水冷・空冷は聞いたことあるけど油冷ってなに? 4輪派には謎のエンジン冷却方式

2024.09.18 17:30
この記事をまとめると
■エンジンの冷却方式は水冷が主流になっている
■水冷以外にも空冷や油冷が存在する
■油冷エンジンのメリット・デメリットを解説
4輪車のエンジン冷却方式としては馴染みがない油冷
  CO2排出量削減に向けて内燃機関にもできることは多い……と主張するエンジン支持層は少なくない。エネルギー効率の進化を示す最大熱効率において、実験室レベルでは日産が最大熱効率50%を実現したことが2021年に発表されている。
  市販エンジンであっても2015年にトヨタ・プリウス(4代目・50系)のハイブリッド用エンジンが最大熱効率40%を超えて以来、高い熱効率を誇るユニットは増えている。最近でいえば、スズキがスイフトに載せたベーシックな1.2リッター3気筒エンジンまでも最大熱効率40%に達しているというほどだ。
  それはさておき、最大熱効率が40%越えで賞賛されるということは、逆にいえばエンジンは燃料がもつエネルギー(発熱量)の半分以上を損失しているということでもある。そうした損失のなかでも大きい部類に入るのが「冷却損失」だ。
「冷却」という言葉を使っているが、これは熱エネルギーのうちシリンダーブロックなどを暖めてしまうことで失われるエネルギーを指している。逆にいえば、エンジンは冷却しなければどんどん熱を溜めていってしまうことになる。
  つまり、エンジンは冷やす必要があるのだ。
  その手段として4輪車で主流となっているのは「水冷」式である。ブロック内の通路に冷却液を通すことで熱を奪い、その熱をラジエターによって大気に放出するというメカニズムとなっている。
  小排気量エンジンを中心に2輪においては「空冷」式が採用されていることもある。こちらは、エンジンにフィンなどを設けることで表面積を増やし、走行風で直接エンジンを冷やすという仕組みだ。
  そして2輪においては、スズキが「油冷」の冷却方式を採用していることも知られている。この『油』とは潤滑油であるエンジンオイルのこと。どんなエンジンにも欠かせないエンジンオイルは、エンジン内部を常に循環している。それを潤滑などの役割だけでなく、冷却にも利用することで水冷システムを不要として、メカニズムをシンプル化しようというのが「油冷」を採用するメリットのひとつだ。
  スズキの軽2輪モデル「ジクサー250/ジクサーSF250」に搭載されている、SOCS(Suzuki Oil Cooling System)と名付けられた油冷エンジンの特徴は、燃焼室外周にオイルを通す冷却路を設けていること。冷却損失が大きい部位である燃焼室に溜まる熱をしっかりと冷やしてやろうというわけだ。
  エンジンオイルをしっかりと冷やすために単気筒エンジンとは思えないほどの大きなオイルクーラーも備えているのも、SOCSエンジンの特徴だ。
  ただし、オイルクーラーを備えているからといって油冷式といえるわけではない。
  たとえば、水冷式エンジンにおいてはオイルフィルターの根元部分に冷却経路が設けられ、エンジンオイルを冷やすような構造となっていることが多い。しかし、このオイルクーラーはエンジンオイルが過熱して劣化するのを防ぐための機能であって、積極的にエンジンの熱を放出する狙いはないといえる。
オイル量の増加や油温管理が必要になる
  一方、空冷式エンジンにおけるオイルクーラーは、エンジンオイルの過熱を防ぐためだけではなく、油冷的な狙い(エンジン自体の冷却)が込められていることも珍しくない。
  エンジンの“深いところ”に溜まった熱を冷やすにはオイルクーラーのほうが有効という見方もあったりするほどだ。それでも、エンジンオイルを適正な温度範囲とすることが優先されているのはいうまでもないだろう。
  たとえば、1997年に996型にフルモデルチェンジする以前のポルシェ911が積む水平対向6気筒エンジンは、空冷式エンジンであった。そして、10リットルを超えるエンジンオイル量や巨大なオイルクーラーを備えていたことから、実質的に油冷式であると表現されることも珍しくない。
  ただし、燃焼室の温度管理が難しいために水冷化したという進化の流れを考えると、本質的には油冷ではなく空冷の限界を感じた結果であったというのが真実に近いだろう。
  さて、スズキの油冷システムにおいて、水冷式に必要な冷却液やラジエターが不要になることで軽量化と冷却性能を両立できるという油冷式のメリットについて触れたが、デメリットはないのだろうか。
  まずいえるのは、基本的な熱交換性能についてエンジンオイルは冷却液に劣る傾向にある。冷却液は温まりやすく冷えやすいと冷却システムにマッチした特性だが、オイルは温まりづらく冷えづらい傾向にある。
  そのため、発熱量が多くなるほど油冷式で温度管理をするのが難しくなってくる。油温計・水温計を備えて、エンジンコンディションをチェックしているオーナーであれば、こうした特性の違いは肌で感じていることだろう。
  また、油冷式で冷却性能を高めるにはオイルクーラーのぶんなど使用するオイルの量が増えがちだ。そうなるとオイル交換時のコストがかかってくることになる。
  冷却液であれば、交換サイクルは長くなり、冷却液自体もオイルより安価なため、メンテナンスコストが抑えられる。トータルでのコストパフォーマンスを考えると、こと4輪用エンジンについては水冷式が最適解といえそうだ。

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