IWATAの寝具が体験できる素敵な宿泊施設をご紹介するシリーズ 第一弾
今回、IWATAの寝具を新たに採用いただいたのは、十和田八幡平国立公園内、青森県十和田市の十和田湖畔休屋エリアにオープンし、新たな観光拠点となる宿泊施設&飲食店「Canteen & Microhotel uqui(うき)」。開業に当たっての想いを伺ってきました。
十和田湖畔に佇む素敵な建物です
運営は、宇樽部キャンプ場で「十和田サウナ」を手がける合同会社ネイチャーセンス研究所です。国立公園にふさわしいサステナブルな施設でありながら、どんな天候でも十和田湖の魅力を体感できるという「晴好雨奇」をコンセプトに掲げています。
日本第3位の深さを誇る美しい湖面が魅力です。
今回は、「uqui」代表の安藤和香奈氏に、開業のきっかけから施設のこだわり、そして未来への展望について、株式会社イワタ代表取締役・岩田有史がお話を伺いました。
株式会社イワタ代表取締役・岩田有史 と 「uqui」代表の安藤和香奈氏
岩田:安藤さん、「Canteen & Microhotel uqui」のご開業、誠におめでとうございます。まずは、安藤さんがこの十和田湖の地に宿と食堂を始められることになったいきさつから教えていただけますか?
安藤氏:この建物・施設は、私だけの考えで始まったわけではないんです。ここに関わるようになったのは約7年前で、その頃から、十和田湖に景観の仕事で来ている友人やカヌーガイドの友人など、同年代の仲間たちの繋がりが自然とできてきました。
岩田:7年前から、そのような仲間とのコミュニティがあったのですね。
安藤氏: はい。その仲間たちと夜な夜な集まって話している中で、夜の光のないこと(当時の十和田湖は夜営業の飲食店が皆無)や、自然だけでは長く滞在するのが難しいといった課題が見えてきたんです。素晴らしい自然があるからこそ人々は惹きつけられて来るのですが、それに加えて何かきっかけとなるものが足りないと、ずっと仲間内で話していました。これが本当に最初の最初ですね。
岩田:宿と食堂は、どちらが先に構想として生まれたのでしょうか?
安藤氏:それは、私がここに来た当時からこの場所はすごくいいと感じていて、お金をかけずに食事がすぐ出せる、テイクアウトもできる場所にならないかなと考えていたので、食べる場所、つまり食堂の方が発想としては早かったかもしれません。
湖畔を臨むシンプルで落ち着いける佇まいの食堂。リラックスできました
「晴好雨奇」に込めた、どんな天候も楽しむ思い
岩田:施設の名前「uqui(うき)」には、中国の詩人、蘇軾(そしょく)の「晴好雨奇」という言葉が込められていると伺いました。この言葉と十和田湖を結びつけた経緯や、このコンセプトを施設全体にどう表現されているか教えていただけますか?
安藤氏:この「晴好雨奇」という言葉は、私たちにとって非常に大切にしている言葉です。十和田湖に来る観光客の方は、晴れを期待される方が多いのですが、自然というのはどんな天候でも、どんな季節でも、はかない美しさ、一瞬の美しさが潜んでいるんです。晴れだけを求めて来ると、そういったものが見えにくい。私たちは、一瞬も見逃してほしくないという思いで、晴れ以外も楽しめる十和田湖をコンセプトにしたいと考えていました。その時に「晴好雨奇」、つまり晴れも良いけれど、雨がもたらしてくれるものがどれほど素晴らしいか、私たちの想像を超えるものか、という蘇軾の言葉に出会ったんです。蘇軾は中国の景勝地である西湖(せいこ)を見て詠んだといいます。実はここ休屋から見える湖も西湖(にしのうみ)というんです。そういった奇遇も気に入りました。ここで言う雨は、雨だけでなく、雪や風、霧なども含んでいます。どんな天候でも十和田湖の素晴らしさを感じてほしい、という思いを込めて「晴好雨奇」の「うき」を取り、「uqui」と名付けました。また、ウキウキするという楽しい語感もあって、覚えやすいかなとも思いました。
岩田:確かに、「晴好雨奇」という言葉を聞くと、晴れの日だけでなく、雨の日や霧の日にも来てみたくなりますね。
安藤氏:そうなんです。一昨日も、霧が湖から迫ってくるような天候でしたが、私たちにとっても珍しい現象でした。ここに住み始めてから、「刻一刻」という言葉のニュアンスをようやく理解できたというか、本当に秒ごとに変わっていく自然の瞬間は二度と出会えないと感じています。
岩田:その「晴好雨奇」のコンセプトは、客室にも反映されているそうですね。「ユキ」「アメ」「キリ」「クモリ」「ハレ」という天気をテーマにした名前がつけられています。それぞれの部屋づくりで工夫されたことはありますか?
