日本酒はいつ誕生したの?いつから飲んでいたの?日本酒の歴史を紐解いてみよう

2024.02.07 10:50
世界には多くのアルコール飲料があります。それらは古い歴史があり、人の移動によって各国へ広まっていきました。日本酒はまさに日本のお酒。日本酒にも歴史があり、昔の人々は様々な場所で口にしてきましたが、自国のお酒の起源についてご存知の方は少ないかもしれません。日本酒の歴史について考えてみましょう。
酒の起源と古代の酒
現在、最古の酒と言われているのが紀元前7000年頃の遺跡である中国の賈湖遺跡(かこいせき)から発見された壺。内部分析の結果、米、ハチミツ、ぶどう、カンザシが使用されていることがわかりました。ワインやミード酒、米のビールなどが混ざった発酵飲料だったのでしょう。その他、メソポタミアの土器にビールが描かれているなど、人類と酒の関わりは非常に古いことがわかります。古代エジプトやメソポタミアでは日常的にビールを飲み、ワインは神聖な儀式で使用されていました。
日本では縄文中期、長野県の井戸尻遺跡で発見された土器の中にヤマブドウやキイチゴの種があったことから、ワインのような果実酒が最古であると言われています。
ビールのルーツはメソポタミア
紀元前4000年頃、古代メソポタミアでシュメール文明が栄えていたときにはすでにビールのようなものが醸造されていました。初期のくさび形文書に「カシュ」「シカル」という表意文字があり、これがビールを指しています。メソポタミアの代表する農産物は大麦で、主食の他にビール(シカル)の原料としても使用されました。一般には大きな甕(みか)に水を入れ、大麦を使った「ビール・パン(bappir・バッピル)」と麦芽を加え、そのまま発酵させる方法。同じ製法でエンマー小麦を使用して発酵させたシカルは、大麦より高級とされ神への捧げ物はこの小麦のシカルでした。バッピルの焼き具合や麦の配合を変えて味を変化させ「大麦ビール」「白ビール」「黒ビール」「赤ビール」など呼び名まで変わり、スパイスやナツメヤシ、ハチミツなどを加えて様々な風味をつける場合もあり、シュメール人にとってビールは楽しみの一つだったといえます。
このビール醸造の技術は古代エジプトを経てヨーロッパへと伝わります。中世のヨーロッパでは修道院が生産の中心で、薬草を使ったビールは栄養も豊富で薬としても利用していました。これにより民衆にも広まり、ドイツやベルギーで特色のあるビールが生まれ、定着していったのです。
自然発酵のワイン
ワインの原材料であるぶどう、この原型は人類が誕生するずっと以前から存在します。1億3000年も前、果実をつける種子植物が誕生し、その果実を好むサッカロミセス・セレビシエという出芽酵母が登場。これらアルコールを作る酵母は糖分の多い環境、果実の皮などに付着していることが多く、自然に出来たお酒を祖先が味わい、徐々に意図的に造っていくことになります。
世界最古の文学作品と呼ばれるメソポタミアの「ギルガメシュ叙事詩」に記されていることを考えると、紀元前2000年にはワインの醸造方法が確立されて人々が造っていたことになりますが、実際には紀元前6000年には造っていたのではないかと推測されています。発祥はぶどうの野生種が多く自生していることから、西アジアのジョージアを含むコーカサス山脈一帯という説が濃厚。その後、レバノン周辺に住んでいたフェニキア人によってエジプトからギリシャへ、更にヨーロッパへと伝わります。水道設備もなく水事情が悪いため水替わりとして重宝されていたワインは、特にキリスト教の布教活動と共に広がり、キリスト教会がワイン醸造に精を出します。16世紀の大航海時代、ワインは世界各国へと伝わり各地で造られるようになっていきました。
日本酒の歴史
日本酒の原料は米、米麹、水。ということは、稲作が日本に伝わってきた頃に日本酒造りも始まったと言えるでしょう。現在日本で食されているジャポニカ米の稲作は中国の長江から始まり、朝鮮半島を経て、または対馬を超えて、台湾経由の島伝いと様々な説がありますが縄文時代に日本へ上陸しました。古墳時代に水田が出来て、弥生時代には水耕栽培が全国へ広がっていったようです。
日本酒の起源
米を使った酒造りがいつから、どの地域で始まったのか明確なことはわかっていませんが、歴史書にはお酒を醸すことが記載されています。

