています。その中でも特に力を入れているのが女性管理職比率の向上です。


厚生労働省の調査によると、企業の課長相当職以上の女性管理職比率は12.7%(※1)です。部長相当職となるとその数はさらに減り、業界や業種を問わず、多くの企業が女性管理職比率の向上に課題を抱えています。


特に、携帯電話の通信基地局(移動体基地局)の設計・施工、運用・保守などの通信インフラ関連事業は、一般的に男性中心というイメージを持たれていますが、KCCSでは課長や部長として活躍する女性が増えています。
今回は、海外出身の女性で部長・副部長を務める孫と金に、キャリアの歩みやKCCSの環境について話を聞きました。


※1 出典:厚生労働省「令和5年度雇用均等基本調査」
部長の孫(左)と副部長の金(右)
■異国でキャリアを築く——二人の選択と挑戦
孫:最初に出会ったのは、金さんがKCCSに入社したときでしたよね。


金:そうですね。「同じ韓国出身で、活躍しているすごい女性がいるよ」と上司から紹介してもらいました。オフィスが違うので普段はなかなか会えませんが、お名前はいろいろな所でお聞きしています。


孫:一時期は同じ案件にも参加していましたね。あらためてお尋ねしますが、金さんはなぜ日本の企業、それもKCCSに入社したのでしょう?


金:私は結婚を機に来日しました。来日から1年ほどは専業主婦だったのですが、自分の世界がすごく狭まっているように感じていました。日本に住むなら、きちんと日本の社会に関わっていこうと思ったんです。でないと、いつまでも異邦人の感覚が抜けない気もしていて。まずは派遣社員からはじめてみようと登録して、働き始めたのがKCCSでした。


孫:私と似ていますね!
私も結婚がきっかけで、2005年に来日しました。韓国ではずっと仕事をしていたので、日本でも仕事を続けたいと考えていました。以前は半導体業界に勤めていましたが、当時、別の事業部で扱っていた移動体通信分野に興味を持っていました。日本で仕事を探していたところ、縁あってKCCSに入社しました。最初は契約社員としてスタートし、その後、正社員としてのキャリアを開始しました。
■営業とロジスティクス、それぞれの強みを生かした道へ
金:当時はどんな業務を担当していましたか?


孫:営業部門で無線機のベンダー様を担当していました。通信設備って韓国の企業も強いので、韓国ベンダーの担当営業として私の強み、韓国語が活かされました。


金:母国語を武器に!


孫:営業として関わる領域はすごく広かったですね。現在は大手通信キャリア様向けに、エリアシミュレーションをベースにした移動体基地局の置局設計・施工、運用・保守をワンストップで提供する通信エンジニアリングサービスの営業を担当しています。さまざまな部署と連携しながら、移動体基地局の建設工事や無線機の設置、運用開始後の基地局点検、障害対応や災害時の復旧作業などの現場業務に参加して全体の進捗をおさえています。


金:私の業務内容とは違う世界で興味深いです。私は移動体基地局などの建設部材・機器の入出荷・保管・配送を管理する物流管理を中心に担当しています。業務内容は大きく分けて、部材の保管や荷役作業を行う倉庫業務と、それを把握してまとめる物流管理業務の二つがあります。私が担当しているのは後者。主に物流管理の新規立ち上げや、業務改善の「仕組み」作りを担当しています。私たちの部門は、業務で必要となる管理・運用システムを自部門で企画・設計・開発し、物流プラットフォームとしてサービス提供できることが強みです。


孫:「新規案件には、必ず金さんに参加してもらう」そんな風に聞いていますよ!物流管理の中には、仕組み化も含まれるし、現場で使うシステム開発も含まれる。とにかく考えて動かないといけない。そんな状況でも金さんはスピード感があると評判です。たくさんの人が信頼を寄せています。
■不安とプレッシャーを乗り越えて、管理職のあり方を模索中
孫:入社後のキャリアパスはどうでしたか?


金:私の場合は派遣社員から正社員になって、その後、係責任者に。あとは副課長、課長とステップを踏み、いまのポジションです。派遣社員の期間が長かったので、正社員としての在籍は6年ほどですね。


孫:短期間で一気にステップアップしていったイメージですね。副部長になった経緯は?


金:大手企業の物流センターを立ち上げる案件がきっかけです。それまで「課」だったセクションが「部」として独立することになりました。その流れで私もポジションが変更になって。


孫:おおまかなステップは私も一緒。部署の規模やステップアップにかかった期間の違いはあるのかな。私の場合は社員から課長になり、副部長になったのは2022年。そこから上司のお声がけがあって、部長になりました。


金:そのときの気持ちはどうでした?


