水がなくてもオーラルケアを誰でも手軽に。創業96年、オーラルケア製品を展開するヤマトエスロンの「無水ハミガキ」誕生秘話

ヤマトエスロン株式会社は大阪府八尾市にある会社で、歯ブラシや歯間ブラシなどオーラルケア製品を中心としたプラスチック製品を製造・販売しています。特に歯ブラシにおいては、創業から９5年以上にわたって蓄積された植毛技術で、他社には真似出来ない製品の開発・生産を行っており、日本国内だけでなく、グローバルに製品を提供しています。人々の健康と暮らしに貢献できる製品を幅広く取り扱う中、災害時でも日常と同じようにオーラルケアができる商品「無水ハミガキ」を開発、2023年3月11日に発売しました。

このストーリーでは「無水ハミガキ」が企画～商品化されるまでの経緯を振り返ります。

（写真：代表取締役社長　松永貴至）

商品開発のきっかけはボランティア活動に取り組む中でNPO法人プラスアーツの永田様と出会ったことから始まります。ボランティア活動をする中で、被災地や避難所では水が大変貴重で、口をゆすいだり、歯ブラシを洗ったりするために水を使うことが難しく、満足なオーラルケアができない状況を知り、さらにはオーラルケアが不十分のままだと高齢者の方は被災後に肺炎等で亡くなってしまう方も多いということを教えていただきました。実際、地元関西の阪神淡路大震災においても災害関連死のトップが誤嚥性肺炎という事実を知りました。私たちでこの状況を変えたいと強く思いました。
そこで私は「水が貴重な被災地において、水を使わないオーラルケアセットを開発すれば、災害で助かった命が救えるのではないか？」と考え、水を使わなくてもオーラルケアができるセットの商品開発がスタートしました。

水が使えなくてもオーラルケアが十分にできるためにセットの中に何を入れるかとても悩みました。まずは携帯ケースのサイズから考えてみようということで、市販されている様々なトラベルセットを購入し、携帯ケースの比較検討を行いました。持ち運びやすく、防災バッグの隙間にちょうど入るようなサイズ感ということで今の無水ハミガキのサイズとなりました。

携帯ケースのサイズが決まったところで、次はケースにアイテムを色々詰めてどの組み合わせがよいか検討しました。当初、「洗口液を入れる方が良いのでは？」という意見が社内でも挙がりましたが、洗口液は飲み込むことができず、吐き場所に困ることがわかりました。相談した歯科医様の意見としては、歯の清掃は歯ブラシやフロスを使った物理的除去をした方が良いとのことでしたので、洗口液は入れずに、歯ブラシとそれに付随する清掃具を何にするか検討することにしました。


歯ブラシだけではお口の中を6割程度しかきれいにできないため、歯と歯の間の汚れを取れ、操作がしやすい柄付きフロスを入れることにしました。

ただ、歯ブラシとフロスだけではお口の中が少し気持ち悪く、爽快感が足りない状態でした。ハミガキ粉や洗口液がない状態で口をゆすがなくてもお口の中をスッキリさせるアイデアを考えていたところ、仕上げにハミガキシートを使うと、お口の中の残った汚れを取りながらスッキリさせることができました。

このように色々と試行錯誤を重ねていった結果、柄付きフロスとハミガキシートを選定しました。

当社は歯ブラシの開発には自信をもっており、歯ブラシについては水洗いができないため、使い捨て想定かつ防災リュックの中に追加してもらうためには大きなスペースも使えないので、通常のハブラシの半分以下のサイズにしています。ただ、通常の歯ブラシよりも短くなっていますが、歯科医師の足立先生、関根先生に監修いただき、大人の奥歯まで清掃できる長さに設計されています。また、一般的な植毛配列は３列が多いですが、無水ハブラシでは２列にしており、ヘッドの幅も狭くなっています。こうすることで、歯ブラシで余計なスペースを作らず、製品をコンパクトにすることができており、また重量も通常品の３分の１程度と極限まで軽くすることにこだわりました。さらには、使い捨てを想定しているので、100％石油由来のプラスチックではなく環境を配慮したプラスチック原料を一部使用しています。プラスチックの原料選定にもこだわり、度重なる試作を経て、コンパクトですがきっちり磨くことができる歯ブラシが完成しました。

リーフレットの内容については、どういった内容であれば皆様に読んでもらえるか？オーラルケアの大切さを伝えるためにはどういった内容を盛り込めばよいか？とても悩みました。特に、災害時だけでなく、日常でも楽しく勉強できるような内容にしたいと考えていました。一番大事にしたことは、文字の情報量を極力減らし、イラストを多く使い、子供からお年寄りの方まで楽しく読んでいただけるようにつくっていきました。必要な情報を書き出し、「この表現がわかりやすいのでは？」「これは削除した方が良いのでは？」と当社の開発メンバーと毎日協議していました。
今回、フロスやハミガキシートをセット内容に加えていますが、「使用方法についてわからない方が多いのでは？」という考えのもと、オーラルケアセットの正しい使い方やオーラルケアの豆知識も盛り込めばいつでも楽しく使用できると考えました。デザイナーの寄藤様・コピーライターの岡本様と打ち合わせを重ね、読者の方に伝わりやすい文章の構成とデザインを作っていただき、素晴らしいリーフレットが完成しました。

開発から１年の歳月を経て、災害時に使用できるオーラルケアセットが完成しました。開発当時は「防災オーラルケアセット」という名前を考えていましたが、岡本様から「水が使えない環境でも場所を選ばず使えるハミガキセットなんだから、『無水ハミガキ』にしよう」と、素晴らしい商品名を付けていただき、無水ハミガキが誕生しました。

無水ハミガキにはハブラシ・フロス・ハミガキシートが入っており、屋外など水が使えない環境でもお口の健康を保つことができます。

無水ハブラシは全長10cmとコンパクトながら、持ち手のおしり部分にふくらみをもたせることで親指と人差し指の２本で操作しやすくしており、 奥歯に届く一番短い長さを考えて設計しています。水の無い環境では使い捨て、水が使用出来る場合は通常の歯ブラシ同様洗って繰り返し使用する事も可能です。

ハブラシとフロスを合わせて使用する事で、ハブラシだけでは落としきれない歯と歯のすき間の汚れもしっかりと除去することができます。

お口を水でゆすぐ代わりにハミガキシートで汚れをふき取ります。ハミガキシートにはキシリトールが入っていますので、お口の中がスッキリします。また、頬の内側や歯茎をマッサージする事で血流や唾液の分泌を促進する事が出来ます。

総ページ16p(※表裏表紙含む)のリーフレットで、ハブラシ・フロス・ハミガキシートの使い方の他に、歯みがきが出来ない事でどんなリスクがあるかについて、子供からお年寄りまで楽しく学べるイラストと分かりやすい文章でお伝えしています。

発売開始から2年が経ち、「こんなセットがほしかった」「誤嚥性肺炎のことは知らなかった」など無水ハミガキをたくさんの方にご使用いただき大変嬉しく思います。全身の健康を保つためには、まず玄関口であるお口をきれいにしておくことがとても重要です。今後、無水ハミガキが防災セットの必需品として幅広く普及し、災害などの非常時においても多くの方々のお口の健康、体の健康を守ることに貢献できれば幸いです。また、無水ハミガキがオーラルケアの大切さを知ってもらう「きっかけ」となり、日常・非常時問わず、正しく楽しくハミガキをしてもらうことを私たちは願っています。

皆様の健口(健康、健幸)を守るため、私たちはこれからも皆様にとってより良い製品を作り続けていきます。

ヤマトエスロン株式会社

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