『純米酒専門YATA』のオープンを起点に、日本酒の価値を高める改革と創出に乗り出した挑戦ストーリー。日本酒文化の向上に全力を注ぐ、情熱と冷静緻密な哲学とは。

2024.06.05 18:40
日本酒に特化した酒類販売(小売・卸売)を行う株式会社マグネティックフィールド(本社:愛知県名古屋市)の代表取締役・山本将守は、Jリーグのサッカー練習生から実家の酒屋を継ぎ、修行ともいえる下積み業務をこなしながら日本酒の知識の習得に励んできました。そして、家業の営業形態を根本から変えるほどの改革を起こし、純米酒専門の立ち飲みバーをオープン。その後の活躍はめざましく、蔵元との協働により日本酒醸造、酒器や内装といったプロダクトの商品開発にも進出。さらに、日本酒や経営に関する講演や講座、酒蔵や日本酒をつなぐイベント事業など、日本酒に関わるさまざまな事業をプロデュースしています。


本ストーリーでは、今や日本酒業界内はもとよりその枠を超えて注目を集める山本将守氏の成功への足がかりとなった『純米酒専門YATA』誕生に着目しながら、独自の経営戦略を支える山本氏の日本酒に寄せる情熱と冷静緻密な哲学をお伝えします。
山本将守(ヤマモト マサモリ) 
株式会社マグネティックフィールド 代表取締役
元サッカー選手という異色ともいえる経歴の持ち主。名誉唎酒師の資格を有し世界大会のファイナリストにも選出される。日本酒の販売はもとより、純米酒専門の立ち飲みバーの経営、飲食店のセールスプロモーションを手掛け、新規事業にも精力的に参戦。既成概念を打ち破る取り組みが注目を集めている。
サッカー選手の夢を諦念。名古屋に戻り、家業の酒屋を継ぐ
プロのサッカー選手になる夢を諦めて酒屋の家業を継いだのは24歳のときです。


内定していたチームが諸事情により消滅。自身の行き場をなくし、地元の名古屋に帰る決心をしたのです。サッカーで成し遂げられなかったものを新しい仕事で得ようと心に誓って・・・・・・。しかし、仕事は甘くなかったですね。子どもの頃から見てきた商売とはいえ、経験もスキルもなく、親の命じるままに働くしかありませんでした。レジ打ちと配達に明け暮れる日々。休みを取ることもままなりません、これほど働いても親は認めてくれません。特に母親は厳しくて、「そこまで言うか」というほど、私のやることなすこと全てを否定されました。
「唎酒師」との出会い。資格を取得して自信をつける
毎日が忍耐の日々でしたが、私は挫けませんでした。「酒類小売業免許」に守られ胡座をかいてきた今までの酒屋の営業スタイルではジリ貧になることは目に見えていましたし、コミュ力はあっても商品知識に乏しい母親の接客にも限界を感じました。


そんな折、SSI(日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会)が「唎酒師」という認定資格を出していることを知り申し込みました。この資格との出会いは大きかったですね。日本酒の知識に飢えていた私にとって革命的ともいえる授業で強い影響を受けました。正しい知識と理論に基づいた行動であれば、未知の領域に突き進んでも大丈夫だという自信がつきました。
『純米酒専門YATA』をオープン。蔵元に直談判し取引へと繋げる
確信を得た私はさっそく行動に移します。両親の反対を押し切って配達とビールの販売を辞めたのです。当時、この2つで売り上げの7割を占めていました。その数字を見れば、反対されても仕方ありません。しかし、利益が薄く、将来を見据えたとき、廃止すべきという結論に至りました。


これから必要なのは、付加価値を付ける商いのやり方です。このおもいが、『純米酒専門YATA』の出店につながりました。とはいえ前途は茨の道。私は問屋(酒の卸業者)に頼らない道を選んだので、蔵元に直談判するしか方法がありません。取り引きを希望する蔵元40社に無理を承知で手紙を書きました。ぜんぶ直筆です。それでも20社から了承を得ました。私は以前から蔵元とのつきあいを大切にしてきましたし、正しいと思う日本酒の売り方、広め方を発信し続けてきたので、何の実績もない若造が始めたことでも共感を抱いてもらえたのでしょう。
『YATA』で純米酒を堪能してほしい。やがて台湾でも日本酒の講座を開くことに
純米酒専門『YATA』1号店は、名古屋の栄地区に作った僅か4.5坪の小さなお店です。店は小さいですが、私の描いたプランは壮大で緻密でした。日本酒好きだけではなく、日本酒を飲まない方でも気軽に日本酒が楽しめるようにしたかったので立ち飲みスタイルを導入。さまざまなタイプの日本酒と銘柄を取り揃え、リーズナブルな価格で唎酒ができるサービスを実施しました。冷はワイングラスで提供します。純米酒の啓蒙に力を入れたのは、YATAに来れば日本酒の原点ともいえる純米酒が堪能できることを知らしめたかったからです。YATA開設のテーマであり、その情報発信地としてYATAを機能させたいと思いました。正しい商品知識と日本酒がおいしく飲める適切な提供方法を心がけたことが繁盛につながったと確信します。


その後、店舗数は増え、東京の渋谷や新宿にも出店を果たしました。こうした活動を耳にした台湾の関係者からオファーをいただき、台湾でも日本酒の講座を開く機会を得て講師を務めました。さらに、台北台南、台中と日本酒啓蒙ツアーなどを行うようになり、台湾にも日本酒のすばらしさを伝えています。
YATAの飲み方は「ネオスタンダード」。山本は新たな価値を創出するコンセプターとなる
勝負をかけたYATAが、大勢の人に受け入れられたことは喜ばしい限りです。会社を立ち上げ、社員を雇い、私にとって大きな挑戦になりました。周りからは、日本初の試みで成功したことを評価されました。


