タクシー運転士が「怖いおじさん」だったのは昔の話! それでも「マイナスイメージ」を抱かれ気味な理由とは

2024.06.28 06:20
この記事をまとめると
■キャッシュレス化が進んだ現代のタクシーでは強盗事件こそ目立っていないが酔客とのトラブルはいまだ絶えない
■タクシー運転士は社会では必要以上に見下されている仕事のひとつであると感じる
■日本のタクシーは「安全な乗り物」となっているため不必要な偏見は排除して利用すべき
いまも続いているタクシー運転手と酔客のバトル
  クレジットカードをはじめ多種多様なキャッシュレス決済の普及により、タクシー運転士も多額の現金をもちながら乗務することはなくなったといわれている。そのため、景気浮揚とはほど遠く、国民の多くが日々生活するのに精いっぱいともいわれているなかであっても、運転士から現金を奪うといった、ガチでのタクシー強盗事件というのはあまり目立ってはいない。
  ただし、タクシー料金の踏み倒しも「強盗事件」に該当するのだが、こちらは酔客を中心に未遂も含めればそれほど減っているという印象はないようだ。
「酔った勢いで」、「酔っていたので覚えていない」、料金トラブルをはじめとしたタクシートラブルが報じられるときにはよく使われている言葉だ。酔っぱらいにまだまだ寛容な世の中とされているのが日本なのだが、ことタクシートラブルに関しては、「酔っぱらっていたので勘弁してあげて」みたいなメッセージにも筆者は感じてしまう。
  しかし、事情通に聞けば「人間は酔ったときほど本音が出るものです。酔ったときにタクシー運転士に高圧な態度をとったり、暴行を加えるということは、当事者が意識して生活していなくても潜在的にタクシー運転士という仕事を下に見ている証拠ともいえるのではないでしょうか」と語ってくれた。
「タクシー運転士の接客態度がなっていないことに問題がある」という指摘もある。新人運転士に多いのだが、「道を知らない」ということも利用者の不満を募らせてしまうこともあるだろう。しかし、筆者が日々タクシーを利用している限りは目に余るような、接客態度の悪い運転士にあたることはほとんどない。
  個人によって接客態度が悪いという認識レベルに差もあるのでなんともいえないところだが、タクシー運転士から見ても社会人としてどうなのかと思うほど、乗客から見下されたりすることもあると聞く。「所詮は人生のなかではほんの一瞬の出来事なので気にしないようにしている」とはある達観したタクシー運転士の話。
  先日、自宅最寄り駅からタクシーに乗って目的地を告げるといきなり、「わからないので道を教えてください」といわれた。顔なじみの運転士も多いので冗談でも言っているのかなと聞き流そうとしたら、さらに真顔でいわれた。住所ではなく自宅最寄りの比較的地元では有名な交差点名を告げたのだが、わからないといわれたのは初めてのことで驚いてしまった。
  タクシー業界としては、「場所がわからない時は知ったかぶりをせずに正直にお客に聞かないとトラブルを誘発する」とも指導していると聞いたことがあるので、役所などのわかりやすいランドマークを教えながら進んでもらった。海外ではすでに道を覚えることを放棄したかのように、いきなりグーグルマップなどで検索されたりするのはザラのこと。日本でもタクシーにカーナビがついているのは当たり前なのだが、カーナビを使おうとすると、「プロなのにカーナビ使うのか」とクレームをつけてくる乗客もいるので、「カーナビ使ってください」とする乗客以外は極力使わないようにしている運転士もいると聞いたことがある。
  タクシー運転士という仕事は社会では必要以上に見下される仕事のひとつともいわれている。もちろん、バブル経済のころやそれ以前のタクシーといえば「接客」ともいえない態度をとる運転士も多かった。深夜の長距離利用なのに現金で払おうとしたら、「なんだチケットじゃないのか」と舌打ちされたことも大昔に筆者は経験している。バブル経済のころには金額を入れない白紙チケットを受け取り、運転士が好きな金額(料金以上の高額)を入れていたのである。
