フィリピン・バナナ産地ツアー事後レポート・日本の消費者が、自然と調和しながら育つバナナと、生産者の暮らしを体験

2024.09.26 09:00
特定非営利活動法人APLA
NPO法人APLA(あぷら)が主催し、8月25日~9月1日までフィリピン・ミンダナオ島レイクセブ町のバナナ産地訪問ツアーを実施。生産者との交流、収穫体験などを通じ、産地への理解を深めました
NPO法人APLA(新宿区大久保)が呼びかけ団体となり、8/25~9/1まで、約1週間となるバランゴンバナナの産地ツアーが実施されました(旅行企画実施:エアワールド株式会社)。今回のツアーには、日本から11名が参加。参加者11名のうち8名が大学生・大学院生で、バナナの生産から流通・小売りまでサプライチェーンを研究している学生もいれば、アジアの子どもの貧困や教育に関心のある学生、また熱帯の植物に興味のある学生など、興味関心が様々でした。生協の組合員家庭の出身で幼いころからバランゴンバナナを食べている方もいれば、APLAの商品を定期的に購入してくださっているお客さんもいました。今回のツアー目的地は、フィリピン南部、ミンダナオ島のレイクセブ町です。日本からは飛行機と陸路で丸二日かかる遠方の産地で、今回、ツアーを企画するのは初めての試み。
レイクセブ町は、ティボリ族やオボ族といった先住民族が多く暮らす地域。標高が高いため涼しくて過ごしやすく、セブ湖畔の美しい風景もあわさって、観光地としても有名になっています。
バランゴンバナナの全産地。レイクセブは最も南部にある地域。(図提供:オルター・トレード・ジャパン株式会社)
APLAバナナ産地ツアー日程概要8/25 19時ダバオ空港集合。ダバオ宿泊。
8/26 ツピ町のバランゴンバナナ生産者団体を訪問。その後レイクセブ町へ。
8/27 午前は町内の公設市場を見学。午後はレイクセブ町の生産者団体によるオリエンテーションや規格外バランゴンバナナを使ったお菓子作り交流会など。
8/28 レイクセブ町の隣町にあるプランテーションバナナ農園を見学。
8/29 山間部のバランゴンバナナ産地へ。バナナの収穫体験、生産者、子どもたちと交流。こちらの村で一泊。
8/30 パッキングセンターを見学。
8/31 生産者団体と振り返りミーティング
9/1 ジェネラル・サントスの空港にて解散
レイクセブ町の位置
レイクセブの湖

1・2日目:日本から丸二日かけて移動。夜にやっとレイクセブの町へ
マニラ空港から国内線に乗り継ぎ、集合場所のダバオ空港へ。ここで1日目は宿泊します。2日目、早朝にダバオを出発し、専用車で、目的地のレイクセブ町の手前にあるツピ町へ。こちらもバランゴンバナナ産地で、生産者団体と短い時間ですが、交流の時間を持ちました。たくさんの質問が出たり交流が盛り上がったので、時間をオーバーしてしまいましたが、夜19時ごろに、レイクセブ町に到着しました。
3日目:レイクセブ町のバランゴンバナナ生産者団体を訪問。座学と料理交流会
3日目となる8月27日には、今回ツアーを受け入れてくださった、バランゴンバナナ生産者団体のUAVOPIのセミナーハウスへ。そこで、レイクセブ町におけるバランゴンバナナの民衆交易(People to People Trade)の歴史や意義、現在の課題などについてのオリエンテーションがあり、若手のバランゴン生産者の皆さんと交流を持ちました。午後には、日本に届く前にはじかれてしまう現地でのリジェクトバナナ(規格外バナナ)を使って、生産者とツアー参加者が一緒になって、アイスクリームやバナナチップスを一緒に作る時間を持ちました。
オリエンテーションの様子
左からバナナアイス、バナナのアイスケーキ、バナナチップス。フィリピン流(?)の味付けは、日本で食べるお菓子よりもかなり甘いものでした。

APLAでは、3年前から規格外バランゴンバナナの有効活用を進める「ぽこぽこバナナプロジェクト」という活動も進めています。これは、日本に届いてから選別されてしまう規格外バランゴンバナナを活用するプロジェクトです。バナナ生産者とともに、リジェクトバナナの活用を考えられたことは、プロジェクトの事務局を務めるAPLAとしても、とても良い刺激になりました。
4日目:隣町でプランテーション農園を見学、バランゴンバナナとの違いを参加者で話し合う
4日目となる8月28日は、レイクセブ町の隣に位置するティボリ町を訪問。ティボリ町は、バナナプランテーション(主に輸出用に単一作物を大規模で作る農園)が広がる地域で、以前から農薬の空中散布の問題なども指摘されている場所です。私たちは、バランゴンバナナの生産者団体の皆さんの案内で、プランテーションの圃場を見学することができました。
隣町、ティボリ町のプランテーション農園のバナナの様子。土が固く、茎は農薬で色の変色

