愛知県豊川市に本社がある「株式会社トヨコン」は、今年2024年9月法人設立60周年を迎えた総合物流商社です。価値の共創を経営理念とし、お客様を「支え」、「つなぎ」、「守り」新たな価値を創ることを目指し、2021年に制定した10年ビジョン『Transform TOYOCONGr.』は業務、働き方、永続企業へTransform(変容)をしていく考えです。
「お客様とSDGsでつながる」、「ステークホルダーとDXでつながる」、「社員と地域とつながる」を軸とした中期経営計画ビジョンのもと、物流総合商社としてSDGs思考の梱包資材の開発や、2年連続でSDGsフィットネス「プロギング」※を開催しております。
※プロギングとは、ジョギング(Jogging)とゴミ拾い(PlockaUpp)をかけ合わせた、北欧スウェーデン発祥のスポーツ。走って健康に、拾ってエコに、新しい交流を笑顔で環境問題を解決に導くSDGsスポーツです。
SDGs思考の梱包資材とはどのような資材なのか。また、なぜスポーツと無縁である企業がプロギングを開催したのか。SDGsに対する今後の展望についてご説明します。
夏休み子供向けSDGsイベントの様子:神奈川県小田原市
2021年「トヨコンSDGs宣言」を契機に全社的にSDGsへの取り組みを推進
株式会社トヨコンは1964年設立当初、大手精密機器メーカー専用の梱包を請け負う会社でした。現在では、梱包資材及び物流機器販売、包装設計・システム開発、倉庫管理業務、梱包業務、組立事業の6つのサービスの提供を行っております。経営理念は『価値の共創』。お客様を「支え」、「つなぎ」、「守り」、新たな価値を創ることを目指しています。
設立当時のトヨコンの倉庫(旧 豊川梱包工業)
10年後もっと価値を高められるよう変容していこうという考えのもと、2030年ビジョンとして、「Leading Transformation, Succeeding Together (変容をリードし、共に成功する)」を策定しました。そこにはお客様と一緒に当社も変わっていこうという想いが込められています。そして、2021年8月~2024年7月までの3か年方針には、「お客様とSDGsでつながる」、「ステークホルダーとDXでつながる」、「社員と地域とつながる」の3つのビジョンを柱として立てています。
なかでもSDGsへの取り組みについては、2021年8月SDGsの取り組みの達成を強化するため、「トヨコンSDGs宣言」を行いました。
宣言を行ったきっかけとなるポイントは二つありました。 一つ目は、SDGs宣言以前より市場のニーズにあわせて当社も対応していたこと。二つ目は、個々のニーズへの対応だけではなく、全社としてSDGsに取り組んでいくという考えからです。
2019年ごろグローバルな企業では、ヨーロッパを中心にSDGsのニーズが高まってきており、当社のお客様からもEUのプラスチック規制により梱包資材をオール段ボール化への変更依頼がありました。あわせて他の大手企業様からも環境対応という声がちらほらと聞こえ始め、その声が段々と大きくなってきたこともあり、個別のお客様への対応から、会社としてSDGsへの取り組みが必須だと考えました。
そして、当社が取り扱う商品のような物流に関わる梱包資材などは、特性上、商品が目的地へ無事に到着して開封されると、その多くはゴミとなってしまいます。世間からは、梱包資材は環境負荷が大きいと言われており、SDGsに対する取り組みは物流総合商社であるトヨコンの使命と考え、SDGs宣言をしました。実施項目に基づいて「SDGsにつながる商品の開発」、「他社との協業」、「地域にSDGsを広める取り組み」に注力しています。
はじまりは6年前。欧州への輸送用資材の相談から誕生した「段ボール立体緩衝材」
SDGs宣言が起点となり、「SDGsにつながる商品の開発」の取り組みが進められてきました。段ボールを使用した立体緩衝材と遊びを付加したトランスフォーム(変容)する段ボール箱の開発です。
長年の技術力や開発実績によって実現した段ボール立体緩衝材「ワッフルパッド®」
当社がSDGs宣言を行う6年ほど前、段ボール立体緩衝材「ワッフルパッド®」が開発されました。きっかけとなったのは、環境規制の厳しい欧州への輸送が課題となっていた企業様より「発泡プラスチックを使わずに段ボール製へ変更したい。」という相談をいただいたことでした。
いただいたご要望は①衝撃値が低いこと、②梱包のしやすさ、③保管場所の縮小、④繰り返し使用するための衝撃に耐えられることでした。当社では30年以上前から、梱包資材を段ボールへ仕様変更のご依頼はありましたが、今回は過去の実績よりも非常に高度な依頼内容となりました。しかし、高度な依頼に対しても当社では、長年取扱商品として段ボールのシェアが一番高く、また、梱包材をオーダーメイドで対応が可能な包装設計のサービスがあり、創業以来、精密機器の梱包設計で培ってきた実績があります。その結果、お客様のニーズと相まって段ボール立体紙緩衝材「ワッフルパッド®」が誕生しました。
SDGs宣言が社内に浸透することにより社員に自主性が生まれ、商品開発が活発化
お客様の要望に応えることや会社からのトップダウンで業務を行うことが多かったなか、SDGs宣言後、当社の社員は自主・自発的に環境にいいものは何かを考えるように変化が見え始めてきました。
包装設計では新たな紙製緩衝材の開発が進み、梱包資材販売においては、環境に良い商品を探し販売する動きへと変容してきました。社員がSDGsにアンテナを張れるようになったのは、中期経営計画やSDGs宣言が社内全体へと周知された結果であり、また新たな商品開発へと展開しています。