しかし、これは誤解です。私は決して新しいことを始めたわけではありません。日本酒の唎酒をさせてくれる店はYATAの開設以前から他にもあります。それに、立ち飲みはそもそも酒を買った酒屋で飲む「角打ち」が原型です。つまり、どちらも日本ではスタンダードなもの。私はそれを洗練されたスタイルにアレンジし、日本酒の飲み方や楽しみ方に気づきを与えたに過ぎません。


それゆえ、YATAが作り上げたスタイルを「ネオスタンダード」と呼んでいます。パイオニアではないけれど、新たな価値を創出するコンセプター。これが、私の真の役割だと自分に言い聞かせています。こうしたおもいを昇華させた私は、やがて「酒道(さどう)」という精神性と美意識を掲げ、活動を本格化させます。
伝えていきたい2つのこと。日本酒の価値、そして日本酒を飲む楽しさを「酒人」として発信していく。
酒道と聞いて、茶道や華道を連想される方は多いでしょう。精神性において共通する部分は多々ありますが、「酒道」は作法を極めるのが目的ではありません。私が考える「酒道」は、日本酒の価値を知ってもらうことです。そして、いっそう日本酒の魅力を掘り下げて伝えることを念頭に置いています。日本酒は、古代より神に捧げるためのお酒として大切にされてきました。神事や仏事だけでなく、朝廷の儀式や歌人が集う宴でも重宝されました。翻って現代においても祭事や季節折々の行事に欠かせません。御神酒(おみき)と呼ばれて崇められるお酒は、世界広しといえども日本酒ぐらいではないでしょうか。私はこれほど日本文化と深く結びついた神聖な日本酒が、酔うための酒として杜撰に扱われるのは納得がいきません。日常においても銘柄や蔵元に興味を抱いて、料理との相性にも気を向けながら、おいしく、楽しく飲んでいただきたい。


そこで、自身の信念に基づき始めたことがあります。とてつもないポテンシャルを持った日本酒の魅力を広めるために、私は「酒人(さじん)」の肩書きを名乗り、2つのアクションを行っています。日本酒一杯に込められた価値を伝える「酒事(さじ)」と、日本酒を飲む楽しさを発信する「酒会(さかい)」と名づけた取り組みです。この2つの取り組みが私の掲げる酒人の原動力となっています。
新しい飲み方のスタイルを提供。モノではなく体験を売る
YATAの成功により、私は自分のやり方が間違っていなかったことを確信します。自信も深まりました。だからといって、自分の目標が達成されたとは思っていません。これで安泰という感情もなく、むしろ危機感や不安が募るばかりです。そうしたおもいを抱かせる要因の1つに日本の出生数の減少があげられます。厚生労働省によると、去年1年間に生まれた子どもの数は過去最少を更新。出生数が減少するのは8年連続で、今後も続くと予想されます。尋常ではない数字です。このままいけば当然人口が減って、日本酒を嗜む人の絶対数も少なくなります。この状況をただ眺めているだけでは、事業が立ち行かなくなるのは必然です。


では、そうならないためにはどうすればよいのか。私は、日本酒の存在価値を高め、新しい飲み方のスタイルを提供する以外にYATAがさらに進化発展する道はないと断言します。ここで威力を発揮するのが、先ほど説明した酒人としての取り組みです。人口が減るなら、日本酒の価値を高めればいい。日本酒を楽しむ豊かな環境を創出し、上質かつ洗練されたシーンを提供する。モノではなくコト(体験)を売り、深掘りした日本酒の魅力を未来につなげて育んでいく。そして後世に伝える。それがうまくいけば、一瓶2,000円だった日本酒が倍の4,000円になっても売れるようになります。この考察を証明するかのように、日本酒のポテンシャルの高さを認める外国人は、ためらいもなく上質な日本酒には大枚をはたきます。YATAを訪れる外国のお客様は増える一方で、日本有数の繁華街にある新宿店は今や30%くらいを占めます。この光景を見ると、私は明るい気持ちになれます。日本酒の未来が、悲観すべき要素ばかりでないことを教えてくれるからです。
日本酒の価値と魅力を広めたい。日本酒がアートの領域に到達することを目指して
外国人の方にも日本酒のポテンシャルの高さを認められた今、酒事と酒会の活動を両輪にして、この機運を高めていきたいと思います。来年は、私が24歳でこの業界に入ってからちょうど20年の節目の年となります。最初の頃は向かい風ばかりで、思うように前に進めない日々が続きました。経営方針をめぐり、旧態依然としたやり方を変えない親とは何度ぶつかったことでしょう。それでも日本酒の価値と魅力を世の中に広める伝道者になるんだという信念を貫きました。諦めなかったことが、自身の成長につながり、新規事業を成功に導く礎となりました。


YATAは現在、愛知に3店舗、東京に2店舗の計5店舗を展開していますが、来年は年間10万人の来客を目指します。注視したいのはコンバージョンです。訪問客のうち、何人が目的としている行動をとってくれたかを示す数値にこだわります。日本酒の1杯の価値をわかってもらい、日本酒を嗜むことがスタイリッシュな行為であると思わせたい。日本酒をアートの領域まで昇華させたいと考えているのです。大変なことは承知しています。しかし、酒人を名乗り、酒事を務め、酒会を実践する私に停滞している時間はありません。新たな価値を創出するコンセプターの側面を持つ総合プロデューサーとして、日本酒文化の向上に全力を注ぎます。
【会社概要】
社名:株式会社マグネティックフィールド
本社所在地:愛知県名古屋市中村区名駅1−1−1 JPタワーKITTE1階
代表取締役:山本将守
純米酒専門『YATA』HP:https://junmaishu.net

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