フレキシブルな働き方が人生の選択を増やす。働き方事例シリーズvol.7「障がい者雇用」

2024.01.31 15:00
日本では、障害者雇用促進法で、従業員に占める障がい者の割合を一定以上にするよう企業に義務づけています。「法定雇用率」と呼ばれるこの割合は、2027年までに 2.3%から 2.7%に段階的に引き上げられ、38人以上の従業員を有する企業は、1人以上の障がい者を雇用する必要が生じます。
企業の障がい者雇用が大きく変化しようとする中、oviceを活用しながら障がい者の就労支援をおこなう会社があります。今回は、重度の障がいを抱えながら在宅で働く方と障がい者の就労移行支援をおこなう支援員の方に、oviceを使用した働き方や障がい者雇用の課題、今後の展望について話を聞きました。
参照:
テレワークで広がる「働く」の可能性。アグレッシブな挑戦で障がい者雇用に変化を
緒方 駿介/Man to Man Animo株式会社 エンジニア


▼プロフィール
Man to Man Animo株式会社に2018年に入社。SMA(脊髄性筋萎縮症)と呼ばれる重度身体障がいを抱えており、完全在宅で勤務を行う。現在は、RPAエンジニアとして、RPA構築業務やメンバーへの教育支援に従事。Man to Man Animo株式会社では、2022年3月から在宅勤務者及び関係者10数名でoviceを利用している。
初めは「働く」ということが特別な選択だった
ーMan to Man Animo株式会社(以下Animo)に新卒で入社された経緯を教えてください。
そもそも、私にとって「働く」ということが特別な選択でした。テレワークが浸透した今でこそ障がい者が働ける場所は増えていますが、私が学生の頃は障がい者雇用はほとんど無く、働くイメージすらわきませんでした。
しかし、高校生の頃にある人と出会えたおかげでその考えが変わりました。その方は先天的なSMAで右腕と両手の親指が1センチしか動かないにも関わらず、パソコンを使って複数の仕事をされていました。その姿に衝撃を受け、「自分にも『働く』という選択肢がある」と気づいたんです。
障がい者として雇用されるケースが多い中で、一個人としての能力を評価し採用してくれたのがMan to Man Animoでした。会社は、通勤が難しい私の事情を考慮して完全在宅で働く道を一緒に模索してくれました。現在の会社で働くことで、私にとってさまざまな「可能性」が見えてきたんです。
ー緒方さんが在宅で働いていることに、ご家族はどのような感想をお持ちですか?
新卒と同時に実家を離れ、サポート付きの障がい者専用グループホームに入居してからは、両親は静かに見守ってくれていますね。一般的な会社員の親であれば「最近仕事どう?」と聞いても、子どもが働いているかを確認するために職場に来ませんよね。それと同じで、あえて干渉しないように気を遣ってくれているんだと思います。
両親は、幼い頃からいろいろな機会を与えてくれましたが、最終的な決定権は私に委ねてくれていました。今こうしてエンジニアとして働いているのも、パソコン好きの父親の影響で、小さいうちからデジタル機器に興味を持っていたからかもしれません。
自宅にいながら、仲間と一緒に「働く」
ーどのような経緯でoviceを導入されたのでしょうか?
コロナ禍で徐々に在宅勤務者が増え、その中で課題に感じたのが「気軽に話せる場」の少なさでした。これまでのチャットを通じたコミュニケーションは、業務に関わる一対一の会話が中心だったため、チームとして成果を出すのに支障が出始めたんです。そこで同僚が見つけたのが、当時注目を集めていたバーチャルオフィス「ovice」でした。
ovice導入後は、在宅ワークで感じていた「見えない壁」がなくなったと感じています。例えば実際のオフィスでは、朝礼後に喋りながら各々の席に戻る光景がよく見られますよね。oviceがあればテレワークでもそんな「ザワザワした雑談」が実現できるんです。
雑談が増えたことでメンバーの孤立感が弱まり、チームとしての連携も取りやすくなりました。また、相談用の資料を必要以上に作り込んだり、自分に関係のある仕事以外の情報が取りにくかったりという業務上の悩みも少なくなりました。
「多様な働き方」を社会全体で受け入れることが障がい者雇用の拡大につながる
ー緒方さんは、障がい者が働くことへの課題をどのように捉えていますか?
テレワークという点で考えると、ネットリテラシーがネックとなり、どうしても世代によって就業率に差が生じると感じます。さらに、募集職種もエンジニアなどの専門職に限定されています。
加えて、障がい者がテレワークする上での法律が十分に整っていないとも感じています。例えば「会社員」として働く場合、自治体によっては就業時間内のヘルパーの利用が制限されることがあります。特に地方では、障がい者を取り巻く環境は整備されている途中だと言えるでしょう。
そして、障がい者の働く選択肢を狭めているのが、これまでの障がい者雇用の断片的なイメージです。障がい者が力を発揮できる場は多岐にわたり、特に「クリエイティブな分野」で能力を活かせることが、当事者や企業に十分に伝わっていないことがあると感じます。