陶器でできた各部屋のシンボルマーク
安藤氏: はい。どんな天気でも楽しむというコンセプトを、部屋でも感じていただきたいと考えました。天気をカラーで表現し、それぞれの部屋の個性や雰囲気で見え方が変わるようにしています。また、客室はダブルルームが2室、シングルルームが3室あるのですが、人が「今日はちょっと嫌だな」と思いがちな天気である「雨」と「雪」の部屋をあえて大きな部屋にしたんです。ここはスペシャルな部屋ですよ、広い部屋で快適に過ごしてもらいたい、という思いを込めました。晴れや曇りの部屋は、比較的スタンダードな広さにしています。
部屋毎に違いを出し、過ごし方をプロデュース
岩田: 嫌だと思う天気ほど快適に、というのは面白い発想ですね。それぞれの部屋のテーマカラーも違うそうですが、例えば「アメ」の部屋がグリーンというのは意外でした。
安藤氏: そうですね、雨は緑を鮮やかにしてくれるんです。植物が生き生きしたり、緑が生きている感じは雨によってもたらされます。十和田湖は天水が溜まっている湖なので、雨の恵みでもあります。雨や雪がいかに美しい十和田湖を作っているかということを、部屋の広さやカラーで表現したいと思いました。
十和田湖の素晴らしい自然に溶け込む建物
国立公園内でのサステナビリティと「グリーンキー」認証への挑戦
岩田:国立公園内にあるサステナブルな宿泊施設として、随所に工夫を凝らしておられますね。特にこだわった点はどこでしょうか?
安藤氏:私たちがこの美しい自然の中で生活できているのは、この地域が守られてきたからであり、また信仰の対象で人が暮らす場所ではなかった歴史があるからです。今は観光地となりましたが、その先のサステナブルを考えている施設は、おそらくまだ多くないと思います。
岩田:そうなのですね。
安藤氏:この国立公園で私たちが事業を営むにあたり、そこにふさわしいものとして、サステナブルな環境を当たり前に作っていくことが、この自然に対しても失礼にならないと考えました。施設をやる上で一番肝となる部分です。「環境にいいこと」を声高にいうことで息苦しさを感じる場面もあると思うんです。だからこそ、意識せずに滞在した結果が「環境にいいことにつながっていた」ぐらいの方がいいなと思います。
岩田:「サステナブル」という言葉自体への安藤さん自身の考え方も、十和田湖に来て変化があったのでしょうか?
安藤氏:正直、東京にいた時はサステナブルという言葉を深く考えたことがありませんでした。でも、この十和田湖に来て、素晴らしい自然の中で生きていることを実感した時に、この環境を崩したくないという気持ちが芽生えたんです。こんなに近くに自然があって、これを崩すのは怖い、という本当に小さな気づきから、何かできることはないか、というのが始まりでした。
安藤さんご夫妻ともに、十和田湖に魅せられて住みはじめました。
岩田:環境が先に、安藤さんに気づきを与えてくれたのですね。
安藤氏:そうですね、まさにその通りです。宿を作りたいと思ってここに来たのではなく、ここに来たらそうなった、という感じです。
岩田:そのサステナブルな取り組みの証として、今後「グリーンキー」認証の取得を目指されると伺いました。これはハードルが高いと聞いていますが、どのような思いを込められていますか?
