犬猫の殺処分ゼロを目指して。命をつなぐモニュメントが生まれた背景

2024.02.15 10:00
2011年東日本大震災直後「保健所犬猫応援団」は、殺処分の必要のない日本を願いスタートしました。しかし、12年が経過し社会情勢も大きく変わる中で、犬猫の殺処分は今も続いています。令和4年度、犬猫の殺処分数は11,906匹。そして、命を繋ぐ譲渡数は6年間で約1万4千匹の減少、殺処分数を上回る減少数となりました。(譲渡数:平成28年46,400匹ー令和4年31,977匹=14,423匹の減少)
全国の犬・猫の返還・譲渡数の推移
より


つまり、譲渡数の減少がなければ殺処分ゼロは実現していたことになります。


福島には「さすけねぇ」という言葉があります。大丈夫と云う意味合いを持つ言葉。失敗や過ちにも優しく寄り添い、時には困難な状況下で、心を鼓舞してくれます。そして、道を切り開く糧となってくれる真心の言葉です。しかし、今も犬猫たちに「さすけねぇ」と言ってあげることが出来ません。


本ストーリーでは、そのサスケネェの実現「命をつなぐモニュメントが生まれた背景」についてお伝えいたします。
世間の関心に比例する殺処分数
犬猫の命に社会は本当に無関心になってしまったのでしょうか?
そうではないと思います。逆に動物愛護は盛んになり、実際に社会的な関心度は高いと思われます。しかし、実際に命を繋ぐという選択は概ね1/3減少し、殺処分が続いている事実を知れば、多くの方にとって寝耳に水、予想だにしていない真実と感じることになるのではないでしょうか。
実際に動物愛護が盛んになり、TVの番組がゴールデンタイムに放映され、メディアやネットでも活動や実績を評価する声は大きいです。殺処分から多くの犬猫が救いだされているイメージを持つ方も多いのではないでしょうか?しかし、その際に挙げられる実績は何十年も前から順当に続く、犬猫の収容数と殺処分数の減少であり、ここ何年かに始まったものではありませんし、急激に減少している事実はありません。むしろ減少数は鈍化しています。反面、命を繋ぐ譲渡数は増加が一転、この6年間に発生し減少を続けている真実があります。つまり、愛護が盛んになったと思われる時期やそれに伴いTV番組などで盛んに取り上げられる時期が、減少に転じた時期に重なっているのも事実です。もちろん、犬猫を取り巻く環境は、愛護の盛り上がりにより良い方向に進んでいる事は確かです。しかし、こと殺処分に関しては明らかにマイナスに働き、逆に社会から取り残され、見捨てられている犬猫たちは今も逃れられない殺処分という現実に直面しています。
全国の犬・猫の殺処分数の推移
より
「助けたい」という気持ちだけでは超えられない壁があった。
私たちの活動は、直接、犬猫の命を繋ぐ保護活動ではありませんでした。告知啓蒙、保健所からの選択を一人でも多くの方に伝え、命を繋ぎ殺処分を無くすという活動。しかし愛護が盛んになると共に、予想外な逆風として「保健所からの選択肢を増やすなんてナンセンス!蛇口を締めるしか殺処分を無くす方法は無い」…度々、保健所からの選択肢を阻む声の圧力に苛まれました。そして、保護活動をしないなら愛護は語るな!直接的な活動でないことで誹謗中傷は日増しに強くなって行きました。
東日本大震災時、原発事故による影響をもろに受け、本業のユーザーである一般家庭では除染と汚染残土の宅内保管が5年もの歳月続いた…、その宅内の活用を提案する本業は大打撃、前月、2月事業開始という被害とは直接関連しない事項により区分され、支援も補償も対象にならず、事業ははからずも過分な代替で凌ぐしかありませんでした。そして、心身共に限界の局面で自身が味わった絶望と藁をもすがりたい想いと同じく、社会から見捨てられた犬猫たちは重なり、是が非でも命を助けたい、繋げたいとの想いで、唯一取り組むことが出来たのが犬猫応援というネットを主体とした活動でした。
アクシデントは突然だった
原発事故による地元汚染地域を避け、仕事の出来る遠距離の現場、片道90キロ先の現場へ移動しての建築工事(土台、構造体の木工事から仕上げまで、設備や電気工事を除いて基本一人で家を作り上げる。)。
開業前は久しく現場を離れ営業職に就いていた私には、予想以上の無理がたたり、、2棟の家は順調に作り上げ、お引渡し出来たものの、3棟目はつい、雨天後の作業中に足を滑らせ2階から勢いよく転落、全く動かなくなった右足と冷や汗に、骨折を感じながらも、90キロ離れた自宅に戻り病院へ。
即入院、骨盤骨折という全治3カ月の重傷、負傷時は絶対安静が必要、救急車で運ばれるのが普通で、自力で戻って来たことに唖然とされました。
それでも担当医の先生には何かあったら死にますよと念を押されながら、現場を止める訳にもいかず、1ヵ月半の入院のところ、6日で無理繰り退院し、自宅から指示を送り、現場を進めるしかない現実がありました。
退院時、駐車場から普段なら数秒の5、6mの距離を玄関までは段差で車椅子も使えず、自力歩行、数十分を要し、到着と共に玄関で大いに喜び勇んで玄関で待ち受ける愛犬も、たどり着いた頃には既に興奮も覚め、ペロリと顔を一舐めで終了。逆に喜んで飛び付かれたら危なかったのでそれはそれで良かったのですが…。