孫:「任せてもらえるならやります」という気持ち。でも業務内容の変更や客先が一気に変わったため、私にできるのだろうかと少し不安もありました。金さんは管理職への登用を聞いたとき、どう思いました?


金:不安が大きかったです。「やった!」とか「うれしい!」よりも不安が先に。実は人前に立つのがあまり得意ではないんです。できれば後ろでサポートしたい方で。ですが管理職は前に出て発言する場やシーンがたくさんあるので……。


孫:その点が一番プレッシャーに?


金:言葉もプレッシャーのひとつでした。私からすれば外国語で、たくさんの人とコミュニケーションをとらないといけない。うまく話せるか、適切な言葉を使って表現できるか不安に思っていました。


孫:副部長になってからの約1年を振り返ってみるとどうですか?最初に感じた不安は乗り越えましたか?


金:実はまだ乗り越えている途中で……。やるしかない、頑張るぞ!と自分を励ましながら日々業務に取り組んでいます。日本語でのコミュニケーションは、周りに助けてもらって乗り越えつつあります。私がミーティングや発表の場で詰まると、上司も部下もすぐにサポートしてくれるんですよ。皆さんにあたたかく見守っていただいています。


孫:私もマネジメントは、道半ばかもしれません。自分の考えだけでなく、上司や部下の視点も取り入れた「完成形」を明確に描けていないと思っています。


金:同じくです。副部長に就いた当時は実務優先で忙しく過ごしていたのですが、最近は自分の役割を考えることも増えました。「部長・副部長って何をする人なんだろう」と。


孫:本質的な役割の部分は悩ましいですよね。マネジメント役は自分が動いて結果を出せばいい、というわけにはいかなくて。マインドも視点もプレーヤーに求められるものとはまったく違う。結果を出すのは私ではなくてチーム。成長する主役は私ではなくて部下。部下を成長させて一緒に喜んで、さらに自分も成長しないといけないと最近は思っています。とは言え、行動に落とし込むのは難しいんですけどね。


金:すてきなヒントをありがとうございます。マネジメントのやりがいや面白さを見つけて、もっとパワーアップします!
■仕事とプライベート、メリハリ派と一体派のオン・オフ切り替え術
孫:仕事とプライベート、金さんはバランスを意識していますか?


金:新規案件などで立て込む期間は、どうしても仕事とプライベートのバランスが取れないので、そのときは仕事に集中します。それが無事に終わったら、プライベートを最優先しています。


孫:どちらかに期間単位で集中するイメージですか?


金:そうですね、オンとオフをはっきりさせて意識的にメリハリをつけています。そうすると気持ちの切り替えもうまくいくんです。


孫:私とは正反対かも。私は仕事・プライベートと二つの軸で分けて捉えてはいなくて。「仕事をしなくてはいけない」というより「仕事がしたい」が強いのでしょうね。仕事で人に会えば、その人から学びを得られるし、一人では開拓できない世界にも行ける。そのどれもが「私」をつくる要素になっているので、切り分けられないと思っています。


金:なるほど、仕事とプライベートを区切ってはいないのですね。


孫:娘には少しさみしい思いをさせているかもしれません。それでもいつか「ママが仕事を頑張っていたのは、きっと楽しかったからだろうな」と彼女が分かってくれたら。私の姿から仕事との付き合い方を見いだしてくれたらうれしいですね。


金:すてきな思いです。孫さんは仕事での「マイルール」はありますか?


孫:「完璧を求めず、できることをしっかりやる」
完璧を追求したら、何もかもできなくなりそうで。こだわりはじめたら全部こだわってしまって、ストレスを感じると思います。金さんはどうですか?


金:話が重複してしまうのですが、オンとオフの切り替えですね。スマホで動画を見たり、ゲームをしたりして仕事から気持ちをそらします。そうしないと1日の出来事を最初から最後まで、頭の中で繰り返してしまうんです。「朝の会議ではうまく話せなかったな」とか反省つきで。


孫:それは大変!1日の反省会をずっと脳内で開催しているわけでしょう?