サービス向上を掲げる日本のタクシーは安心で便利な乗り物
  運転士側にも問題行動がなかった(現在進行形の話でもある)と完全否定できないのも現実なのだが、利用者側も不必要にタクシー運転士を蔑む人が多いのは歴史的背景もあり、日本人のDNAに深く刻みこまれてしまっていることもあるのかもしれない。
  時代劇でもお馴染みだが、江戸時代には「駕籠(かご)屋」という職業があり、これが日本のタクシーの源流だと筆者は認識している。いまどきでいうところの市内で営業する「町かご」のほか、東海道など街道にて商売する「道中かご」などがあったようだ。
  昭和を中心に放映された国民的時代劇ともいわれた、「ご隠居」とその一行が日本全国を旅しながら悪を懲らしめる娯楽時代劇ではときおり、道中かご屋が旅人に悪さをしているところを一行が助けるというシーンがあった。法外な料金を請求してきたり、若い女性を誘拐しようとしたりするシーンが描かれることがあった。さらに、いまでは差別用語となっているかご屋を差別する言葉を発しながら(放映開始当時からしばらくはOKだったが、やがて使えなくなった)、「あいつらは悪さばかりする」といったセリフもあったりした(この差別用語はいまもタクシーやバス運転士への差別用語としてあえて使う人もいる)。
  筆者は江戸時代に生活したこともなく、タイムマシンもないので真実を確認する術はないが、差別的な別称も存在していたことを考えると、江戸時代でもかご屋という仕事を多くの人が蔑んで見ていたものと考えている。
  自動車を使った日本のタクシーの起源は明治末期とされている。大正や昭和初期には東京や大阪市内(いまの東京都内など)を1円均一で走る「円タク」というものも走っていた。当時の国家公務員の給料が75円のころの1円なので、タクシーを誰もが利用できる乗り物ではなかったことは確かで、いまもタクシーを使うと「贅沢しているね」などといわれるのはそのころの名残りなのかもしれない。
  戦後は焼け野原のなか、タクシー稼業が「車庫とクルマがあればすぐできる日銭商売」ともいわれるなか、経済復興してくると現代人のなかでタクシーに対して悪い印象を持つ人が想い描く、乱暴な運転や料金のぼったくり、乗車拒否などの目立つ、「神風タクシー」というのが問題となった。
  歴史的背景をたどってくると、かご屋やタクシーを利用して嫌な思いをしたという経験を多くの人がしてきたのは否定できないだろう。その記憶が日本人のDNAに深く刻まれ継承され、現代人にも知らず知らずのうちにタクシーというものに快くない印象をもつこととなり、それが結果的にフィルターを通して見てしまうことになったり、酔ったときについ本音として出てきてしまいトラブルになってしまっていることもあるというのも、けっして否定することはできないものとも考えている。
  筆者も幼少期のかすかな記憶には、「武闘派」とも表現していい、「タクシー運転士=怖い」というものが残っているし、当時、母親からも「怖いオジサンたち」と聞いたことも覚えている。
  タクシー運転士も多種多様であり、いまでも利用したら嫌な思いをすることもあるだろう。ただ、過去にはその嫌な思いをする頻度ははるかに多く、その記憶がDNAに刻まれているというのはオーバーであっても語り継がれてしまっており、その過程でタクシー運転士という仕事を必要以上に下に見る人たちがいるのも間違いないようである。
  少し前には履歴書にタクシー運転士の経験があると書くと、異業種ではまず採用されることはなかったともいわれている。タクシー業界がサービス向上に励んでおり、諸外国に比べれば日本のタクシーは確実に「安全な乗り物」となっているのは間違いない(海外は危なすぎることもあるが)。利用者も不必要な偏見はぜひ排除して利用してもらいたい。
  それでもタクシー側に問題があると判断したときは、罵倒や暴力に訴えるのではなく正式に問題提起をして、より使いやすい乗り物になるようにぜひ協力してほしい。

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