【今こそ創業ノウハウの蓄積を!】自治体が力を合わせ、創業前支援が当たり前になるアントレプレナー大国の未来を目指して

2024.11.07 09:00
全国の地域で活発化する「創業支援」。一方で「創業前支援」という言葉をご存じでしょうか?今回のSTORYでは、創業への関心を高めるための取り組み「創業前支援」にスポットを当て、これからの日本が創業機運を醸成するために必要なことについて紐解きます。


中小機構 創業・ベンチャー支援部にて創業前支援に取り組んでいる野﨑 知史さんをお迎えし、マホラ・クリエイティブ株式会社代表の櫻井との対談にて、これまでの活動で感じたことや創業前支援の本質についてお話を伺いました。


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〈対談者プロフィール〉
写真右:
野﨑 知史
独立行政法人中小機構基盤整備機構 創業・ベンチャー支援部 創業・ベンチャー支援企画課 課長代理
同志社大学商学部卒業
中小企業診断士
2011年~新卒で地域金融機関にて勤務、2021年~大学の研究支援・社会連携センターでコーディネーターとして勤務した後、2022年8月 中小機構に入構。中小機構では創業・ベンチャー支援部に配属となり、主に高校生に対する起業家教育や、自治体の創業前支援のサポートを行う。


写真左:
櫻井 亮
MAHO-LA CREATIVE株式会社 代表取締役/中小機構 地域支援アドバイザー/東京デザイン専門職大学 講師
組織変革の専門家、学びと実践に徹底集中をする学習ファシリテーター。
全国の中高大学にて「情報デザイン」や「問いを立てる」ワークに関する講義を多数実施。「実践学習で日本と若者の未来を描く」想いのもと2011年から2017年まで学生団体の支援、社会問題解決イベントを開催。2023年開学の専門職大学講師に着任。2023年に若者支援事業を行う別事業を設立し現在人生で7つ目の法人化を準備中。
起業について知ることで広がる高校生の未来
ーこれまで行ってきた創業前支援の数について教えてください。




野﨑:中小機構として支援を行ってきた創業前支援数は2023年度は起業家教育60件、自治体に対する創業機運醸成イベント開催支援52件、2024年度は現時点(※2024年9月時点)で起業家教育70件、自治体に対する創業機運醸成イベント開催支援31件です。
そのうち櫻井さんに講師をお願いをして一緒に支援を行ったのは59件です。
▲中小機構×マホラ・クリエイティブとしての活動実績
ー多くの地域の創業前支援をサポートしてきた中で、特に野﨑さんが印象に残っている地域はありますか?




野﨑:そうですね。近畿の高専で講義をした際、講義の後に学生たちと交流する時間があったのですが、「あまりよく知らなかったけど、今回の授業を聞いて起業するのもアリだなと思いました」と話してくれた生徒がいて、実際に授業を通してそのように感じてくれたことが嬉しくてとても印象に残っていますね。学生だと起業という言葉自体を知らない子も多いので、学生たちに起業について伝える価値を改めて感じました。
▲近畿の高専での講義の様子


櫻井:研究室に招待してもらって学生たちが作った作品を見させてもらいながら、「これをビジネスにするとこういう可能性が広がって、お金が回って、もっと楽しい世界が広がるかもしれないね」という話もしましたよね。その高専さんだけでなく、いくつもの高校で「実は…」といって静かに宣言してくれたり名刺をもらっていってくれた子も少なくないですよ。そして、実は、先生からも「副業してみたくて…」なんて相談も受けることもあります。




ー櫻井さんは地域行脚をする中で印象に残っていることはありますか?




櫻井:全員の目を見ながら授業をするようにしているのですが、数十人単位で授業をすると、1人か2人は本当に目が輝いてくる学生さんがいるんです。私が講義するのはたった1、2時間なのですが、この短い授業がこれからの人生においての新たな出会いを生んだり、学習の仕方が変わるきっかけになっていたらいいなと思っています。


私が講義をしたあと、探究学習の中で先生が引き継いで起業家教育をしてくださることがあるのですが、私が相談用として公開しているLINEやInstagramに生徒たちから「今授業で考えていることの続きで相談に乗ってほしい」というメッセージがくることが多々あります。生徒たちが起業について興味を持ち、その後も自ら積極的に考えてくれている様子が分かるのは嬉しいですね。
自治体が感じる創業前支援のハードルとは
ー教育機関や自治体が創業前支援を導入する難しさについて教えてください。




野﨑:「創業支援」そのものについては各自治体でも活発化してきましたが、まだまだ私たちが行っている「創業前支援」の重要性は充分に認識をしていただけていないのではないかという課題があります。というのも、創業前支援に力を入れたからといって、すぐに起業家が生まれるわけではなく、効果も分かりづらいために予算やリソースが確保できない自治体が多いというのが実情と言えます。


