この記事をまとめると
■クルマ好きであればたいていの自動車メーカーとその代表作を知っているはずだ
■世界にはクルマ好きでも知らないようなマイナーな自動車メーカーがいくつもある
■超マイナーな自動車メーカーを8つ紹介
クルマ好きでもなかなか知らないメーカーたち
筆者は衣服のブランドやトレンドにまったく興味がないため、その詳細をほとんど知らない。「マメクロゴウチ」というのは「海鮮がおいしい(とくに豆アジやクロダイ、マゴチなどが絶品な)居酒屋さん」かと思っていたが、調べてみると、どうやらイッセイミヤケにいたデザイナーさんが独立して創業したおしゃれブランドであるらしい。
それと同様に「クルマにまったく興味がない人」は、自動車メーカーやそのブランドの詳細をほとんど知らない。これまで「アウディってイタリアのメーカーだっけ? それとも国産?」的な質問をされた回数は、一度や二度では済まない。
しかし、クルマに興味をもつ人であれば、さすがにアウディあたりの本拠地は「ドイツのインゴルシュタット!」と、細かい地名まで含めて即答できる人が大半であろう。
だが、そんな「クルマに興味をもつ人」にとっても未知というか、いまひとつよく知られていない自動車メーカー/ブランドは存在する。とくに中古車情報サイトを眺めている際に、「……これってどんなメーカーだったっけ?」という「?」マークが脳内に浮かぶ場合が多いはずだ。「そんなことねぇよ! オレは全ブランド知ってるよ!」という人も一部にいらっしゃるだろうが、あまりにも一部であるため、今回は無視させていただく。
で、クルマ好きもじつはよくわかってない自動車メーカー/ブランドといえば、主には以下の8社だろうか。
もともとは1897年にアメリカのミシガン州で設立された自動車メーカー。1908年にゼネラルモーターズに買収され、以降は「GM内のブランド」として存続。「若者向けのポンテアックより上だが、上級ブランドであるビュイックよりは下」という立ち位置の中級ブランドだった。しかし、2004年に「ブランドとしてのオールズモビル」は廃止された。
2)マーキュリー(米国)
1938年から2011年まで存在していた、フォード・モーター内のブランド。大衆車ブランドである「フォード」と高級車ブランド「リンカーン」の中間にポジションを取り、ミドル~アッパーミドルクラスの車種を担当した。
日本でも知られる代表的な一台は……「グランドマーキー」だろうか?
3)ライレー(英国)
英国コヴェントリーの自転車メーカーをウイリアム・ライレーJr.が1890年に買収して「ライレー・サイクル・カンパニー」に社名変更。そして、1905年に最初の「ライレー社製四輪自動車」を製造。その後はナッツフィールド社傘下を経て、元祖ミニでおなじみのBMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)傘下となり、BMCおよびブリティッシュ・レイランド内のブランドという扱いに。
作っていた車両は、主にはオースチン/モーリスのバッジエンジニアリング車だった。1969年にはブランドとしても事実上消滅。現在、ライレーの商標はドイツのBMWがもっているが、「MINI」と違ってライレーブランドが復活する気配はない。
4)パンサー(パンサー・ウェストウインズ/英国)
1972年に英国で創業された小規模自動車メーカー。1930年代のスタイルを模したスポーツカー「J72」「リマ」などの生産で成功を収めた。ちなみにJ72やリマなどのビジュアルは「モーガンみたいなというか、ルパン三世が作中で乗ってる“フィアット500じゃないほうのクルマ”みたいな感じ」を想像すれば、当たらずといえども遠からずだ。
しかし、オイルショックの影響で1979年に倒産し、韓国人実業家に買収された。そしてそれも1989年に経営破綻し、その後は同じく韓国のサンヨン自動車に吸収合併されたが、現在もKGモビリティ(元サンヨン自動車)がパンサーの商標を保有しているかどうかは不明。
5)ヴェンチュリー(フランス)
フランスにかつて存在した「ユーリエ」という自動車設計/製造会社のエンジニアだったクロード・ポワローとジェラール・ゴッドフロワにより1984年に設立。1986年にミッドシップスポーツ「MVS ヴェンチュリー」を発表し、続いて1994年に「400GT」を発表したが、2000年に倒産。
その後、モナコの実業家がヴェンチュリーを買収し、2005年にはEVスポーツカー「フェティッシュ」を発表。現在のヴェンチュリーは、高性能EVの開発に加えてフォーミュラEや宇宙事業など、いろいろやっている。
6)フータン(フータン・オートモービルズ/スペイン)
クラシックカー好きなフアン・ウルタードが1991年にスペイン・サンタフェで設立した少数生産のコーチビルダー。すべての車両がハンドメイドとなる。1992年に初のモデル「Hurtan T2」を発表し、その後もさまざまな「クラシカルな美しさと現代のテクノロジーが融合したモデル」を発表。
大阪には「HURTAN JAPAN」という正規輸入代理店が設立されており、最新作である「フータン グランドアルバイシン ヘリテージ」と「フータン グランドアルバイシン ビスポーク」をオーダーできる。
7)ダチア(ルーマニア)
1966年に「UAP」という社名でルーマニアにて設立。当初はルノー車のノックダウン生産を行っていたが、1980年代半ばにはルノーと決別し、オリジナルモデルの開発をスタート。排気量0.5リッターの「ダチア500」や5ドアセダン「ダチア・ノヴァ」を発売したが、1999年には再びルノー傘下に。
その後はルノーのコンポーネントを巧みに使って「安価だが実用的に使えるモデル」を多数開発。現行型の「ダチア・サンデロ」は2021年8月、ヨーロッパ月間乗用車販売台数でフォルクスワーゲン・ゴルフを抑えて見事1位に輝いた。
8)ワズ(ロシア)
1941年、バルバロッサ作戦(1941年6月22日に開始された、ナチス・ドイツによるソ連への侵攻作戦)の影響を受けて、ロシア西部のウリヤノフスクに設立。
第二次世界大戦中は米軍の軍用トラックをコピーして開発した軍用トラックなどを製造し、戦後も軍用車両を開発。1950年代からはキャブオーバータイプのバンも製造し、1965年に登場した「UAZ-452」は現在も、車名こそ変わっているが、基本設計と外観デザインはほぼ不変なまま新車として販売されている。日本国内でも一部の業者がワズ車の販売とメンテナンスを請け負っている。
じつは多くの日本人、そしてクルマ好きも知らないようなドマイナーな自動車メーカーはまだまだ世界にはあまた存在しているようだ。