安藤氏:私たちはサステナブルです、環境に配慮しています、というのは口では誰でも言えます。でも、それを証明しているものがないと、信憑性に欠けると感じました。ゴミの分別をしています、というのは誰でも言えますが、きちんと認証を取ることで、みんなが分かりやすく「ああ、こういう施設なんだ」と理解してもらえるのが一番です。これから海外の人たちがホテルを選ぶ際に、認証で見たり、そこをどう考えてやっているかという点を重視すると思います。世界的に認められた認証を取るというのは、この観光地で何かをする上での最低限の条件だと考えています。自分だけであれば必要なかったかもしれませんが、ここで宿をやるという中で、認証がある方が選ばれるきっかけにもなるかな、というビジネス的な側面もあります。
岩田:ルーティンにもなりますしね。それを目指して、毎日継続していく仕組みができます。
安藤氏:そうなんです。認証制度は研修や審査、毎年の更新など大変なこともありますが、その中で自分たちに合ったものとして、グリーンキーを選びました。日本でもまだ数が少ないですが(取材開始時は5施設程度、今は10施設以上)、リッツカールトンさんやマリオットさんのような施設も取得を目指していると研修で知り、背筋が伸びる思いでした。グリーンキーを取得することで日々のサステナブルな活動を継続する仕組みになります。私の中では、毎日の歯磨きぐらい当たり前になると良いなと思っています。
岩田:仕組みがないと、何をしていいか基準が分からないですもんね。
安藤氏:はい、そうなんです。グリーンキーの審査基準は13のカテゴリーに分かれていて、非常に細かいです。例えば、トイレなど水の流量基準(3L/6L以下が望ましい)、客室でのタオル交換の案内掲示などです。連泊の場合、タオル交換は希望があった時のみ、シーツ交換も3日に一度など、細かいルールが決まっていて、それを守る必要があります。シーツを毎日洗うことが本当に必要なのか、といった部分も含めて、この基準を見ながらやっています。とにかくこのガイドラインがしっかりしていることが重要です。この環境だからこそ、これをやる意味がある、と感じています。
地元食材を世界の料理に昇華させる夜の食堂
岩田:夜の食堂も、地域に賑わいを取り戻すというユニークな取り組みですね。どのような思いで立ち上げられたのでしょうか?
安藤氏:東日本大震災以降、十和田湖には夜に楽しめる飲食店がなくなってしまったんです。そこで、夜の賑わいを取り戻したいという思いで、宿泊客以外の方も利用できる食堂を併設することにしました。
岩田:食事メニューも、地元の食材を世界の料理にアレンジしているのが特徴ですね。メニュー開発には発酵料理家の真藤舞衣子先生が関わられているそうですが、こだわりを教えてください。
安藤氏:コンセプトは「ローカルの食材を世界の調理法で」です。例えば、南部の郷土料理である「ひっつみ」は小麦粉を使うので、それをパスタにアレンジしました。青森の名産であるりんごはガトーアンビジブルに、十和田にんにくは南部せんべいでいただくガスパチョにしています。秋田の「きりたんぽ」の家庭版である「だまこ」を、スウェーデンのミートボール(ショットブラール)と一緒にクリーム煮で提供するなど、様々なアレンジを加えています。
ローカルミーツワールド!地元の食材を使ったワクワクするメニュー
岩田:面白い発想ですね。
安藤氏:はい。メニュー開発は真藤先生に監修していただき、発酵も随所に感じられるようにしています。地元の方が来ても「こんな調理法があるんだ」「こんな風に食べられるんだ」とワクワクしてほしいですし、旅の方にも地元のものを楽しんでほしいと思っています。十和田湖にはひめます料理や山菜料理を出すお店は多いので、それと同じことをするのではなく、少し違うことをしたいと考えました。「ローカルミーツワールド」という感じです。また、いくつかのメニューはベジタリアン/ヴィーガン対応にしています。これは、海外からの旅行者でビーガンの方が多いことや、夫の両親がビーガンであることも影響しています。
岩田:地域、海外からのゲスト、そしてご自身の経験も反映されているのですね。
心地よい滞在体験を支える、イワタ寝具の役割
岩田:この度、全室に当社のイワタの寝具を導入いただきました。導入に至った決め手や、今回の滞在体験において寝具が果たす役割について、どのようにお考えですか?