私たちが支援をする場合は、基本的に中小機構が費用を一部負担するので、連携させていただければ皆さまが想像している以上に費用を抑えられる可能性もありますし、実際に支援している自治体では費用面で導入しやすいといった声をたくさんいただきます。


しかし、自治体自体で予算がつかないということは、そもそもお金の問題以前に、創業前支援という活動に対して今は時間や労力を割く体制ができていないということでもあるのです。これは、自治体がそういう意思表示をしているということよりも、単に認知がなく知らない、その重要性を理解する機会が足りていないということかもしれません。




ー創業前支援の重要性が伝わっていないという課題があるのですね。




櫻井:担当の方が実際に創業前支援の重要性を理解していて、そういう施策をやりたいと思っても、「そこに力を入れるなら、目の前の創業している人をもっとサポートした方が意味があるんじゃないのか?」と言われてしまうと、正直、結果を求められる短期の活動では、太刀打ちできないんですよね。


できれば、本当は創業支援の資源を再配分し、3分の1から半分ぐらいを創業前支援に充てていただけるとありがたいのですが…。




野﨑:あとは自治体からの依頼を受けて創業セミナーや創業支援を実際に行っている商工会議所・商工会などに一緒に創業前支援についての取り組みを考えてもらい、創業支援の中に創業前支援を組み込んでもらうということも一つの方法としてできると良いなと思っています。実際にそういった形で連携してくれている支援機関もいくつかあります。




櫻井:まさに私がマホラ・クリエイティブとして長年訴えている「意識改革」が必要だと思うのです。お金の使い方やコンテンツをいくら他を真似て刷新しても、実践する側と支援する側の意識が変わらないと、本質的にはものごとを変えることができないと考えています。


自治体が創業前支援に投資をするという意識と覚悟があれば、数年間の取り組みをじっくりと実践して効果が期待できる活動も増えてくると思っています。本質的に創業前支援の大切さを広めていかないといけないですよね。
一方、そのためには創業前支援の効果を見える化することが大事な気がします。
野﨑:仰る通り、私たちも効果を見える化することが肝だと思っていて、現在無関心層が創業準備者層に移行する人数の測定方法も検討できればと考えています。


例えば「活動をし始める前から創業準備者層が3倍になりました」ということが言えれば説得力のある効果の見える化になると思います。




ー日本人は創業準備者層から創業する割合がとても高いというお話がありましたから、創業準備者層が増えるということは創業する人も必然と増えるということが言えそうですね。




櫻井:先程少しお話に出ましたが、創業前支援を地域で盤石にするには「支援者の支援の仕方」ももっと活性化する必要があると思っています。自治体は管轄を担いながらも直接コンテンツを提供するのは支援機関なので、直接支援をする人たちがどのように支援を行ったら良いのかをアップデートして、時代にあった支援の仕方を模索していくことがとても大事だと言えます。


支援機関の意識変容や良いことを展開するようなゆるやかな連携をどのようにしたらいいのか分からないという声もよく聞くので、ぜひ、弊社にもお声がけいただければ嬉しいですね。支援機関への支援、という支援体制ももっと増えるといいなと思っています。
地域を越えて創業前支援のノウハウを蓄積する
ー創業前支援が既にうまくいっている地域の特徴はありますか?




野﨑:宇治や仙台、熊本、別府などは創業前支援に力を入れている地域ですが、共通点としては創業前支援の必要性を十分に理解し、それを地域の中で認めてもらえるように努力しているキーマンとなる実践者がいることでしょうか。キーマンを中心に創業前支援の認知度が広がっているように思います。




櫻井:うまくいっているところはキーマンの方が、地域で創業している人、創業しようとしている人をだいたいみんな知っていて、彼らもそのキーマンを知っているような顔の広い名物おじさん、おねえさま、みたいになっていることも多々あります。


ただ、キーマンといっても役職でやっている場合、2〜3年で対応する担当が変わってしまうということも少なくないのがもったいないですよね…。例えキーマンが数年で頑張って創業前支援の熱量が高まったとしても、異動で別の担当になってしまったときに、その熱が残るかどうかは、次の担当者次第となってしまいます。良くも悪くも創業支援・創業前支援は属人的なことがまだまだ多いなと感じます。良いものは残すべきだと感じます。


自治体の中で次につないでいく以前に、各自治体の熱量の高い人たちをつないでいき、枠を超えたネットワークを作っていくことが求められる時期であり、垣根を越えて日本全体でノウハウを蓄積させていくことが大切なのかなと思っています。




