「乗らなくても」じゃなくて「乗らないほうが」ボロくなる! 長期間動かさないクルマがみるみる劣化するワケ

2024.06.06 10:00
この記事をまとめると
■クルマは長年乗っていないと劣化が目立つようになる
■ガソリンやオイルは放置すると劣化して役目を果たさなくなる
■紫外線や湿度などの外的要因もクルマの劣化を進行させる原因だ
放置車両はなぜか劣化しやすい
  趣味のクルマを所有している人で、仕事が忙しかったりとちょっとした事情でしばらく乗らない期間があったとき、半年や1年経って久しぶりに乗ろうとエンジンをかけようとすると、「キュルキュルキュル……」とセルはまわるけどエンジンがかからない、なんてことはそれなりにあることです。
  人によっては「しばらく相手してやれなかったからへそを曲げちゃったのかなー」なんて思わず擬人化してしまったりすることもあるでしょう。
  でもじつはこの考え、一部は当たっていると思います。クルマという機械はなぜか放置期間が長くなるほど調子が悪くなる傾向があるんです。
  これはけっして人格をもっていて「へそを曲げちゃった」わけではありません。確実に原因があることなんです。
  ここではクルマを放置するとなぜ調子が悪くなるのかということを、ちょっと掘り下げてみたいと思います。
■放置中にエンジンの内部ではこんなことが起きている
  長期間放置すると、なぜエンジンがかからなくなったり、調子が悪くなったりするのでしょう? ちょっとエンジン内部に想像力を働かせてみます。
・オイルが流れ落ちる
  放置するとまずエンジンの内部ではオイルが重力に引かれて下の方に流れ落ちていきます。エンジンという機械は内部でピストンやクランクシャフト、カムなどのパーツがこすれ合いながら稼働しています。そのこすれ合う間にオイルが膜を張っているから傷つかずに済んでいるんです。
  では、オイルが流れ落ち、膜が薄くなってしまったらどうなるでしょう? 金属同士が直接こすれ合うので摩耗したり傷ついたりしてしまいます。これがひどくなると焼き付いたりカジリが発生して表面が破損してしまいます。
  よほど長期間の放置でなければ動かしているうちにオイルがまわり、ここまでのダメージにはなりませんが、しばらく放置したあとでいきなりエンジンを高回転までまわしたりした場合は、この限りではありません。
・燃料が劣化する
  また、燃料系統にも徐々に変化が起きています。燃料のガソリンは揮発性の液体なので、動かしていない状態でも、燃料系統の各部で揮発してしまいます。とくに燃料を噴射するインジェクターの噴射口は空気に触れているため揮発が進みやすい部分です。
  また、ガソリンは劣化しないと勘違いしている人もいると思いますが、長期間放置しているとガソリンも劣化が進みます。成分が酸化していき、揮発の進行と併せてだんだん茶色くドロッとしてきます。場所によっては周囲の金属の成分と化合して緑色をおびたりします。
  こうなってしまったガソリンは、本来の着火性能を発揮出来ないため噴射しているのに燃えにくく、エンジンの始動不良状態を起こします。
  また、インジェクターの噴射口はけっこう精密な構造をしています。その部分でガソリンが劣化すると、インジェクターの作動不良を引き起こす原因になります。これもまた始動不良の原因になり、始動しても不調な状態になる可能性が高いんです。
■バッテリーの性能低下
  クルマのバッテリーは大きくて重いので、かなりタフだというイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。そのせいか、ちょっと放置したくらいでは性能が低下すると考えていない人も少なくないように感じます。
  しかし、バッテリーは放置によって確実に性能が低下します。いちばんの原因は「微弱電力の消費」でしょう。
  クルマは始動していない状態でも微量の電力を消費しています。いわゆる「待機電力」というヤツです。リモコンキーからの信号を受信するために、ECUやセンサーは常に起きている状態を維持していなければなりません。
  また、いまはほぼ見かけませんが、純正の時計や後付けの温度計などの常時電源に接続したアクセサリーも、微量の電力を消費します。
  これらの電力消費量では半年程度でバッテリーが空になることはそうないと思いますが、それ以上になると完全に上がってしまうこともあります。
  また、何らかの原因で蒸発したりして内部のバッテリー液が減っていくと金属パーツの劣化が進み、再生不能な性能低下を招くこともあるようですので注意しましょう。
動かさないことが原因で各部が痛む場合も
■足まわりではサビや固着や劣化が進む
  クルマの足まわりはアームやブッシュなどのいろいろなパーツで構成されていて、それぞれが稼働しながら性能を発揮していますが、この部分も動かさずに放置するとさまざまな症状が進行して作動を妨げるようになってしまいます。
  その稼働を妨げる原因のひとつはサビです。足まわりで金属同士が直接こすれ合う箇所は多くありませんが、たとえばサスペンションのバネを支える部分などでサビが進むと、ギシギシといった異音の原因になります。
  次にグリスの劣化です。ステアリングアームやラック&ピニオンのジョイント部分などにはゴムブーツの内部にグリスが封入されていますが、このブーツが劣化でひび割れた場合、内部のグリスの酸化が始まります。グリスによっては、劣化によって粘度が高くなり、ハンドルの重さが発生することもあります。
  また、ゴムの劣化で注意したいのはブッシュの部分です。アームの付け根などには振動を吸収するためにゴムが挿入されていますが、それが泥水やオイルなどによって徐々に劣化していき、大事な柔軟性が損なわれていきます。稼働していればいろんな方向に荷重がかかるのでまだマシなのですが、放置していると一定方向にずっと荷重がかかるので、劣化に加えて変形してしまいます。この状態になると、きちんと性能を発揮できなくなるので交換が必要になります。
■紫外線で内外装にダメージが進む
  外観で最大の敵は紫外線でしょう。紫外線というのは、ちょっとの照射で日焼けしてしまうくらいパワーが大きいものです。屋根のない青空駐車でカバーもかけていない状態では、毎日のように紫外線のパワーに晒されているので、表面の劣化がじりじりと進んでしまいます。
  クルマの塗装はそれなりに紫外線の耐性も考えられているようですが、それでも長期間の放置では劣化してしまいます。まず最表面のクリア層がダメージを受けてツヤがなくなってきます。これだけでも結構みすぼらしく感じてしまいますが、赤や黄色などの原色で発色の良いカラーの車両では、よりダメージを受けやすい傾向があるので、発色がどんどん失われていきます。赤いクルマだったのに、数年で白っちゃけたピンクになっていた……なんていうケースもたまに見かけます。
  これは内装にも当てはまります。とくに陽の当たる箇所のダッシュボードや後部席のヘッドレストが白っぽくなってしまっているのは、紫外線によるダメージです。
■カビや細菌の活性化で臭いが出る
  これは旧いクルマでとくに多い状況ですが、しばらく放置した車両のドアを開けたら、独特のなんともいえない臭いがブワッと漏れ出てくる、というケース。
  その原因としてはカビや細菌が挙げられます。クルマの室内は密室ですが、空調などの通路でわずかに外ともつながっていますので、湿気を含んだ空気が入ってきたりします。それが気温の高い時期に熱せられると温室のような状態になり、もともと付着していた皮脂や汚れなどに含まれているカビや細菌が活性化します。それがあの臭いの原因の主な部分ともいわれています。
  クルマの放置で起こる不調の原因をいくつか挙げてみました。長期間放置していると、このようにいろんな箇所でいろんな症状が進んでしまいます。クルマをひんぱんに動かしていれば、そのほとんどの原因が進まずに済ませられるので、不調や劣化を防ぐには放置しないというのが根本的な解決策だと思います。
  ある意味「目をかけてやらないと拗ねる」というのは間違いではないかもしれませんね。

