命を守る、トイレの力:サンコーが目指す防災への挑戦

2025.03.10 13:55
Introduction
和歌山県海南市に本社を置く株式会社サンコーは、40年以上にわたり防災トイレの開発に携わってきました。いつ起こるかわからない災害ですが、昨年には南海トラフ地震の発生リスクも高まる報道があり、防災に対する危機感や使命感は並々ならぬものがあります。本記事では、角谷太基社長、中西取締役、出口開発部長にインタビューを行い、能登半島地震の教訓や防災トイレの重要性、そして企業の社会的使命についてお話しします。
Interview Topic
能登半島地震における避難所のトイレ問題防災トイレの技術と進化地域防災力向上への取り組み企業の社会的責任と防災への使命
能登半島地震 被災地の現実と課題
Q: 能登半島地震に訪問し、最も印象に残ったことは何ですか?
震災以後の能登半島訪問について語る出口


出口開発部長: 能登半島地震の現場を直接調査し、衝撃的な光景を目の当たりにしました。避難所では、機能しないトイレにより、排泄物が山積みになる非人道的な状況が続いていたのです。特に印象的だったのは、避難所スタッフが他人の排泄物を手作業で運び、段ボールに詰める姿でした。
この経験を通じて、トイレは単なる設備ではなく、人間の尊厳に直結する、命を支える重要なインフラであることを痛感しました。携帯トイレの使用方法が分からない高齢者、使いにくい仮設トイレに不安を感じる被災者。これらの課題は、実際に被災地に訪問して直面した現実でした。
能登半島現地訪問時の仮設トイレ


発災直後の1月4日、我々は約26万回分の携帯トイレを提供し、深夜2時には能登の支援拠点に物資を届けました。経済産業省および日本トイレ協会と連携し、緊急時にすぐに対応できるように社内体制を強化しております。「現場を見なければ、本当の課題は見えてこない」。この経験は、サンコーの防災への取り組みをさらに深化させる決定的な瞬間となりました。


現在、私たちは単に防災トイレ製品を提供するだけでなく、災害時に真に役立つソリューションを追求しています。備蓄の重要性、適切な使用方法、そして人間の尊厳を守ることの大切さ。これらすべてを包括的に考えることが重要だと考えています。
防災トイレの技術と進化
Q: サンコーの防災トイレの最大の特徴は何ですか?


出口開発部長: サンコーの防災トイレは、元々はアウトドア用のトイレとして販売していましたが、阪神淡路大震災をきっかけに、防災用のトイレにリニューアルをしました。
凝固剤には特殊なアルミ素材を採用していることから、湿気を徹底的に防ぐことができます。未開封であれば使用期限は無期限であり、これは災害への備えとして理想的な形です。凝固剤は使用後も離水しない素材を使用し、衛生面でも安心感があります。
製品のバリエーションも豊富です。段ボール製とプラスチック製の7種類の簡易トイレを展開し、各家庭のニーズに合わせて選べるようにしています。プラスチック製は天候に左右されず水洗いも可能、段ボール製は安価で軽量と、それぞれ特長があります。便座は共通設計で、座りやすさと持ち運びのしやすさを追求し、収納ケースには取っ手も付けています。
サンコーの防災用トイレ


中西取締役:特に注力しているのが使いやすさへの配慮です。凝固剤は1日5回の使用を想定したコンパクトな5連包を開発し、一袋ずつに内容や注意分を記載。汚物袋には詳細な使用方法を明記し、初めて使用する方でも迷わず利用できるようにしています。高齢者の方にも配慮し、パッケージの文字を大きくし、簡易トイレは座りやすい高さに設計しています。
使用方法が明記された凝固剤と汚物袋


細部にまでこだわっている理由は、地域指定のゴミ袋では内容物が見えたり、便器に被せにくいなどの問題があるためです。専用の袋を使用することで、保管時の耐久性や衛生面での安心を確保しています。
お客様からのご要望で、凝固剤のみや汚物袋のみの販売も行っており、各家庭の備蓄スタイルに柔軟に対応しています。今後も、要介護者への配慮など、さらなる改良を検討しています。常に現場の声に耳を傾け、使う人の立場に立った商品開発に注力します。
地域防災の未来戦略
Q: 地域の防災力向上に向けて、具体的にどのような取り組みを行っていますか?


角谷社長: 私たちの防災への取り組みは、単に製品を販売することを超えた、地域防災力の向上を目指しています。具体的には、教育機関や自治体のイベントに積極的に参加し、防災用トイレ備蓄意識向上に向けた情報発信を行っています。また、実際に簡易トイレがあっても使い方がわからないという声もあるため、実演を交えて使用方法も伝えています。その他、南海トラフ地震に備え、自治体、大手スーパー、ホームセンターと連携し、包括的な備蓄体制の構築を進めています。
単なる物資の供給ではなく、地域のインフラと協力し、災害時の物資供給システムを最適化する試みを展開しています。各地域の主要な小売店と連携し、災害時に迅速に物資を供給できるネットワークの構築に注力しています。


中西取締役: 社内でも防災意識の醸成に大きな力を入れています。社員の防災士資格取得をサポートしており、現在3名の社員が防災士の資格を取得しています。会社が資格取得に必要な費用を支援し、平日二日間の研修も可能にしています。社内の関心も高まっており、防災士資格を取得したいと希望する社員も増えています。
地域の防災イベントへの参加も重要な取り組みの一つです。公民館や学校で、防災トイレの使用方法や備蓄の重要性について、直接市民の方々に伝える活動を行っています。防災は、一人一人が備えの意識を持つことが、社会を守ることにつながると考えています。
未来への挑戦:角谷社長が描く防災トイレの進化
Q: 今後のサンコーの展望と社会貢献の方向性を教えてください。
今後の災害対策について語る代表の角谷


角谷社長: 能登と同じく和歌山県も半島です。震災時は、道路やライフラインの被害、輸送ルートの消失による避難生活への影響が大きくなることが想定されます。被災現地訪問を経て、特にトイレに関しての問題が多く、社会性の高さや命に関わる商品であることを痛感しました。今後も現地・現場の情報を大切にした商品開発を強化します。
備蓄に関しては、海外展開よりも、まずは日本国内での体制強化に注力します。海南市、和歌山県との密接な連携を通じて、地域全体の防災力を高め、全国に「備蓄のダム」を作るイメージで備蓄の仕組みを作り、災害に強い社会づくりへの貢献を目指します。
最も重要なのは、「備え」の文化を社会に浸透させることです。地震大国である日本では必ず災害は起こります。しかし、いつ起こるかは予測できません。だからこそ、備えの重要性を伝え続けること。それが私たちの最大の責任であり、企業の使命と考えます。一人でも多くの人々に災害への備えの大切さを伝え、命を守るための細やかな取り組みを続けていきます。
過去の防災関連の取り組み
会社概要
和歌山県海南市を拠点にジャパンメイド・ハイクオリティ・顧客ファーストをモットーに、掃除・防災・ペット用品を中心に、生活サポート用品の商品開発から製造、販売まで一気通貫して提供しています。販売実績No1を誇る「おしっこ吸う~パット」シリーズは、2024年4月に販売数310万個を突破しました。皆さまの暮らしに寄り添う生活サポート用品メーカーとして、豊かな社会を支えていきます。
[会社名]株式会社サンコー
[代表者]代表取締役 角谷太基(かくたに ふとき)
[所在地]和歌山県海南市大野中715
[設立]1967年4月1日
[資本金]9,500万円
[事業内容]生活サポート用品の開発、製造、販売
[HP]
[公式通販サイト]
[YouTube]
[Instagram]
[X]

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