約1ヵ月後、骨折箇所も辛うじて繋がった様で、松葉つえを突きながら現場復帰、もちろん、リハビリもしていないので、今でも腰の痛みが残り、歩き方も不自然と後遺症を残しながら、家を完成させお引渡しました。この翌年の現場でも長さ約6m、重さ約200キロ超える梁を一人で天井に取り付けていると、たまたま、現場に来た土木工事の職人さんに驚嘆されたりと、その他、多々無理を続けるしか道はありませんでした。
被災地とのギャップに向き合う
原発事故という災害は予想だに出来ず、少なくとも補償や賠償があるからこそ、地元の電気でもない原発という危険性のある施設を受け入れられたかもしれませんが(もちろん反対者はいたでしょう)補償も賠償も無い、拒否権も無い地域、被害だけではなく、全く気にも留められない蚊帳の外という厳しい現実を身をもって体験し、正に犬猫たちが恐怖に慄く外側で、「蛇口を締めて殺処分を無くそう!」「殺処分を無くすため!」と意気込みを実際に殺処分される犬猫たちを蚊帳の外にしてしまう人間たちの現実が奇しくも重なり、せめて、自分たちは蔑ろにされたとしても、命さえ奪われてしまう犬猫たちの命を救い出したい…もちろん、こんな現状にある自身の立場や微力すぎる現実で、目指すべきではないと重々、認識はしていても動かずにはいられない心の底から湧きあがる想いに突き動かされます。
世間の声も高まったが
2020年殺処分ゼロは多くの人々が声を発し、環境省のデータが示すグラフでも、順当に進めば、それは実現可能なミッションと信じて止みませんでした。原発事故から10年、現場での無理と年齢的な老いも感じ、2020年殺処分のゼロが実現し、心置きない保健所犬猫応援団の解散を考えていました…が、世間では「蛇口を絞れば殺処分は無くなる」の声は益々大きくなり、ゼロになる気配は逆に感じることが出来ない風潮に。譲渡数の順調な増加や維持が無ければゼロ実現は不可能、なぜなら「社会の営みの中に、数千万匹の犬猫と人との共存に於いて、どんなに理想を語っても孤児がいなくなる訳が無い」はず、予感は的中し2020年環境省のデータはゼロの実現にはならなかったばかりか、譲渡数の減少により4年経った現在も殺処分は続いています。
いままでの反省点をいかし、新プロジェクトを始動
あの時、愛護の現状から離れ去ろうとした私の中途半端な気持ちを反省し、犬猫たちへの謝罪を込めて、会社事業は休止、保健所犬猫応援団に集中し犬猫の殺処分ゼロへ全力を尽くす決心をしました。
今まで伴っていないことがウィークポイントだった実活動を組み込み、ゼロ実現への鍵となる活動、共生ファシリティ開設へ。シェルターではなく、共生を考えた犬猫の命を守るプロテクション施設、犬猫と共に暮らす共生ファシリティとし、愛護を発信、殺処分のない社会の実現を目指しスタートしたのが「1000匹の絆プロジェクト」です。
そして、名称の1000匹とは…
人と犬猫たちが安心して暮らす「サスケネェ」未来の為に心を込めた 超リアルな犬猫モニュメント
確かに犬猫の命を大切に想う人々はたくさんいます。反面、まだまだ、命を軽んじる人々もたくさんいます。平均してもそれは人間の所有物にすぎないレベル、飼い主の手を離れれば命の補償は無くなり、飼い主がいなければ殺処分は致し方ない、飼い主がいなければ、生まれない方が幸せ…本当にそれで良いのでしょうか?そこに殺処分が無くならない一番の原因を感じます。地球上に住まう仲間として、犬猫の命を大切な一つの命と考えることが出来ない私たち、犬猫たちは、人間の最も身近な存在として、共に時代を歩んできた動物、いつからそうなってしまったのでしょうか?
日本の歴史を紐解けば少なくとも犬猫たちは、人間の益獣としていつも傍にいました。
「思い出を風化させない」自分にできる”術”とは
私のような力も知力も無い人間が、現状を変えるなどと考えるのは、やはり、無理があることを承知しております。ただ、微かにその想いを増幅する術が世の中にはあります。音楽、絵画、文学、話芸、映像、写真…、様々な表現で人々に想いや感動を伝える術。そして、想いは増幅されています。では、私に出来ることは…
2019年4月18日
保健所から家族に迎えた愛犬ジャックが永眠しました。漸く近隣の除染作業の終了と汚染土の宅内撤去が済み、本来の仕事が出来る様になり会社も順調になりつつあった時でした。心の支えだった愛犬、震災前は様々なところに一緒に出掛け、やっと、またその日が戻って来ると想えた矢先、ショックは大きかったです。しかし、ジャックはある意味、私の保健所犬猫への想いを失わない為に敢えて旅立ったようにも…、それでも、いつも、傍に居て支えてくれたジャック、心に空いた穴は大きく、耐え難い喪失感に包まれていました。そんな中で、ジャックの生前、子供達と一緒に作った粘土のジャックを思い出しました。
あの時の様に、カタチになってジャックが戻って来てはくれないか?
建築現場で仕上げ材、自然素材としてその特性から漆喰を多用していました。そこで、思いついたのが紙粘土。使用用途は違いますが炭酸カルシウムが主成分という点で馴染がある素材。
最後の現場
床は杉の無垢材、天井はパイン、喜多方の現場