*古事記・日本書紀の“八塩折之酒”
神話に残っているのは、スサノオノミコトがヤマタノオロチを倒すために造らせたお酒です。ここに出てくる「八塩折之酒(やしおりのさけ)」は、酒造りの起源をうかがえる古いものではありますが、貴醸酒のようなもの、またはお米が原料ではなく木ノ実や果実ではないかとも言われています。

*大隅国風土記の “口噛みノ酒”
加熱した米を口で噛み、唾液に含まれる酵素で糖化し、野生酵母で発酵させたお酒。この作業を行うのは巫女のみだったため、神聖なお酒だったのかもしれません。

*播磨国風土記の“糆(かび)の米を醸ました庭酒”
大神の御乾飯が濡れてカビが生えてしまったので酒を醸させ庭酒(にわき)として大神に献上して宴を開いた。といった意味の一文が記述されています。カビが生えた米を使っていることから日本酒の起源といえるでしょう。

こうして蒸した米、麹を原料として木桶などに住み着いている酵母の働きでアルコール発酵させてお酒を作っていくようになりました。しかし、農民に禁酒令が出るほど大変貴重なものだったため、飛鳥時代は上澄み部分は貴族へ献上され、どろどろとした醪の部分を農民が口に出来るようでした。
日本酒の変貌
平安時代までは朝廷でも酒造りが行われていましたが、戦国時代に入り国勢が混乱していくと技術者が世の中へ流出、酒屋から神社まで多くの場所で酒造りが行われるようになっていきました。鎌倉時代には商業が盛んになり、お酒も価値のあるものとして流通。この頃には、火入れや段仕込みといった醸造方法もあったようです。
江戸時代になると小規模な農村でも酒が造られるようになりました。江戸時代の初期に書かれた『童蒙酒造記(どうもうしゅぞうき)』には、酒造りの心得、技術的な解説、道具類の管理など事細かに記載されていて、米麹を使った現在と同じ日本酒醸造の技術が確立されていたと思われます。庶民の身近な存在となってきた日本酒ですが、市場が広がったことにより幕府が酒株制度を導入、酒税の徴収と造りの制限が設けられたのです。

酒株制度が廃止になった明治時代になると、新たに酒造免許が取得できるようになり、酒蔵を開業する人が増えてきました。科学の進歩も伴い、高度な精米機やホーロータンクが使用されたのもこの頃で、酒造りの技術も酒質も上がっていったのです。昭和に入ると、日中戦争や第二次世界大戦により米の制限がかかり酒造りも一時低迷。酒の販売も免許制になり、ついには配給制になるなど国の税法も厳しくなっていきます。その背景により合成清酒が多く製造されたのもこの時期です。
日本酒の転換
戦争が終了すると、日本酒の需要は一気に高まります。また、世界の様々なアルコール飲料も日本に輸入され競争も激しくなっていきました。それにより量から質へという転換期に突入。
平成に入ってからは、今まで大量に造って安く売るといった方法からより高品質に造っていくようになり、吟醸酒が一世を風靡し、無濾過生原酒といったお酒も注目されるようになったのです。現在は、スパークリングやにごり酒、生酛造りといったように多様化が進み、それぞれ個性的な商品が多く生み出されるようになりました。
文化と日本酒の関わり
神道(しんとう)では古くからお酒を神へのお供えとしてきました。お神酒はお供えの後人々へ振舞われ、神と同じものを口にすることでご加護を得られると考えられてたのです。
現在も、伝統行事ではお酒をお供えしたり、正月や節分、花見や月見といった四季の行事では必ずといっていいほどお酒が振舞われます。日本の文化と日本酒の関係は深く、人と人との繋がりの場にはお酒が欠かせない存在に。人類の歴史以上にお酒の歴史はあります。ロマンを感じながら、お酒を大事に嗜み、伝えていきましょう。
まゆみ
酒匠、料理研究家。 1日も欠かすことなく酒を呑み続ける驚胃の持ち主。酒と蕎麦と音楽を愛する。著書「うち飲みレシピ」「スバラ式弁当」。viawww.instagram.com

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