バランゴンバナナの圃場は、草もたくさん生えており土もふかふかですが、プランテーションバナナ農園は草などが一切生えておらず、土はカチカチに固くなっていました。バナナの茎も、一部淡いピンク色になっており、案内してくれた関係者によると、不自然な色に染まっているのは農薬によるものだろうとのこと。葉には白い細かな物質が付着していました。見学を終えたツアー参加者からは、「日本で販売されているバナナの多くがこういった農園から届いたものであるという事実があまりに知られておらず、大きな課題」という声が挙がっていました。
5日目:町の中心部から車で1時間半、山間地域の集落へ。バナナの収穫を体験。
5・6日目となる8月29日、30日には、町から山の方へと向かい、山間地にある産地を訪問しました。レイクレブ町の中心部から車で1時間半ほど山道を走って到着した集落には、想像をはるかに超えた、豊かな世界が広がっていました。

印象に強く残ったのは、バナナが育つ環境が、「バイオダイバシティ(生物多様性)」に溢れていたことです。現在APLAは、バランゴンバナナを主人公にした絵本を制作しており、主人公たちが育った場所をこうした山間地の産地に設定しています。これまで絵本は、APLAや、姉妹団体のバランゴンバナナの輸入販売を行う会社、オルター・トレード・ジャパンのバナナ担当者が撮影した写真を参考にしながら制作を進めてきましたが、目の前に広がるのはまさに、そこで描こうとしている世界でした。

例えば、とうもろこし、キャッサバ、イモ、ココナッツなどさまざまな作物とバランゴンバナナが一緒に育っていたり、ある生産者は養蜂も行っていたりしました。
作物だけでなく、圃場ではたくさんの種類の動物たちにも会いました。カラバオ(水牛)、山羊、馬、豚、鶏、そして犬、猫。そして虫もたくさん。私は朝、大きいクモと目があい(目があったかのように思いました)飛び起きました。まさに、植物も動物も、生物多様性に溢れていました。
生産者たちは、たくさんの家畜と暮らしていました

圃場では収穫の様子を見せていただき、生産者に直接指導してもらいながら、ツアー参加者が実際に収穫を体験しました。バランゴンバナナは背が高いので、幹(茎)にナタで切り込みを入れて倒して収穫するのですが、実際にやってみると、切り込みを入れる位置が高く、幹がかたいので、ナタを使うことに慣れていない参加者の皆さんは切り込みを入れること自体なかなかできません。そして、収穫したバナナがとても重いことにも驚きの声が挙がっていました。1つのかたまり(バンチといいます)で約30kgあり、私たちでは持ち上げるのにも苦労します。しかし、生産者によると、圃場によっては何時間も担いで集荷場に持って行くこともあるそうです。絵本にも収穫のシーンや集荷場に運ぶシーンを描いていますが、こういった過程を丁寧に描くよう努めています。
村に戻り、夕食まで子どもたちとも交流しました。初めは距離が感じられましたが、日本から持ってきた紙風船やけん玉などで遊び始めるとすぐに打ち解けました。夜になり、集落は真っ暗に。電気の通っていない集落のため、明かりは生産者団体が用意してくれたソーラーライトだけです。宿泊先は、集落のヘルスケアセンター(公民館のような場所)をお借りしました。夕食をいただいた後は、早めの就寝となりました。
6日目:集落を出発し、町のパッキングセンターへ
次の日はニワトリの鳴き声で起床。昼までは、散歩をしたり、記念のバナーにメッセージを書き込んだり、学校に行く前の子どもたちと一緒に楽しく遊んだり、ツアー参加者が思い思いの時間を過ごしました。参加者の皆さんからは、「バランゴンバナナを栽培するようになってから、お米が買えるようになったと聞いて、バランゴンバナナを買うことが生産者の暮らしに少しでも役に立っていることがわかり、『バランゴンバナナを買うことが生産者の暮らしの応援になる』ということを肌で感じた」「養蜂を始めたというお話を聞き、今ある環境の中でいろいろなことにチャレンジしているのがすごい」「バナーに日本語でもメッセージを書いたのだけど、その日本語がどんな意味なのか聞いてくれたり、またその言葉をまねして、言ってくれたりしたのがうれしかった」など、たくさんの感想があがりました。たった1泊の滞在、お互いの言葉もあまりわからないなかでも、心の距離はこんなにも縮められるものなんだと感動する濃密な時間でした。
村の皆さんと最後に記念写真

