エイの背中にロマンを求めて!日本の伝統を現代に伝承する、エイ革専門ブランド「BAHARI」の軌跡

2024.09.03 08:50
BAHARI(バハリ)は、日本では珍しいエイ革製品の専門店だ。エイ革といっても、あまり馴染みがないかもしれないが、フランスではガルーシャとも呼ばれ、18世紀にはタンス、テーブル、椅子などの工芸品の装飾材料として使われている芸術品でもある。
実は、エイ革は1000年以上も前から日本刀の柄や鞘、鎧などの武具にも使用されていた伝統的な素材でもあるのだ。


「海の宝石」とも呼ばれるエイ革製品の優雅さ、力強さ、遊び心、そして伝統を知っていただくために、エイ革専門店BAHARI代表の谷本貴義がなぜエイ革にこだわるのかを紐解く、ブランド創業ストーリー。
きっかけは祖父母の呉服・骨董品店。日本の古き良きモノを伝えるために奔走する中で届いた、フランスからのメール
大学卒業後、3年間サラリーマンを経験したが、25歳のとき会社勤めを辞めてしまった谷本。ふらっと愛媛にある祖父母が経営していた呉服・骨董品店に遊びに行ったことが、ビジネスの出発点となる。
「会社を辞めたことを知った祖母が、店にある火鉢でも売って、仕事にすればいいと言ったんです。」
小学生の頃の夏休みの思い出は、祖父母の店で古美術品や古民具を見て触れたことだと語る谷本は、大切に使用されてきた道具に触れると、先人の想いにも触れられるような気がして、居心地が良かった。
「日本の古き良きモノをもっと伝えたくて、さっそく古物商の免許を取り、骨董品をネット販売することにしました。京都や仙台など日本各地を巡り、仕入れのルートも開拓して品物を探して回りました。」
すると、ホームページを見た顧客から一通のメールが届く。フランスのボルドーで日本のアンティークを販売している男性からのもので、谷本が販売している品物を仕入れたいという依頼だった。
「メールのやり取りをしているうちに、相手がボルドーに来ないか?と言うので、1週間後にはフランスに向かっていました。行動力だけはあるんですよ。」
骨董品の販売から手を引いた中でも失われなかった工芸品に対する興味~フランス時代~
その行動力がビジネスの拡大に繋がる。日本の新物からアンティークをどんどん送ってくれということになり、フランスへ骨董品や呉服、和柄の小物などの雑貨を輸出することになった。
「2か月で商品を全部自分で仕入れて、コンテナ1個分くらい集めて輸出したので、かなり大変でした。でも、予想外に輸出のノウハウを知ることができて、良い経験になりました。」


2年ほど古民具・骨董品の販売を続けた後、谷本は骨董品から手を引く決心をした。
「骨董品は、やはり難しいと感じていました。目利き力が必要だし、何となく古美術品が好きというだけで、やっていけるのかなって。」


まだ20代後半だった谷本は、世界各地をバックパッカーで旅をした。ドイツ、ベルギー、スイス、イタリア、南フランス、スペイン、東南アジアなどを約2ヶ月かけて巡ったのだが、この旅の中でも、自然と美術館を訪れていた。
骨董品の販売から手を引いても、美術品や工芸品に対する興味は失われていなかった。
タイでの出会い、レザーウォレット専門店を本格始動
ある日、知人の紹介でタイを訪れる。そこで、一人の革職人と出会ったことが、現在のエイ革財布への情熱へと導くことになる。
タイの職人が作る革製品に興味を持った谷本は、職人が作るハンドメイドのバイカーウォレットに惚れ込み、革製品のビジネスにシフトしていく。日本に戻り、2005年に有限会社スタイルコムを設立し、通信販売で雑貨を扱っていたのだが、商品をタイの職人が作る革財布にしぼり、レザーウォレット専門店として、本格的に始動することにした。


「凝り性なので、何かやると決めたら専門的にやりたい性格です。やるからには、レザーウォレットで日本一になろうという目標を掲げていました。」
実際に、牛革、クロコダイル、パイソン、ガルーシャ、オーストリッチなど、400種類以上の商品を取り揃えており、ネット販売では当時のレザーウォレット専門店としては日本最大級だった。
タイとの取引経験から日本品質の高さを実感。革職人としての道を決意
本格的なレザーウォレットが購入できるサイトということで売上も好調だったのだが、一方で数々の問題も発生する。惚れ込んだタイの職人技だが、外国との取引では、しばしばオーダーと違うものが届くことがあった。
「指定したスペックや色など、違う商品が来たときには驚きました。どうしてそうなるんだろう?と理解できませんでしたね。この経験で、日本のものづくりのクオリティって、世界レベルですごいんだと実感しました。日本ではオーダーで色違いとかありえないじゃないですか。」


日本の品質の確かさに気づいた谷本は、財布に使用されているファスナーなどの部材にもこだわるようになり、ものづくりについても知りたいという欲求がでてきた。
「製品に欠陥がある場合は、部材に問題があることが多いです。ファスナーひとつでも日本品質のものを使用したほうが長持ちするんですよ。」


ここでのビジネス上の決断が、他の経営者にはないユニークでレアなポイントだ。レザーウォレットの売上が好調の中、ものづくりをやってみたいと興味を惹かれた谷本は、自ら職人の修行を始めるという選択をした。


