生成AI時代の新しいデータセンター冷却システムを検証

2024.10.23 10:01
株式会社NTTファシリティーズ
~業界に先駆け、模擬環境における多様な空調機器を検証する「Products Engineering Hub for Data Center Cooling(仮称)」を構築開始~

株式会社NTTファシリティーズ(本社:東京都港区 代表取締役社長 松原 和彦 以下、NTTファシリティーズ)は、データセンターの冷却システムの検証施設として、「Products Engineering Hub for Data Center Cooling(仮称)」の構築を開始します。完成は2025年4月を予定しており、生成AI向けデータセンターにおいて主流となる液冷サーバーを利用したデータセンターの効率的な冷却システムをはじめとした、多様な空調機器を業界に先駆け検証するとともに、さまざまなデータセンター向け空調機器の実機展示を行います。

概要
生成AIに対応するデータセンターでは、高性能・高発熱のGPUサーバーを効果的・効率的に冷却する仕組みが求められており、冷却液をサーバーに直接送り込み、コールドプレートで冷却する液冷方式サーバーの導入が今後進んでいくことが予想されます。液冷方式サーバーの冷却システムは、サーバーへ冷却液を送り込むCDU(Coolant Distribution Unit)とCDUへ冷却液を供給する熱源機器の組み合わせにより構成されます。
これに対し、現在のハイパースケール・データセンターは、排熱された空気を大量の水により冷却するチラーを用いた水冷方式が主流となっています。また、チラーはデータセンターの空調設備の中で最も消費電力が大きいという特徴があります。液冷方式サーバーに供給する冷却液は空気を介さずに直接送り込むため、液体の温度を高く設定できます。このため、液冷方式サーバーの冷却システムではチラーを用いる必要がなくなり、消費電力を大きく低減することが可能です。
こうした背景から、生成AI対応のデータセンターはチラーを必要としない空調方式(チラーレス液冷空調)が今後普及していくと予想されます。チラーレス液冷空調の熱源機器として、夏季は冷却塔として運転し、冬季は散水せずに外気により冷却するドライクーラーとして運転することで、一年間を通じた消費電力および消費水量を低減するハイブリッドドライクーラーが期待されています。
NTTファシリティーズは、こうしたチラーレス液冷空調をはじめとしたデータセンター向け空調機器の性能検証や実機展示、技術者育成を目的として、この度、「Products Engineering Hub for Data Center Cooling(仮称)」を構築することとしました。本施設では模擬環境を構築し、当社が取り扱う空調機器の性能検証や各種空調の不具合発生時の原因究明、構築・保守技術者の育成のほか、データセンター冷却用空調機の実機展示を行います。
NTT武蔵野研究開発センタ(東京都武蔵野市)内に構築し、完成は2025年4月を予定しています。

Products Engineering Hub for Data Center Cooling(仮称) の概要 
Products Engineering Hub for Data Center Cooling(仮称)には、NTTファシリティーズが取り扱う10種類の空調機器の実機を設置するとともに、AIデータセンターを想定した模擬負荷装置(空冷分420kW、液冷分216kW)を設置し、すべての空調機器が実際に運転できる環境を構築します。
Products Engineering Hub for Data Center Cooling(仮称)は、以下の3つのエリアから構成されます。
図1:Products Engineering Hub for Data Center Cooling(仮称)


(1) データホールエリア
データホールエリアに設置されたサーバラック架列には、CDUから供給する冷却液による液冷サーバーを模した模擬負荷装置の冷却(液冷方式)に加えて、さまざまな気流方式による冷却(空冷方式)を行うことが可能です。
また、データホールエリア内には、小規模な生成AI用基板向けにパッケージ化された「スキッド型CDU*1」や高発熱のGPUを搭載したサーバーを冷却する「リアドア型空調機」を設置します。
図2:STULZ社製スキッド型CDU


(2) 空調機設置エリア
空調機設置エリアには、当社パートナーのSTULZ社(本社:ドイツ)製の「水冷下吹型空調機」、「水冷壁吹型空調機」、「水冷横吹型空調機」および、直接外気冷房を併用可能な「外気冷房併用型空調機」が設置されます。また、現在STULZ社と開発中の、当社が構想する「次世代型データセンター」*2に最適な日本市場向けCDUも設置される計画です。
また、空調機設置エリアには、データセンター構築・保守技術者の育成や、データセンター事業者様との共創の場としてラーニングエリアを設置する予定です。
図3:(左)水冷壁吹型空調機、(中央)水冷横吹型空調機、(右)外気冷房併用型空調機
図4:ラーニングエリアのイメージパース


(3) 熱源機器設置エリア
熱源機器設置エリアには、当社パートナーのSMARDT社が提供する最新型オイルフリー空冷チラー「AFシリーズ」(2025年以降国内販売開始予定)に加えて、CDUと共にチラーレス液冷空調用商材のコア商材として期待される、Evapco社製のハイブリッドドライクーラー「eco-ATWB-H」を設置する予定です。
図5:ハイブリッドドライクーラー


なお、データホールエリア、空調機設置エリア、熱源機器設置エリアに設置予定の空調機器は表1の通りです。

表1:設置予定の空調機器
今後の計画
「Products Engineering Hub for Data Center Cooling(仮称)」は、データセンターの構築や設計、施工をお考えのデータセンター事業者様に多様な空調機器をご覧いただき、実際に運転している様子もご覧いただけるショールームとしても活用する予定です。
また、構築後もNTTグループをはじめとしたデータセンター事業者様のニーズにお応えすべく、継続的にリニューアルを行いながら、最先端の空調機器の運用の信頼性やさらなる省エネ性能向上に向けた検証を続けると共に、構築・保守技術者の育成を行ってまいります。

注釈・用語解説
*1 スキッド型CDU
液冷サーバーの冷却に必要な、CDUやリアドア型空調機といった設備機器、冷水配管やマニフォールド等のコンポーネントをパッケージ化することで、現地組立作業を最小限に抑えた液冷サーバー用の冷却システム
*2次世代型データセンター
【本件に関するお問い合わせ先】
(株)NTTファシリティーズ 経営企画部 広報担当 MAIL:pr@ntt-f.co.jp

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