「2024年問題」の打開策となるか!? いま政府が進める「モーダルシフト」とは

2023.11.18 17:30
この記事をまとめると
■いま政府は「モーダルシフト」の構想を進めている
■「モーダルシフト」とは長距離の輸送手段をトラックから船舶または鉄道に切り替えること
■目的は「2024年問題」を打開するためとされている
長距離輸送のメインルートを船舶や鉄道に
  2024年4月の働き方改革関連法の物流・運送業界への本格適用=トラックドライバーの時間外労働の規制強化がいよいよ秒読みとなった現在、業界内では今後発生するであろうドライバーの人手不足や輸送量の減少が懸念されている。
  2030年度にはトラックによる輸送量が30%以上減るおそれもあるといわれるこの「2024年問題」を打開するため、国土交通省をはじめ政府では長距離の輸送手段をトラックから船舶または鉄道に切り替える「モーダルシフト」の構想を進めている。
  このモーダルシフト、じつは近年生まれたものではなく、1981年7月に旧運輸省が出した答申「長期展望に基づく総合的な交通政策の基本方向」で公式に使われたもの。当時は第2次オイルショックの余韻がまだ残っていた時代。このときは省エネルギー政策としてモーダルシフトが提唱されていた。
  そのいまから40年ほど前に打ち出された政策が、2024年問題の解決策として、そして二酸化炭素(CO2)を削減する手段として再び注目を集めているというわけだ。
  上の図にもあるとおり、モーダルシフトはこれまで出荷元から納品先までの長距離を1台のトラック(=ひとりのドライバー)で数日かけて運んでいた積み荷を、そのルートの幹線となるところに港や貨物駅などの「転換拠点」を設定し、そこから船や鉄道を使い納品先近くの拠点まで運び、再びトラックで輸送するというシステムになっている。
  これにより、長距離輸送で何泊も車中で生活するような勤務を減らし、若い世代や女性にも働きやすい仕事になるという働き方改革と、フェリーや鉄道の利用によりトラックの二酸化炭素の排出量も削減できるという環境面でのメリットも得られるといわれている。
バトンタッチすることで時間外労働とCO2を削減
  下のグラフにもあるが、1トンの貨物を1km運ぶときに排出されるCO2は、トラック(営業用貨物車)が216gであるのに対し鉄道は20g(およそ1/11)、船舶は43g(およそ1/5)だけですむ、という試算も出ている。つまり、モーダルシフトに転換することで、鉄道利用で91%、船舶利用なら80%のCO2削減ができるわけだ。また、フェリーにトラックごと乗り込むことで、海路を航行している時間はドライバーは休息することができ、かつその間はトラックの排気ガスも発生しないというメリットもある。
  政府では、今後10年程度で船舶の輸送量を5000万トンから1億トンに、鉄道では1800万トンから3000万トンにそれぞれ倍増させるという目標を掲げている。これを実現するために、トラックと船舶、鉄道が共同で使えるサイズのコンテナの普及も促進。事業者を支援するとしている。
  また、このモーダルシフトはすでに大手物流会社を中心に推進されており、フェリーやRO-RO船にトレーラーのみを積み込み、下船先で別のトラクタがその台車を納品先まで運ぶ「ドレージ」といったシステムが多く導入されている。そういった船舶利用によるモーダルシフトを進めるため、現在国交省では関東圏と関西圏を結ぶ「東海道フェリー」という構想も検討されている。その発着地は関東側が東京湾(神奈川県)、関西側が伊勢湾(三重県)と想定されている。
  フェリーやRO-RO船を利用したモーダルシフトは船の運行スケジュールに合わせなければいけない(鉄道も同様だが)という制約がともなうが、長距離輸送においては人的、コスト的にもそれに見合う高価は期待できるはずだ。東海道フェリーの実用化への動きにも、今後期待したいものだ。

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