従来の段ボールの機能に”遊び”が加わった「トラダン®」はこうして生まれた
段ボールの新たな取り組みとして、保管・輸送以外の機能として「遊び」を付加したトランスフォームする段ボール「トラダン®」を2021年に開発。同年に開催された第20回東三河ビジネスプランコンテストにおいて、特別賞を受賞。また、2023年4月には商標を取得しました。
開封後はゴミになってしまう梱包資材。課題意識を抱えた社員が使用後も役立つ商品を開発
トラダン®は社員が感じていた社会課題へのひとつの解決策として誕生しました。当社が取り扱っている梱包資材の多くは役目を果たすとゴミになってしまうことが多く、価値が継続しません。ここに社員は課題を感じており、使用後にもさらに社会に役立てられることはないかという考えのもと開発されました。
「遊べる段ボール」は災害発生時の精神的ストレス軽減にも
トラダン®のコンセプトは「輸送・保管×遊び」。段ボール箱を輸送・保管の活用から遊べる段ボール箱へと変容(トランスフォーム)します。
近年日本では地震、水害といった災害が頻繁に起こっており、日ごろから災害時の準備をする必要があります。大規模災害発生時の課題のひとつとして、生活者の精神的負担が大きいことが挙げられます。トラダン®は、保管箱として使用後、そのままリサイクルへ回すのではなく、サッカー盤、オセロやボールなど「遊べる段ボール箱」として変容します。もう一度活用されることで、段ボールの価値が継続され、災害時の避難所の親御さんや高齢者の方々が子供たちの笑顔で遊んでいる姿を見て、和やかな雰囲気となり精神的負荷の軽減の一助になればと考えております。
当社では営業所を構える各県や市と「SDGsパートナー」を登録しており、神奈川県、小田原市や安城市、愛知県や豊橋市など各地で開催されているSDGsイベントへ出展しております。
イベントではトラダン®のコンセプトの説明を行いながら、ワークショップを開催しており、多くの子供たちがトラダン®ボールを作って遊んでくれています。参加者の方からいただいたお声のなかでは、頭で考えながら、手を動かして組み立てるので、そういう部分でも優れているとお声をいただいております。
当社営業所を構える神奈川県小田原市でのイベント出展の様子
開催地域とつながるイベントとして「プロギング」という清掃活動を2年連続で主催
当社のSDGs実施項目の一つでもある「地域にSDGsを広める取り組み」として、地域の清掃活動を通じてSDGsを体感していただけるイベント「プロギング」を開催。豊川市でのSDGs推進に貢献できればと思い2022年、2023年と2年連続で主催しています。
社員の提案により実現した地元・豊川市での「プロギング」は参加満足度93%と大好評
これまでBtoB企業として地域に対する貢献やつながりがあまり持てず、地域貢献として何ができるか検討しておりました。地域の方を巻き込んだSDGs体感イベントとして、「プロギング」というSDGsスポーツがあると、ランニングを趣味とする社員より提案がありました。
豊川市ではまだ実績がなかったため、2021年に名古屋市で開催されたイベントへ参加してみると、普段話すきっかけがない方とも気軽に話ができること、一緒に達成することの喜びを共感できたこともあり、満足感が得られました。楽しく取り組めて、地域のゴミ拾いもできるこのイベントは、当社の中期経営計画ビジョン「社員と地域とつながる」とSDGs宣言に掲げた「地域にSDGsを広める取り組み」にマッチしていることから地域貢献の一環として当社で実施できればという思いのもと、当社本社を構える豊川市にて実施が決まりました。
豊川市では初開催となった2022年は、ロケーションとして選んだ場所は豊川稲荷周辺。日本三大稲荷の一つにも挙げられる『豊川稲荷』と豊川の街を観光してみようと募集をしました。プロギングへ初めての参加者が多数を占める中、参加満足度は93%が満足していると回答をいただきました。
コメントとしては、「楽しく社会貢献ができた」や、「雰囲気が良くたくさん会話もできた事や社会貢献を楽しくできた」など参加した方からコメントをいただきました。 2023年にも継続できたこともあり、豊川×トヨコンといえばプロギングと言われるような活動になればと考えております。
過去3年のSDGsの取り組みをもとに、株式会社トヨコンはこれからも理念に基づいた活動を行っていく
中小企業ではSDGsの取り組みを始めている企業がまだ少なかったなか、当社ではSDGs宣言や2021年8月から2024年7月までの中期経営計画がきっかけとなり、それぞれの社員が自主的に紙製立体緩衝材や社会課題からの商品開発の提案、そして、地域へSDGsを広めるイベントが実施できました。この3年間の取り組みで作られた種をもとに、経営理念の価値の共創を高める活動を今後も変容しながら実施していきたいと考えております。
■段ボール立体緩衝材について
重量物最大100㎏目安に対応可能な紙ならではのリサイクル可能で、環境にやさしい緩衝材です。梱包する製品にあわせて専用設計を行い、優れた緩衝性を発揮します。梱包作業が簡易化でき、誰でも簡単に梱包作業を行うことができ、また、コンパクトな荷姿で、保管と輸送を省スペース化できます。
▼商品情報
ワッフルパッド®
■トラダン®について
遊びを加えた新しい活用方法として変容する商品です。今までは商品を守るためだけに存在した段ボールを使い終わったら捨てるのではなく、新たに「おもちゃ」として生まれ変わらせ、避難所の子どもたちを笑顔にしたいという思いと、梱包資材として使用後も価値が継続され、社会に役立てられると考えた商品です。
▼商品情報