金:そうなんです。ひどいときには夢の中でも仕事をしていて、起きるとやたら疲れている日も(苦笑)。なので、1日単位で必ず仕事モードをリセットしています。


孫:私は職場から離れると自動でオフになるタイプ……私たちの違いはマイルールにも表れていますね。
■働きやすい環境が整った職場、でも一番の魅力は「人」にあり
金:KCCSではCOCOLOR(ココカラ)プロジェクトなど、女性活躍推進に向けた活動を行っています。管理職候補の女性従業員に向けた支援プログラムや、育児中の従業員の出社ルール緩和でより働きやすくなったのではと思います。


孫:会社からのバックアップはありがたいですね。私自身、産休・育休を経験していてプロジェクト発足前からKCCSの働きやすさは感じていました。当時も妊娠中は出勤時間をシフト勤務に変更してもらえましたし、復帰してからは保育園の送迎時間も考慮していただきました。本当にありがたかったです。


金:それぞれの事情にあわせて働けるのはうれしいですね。ちなみに「こんなのあったらいいな」と思う制度はありますか?私は「サバティカル休暇」です。1カ月から数カ月、長いと年単位でお休みできる休暇で。


孫:確かにあったらうれしい制度。リフレッシュや長期の旅行もできそうです。期間や取得できるルールを決めて運用したら、実際にお休みをとる人もいるはず。


金:子育て中の従業員向けの制度が充実してきたので、年齢や家族の有無に関係なく使える制度も増えたらいいなと思います。メンバー全員が利用できる制度とか休暇とか。さらに働きやすくなったら、ますますうれしいですよね。


孫:働きやすい環境はうれしいですね。例えば新宿事業所は駅から近いし、内装もおしゃれで、私もそこで働きたかったくらい。2023年に新設した東京オフィスも本当にきれいで快適。でも一番の魅力はやっぱり「人」だと思います。


金:私も「人」だと思います!オフィスの立地やおしゃれさの魅力はもちろんありますが、一番に挙げたいのは職場の仲間。私にとっては職場の仲間が家族のような存在です。1日の大半を一緒に過ごして、楽しく仕事をさせてもらっています。おかげでさみしさを感じる日はありません。関わる皆さんに心から感謝しています。
■悩みを成長の糧に——ポジティブな思考でチャレンジする
孫:働く中で自分のキャリアや判断に迷ったり、人と比べてしまったり、不安を感じるときはありませんか?そんなとき金さんはどうしていますか?


金:私はいまだにいろんなことで悩みます。でもいくら悩んでも結論は「やらずに後悔するよりは、やって後悔した方がいい」。周りと比べていたらキリがないし、自分より優れている人はたくさんいる。ネガティブに考え出すと、思考はどんどん悪い方へ向かいがちです。それを止めるために考え方を変換するのがポイントだと思います。「私はもっといい〇〇になる」とか「もっと仕事の範囲を広げていける」とか、自分に言い聞かせるんです。なりたい自分をポジティブに想像して、それならどう行動すべきか?を考えていくと、自然と前向きになる気がしています。


孫:理想の姿を具体的にイメージするのは、すごくいい方法ですね!以前に聞いた話だと、人間って杞憂の時間がとにかく長いらしいんですよ。つまりは悩んだ時間が長いし多い。それは動物的本能で、敵の襲来に備えてもしものときにはすぐに逃げられるように、と脳に刻まれているそうです。だから悩むのはしょうがない、当たり前だという話も聞いていて。それであれば心配をひとつずつ排除していくしかないかなと思っています。


金:悩みや心配をつぶしていくイメージですか?


孫:悩みもあえて悩みだと思わないようにしています。問題や課題に対し、今できる何かや行動すべき何かがあると捉えるんです。あとは金さんも言っていたとおり、とにかく自分を信じてポジティブに。うまくいかなくても別に構わない。だめだったから成長する。そう信じて物事に向き合います。たくさんチャレンジして、しっかりフィードバックを受け止めていけば、以前よりも前に進んでいるはずです。


金:悩みだと捉えないのはポジティブな変換ですね。決してうまくいかなくてもいい。失敗しても大丈夫。そんな考え方も挑戦を後押ししてくれそうです。


孫:言葉にすると「失敗」なんでしょうけど、そもそも失敗なのかなって。恥でも何でもないですし、そう思い込んでいるだけで、実際には取るに足りない話かもしれない。確かに許されない失敗や過ちはあるかもしれません。けれど少しでも前に進もうとしていたのなら、たとえうまくいかなくてもそれは失敗ではないでしょう。頑張っている途中に起こったハプニングです。


金:そう思うと失敗なんてないのかもしれませんね。すばらしい考え方と言葉に、私も勇気をもらえました!
取材時期:2025年2月
掲載されている内容は発表日現在の情報です

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