町へ戻り、「パッキングセンター」を見学しました。各集落から運ばれてきたバナナを、水で丁寧に洗い、軸の部分を綺麗にカットし、基準に沿って選別。13.5キロずつ箱に収めていきます。品質管理が重要とのことで、脇にはリジェクトバナナ(規格外バナナ)が山積みになっており、改めて、こうして選別されたバナナが日本にやってきていることを学びました。その後、ツアー参加者も、バナナの洗浄作業や箱詰めなどを体験。パッカー(パッキングセンターで作業する方たちのこと)の方にインタビューしました。この日は、夜までに1200箱のパッキングを終える必要があるということで、私たちに話をしてくださっている最中も、変わらないスピードで作業を進めていて、参加者からは驚きの声が挙がっていました。
左からバナナの洗浄、箱詰め、リジェクトバナナ

7日目:生産者団体UAVOPIの皆さんと振り返りミーティング
7日目の8月31日には、生産者団体のUAVOPIの方々と振り返りのミーティングを行いました。ツアー参加者の皆さん一人ひとりが今回ミンダナオを訪問して感じたことなどを発表し、UAVOPIの方々からもメッセージをいただきました。APLAからは、現在制作中の試作版の絵本の紹介も行いました。
試作版の絵本を見る生産者の皆さん。文字は読めませんが、イラストを見て楽しんでいただけていました

ツアー参加者からの声:
翌日の9月1日朝、ジェンサントスの空港でツアーは解散しました。以下、7日目の振り返りの際にいただいた参加者の声をご紹介します。
- バランゴンバナナは日本で食べていたし、どのようなバナナかは知っていたけど、実際に栽培の様子や生産者の努力や工夫などをみて、より深く知ることができた、民衆交易を実感できた。
- 産地に来るチャンスはなかなかないと思う。今回来ることができて本当によかった。来たいと思っても来られない人もいる。今回来たことを活かすために、日本に帰ってからいろいろな人に伝えたい。
- プランテーションバナナ農園に訪問できたのはよかった。日本で販売されているバナナの多くはこういったところで栽培されたバナナだと思う。知らない人が多いので、伝えていきたい。
- 大学生という立場でできることは限られているけど、バランゴンバナナを買ったり、周囲に伝えたりすることはできる。帰ってからも大学生としてできることが考え続けたい。
- 子どもたちから多くのエネルギーをもらった。短い時間だったけど、忘れられない時間となった。いつかまた来来ることができたらと思っている。
- 生産者とコミュニケーションを取り続ける大切さを知った。取り続けることで、信頼が生まれ、大きな問題が起こっても乗り越えていけるんだと思う。

短い時間でしたが、参加者にとって実りの多い経験となったようです。詳細は未定ですが、こういったツアーは次年度も企画する予定です。
バランゴンバナナの姉弟らんとごんが、フィリピンの山の奥から日本まで、たくさんの過程を経て旅をする。やっと日本に着いたふたりだったが、らんのからだには、いつのまにかキズがついていて…。
バナナのらんとごん出版プロジェクト、目標金額は250万円、9/30まで目標金額:250万円 実施期間:8/7~9/30
さまざまな理由で「規格外」となり、廃棄されてしまう=フードロスとなっているバランゴンバナナを有効活用していく「ぽこぽこバナナプロジェクト」。今年の大きな活動として、フードロスの存在を小さな子どもにも楽しく伝える絵本『バナナのらんとごん』の制作を進めており、出版費用の資金調達のクラファンを実施しています。
・ぽこぽこバナナプロジェクトとは
日本に届いてから、キズなどの理由で規格外となり、通常ならフードロスになってしまうバナナを、たくさんの人の手で活用しようという参加型のプロジェクトです。

開始:2021年9月~
有効活用された規格外のバランゴンバナナ:
14,570kg(2021年9月1日~2023年12月31日集計)
URL:
SNS:@poco2banana




・組織概要
組織名:特定非営利活動法人APLA(英語名称:Alternative People’s Linkage in Asia)
設立:2008年10月
代表理事:箕曲 在弘
本社:〒169-0072 東京都新宿区大久保2-4-15 サンライズ新宿3F
URL:
らくだ舎出帆室
千葉貴子・千葉智史
事務所:〒649-5452 和歌山県那智勝浦町小阪764
店舗「らくだ舎」:〒649-5451 和歌山県那智勝浦町口色川742-2
URL:
・本件に関する問い合わせ
ぽこぽこバナナプロジェクト事務局(特定非営利活動法人APLA内) 担当:福島
e-mail:poco2banana@gmail.com
tel:
fax:
〒169-0072 東京都新宿区大久保2-4-15サンライズ新宿3F

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