ー障がい者が働きやすい社会になるためには何が必要だと感じますか?
障がい当事者である私にとって、oviceを活用したバーチャルオフィスは「会社」であり、ovice上でつながることは「出社して働くこと」を意味します。社会全体にこの感覚が浸透すれば、これまでの「実在するオフィスに出社をする=働く」という概念が変わり、障がい者を含む多様な人の働き方を認めやすくなると考えています。
そういった意味で、oviceのようなサービスを使ったテレワークの浸透は、今後障がい者雇用を推進する上で大きな可能性を秘めていると感じます。
自分の好奇心に素直に、「アグレッシブ」に生きたい
ー今後、挑戦したい働き方や生き方について教えてください。
障がい者の働き方や、雇用の可能性を当事者・企業双方に知ってもらうための活動を広げていきたいです。例えば、Man to Man Animo本社のメンバーや取引先の方をoviceに招いて、メタバースで働くことのワクワク感を体験できるイベントなどを企画したいですね。
そして、個人的な挑戦として1人暮らしをしたいと考えています。新卒でのシェアハウスへの入居は、自分の好奇心に従って「0から1」を生み出すためのチャレンジでした。今回の1人暮らしは、自分が大切にしてきた興味の源を「1から100」に広げるチャンスだと考えています。
同時にこの挑戦は、障がい者としての働き方や生き方の可能性を広げるための、新たなモデルにもなると信じています。障がい者が「当たり前」に働ける社会を目指して、在宅ワークなりのアグレッシブな挑戦を続けていきたいです。
テレワークは働くことをフェアにする。より多くの障がい者就労移行支援を目指して
須藤 諭/ディーキャリア 川崎オフィス 就労支援員
▼プロフィール
障害のある⽅が就職するための「訓練・就職活動」の⽀援をおこなう、就労移行支援事業所・ディーキャリア川崎で、就職支援を担当。就労支援員として、就職活動に必要な書類の添削・模擬面談などの就職アドバイスや、就職した方への企業定着をおこなう。ディーキャリア川崎では、2023年1月から就労移行支援サービス利用者20名とスタッフ6名でoviceを使用している。
孤立を感じやすかったオンラインでの就労支援
ー障がいを持つ方向けに就労支援をおこなう御社が感じていた課題を教えてください。
当所では、通所が困難な方のためにオンラインでの就労移行支援をおこなっています。これまでは、チャットとWeb会議ツールを使用していましたが、利用者の方々から「孤立感を感じる」「1対1でのやりとりが多く、他のスタッフの様子が分かりにくい」などの声をいただいていました。
そこで、利用者さんとスタッフ間のコミュニケーション強化、さらには利用者さん同士の交流を図るためにoviceを導入しました。在宅での活動に不安を覚える方もいらっしゃいますが、ovice上で他の利用者さんの様子が見えて交流できることが、安心感や一体感につながっているようです。