壁が漆喰、床天井は木の無垢材などを基本に自然素材で仕上げていました。
ジャックのモニュメントを造ることでみえてきたもの
2020年3月、全くの素人でしたが、ジャックへの想いを込めた小さなジャックモニュメントを仕事の合間に造り始めました。今、振り返ると、犬猫の活動専念への無謀な決断、そして、愛犬ジャックの像を造りはじめたのは、精神が病んでいたせいではと思う時もあります。確かに原発事故から10年、心は臨界点に達していたのも事実です。ただ、あらためて見るジャックモニュメントはくったくの無い笑顔を見せてくれ、まるで「そんなことはないよ!サスケネェ」と言ってくれているように感じさせてくれています…。
製作はジャックの思い出でいっぱいでした。完成も予想以上となり、私の大きく空いた心の穴を見事に塞いでくれました。ただ、思うのは自分で造っているというよりも、ジャックが自ら仕上がっていく不思議な感覚があったこと…。
歌も文章も苦手な私に、不器用でも想いを伝える手段を選択させてくれたのが、この手作りのジャックモニュメントとなりました。
そして、特別な存在として、私はこのモニュメントを通してジャックを感じています。それは、様々なモニュメント、例えば上野の西郷さんや二宮金次郎像、ハチ公象やワサオ象など数々のモニュメント(記念碑)があり、多くの方の特別な存在ですね。ジャックだけではなく、多くの方が特別な存在、愛犬、愛猫のモニュメントを造ったとしたら、きっと犬猫は社会にとって特別な存在になってくれるという思いを込めています。
手元に届くまでもこだわった。目指すは1000匹の絆。
そして、先ずは知人や応援団の皆さんの愛犬や愛猫を試作させていただきました。実際に発送させていただきました。評判は良かったのですが、少しサイズUPした第二段で、輸送中に破損が発生。素材を紙粘土から石塑粘土に変更し対策をいたしました。
石塑粘土はフィギアなどでも使用される素材で、紙粘土よりも強度が高く、乾燥後はプラスチックの様に。また、心材にウレタンを使用して軽量化、輸送中の自重破損を防ぎました。そして、石塑粘土は成形後の加工性の良いため、よりリアルな再現が可能になりました。現在、石塑粘土を主素材としたモニュメント造りになっています。
試作を重ね犬猫モニュメントも基本構造が決まりました。今も進化を続けています。基本サイズも初代ジャックは11cmでしたが、現在は約20cm(お座りポーズ)にサイズUPしています。そして、培ったノウハウで現在は原寸サイズのモニュメントも製作させていただいています。
犬猫モニュメントは現在、約150体、保健所犬猫応援団ホームページ、犬猫モニュメントのページでご覧いただけます。
犬猫モニュメントのページ
昨年、ジャックの原寸モニュメントが完成致しました。冒頭や途中の顔だけの画像がそうです。見る角度や光の当たり方で、表情は変わります。
ジャックは犬猫たちの大切な未来を見ています


