「都会の子育て」に寄り添って11年。渋谷の住宅街に建つ『かぞくのアトリエ』が見守り続ける、こどもとおとな22万人の笑顔

2024.08.06 10:26
代々木駅から徒歩7分。静かな住宅街の一角に、小さなお庭をたずさえた渋谷区の施設『かぞくのアトリエ』(運営:株式会社マザーディクショナリー)があります。「都会の子育てを応援したい」という強い想いと明確なビジョンを根幹に個性豊かなスタッフが集結し、数多くのアーティストや近隣住人からもあたたかいサポートを受ける当施設には、赤ちゃん連れのご家族から学校帰りの小学生まで、たくさんの人たちが日々笑顔で集います。
今年8月11日で丸11年。開館から現在(2024年6月)までの来館者数はのべ220,268人、ワークショップやイベントなどの各種プログラム開催実績は約1,500回にのぼります。オープン当初はお母さんのおなかに居た女の子が11年間ずっと通っていたり、小学生だった男の子が大学生になって挨拶に来たり、スタッフの誕生日を手作りの工作ケーキで祝ってくれたり。


10年以上の歳月が与えてくれるあたたかい時間の積み重ねを通して実感すること──それは、22万という数字は結果でしかなく、ひとりひとりのこども、1組1組の親子と丁寧に心を通わせてきたからこその「今」なんだ、ということです。


私たちが『かぞくのアトリエ』で日々接している親子やこども、数え切れないほどの笑顔の秘密を少しだけお話させていただきます。
誰も教えてくれない「都会の子育て」。公園ではなく屋内に「ホッと安心できる心地いい場所」を無料で提供したかった。
「イクメン」が新語・流行語大賞トップ10に入ったのは2010年、『かぞくのアトリエ』がオープンしたのはその3年後、2013年です。流行語になったのは男性育児がまだ新しい概念で、実際には今でいう「ワンオペ育児」が一般的だったから。


男性育休の取得が推進される現在でも、多くの夫婦が子育ての不安や孤独を感じています。ある調査では「子育て中の孤立・孤独感」を感じる割合は女性で74.2%にのぼり、「こどもと二人きりで、大人と話す機会がない」「子育て仲間の輪にうまく入れない」などがその原因だといいます。


『かぞくのアトリエ』を立ち上げ、現在も運営を担う株式会社マザーディクショナリーの代表・尾見紀佐子(おみ きさこ)は、3人の子育てを通じ、まさにそういった孤独を肌で感じていました。自分自身の子育て経験や、子どもと共に暮らす中で見えてくる新しい視点をテーマに10年間お母さんたちのメディアを作ってきた経験から、「都会の子育てを応援したい」と強く願うようになったのです。


生まれたばかりの赤ちゃん。その小さく愛おしい存在に日々愛情を注ぐママたちが、まだ幼稚園や保育園に属していない時期から孤独を感じることなく、安心して集える場はとても重要です。「そこに行けば必ず誰かに会えて、居心地よく過ごせる」という無料の居場所を作りたい。それが『かぞくのアトリエ』の出発点でした。
重要なのは「場所があること」ではなく「過ごす喜び」があるかどうか。ママの笑顔と心の余裕がこどもの幸せ・自己肯定感につながる!
『かぞくのアトリエ』に通う方々からは「ここに来るとなぜだかとても心地よくて、長居したくなる」「ここに来るとホッとする」「初対面でもなぜか話が弾んで、カフェで友達と話してるみたいに寛げる」といった声が寄せられます。


赤ちゃんにとって安全で快適な場所にするのは、施設としての大前提。『かぞくのアトリエ』が目指すのは「おとなにとって居心地よい場所」です。来館者が感じる「なんとなく心地よい」「なぜかわからないけど話が弾む」という印象には、じつは理由があります。


手入れの行き届いた庭、そこで育ったグリーンが飾られる室内、選ばれたおもちゃ、館内に流れる音楽、スタッフがデザインしたPOPやサイン、アーティストの手による木製家具。年季の入った古い建物ならではのホッとする雰囲気を活かしながらも、そこに置かれたあらゆるものがあたたかい目で吟味され、空間を居心地よくしています。
でも、それらはいわば「ハード面」での環境に過ぎません。『かぞくのアトリエ』がそれ以上に大切にしているのは「人と人とのつながり」というソフト面での心地よさ。


子どもを育てるという全ての責任を背負い、悩んでいるお母さんたちが、これ以上苦しまないように。他者と悩みを共有し、励まし合うことで、自分を認め、今しかない「子育ての時間」をしっかりと楽しめる気持ちの余裕を持てるように。ここに来れば「話を聞いてくれる誰かがいる」「自分と同じ境遇の仲間がいる」──そんな場所だからこそ、「ここに来るとホッとする」と居心地のよさを感じてもらえるのです。


『かぞくのアトリエ』を立ち上げるとき、その根本には「こどもたちのために何ができるだろう?」という想いがありました。イベントやプログラムなどで特別な機会を作っても、結局こどもに最大の影響を与えるのは家庭環境。実際に多くのこどもと触れあって感じるのは「すべてのこどもが持つ共通の願いは“ママがいつも笑顔でいてくれること”」という事実です。お母さんの笑顔は子どもの心を安定させ、自己肯定感にもつながります。


ママの笑顔で家庭が幸せになる。それは一見小さな単位の「幸福」かもしれませんが、そういう家庭が増えていくことが社会全体の幸せにつながるのではないでしょうか。


母親も父親も笑顔でいられるように、子育てを楽しめるように、そのお手伝いがしたい。
少子化の今だからこそ、地域で子育てをサポートしたい。
誰も教えてくれない「都会の子育て」を、居心地のいい場所と人のつながりを作ることで応援したい。


