スペーシアが5月の新車販売でトップに! N-BOXの首位陥落の理由は「ダイハツの不正問題」と「WR-Vの好調」にあり

2024.06.23 07:00
この記事をまとめると
■2024年5月単月の車名別新車販売台数でホンダN-BOXが首位から陥落した
■N-BOXに代わって首位となったのは同時期にフルモデルチェンジしたスズキ・スペーシア
■乗用車ではトヨタの認証検査不正の影響が少ないシエンタの躍進に期待がかかる
新型N-BOXが販売台数の首位から陥落
  自販連(日本自動車販売協会連合会)と全軽自協(全国軽自動車協会連合会)から、2024年5月単月の車名(通称名)別新車販売台数が発表されると業界内がざわついた。新車販売ナンバー1の常連であったホンダN-BOXが首位陥落となったのである。
  とはいっても、2023年の各単月の販売統計を見ると、6月と7月はN-BOXがトップを逃している。ただしこれは先代、しかもモデル末期での話。現行N-BOXとしては初の首位陥落となっている。前述した2023年6月と7月は先代モデル末期で値引き条件もよく、好条件下でまさにセール状態のなかトップを逃しているのだが、これは供給上の問題や新型デビュー直前ということで、一部需要が現行型に流れていることも影響したとされている。
  その後、先代型ファイナルセールともいえる9月(現行モデルの正式発売は10月6日)には2万台超を販売し、先代モデルは有終の美を飾っている。そして、2023年10月は9月以上となる約2.3万台を販売している。これは現行モデルだけではなく先代在庫車もまだまだ新車として販売されていた結果と判断できる。11月も2万台超、12月は2万台弱を販売しているが、これは新型としてデビューした現行モデルの本格供給が始まったことを表しているといっていいだろう。
  しかし年が明け2024年になると雲行きが怪しくなってきた。販売台数自体はけっして見劣りの目立つものではないのだが、前年同期比でプラスにならないどころかマイナス幅が結構目立つようになっていた。新型車としてもてはやされる「新型車特需」のようなものは、発売後3カ月ほどしか続かないともいわれているが、その後の落ち込みは際立って見えた。
  2024年2月はスズキ・スペーシアに、そして2024年2月は登録車のトヨタ・ヤリスに僅差まで迫られながらもトップを死守していたが、ついに2024年5月、スズキ・スペーシアにトップの座を譲ることとなった。その差はわずか578台であった。スペーシアはN-BOXとほぼ時を同じくしてフルモデルチェンジを行っている。
  しかも、N-BOXが2024年に入ってから4月まで前年同期比で100%を超えられない月が続いているのに対し、スペーシアは、ときには前年同期比で150%を超える勢いでモデルチェンジ以降前年同期比100%超えを続けている。ダイハツが認証不正問題で生産及び出荷停止となり、ダイハツの軽自動車を購入検討していたユーザーをスズキが囲い込みに成功できたという部分があるものの、N-BOXとスペーシアはモデルチェンジ以降で明暗がわかれているといってもいいだろう。
  2024年5月単月は前年同期比で100%超えしたにもかかわらずN-BOXがトップを逃した背景には、いずれもホンダのなかで帰結するものが大きく影響しているのではないかと考えている。
  軽自動車における新車販売では、ディーラー名義などで行う「自社届け出」による台数の上積みが広範に行われている。ボディ寸法やエンジンなど規格が厳密な軽自動車では、性能面でライバルメーカーに差をつけるのは難しく、見た目の違いだけでどの軽自動車を買うかの判断をする人も多い。そのなかで「軽自動車ブランド」や「軽自動車のなかで」そして「新車販売」などのフレーズで「販売ナンバー1」というフレーズはかなり有効な販売ツールとなる。
  そのため、販売先もないのに未届け出の新車にディーラー名義などでナンバープレートだけつけて新車販売台数の上積みを行う「自社届け出」が頻繁におこなわれている。ダイハツが生産及び出荷停止をしているなかでも、自社届け出車両が届け出済未使用軽中古車として中古車市場に大量に流通していたので、「新車でダイハツの軽自動車が買えないのなら」と中古車にお客が流れたことも目立ち、新車販売においては、スズキぐらいしかダイハツ軽自動車を新車として買えない人の受け皿として目立った囲い込みはできなかったのである。
6月以降はトヨタ・シエンタの販売状況に注目