そして、「サスケネェ」…
飼い主に先立たれた犬猫たち
「サスケネェ」「きっと、あらたな未来がまってるよ」
のぞまれずに生まれ来た犬猫たち
「サスケネェ」「ちゃんと、未来はやって来るよ」
飼い主の元から逃げ出してきた犬猫たち
「サスケネェ」「未来は開けるよ」
大切な命たちにサスケネェな社会を1000匹の絆は目指します。
例え、どんな状況だったとしても、犬猫たちの命は地球に生まれ出た大切な命です。人間にとって必要が無いからと奪い去り、また、それを黙認していいはずはありません。
もうこれ以上、社会が名も無き小さなものを虐げることは止めにしましょう!
きっと、きっと、小さな命を大切にする社会により良い未来はやって来ます。
サスケネェと思える社会へ
「保健所から命を繋ぐ選択を当たり前に」
ぜひ、力を貸して下さい!!
保健所からだけと限定している訳ではありません。様々な選択肢の中から、無理なく選択できる方に繋げていただけるだけで良いんです。ぜひ、貴方の応援のお力を!


「1000匹の絆プロジェクト」
本年、4月猫の母屋の部屋を改装、仮となりますがプロテクション(保護)を開始致します。


まだまだ、資金的には厳しいですが、将来的に上記のような施設を目標としておりますが、4月からは現在ある築40年の母屋を改装し、仮の猫舎としてプロテクションを開始します。
手前の茶色の屋根が猫舎、左手がセンターハウスと犬舎と目標にしています。
※施設計画の詳細は保健所犬猫応援団のホームページ
 ご参照下さい。




犬猫モニュメントは1000匹の絆プロジェクトにて、ご支援いただけます。
1000匹の絆プロジェクトをご一緒に|マンスリーサポーター大募集
命を繋ぐ選択が当り前になり
殺処分の必要のない社会を心より願っております

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