ー副次的な効果もあったそうですね?
oviceを活用することで、煩雑になっていたスタッフの業務が改善されました。これまでは、オンラインでの面談予約やWeb会議のURL送付などは全てチャットでおこなっていたため、実際に支援を始めるまでのやりとりに非常に時間がかかっていたんです。
今は、気になることがあればovice上で利用者さんとすぐに会話ができます。チャットでの複数回にわたるやりとりが減り、すぐに具体的な支援に取り掛かれるようになりました。
自己受容は就労の可能性を広げる第一歩
ー就労支援員として日々利用者さんと向き合う須藤さんですが、どういった点で「支援の難しさ」を感じますか?
障がい者の就労移行支援でよく言われる話ではありますが、まずはご本人が障がいを「受容すること」が一番難しいと考えています。相談に来られる方の中には、ご自身の障がいを受け入れることに抵抗があり「企業側が受け入れてくれない」と仰る方もいます。
一方で自己受容ができている方は、一般と障がい者両方の採用枠に応募できる状況を「チャンス」と捉えるんです。障がいを自然に受け入れポジティブに捉えることで、結果的に可能性も広がるんですよね。
oviceを使ったバーチャルでの就労活動も、利用者さんにとってはチャレンジの1つです。慣れない操作に初めは抵抗があるかもしれませんが、まずは受け入れてみることで、新たな働き方の可能性が広がると考えています。
企業も当事者も「知ること」が障がい者雇用の促進につながる
ー須藤さんは利用者さんへ就職活動アドバイスもされていますが、障がい者雇用の課題は何だと考えていますか?
社会全体が、障がい者雇用について「知らない」ことが一番の課題だと考えています。海外では、障がいを個性の1つとして捉えているため、そもそも障がい者雇用という概念がありません。しかし、日本はその土壌がないので、企業の義務として障がい者枠を作らないと雇用が進まないんです。
それでも、国が掲げる法定雇用率に達していない企業は5万社を超えます。それは、企業が冷たいなどという感情論ではなく、障がい者雇用の具体的な努力目標や企業向けの採用支援について、そもそも知らないからだと考えています。
さらに問題なのは、障がい者ご本人も企業も我々のような就労移行支援サービスを提供する事業所を知らないことです。意外かもしれませんが、就労移行支援事業所は探せば至る所にあるんです。しかし、いかに当事者の方と企業が、それらの支援サービスを認知し、利用してもらえるかが課題だと考えています。
在宅勤務は障がい者にとっての「働く」をよりフェアに
ーoviceが浸透することで、今後障がい者の働き方にどのような変化があると考えますか?
バーチャル空間やオンラインコミュニケーションが浸透して、社会全体の働き方が変われば、働く人の「ハンディキャップによる差」がなくなると考えています。例えば、車椅子などで通勤が困難な方も、パソコンなどのオペレーション環境さえ整えば、ほとんど障がいを感じずに働くことができますよね。
障がいを抱える方にとって、よりフェアな世の中になり、働くことが「当たり前」になると思います。


ー今後、須藤さんはどのような障がい者就労移行支援をしたいと考えていますか?
私は、効果的な就労移行支援を行うためには、利用者さんといかに接点を持ち、会う回数を増やせるかが重要だと考えています。支援がなければ1日誰とも会話をしないという方も、いまだに多くいらっしゃいますからね。そういった方が、oviceを使って誰かしらとコミュニケーションを取り、1日でも多く支援を受けることに意味があります。
今後も、就労を望む障がい者の方が1人でも多く働けるように、就労移行支援を続けたいと考えています。
編集後記
今回は「障がい者雇用」をテーマに、oviceユーザーの方々を取材しました。
障がい者の雇用者数が過去最高を記録する一方で、国が定める法定雇用率に達していない企業は、いまだ半数近くにのぼります。さらに、そのうちの半数の企業が1人も障がい者を雇えていない状況です。
インタビューを受けてくださったお二人の話にもあったように、社会の障がい雇用への理解は十分とは言えません。法定雇用率の引き上げに伴い、企業内での理解や働く環境の整備が必要になる中、oviceは障がい者と企業をつなぐために今後ますます必要なツールになるでしょう。
oViceでは、これからもさまざまな「人生の選択」と「働き方」をご紹介していきます!


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