中国車ってEV一辺倒じゃなかったの!? インドネシアでみた中国メーカー「エンジン車」の存在感

2024.03.10 07:00
この記事をまとめると
■日本ではEVメーカーとして知られるBYDも中国国内ではPHEVをラインアップしている
■2024年2月に訪れたインドネシアでは中国車でもICE車が目立つ
■インドネシアにおける日本車の地位は揺るぎないが、中国ICE車を見かける現状は、長期的視野に立つと見逃せない
意外なほどICE車が走っているインドネシア
  中国の自動車メーカーといえば、中国国内及び海外でもBEV(バッテリー電気自動車)のラインアップが多いことで有名。中国国内では2035年にICE(内燃機関)車が全面販売禁止予定となっているが、これについてはHEV(ハイブリッド車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)は対象外になるとされている。
  国内では大気汚染や原油輸入量の抑制、そして世界市場で見れば、日本や韓国、欧米のいわゆる「西側自動車メーカー」に対し、自国自動車メーカーの優位性を高める意味でも、中国政府はBEV普及に積極的姿勢を示すが、当面は100%すべてをBEVやFCEVなど純粋なNEV(新エネルギー車)にするつもりはない様子。
  広大な国土を持つ中国では、発展著しい沿岸部と内陸部では依然としてエネルギー事情も大きく異なっている。その意味でもNEVに偏ることなく、地域に合わせてバランスよく環境負荷低減を進めていく必要もあり、2035年以降もHEVやPHEVの販売は継続されるようである。世界的にはBEVメーカーとして有名なBYD(比亜迪汽車)すら、中国国内ではPHEVをラインアップしている。
  現在、日本国内に本格参入している中国メーカーはBYDのみであり、そのBYDはBEVのみをラインアップしている。これは、積極参入を進めている東南アジアのタイやインドネシア市場でも同様の動きとなっている。しかし、タイやインドネシア市場に参入しているBYD以外の中国メーカーでは、そのほとんどでICE車もラインアップしている。
  2024年2月にインドネシアの首都ジャカルタ市内で開催された、IIMS2024(インドネシア国際モーターショー2024)に出品した中国系ブランドは、BYDのほかMG(上海汽車)、チェリー(奇瑞汽車)、ウーリン(上海通用五菱汽車)、セレス(東風小康汽車)となっているが、BEVのみを展示していたのはBYDとセレスだけであった。
  そして、ジャカルタ市内で定点観測してみると、街で見かける中国車は意外なほどICE車が多いことに驚かされた。日本では「中国車=BEV」というイメージが定着しているが、インドネシアではそこまで偏ったイメージはない印象。同じように複数の中国メーカーが参入しているタイの首都バンコクで街角ウォッチをすると、インドネシアほどICE車は目立っていない。
変わりつつあるインドネシア消費者のニーズ
  街なかでよく見かける中国メーカーのICE車としては、市場参入が早かったこともあるが、ウーリンのモデルが圧倒的に多い。人気の高い多人数乗車のMPV(多目的車)となる、コルテズやコンフェロ、そしてコンパクトクロスオーバーとなるアルマズやアルベズがそれである。いったん市場撤退(ICE車のみのころ)したあと、最近再参入したチェリーではBEVもラインアップするオモダのICE車を多く見かけることができた。
  ウーリンのMPVはタクシー車両としても採用されており、5年ほど使用してヤレヤレになった車両に試しに乗ってみた。走行距離は40万kmを超えており、さすがにボディのきしみや見た目のヨレヨレ感が強かったが、意外といっては大変失礼だが状態はそんなに悪くはなかった。
  日本車の販売シェアはいまでも90%を超えている。そのなか、インドネシアの経済成長は著しく、「失われた30年」などといわれる日本では考えられないスピードで国民所得は向上しており、消費者意識の多様化も進んでいる。
  街なかを走るBEVは、BYDがまだ本格的な販売をはじめていないこともあるのか、韓国のヒョンデ・アイオニック5が圧倒的に多い。ウーリンのアルマズあたりではHEVもラインアップしており、「BEVだから」という理由ではなく、当たり前のように街に溢れる日本車以外に乗りたいというニーズを中国系ICE車がくみ取っているのかもしれない。
  筆者は、変わりつつあるインドネシア消費者のニーズを、日本車がくみ取り切れなくなってきている現れではないかとも見ている。まだまだインドネシアにおける日本車の地位は揺るぎないようにも見えるが、BEVではなくICE車となる中国メーカー車を意外なほど街なかで見かける現状は、長期的視野に立つと見逃せない動きなのかもしれない。

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