野﨑:自治体を越えてノウハウを蓄積していくという点に関しては、昨年京都府宇治市の産業交流拠点「うじらぼ」のご担当者
など各自治体のキーマンの方に登壇いただき、どのように創業前支援を地域で行っているか等をテーマに話していただく初のイベントを試みました。櫻井さんにもファシリテーターを務めていただきましたね。


初めての取り組みだったので、どんな反応が来るのか、人が集まるのかかなりドキドキしましたが、結果的に全国の自治体担当者約300名が参加してくださいました。複数の方にリモートで参加してくださったので、実際は300名より多い方たちがつながったかもしれません。
▲創業前支援のイベントの様子


その他、良いノウハウを蓄積できるよう各自治体の支援事例をまとめた事例集も作っています。
〈自治体の創業支援事例集〉
櫻井:イベント参加者の人数からも、創業前支援は大事だということが段々皆さんの中で顕在化されてきた気がしますよね。さらにその参加者の背後には何倍もの担当者さんたちや支援機関の皆さまがいるので、潜在的には何千人という人たちが注目していたのではないかなと思います。




ー創業前支援について悩んでいる自治体が中小機構に支援を依頼するにはどうしたら良いのでしょうか?




野﨑:まずどんなことでもいいので私たちに相談してほしいと思います。問い合わせすること自体にハードルを感じていて、まだ準備段階だから相談できるレベルじゃないと思ってらっしゃる自治体も多いのですが、フェーズ問わず「何か一緒にできないですか?」というざっくりなお悩みでも大歓迎ですのでまずは創業・ベンチャー支援部に問い合わせしていただければと思います。


私たちが支援させていただく他にも、うまく取り組んでいる自治体のケースをお伝えしたり、ロールモデルとなるような他の自治体のキーマンの方をおつなぎすることもできます。私たちができることは全力でサポートさせていただきます。




櫻井:もしこの記事を見て自分達の課題と重なる部分があればまずは野﨑さんにとにかくコンタクトしてほしいです。


もちろん、マホラ・クリエイティブ社も創業前支援の中身に進む前から、出来ることの模索を含めて相談いただければ寄り添ってご支援いたします。ぜひ連絡をいただければと思います。




ー今後中小機構としてどんなことを実現していきたいですか?




野﨑:短期的には、先程お伝えした効果測定の部分の答えを見つけたいと思っています。
長期的には、自治体の創業前支援活動が自走して、その先に全国の創業者が増えれば良いなと思っています。


そのためには、うまくいっている事例を横展開させることがとても大事だと思っています。国から自治体や学校へ創業前支援の仕組みを下ろしていく流れは既に始まっているのですが、仕組みだけではまだうまくいかなくて、もう少し地道に私たちが足を動かして創業前支援の大切さを伝えていく必要があると感じています。


最終的には自治体の皆さんが自ら良い事例を創出しシェアしあい、結果的に私たちの存在が必要なくなることが理想だなと思っています!




ー創業前支援の先駆者として活動を行ってきた野﨑さんだからこそ伝えられる内容ばかりで、きっとこの記事を読んでくださっている全国のご担当者の皆さまにとって多くの気づきがあったのではないかと思います。素敵なお話をありがとうございました!




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〈関連情報〉
起業家教育や創業前支援でお困りの方・支援者をお探しの方へ


マホラ・クリエイティブでは、独自で開発したビジネスデザインプログラム「キホンのキ」を取り入れ、学びのデザインの仕組みを作ることから支援させていただきます。


また、代表櫻井が大企業の組織変革のコンサルを行ってきた経験や専門大学の教授として体系的な視点を通して学生に講義を行っていることから「実践」 と「学び」の両面からアドバイザーとして介入させていただくことも可能です。


起業家教育や創業前支援がうまくいかず悩んでいるご担当者様や地域で起業したいがどうしたらいいかわからないという方は、ぜひマホラ・クリエイティブにご相談ください。






BUSINESS DESIGN PROGRAM キホンのキについて


ISSUE設定やJOB理論、バリュー・プロポジションなど、新しいことを事業にするために役立つ概念と知識を、ビジネス視点・スキルの基礎として5回シリーズで学んでいきます。学びを深めて実践に生かすための MAHO-LA CREATIVE独自の「変革の方程式」という考えを採用したプログラム内容・構成となっています。


大企業から中小企業までの企業研修や、中小機構さん・地域のアクセラレーションプログラム・スタートアップコミュニティなど全国各地で開催しています。


2.5時間の講演から、2時間×数回シリーズのレクチャーまで柔軟に対応可能です。
記事「変化の激しい時代に必要なビジネススキルを学ぶ、BUSINESS DESIGN PROGRAM キホンのキとは」
【変革の方程式とは】×






MAHO-LA CREATIVE株式会社 公式HP

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