安藤氏:イワタさんの寝具を導入した一番の理由は、サステナブルなだけでなく、心地よさも追求したかったからです。サステナブルだから我慢する、ではなく、心地よいものがいい。その両方を兼ね備えている寝具として、イワタさんの寝具の役割は、この施設にとって非常に大きいと思っています。目玉と言っても過言ではないかもしれません。
IWATAの寝具でぐっすりお休みください。
岩田:目玉ですか。そう伺うと、とても嬉しいです。
安藤氏:人生の3分の1は睡眠時間と言われています。旅行に来て、旅行先で眠りにくい、というのは辛いですよね。「すごく寝心地が良くて、サステナブルに過ごせた」3分の1の時間をいかに心地よく過ごしてもらうか、というのは、私たちがお客様に感じてほしい大事な提供価値です。その役割を考えると、イワタさんの寝具に出会えて感謝しています。
以前の職場(雑誌ディスカバージャパン編集部)でイワタさんの寝具を知っていて、記事なども見ていたのですが、今回実際に導入してお客様の反応を聞いて、本当に導入してよかったと感じています。正直、グリーンキー認証を目指すことがまだ固まっていなかった時期には、寝具はあまり見えない部分だし、予算もないからと安価なもので済ませようと思った時期もありました。でも、施設のことを色々考えていく中で、ここは絶対に妥協してはいけない部分だ、と見えてきた時に、ディスカバー時代のイワタさんの寝具を思い出したんです。サステナビリティの部分も、イワタさんの会社の取り組みを取材でわかっていたので。
岩田:光栄です。
安藤氏:本当に、イワタさんの寝具がうちの中で占める役割は、半分以上と言ってもいいぐらいです。十和田の自然を五感で感じて、体のリズムを整え、自然のリズムと体のリズムを調和して帰ってもらう、その中で寝具の役割は大きいですね。
地域全体を巻き込む、未来への展望
岩田:最後に、「uqui」を通して、今後どのように地域と関わっていきたいか、そしてこの場所が育っていく未来への展望をお聞かせいただけますか?
安藤氏:こうなったらいいな、と強く思っているのは、私たち施設自体がグリーンキー認証を取得し、サステナブルな施設であることをしっかり示すことで、周りの施設にも同じような気持ちが伝わって、波及していくことです。国立公園の中で営業するということは、やはりサステナブルな環境を作っていかなければならない、という意識が周りにも広がっていくと嬉しいです。
私たちは、自分たちがやりたいからやる、というよりは、十和田湖のためにやって、そこに良い流れが生まれるといいなと思っています。まだまだ、このような施設は十和田湖には少ないので、今ある施設の方々にも、これから新しく来る方々にも、ここが少しでもモデル、見本みたいになるといいなと考えています。国立公園であるべき施設のあり方というものが、うまく伝わるといいですね。自分たちがどうこう、というよりは、周りに良い影響が出ると嬉しいです。
岩田:ここが起点となって、十和田湖全体がサステナブルなエリアになっていくのですね。世界中の人が「そこに行ってみたいな」と思うような場所になる。
安藤氏:そうですね。
岩田: 安藤さんの十和田湖への深い思いと、その思いを形にする具体的な取り組みを伺うことができ、大変興味深かったです。本日は貴重なお話をありがとうございました。
安藤氏:こちらこそ、ありがとうございました。
Canteen & Microhotel uqui で IWATA による極上の目覚めをご体験ください