  現状では届け出済み未使用軽中古車はダイハツの軽自動車が圧倒的に多いように見える。そのなかでスズキの軽自動車は全般的に見ても流通台数は少なめとなっている。対してホンダ、とくにN-BOXは先代型だけではなく現行型も目立って届け出済み未使用軽中古車が展示場に並んでいる。
  状況としては正規の新車販売として波に乗り切れない分を自社届け出で販売台数の上積みを図ろうとしても、すでに届け出済み未使用軽中古車が多く流通している状況では、なかなか思うように自社届け出ができず、販売台数が伸び悩んでいるように見える。届け出済み未使用軽中古車の流通台数が多くなれば、N-BOXの再販価値の低下傾向を招くことにもなる。N-BOXは新車販売において、軽自動車のなかでも抜群に再販価値がいいのも人気のひとつなので、それが揺らぐことは可能な限り避ける必要があったことも見てとれる。
  もうひとつの理由はWR-Vの好調な販売状況である。軽自動車も含めた販売統計(含軽統計)では、WR-Vは2024年5月単月にて3063台を販売して30位に入っている。そして、登録車だけの統計では19位に入っている。WR-Vは発売1カ月時点で累計1万3000台を受注しているのだ。販売計画は月に3000台なので、フル体制で供給していることになるのだが、まだまだ多くのバックオーダーを抱えていることになる。
  廉価グレードのXでは支払い総額で250万円以内に収めることも可能となり、N-BOXカスタムより安く購入することも可能となっている。そもそもN-BOXは「絶対に軽自動車が欲しい」という人ばかりではないので、「それなら」とWR-Vを選ぶ動きも目立っているとも聞いている。さらに、WR-Vは他銘柄(他メーカー)ユーザーからの乗り換えよりも、ホンダ車からの乗り換えも多く、これもN-BOX販売の伸び悩みを助長しているようだ。
  もちろん、N-BOXの届け出済み未使用軽中古車が多くなれば、新車購入ではなくそちらへ流れることも新車販売へは影響してくるだろう。
  ある広範な地域をカバーするホンダカーズ店では、N-BOXの在庫を500台抱えているとバナー広告を掲示していた。夏商戦を経て事業年度締め上半期末となる6月から9月までは積極的に新車を販売しなければならない時期となっている。このままではN-BOXの届け出済み未使用軽中古車はさらに多くなる可能性が十分高いといえよう。
  N-BOXやホンダ系の動き以外で気になるのはヤリスシリーズの行方である。登録車販売トップ常連のヤリスシリーズ内で存在感を見せるのが「ヤリスクロス」だ。しかし、先ごろ発覚した型式指定取得おける認証試験取得に関する問題で、ヤリスクロスは本稿執筆段階では生産及び出荷、新規受注停止が続いている。生産などの再開がいつになるのかにもよるのだが、再開まで長期化すれば、中古車市場での流通在庫などもほぼ存在しないので、ヤリスとしての新車販売台数が急減する時期がしばらく続くことも予想できる。
  カローラ・アクシオ&フィールダーも生産及び出荷停止、新規受注停止となっているので、カローラシリーズの販売台数に影響を与えるだろう。4月の統計でみるとカローラシリーズにおけるアクシオ&フィーダーの比率は約13%となっているが、これが影響して、登録車販売トップ争いから距離を置くことにもなりかねない。となると、登録車トップ争いの主役になりそうなのがトヨタ・シエンタといえるだろう。
  改良を行ったばかりであるし、近々ライバルのホンダ・フリードも新型が登場するので、相乗効果で販売活動も活発になりそうだ。本稿執筆時点に発注すれば2024年8月にも納車可能というトヨタ車のなかで最速級ともいえる順調な納期であることも手伝って、登録車販売トップの有望株ともいえるだろう。2024年5月でも登録車のみで3位に入っていることからも期待はできる。
  トヨタ・ノア&ヴォクシーは、現状では年末もしくは年明け予定の改良を控えて新規受注停止となっており、バックオーダーを消化している状況にあるが、供給体制の改善、つまり納期が短くなってきているとのこと。
  秋以降の生産余剰次第の話にはなるが、改良前モデルの新規発注が一時的に再開となるかもしれないという話もあるので、改良後の値上げ(現状ではやむを得ないともいえるのだが)を気にする人は、ディーラーと親密なコンタクトを取っておいたほうがいいだろう。

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