この記事をまとめると
■広くは知られていなけど知る人ぞ知るそんなマニアックなチューナーを紹介する
■レース活動と並行してコンプリートカーを製作しているチューナーが多い
■レースなどに向けてホンモノを作り続けているとファンの支持もずっと続く
日本ではほとんど知られていないボルボとジャガーのチューナー
知っていると得をするわけでもありませんが、知っているだけでちょっといい気分になることもあります。クルマ好きの間ならば、ちょっとマイナーなチューナーを知っていると、ほんの少しだけドヤ顔ができる、みたいな感じでしょうか。ところで、マイナーなチューナーといえども、その道では長年の功績があったり、いまだにマニアからは厚い支持をうけていたりするもの。そんなチューナーをいくつかピックアップしてみました。
ヘイコ・スポルティフ(HEICO SPORTIV)
ヘイコといえばボルボのチューナー。ボルボはその昔「ドクターが選ぶクルマ」とか「とにかく丈夫で長持ち」といったコーポレートカラーが浸透していたので、ベテラン勢にはチューナーの存在そのものが驚きかもしれません。
とはいえ、ヘイコに関しては1995年、ドイツで創業されたファクトリーで、ツーリングカーレースへの参戦をはじめ、その活動内容は他車チューナーのそれと変わるところはありません。
チューンアップがプログラムされたECUや、マフラー、もちろんパワーアップに即した足まわりなどラインアップも万全です。
大昔はエッゲンバーガーなんてレーシングファクトリーが「空飛ぶレンガ」と呼ばれるボルボを作っていましたが、いまの流行りはヘイコ! ベテラン勢は時代の流れに置いていかれないようにしてください(笑)。
リスター/アーデン(LISTER/ARDEN)
ベテラン勢にいわせると、この2社は「1980~90年代が黄金期で、もはやオワコン」となってしまうかもしれませんが、どっこい両社とも元気にジャガーをチューニング中です。
とりわけ、リスターはF-PACE SVRをベースに、フルコンプリートチューンの「リスター・ステルス」というSUVまでリリースしています。リスターは昔から自社のシャシーとジャガーのエンジン&コンポーネントでル・マンに挑戦したり、V12のXJ-Sを6リッターにスープアップするなど挑戦的なファクトリーでしたが、その勢いはいまだに衰えていないようです。
そして、アーデンといえばジャガーを真っ黒クロスケにして、ジャガー版AMGみたいにしたチューンが得意でしたが、いまもその傾向は変わっていません(笑)。FタイプやFペースといった現行モデルだけでなく、XJ40やXJ-Sといった「クラシックライン」についても現役でチューニング可能。
また、いまではレンジローバーやミニについても真っ黒クロスケチューニングをしており、日本に輸入されていないだけで、熱いチューニング魂はまだまだ現役というわけです。
かつて一世を風靡したBMWとコルベットのチューナー
ACシュニッツアー/ハルトゲ(AC SCNITZER/HARTGE)
BMWのチューナーといえばアルピナを思い出す方が少なくないかと。ですが、あちらは本国ではれっきとした自動車メーカーであってチューニングカーファクトリーにあらず。ドイツはこの線引きがじつに面倒くさい(笑)。では、チューナーといえばどこかといえば、ハルトゲとACシュニッツァー、あるいはマイナーすぎて誰も知らないAHGくらいでしょうか。
このうち、ACシュニッツァーは国内ベンダーが活躍しているので忘れられてはいないでしょう。ちなみに、大昔はシュニッツァーで1987年以降はACがつきましたが、これはシュニッツァーがドイツ国内大手BMWディーラー、コール・グループに資本注入されたため、ドイツの会社法とかなんとかでこういう表記になったとか。ほんと、ドイツは面倒くさい(笑)。
で、ハルトゲは残念ながら2019年をもって閉鎖されていました。その昔はストレートシックスにKKKのどでかいタービンを装備したり、ハイカム組んで1万rpmとかいかにもチューニングカー的なマシンを作り上げていたんですがね。国内ではトミーカイラでお馴染みのトミタ夢工場が、正規ディーラーとなってコンプリートカーの輸入をしていましたっけ。
当時からアルピナと比べられたりしていましたが、前述のように似て非なるもので、チューンの方向性も方やバランスと精度の権化であり、ハルトゲはBMWをより過激でレースカーチックに仕立て上げるのが魅力的でした。
なお、AHGはハンブルクやシュツットガルトに同名のファクトリーがあるものの、いずれもBMW専門というわけではなさそうです。ちなみに、チューニングの方向性はハルトゲに似ていながら、外装はリップスポイラーを追加する程度の地味なテイストでした。
キャラウェイ(Callaway)
アメ車が好きでも、コルベットのマニアくらいしかキャラウェイの名前は知らないかもしれません。スレッジハンマーというペットネームのチューンド・コルベットは1990年代から2000年代までアメリカでバカ売れしていました。
そもそも、創立者のリーブス・キャラウェイはタービンに対して強い執着を持っており、コルベット以前にもBMWやVW、あるいはアルファロメオなんかにもターボチューンを施していた人物。ちなみに、ゴルフ用品のキャラウェイは彼の父親が創立したブランドです。
そんなキャラウェイのコルベットでもっとも印象的だったのはC4をベースにツインターボ化して382馬力を発揮したRPO B2Kで、これは初代スレッジハンマーと呼ばれることが多いようです。特筆すべきは、このチューンドマシンはGMディーラーで正式に注文できたことで、つまりはGM公認のチューニングカーだったということ。また、本家GMも1990年にはスレッジハンマーを上まわる390馬力のZR-1を発表したものの、キャラウェイは402馬力まで出力を強化して対抗。GMの懐の深さに対し、キャラウェイの大人げない対応がアメリカ的でじつに微笑ましいではありませんか。
その後もキャラウェイの活動はGMやレンジローバー、あるいはアストンマーティンと続き、GTレースやインディなどあらゆるシーンで彼の作品を目にすることができます。なるほど、本物を作り続けるとファンの支持もずっと続くという好例ではないでしょうか。