あわせて読みたい

初代からコスパめっちゃよかったのよ!! 「最強のオールマイティカー」電撃見参!!! 三菱初代アウトランダーPHEVの魅力
ベストカーWeb
【防災】やっぱり手回し発電機が安心!過酷な環境下でも使える堅牢ボディに注目
MADURO ONLINE
夏季限定の「チョコレート水ようかん」が登場
PR TIMES Topics
ウクライナのケミカルメーカー! エンジン内部の傷を修復する「XADO」の気になる商品たち【大阪オートメッセ2024】
WEB CARTOP
ゴールデンウィークに急増する“車のトラブル”…出発前にチェックしたい「車の点検ポイント」を紹介
TOKYO FM+
藤井聡太が5度目の防衛に挑む「王位戦」を間近で楽しむツアー開催!
antenna
もしやスペア!? 大型トラックがバッテリーを2つ積んでいるワケ
WEB CARTOP
ディーゼルトラックはマフラーから煙が出て当たり前……じゃない! 加速時に黒煙や白煙を吹くトラックは壊れかけだった!!
WEB CARTOP
頑張る人の背中をそっと押す「”勝負”への応援ギフト」選べる3種類のアロマセット発売
PR TIMES Topics
交換の目安は“半年”!「エンジンオイル」の役割とセルフでできる“点検方法”を確認
TOKYO FM+
愛車の寿命を伸ばすには「春メンテ」が大事!! 交換しておくもの&やっておくこと3選
ベストカーWeb
船橋屋姉妹ブランド「こよみ」からさっぱり和スイーツ新登場
PR TIMES Topics
ハイオクって何の略?レギュラー車に入れたら壊れる?安全運転のプロが教える「ガソリン豆知識」 - それって本当?クルマの「当たり前」
ダイヤモンド・オンライン
エンジンかけるだけで何手順踏むんだよ! それでも乗りたい旧車オーナーが日々行っている儀式7つ
WEB CARTOP
スペシャルティのコーヒー豆のみを使用した「LAHA COFFEE」スタート
PR TIMES Topics
思い入れのあるボロボロのクルマ……って車検は通せる? じつは車検に通っても安全なクルマとはいえなかった!
WEB CARTOP
追加メーターは雰囲気作りのアイテムじゃない! 純正の警告灯じゃ足りない「エンジンブロー」を防ぐ大切な役割とは
WEB CARTOP
期間限定キャンペーン! カンデオホテルズが誇る「スカイスパ」をお得に楽しもう
antenna
「ガス欠になっても燃料入れればいいだけでしょ?」は甘すぎる考え! じつはクルマも傷むし高速では違反だった
WEB CARTOP
ターボの「ポン付け」とかいうけど全然「ポン」じゃない! いまどきのNA車のターボ化は超高難易度だった!!
WEB CARTOP