そんな願いが『かぞくのアトリエ』の11年間を支えています。
こどももおとなも笑顔になれる! 月齢別の「おやこきょうしつ」、ここにしかない「アートスクール」、季節を感じる「フリープログラム」
居心地のいい空間で提供している選りすぐりのプログラム。体を動かしたり、ものを作ったり、アートや音楽に触れたり、季節を感じたり。何気ない時間にスタッフと一緒に楽しむ工作や手づくりおやつも、こどもたちを最高の笑顔にしてくれます。


●おやこきょうしつ:月1回/5ヵ月間の年齢別プログラム(参加無料)
『かぞくのアトリエ』一番の個性・推しといえる長期のコース。0〜3歳を対象に、月齢・年齢別に7つのクラスで実施しています。からだケア、食のこと、ものづくり、観劇など、今の時代の感性・価値観にしっかりと寄り添って、お子さんにも親御さんにも喜んでもらえる内容を心がけています。


プログラムの一例
・乳幼児のための舞台芸術「KUUKI」
・季節の恵みを楽しむ親子ごはん/岡本雅恵
・身体でお喋り!ふれあい遊び/ホナガヨウコ
●アートスクール/フリープログラム:月8〜10本(無料。アートスクールのみ材料費)
これまで提供したアートスクールは522本(開館〜2024年7月)、フリープログラムは224本(2018年4月〜2024年7月)。『かぞくのアトリエ』の在り方に共感する近隣の方やアーティストたちのサポートをいただきながら、人の暮らしに欠かせないさまざまなことを地道に、丁寧に、積み重ねています。


プログラムの一例
・音楽おどる、絵うたう馬喰町バンドコンサート/馬喰町バンド
・みんなでつくる紙芝居「声と色の実験室」おもいつきの声と色
・パパ同士で楽しく作る離乳食/ねりやかなや
・ドラァグクイーン・ストーリー・アワー読み聞かせの会
・薪窯でパンを焼こう/パン屋塩見
・アトリエの庭のキウイでドライフルーツを作ろう
・昔あそびの会
常連の親子、学校帰りのこどもたち、庭の手入れを手伝ってくれるご近所さん──みんなの笑顔と共に、これからも
『かぞくのアトリエ』は、各種プログラムを目当てに来館する方も多いのですが、それ以上に「何気ない日常」を過ごしに来る親子、こどもたちがたくさんいます。


たとえば小学生の放課後の時間帯。共働きが当たり前の今の時代に、こどもたちが楽しく安心して過ごせる「第三の居場所」は絶対に必要です。


学校から帰ってお家にランドセルを置いたら、家族の誰かが帰ってくるまでの間を過ごしに『かぞくのアトリエ』へ──今日の出来事をスタッフとおしゃべりしたり、一緒におやつをつくったり、友達と宿題したり、ミニ体育館でからだを動かしたり、自由な発想で工作したり。


ケンカもするし泣いたりもします。でも、そこに行けば必ず知っている誰かに会える。「●●くん、おかえり」「●●ちゃん、今日はどう?」と自分のことをいつも気にかけてくれる大人がいて、いつでも自由に出入りできる。『かぞくのアトリエ』は小学生のこどもたちにとって、からだにもこころにも刺激をもらえ、楽しくて安心できる。そんな場所になっているのです。
昨年の10周年を記念して、小学生たちが書いてくれたたくさんのメッセージと、
オープン当時から通ってくださる親子さんからいただいた、嬉しいメッセージ。
卒業生も訪れる地域交流の場としての役割
小学校を卒業した子が近況を伝えにふらりと立ち寄るのも日常の一コマ。友達と待ち合わせて宿題したりカードゲームに興じたり、思春期真っ只中でも居場所として利用してくれます。小学生時代の思い出をスタッフと話しているうちに感極まって涙するピュアな一面も。
開館当初から毎日のように遊びにきていた子が、いまや大学生。中学入学時には制服姿を見せてくれたり、「期末試験つかれた〜」と愚痴りにきたり。節目節目に顔を出して近況を聞かせてくれることが感慨深く、スタッフも心待ちにしています。
地域の協力で育まれる小さなお庭とこどもたち、そして未来の種まきを
「親子の居場所」「小学生の居場所」という役割だけでなく、渋谷という都会の中で近隣の方たちと育んできた交流も『かぞくのアトリエ』を彩る素晴らしい日常のひとつです。そして、そういった交流がまた、こどもたちにもよい形でつながっていき、「地域で子育てをする」という循環を生み出しています。
毎年鈴なりの見事な恵みをくれるキウイ、染色に使う藍、どんどん伸びていくハーブなど、小さいけれど豊かなお庭は、もともとお隣さんが寄付してくださったもの。しかもその方、「お庭の手入れ会」の強力な助っ人なのです。代々木の歴史を教えてくださったり、こどもたちの様子を聞いて「いいね、いいね」と目を細めたり。あたたかい気持ちが育む、アトリエ自慢のお庭です。
12年目を迎えるこの先も、親子やこどもたちにとって「いつも同じように迎えてくれる居心地よい場所」を目指して。日々のあたたかい交流をこれから先も積み重ねていけることを願ってやみません。


渋谷区こども・親子支援センター「かぞくのアトリエ」:
運営 株式会社マザーディクショナリー:

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