日本酒の寒造りとは?寒造りの特徴とお酒の味わい

2024.01.19 11:50
酒造りの最盛期がやってきました。「寒造り原酒」「しぼりたて生」といったお酒が並んでいるのを見る機会が多いのも今の時期ならでは。寒造りってなに?寒造りのお酒って美味しいの?そんな疑問にお答えしましょう。
発酵食品の寒仕込み
1年中仕込みのできる発酵食品ですが、日本人が馴染みのある調味料、醤油や味噌は特に冬に仕込んだものが美味しいとされてきました。
*原材料である大豆や米が秋に収穫される
*気温が低く、雑菌が繁殖しにくいためカビが生えにくい
*低温でじっくり時間をかけて発酵を促すことができ旨みを引き出せる
といった理由があるからです。冬に仕込み、春から夏の暑い時期に発酵が進み、秋から気温が下がってくる頃に味が馴染んで仕上がっていきます。そして水も重要な要素で、小寒と大寒の間である寒の内の時期に汲んだ水を「寒の水」といい、寒に入ってから9日目に汲んだ水は服薬に良いとされ “寒の水は薬” という諺もあるほど。もちろんこの水が薬の役割を果たすわけではありませんが、寒い時の井戸水は不純物が少なく水質が良いため、寒の水で仕込んだ味噌や醤油は腐らずに長期保存できるといわれてきました。
日本酒の寒造り
四季醸造だった日本酒造り
日本酒も味噌と同じように、秋に収穫された米を使い、雑菌の繁殖が少なくゆっくりと発酵ができる12月~翌年2月頃までに仕込むことを「寒造り」といいます。しかし、お酒はもともと年間を通じて造られていて、四季によって大きく気候が変わるためその季節に応じた醸造方法がありました。全国の農産物、工芸品、酒などを図解した古い書物『日本山海名物図会』に、新酒(しんしゅ)、間酒(あいしゅ)、寒前酒(かんまえざけ)寒酒(かんしゅ)、春酒(はるざけ)と季節によって呼称が変わることも記載されています。
江戸幕府の酒造制度
寒造りが定着したのは江戸時代。酒造業は米を大量に消費するため、幕府が厳重な統制を行ったことがきっかけです。例えば、冷害などで米が凶作となった場合は米の価格が高騰し、逆に豊作となると米が余り価格が暴落、となると武士階級の収入が脅かされることになります。そのため米の流通を安定させることが重要で、酒造株制度を導入し、酒屋に酒を造る権利を保障する代わりに運上金と称する税を課しました。他にも、酒屋を城下町や市場などに限定して農民による酒造りを禁止する、夏場の酒造りを禁止するといった制限が課されることになったのです。この政策は以降の酒造業に大きく影響を及ぼしました。冬場のみの酒造りになったために農閑期の農民の出稼ぎが増え、酒屋はその労働力に頼るようになり、全国各地に杜氏集団が誕生していきました。
現在の造り
現在は冷房や空調設備が整えられるようになり、1年中同じ環境で酒造りが可能のため四季醸造を行う蔵も少なくありません。杜氏という職人から年間雇用の社員が酒造りを行うように変化し、冬が旬だった酒も季節関係なく様々なタイプのお酒を楽しめるようになったのです。
しかし今でも多くの蔵が冬場の酒造りを行なっているのも事実で、雑菌の繁殖が抑えられ、一定期間の低温状態を保つことができる冬が酒造りに最適なのは変わりありません。特に雪が降る地域は、空気中のチリや微粒子を包み込んでくれるため衛生面でもメリットがあり、雪の冷気を利用することもあります。長期低温発酵が必要な高品質のお酒は、寒造りで醸造されるのです。
寒造りの日本酒の味わい
1年で最も寒い時期に仕込むお酒は、大吟醸といった高スペックな商品や鑑評会に出品予定のものなど、蔵にとっても重要な商品である場合が多くあります。それだけ寒造りは高品質の仕上がりになるからです。この寒造りのお酒は冬〜春先に出荷され、季節感を出すために火入れを行わない生、加水をしない原酒、またはしぼりたてと書いてある商品が多く見られるでしょう。
しぼりたてはまだ荒々しい感じが残っていますがそれがピチピチと若い印象となります。生酒は青々しい香りでフレッシュ感が強く、原酒は基本的にアルコール度数が高いものが多いためにボリュームのある味です。
全体的に新鮮でアタックの強い味わいとなりますが、寒造りのためじっくり発酵された上品な吟醸の香りや口当たりの滑らかさを感じることが出来るのではないでしょうか。
これらの寒造りのお酒は、冷酒で爽やかさを堪能したり、熱燗にして味を落ち着かせたりと幅広く楽しめるのもポイント。「久保田 千寿 吟醸生原酒」はアルコールのボリューム感、生酒らしいフレッシュ感、とろりとした飲み口、控えめでありながら綺麗な香りという、まさに寒造りといったお酒です。こういったお酒には肉や魚など多少脂があるものを煮込んだ料理がおすすめ。味付けはシンプルに塩味の方がよく合います。料理の質感とお酒のボリューム感が丁度よく、シンプルな味付けなので生酒のフレッシュ感も損ないません。
丁寧に仕込む寒造りのお酒を楽しもう
冷房設備が完備されたり、流通も非常に発達したために、生酒やしぼりたても蔵での状況と変わりないほど一般のご家庭で口にすることが出来るようになりました。そして夏酒や秋あがりといったお酒も本来の時期より早く出荷され季節感が早まったようにも感じます。しかし、寒造りのお酒は品質が高く美味しく仕上がることは間違いなく、しぼりたて、生原酒といったキーワードが並ぶ今の季節こそ、寒造りされたお酒を味わうのに最適です。鍋料理にもよく合うので、冬の時期に寒造りのお酒を好きな温度で堪能しませんか。
まゆみ
酒匠、料理研究家。 1日も欠かすことなく酒を呑み続ける驚胃の持ち主。酒と蕎麦と音楽を愛する。著書「うち飲みレシピ」「スバラ式弁当」。viawww.instagram.com

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