「やはり、レザー製品を販売する中で、作り方の根本が分かってないと自信を持って売れないというのがありました。そこで、革職人になるという道を選びました。」
職人としての道を歩むことは、製品の品質を向上させるために不可欠だと感じていた。
職人としての経験が、エイ革財布専門店BAHARI設立へつながる
元浅草にある店舗の周りには、職人の工場も多く、部材屋もたくさんあり、ここに店舗を構えたことに運命的なものを感じていた。ある日、近所の革職人が店を訪れ、「私も革職人になりたい!」と伝えると、「いいよ、教えてやるよ!」と快諾され指導を受けることになった。


革職人の道を選んだのは、製品の素材や作り方を知り、構造を理解するためだった。自らものづくりの本質を学び、信頼性の高い道具や部材を使用することで、製品の品質を向上させたかった。
約2年間の修行を経た谷本は、タイの職人と対等に話し合い、教えられるレベルにまで技術が上達していた。修行時代に学んだプロセスが、タイで製造しても日本の品質レベルにまで達せるほど成長していた。


だが、職人になり、素材に対する理解と愛着が深まったことで、自分の販売する商品がこれでいいのだろうかという疑問が生じた。
「タイからレザーウォレットを中心に、雑貨、アクセサリーまで輸入していましたが、商品はこれでいいのかなって。もっと僕が売るべきものがあるんじゃないかと。商売はうまくいっているけど、なんだかしっくりこないものがありました。」
日本古来のエイ革の魅力を再発見。祖父母の骨董店と自身の経験が繋がる瞬間
店舗で扱っている商品を見直したとき、ふとタイから輸入しているエイ革の財布に目を止めた。エイ革は、日本古来からの伝統技術で、刀の鞘や鎧などにも使われている素材でもあるのだ。日本でのエイ革の素材としての使われ方を改めて調べてみた。
「刀の柄にエイ革のスターマークが使われているのを見て、あっ!と驚きました。スターマークは、エイ一匹に一箇所しかない部分で、縁起物でもあります。1000年前から素材として刀に使われているんだと知った時、これだ!と思いました。」


自身の祖父母が骨董店をやっていたこと、祖母に勧められて骨董品を2年間売っていたこと、タイの革職人と出会い、エイ革の財布を輸入していたこと、革職人の修行をして職人になったこと。すべてが繋がった気がした。
「エイ革の装飾は、先人たちが古来より大切にしてきた日本の技術で、刀の柄に使用されているのは単に滑らないだけでなく、魔除けや、心を浄化するといった意味があるんです。これに気づいたときに、自分の使命は、エイ革製品を通じて、この伝統と歴史をもっと日本の皆様に伝えることだと確信しました。」


谷本の歩んできた人生と、刀にエイ革を素材として使用してきた先人たちの想いが繋がり、エイ革専門ブランド BAHARIが誕生したのだ。
「エイ革の美しさと伝統を世界に伝えたい」という情熱。事業の支えとなった出会いの数々
「刀の写真を見ていただければ分かると思いますが、装飾品としても美しいですが、日本古来よりエイ革が使われてきた伝統と歴史とその意味を、日本の皆様にも、世界にも伝えていきたいんです。」エイ革の魅力を熱心に語る谷本からは、情熱が伝わってくる。
BAHARIのエイ革財布にも貴重なスターマークが使用されている。東南アジアでは、エイは幸運の魚でラッキーフィッシュと呼ぶらしい。風水的には縁起が良いということで、エイ革の財布を開運財布として使用している人も多い。


BAHARIというブランドにたどり着くまでの谷本は、出会った人たちのサポートを受けながらも、一人で事業を続け、日本では珍しいエイ革製品専門店を経営してきた。タイの漁港からルート開拓、現地の縫製工場と提携、商品のデザインもして、職人と交渉したり、輸入して商品の写真を撮影し、ホームページにアップし、売れたら発送する。Instagram等のSNSも自ら発信。売上が好調であるからこそ忙しい毎日だった。


2013年にエイ革専門ブランドBAHARIを本格的に立ち上げてからは、元浅草の店舗、ネットショップ、そして百貨店の催事で製品を販売している。現在では、百貨店から声がかかることが増え、2023年にはスタッフを雇用し、現在は2名体制で業務を行っている。
天職にたどり着いた今、これから目指すBAHARIの展望
骨董販売で培った目利き力で、レザーウォレットに目をつけ、その中でエイ革に目をつけ、専門店BAHARIを立ち上げ、言わば「天職」にたどり着いた谷本に、今後の展望を聞いてみた。


「エイ革製品専門店としてさらに魅力的な商品を開発していきたいです。美しい素材、美しいものづくりを目指していきます。そして、エイ革に携わってきた先人たちの想いを胸に、エイ革のブランドは日本人がやるべきだと自負し、世界の皆様にも日本刀に使われてきた歴史と素材の美しさを伝えていきたいです。」
BAHARI代表、谷本貴義の情熱は尽きることがない。
BAHARI 
BAHARI(バハリ)は スワヒリ語で「海」を意味します。
「海の解放感」をコンセプトに、
「美しい素材・美しいモノづくり」を掲げ、
BAHARIに携わる全ての職人と「一心同体」で展開してまいります。


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♦取扱店
・東京都台東区 元浅草本店(不定休)
・京都伊勢丹 6階(人気商品メイン:2024年9月現在)
♦POPUPのお知らせ(2024年9月~12月末までの情報)
・9月10日(火)〜9月16日(月) 京都伊勢丹 6階
・10月9日(水)〜10月15日(火) 名古屋高島屋 1階
・11月20日(水)〜11月26日(火) あべのハルカス近鉄本店 7階
※ミニPOPUP
・7月17日(水)〜12月31日(火) 丸井今井札幌本店 一条館 3階(人気商品メイン)

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