多様性だけでは組織は変わらない 求められるのは“違い”を受け入れ、価値に変える「CQ(文化の知能指数)」

2025.06.16 08:00
近年、多くの日本企業が「ダイバーシティ&インクルージョン」の重要性を掲げていますが、実は単に多様な人材を集めるだけでは十分ではありません。


では、真に強い組織、イノベーションが生まれる会社には何が必要なのか。それを伝える著書『強い組織は違いを楽しむ CQが切り拓く組織文化』の著者である宮森千嘉子は、多様性を活かして組織を強くする鍵は「CQ(文化の知能指数)」にあると語ります。


長年、組織文化の強い会社で働いた経験を持つ宮森に、日本企業が抱える組織作り上の課題とその解決策、そして「CQ」の必要性について、話を聞きました。
写真:日越外交関係樹立50周年記念事業として認定された「Aureole Conference 2023~クロスカルチャー・ファシリテーションによる組織進化~」での登壇の様子(ベトナム・トゥアティエンフエ省フエ市)
違いを理解できる組織こそ成長する—CQが切り開く可能性
ー今回、CQをテーマにした著書を出版された理由についてお聞かせください。
日本に帰国して数年が経ちますが、文化やその背後にある違いを理解して働いている方が、まだまだ少ないと感じました。特に日本の組織の中には、未だに「皆が同じ方向を向かなければならない」、「金太郎飴のように、画一的でなければならない」という考え方が根強くあります。しかし、基本的には一人ひとり違っていて、その中でどのように"ゆるく連携"してゴールを目指していくかが重要です。


そこで大事なのが、"CQ(文化の知能指数)"です。CQとは、異なる文化や背景を持つ人々と効果的に協働するための能力のことです。国籍が違う人同士はもちろん、日本人同士でも考え方は違います。そうした「違い」を理解するための、「CQ」を使いこなせる人が増えれば、もっと多くの人が楽しく働けるし、組織も強くなる。そう考えて、今回の本を執筆しました。
2025年4月発刊「強い組織は違いを楽しむ CQが切り拓く組織文化」amazon: 
ーCQとは具体的にどのようなものなのでしょうか?
CQ(文化の知能指数)とは、「自分と異なるバックグラウンドを持つ人と効果的に働いて成果を出す力」です。私はこれを、「いつでも、どこでも、誰とでも働ける力」と表現しています。


実は、CQの研究は「2000年問題」がきっかけで始まりました。当時、世界中の優秀なITチームが集まって対策を研究していましたが、うまくいくチームとそうでないチームがあったんです。全員が優秀なのに、なぜ成果に違いが生まれるのか。そこから研究が始まり、大きく進展して今を迎えています。
ーDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を目指す組織も多いと思いますが、CQとの違いは何ですか?
ダイバーシティとは、多様性が実現され、色々な人が集まっている「状態」を指します。一方で、インクルージョンは、その多様な人たちが組織として効果的に機能し、それぞれが幸せに活動できることを指します。
ダイバーシティ経営の実現に必要な「インクルージョン」とは(アイディール・リーダーズ作成)
「インクルージョン」と「同化」の違いのマトリクス(アイディール・リーダーズ作成)


組織においては、個々人の違いが尊重され、かつ組織に対して帰属感を持っていることが重要ですが、多様な人材を集めただけでは「インクルージョン」は実現しません。ダイバーシティの実現から、インクルージョンへと進むために鍵となるのが「CQ」なのです。
CQが高まることで、相手に対する関心を抱き続け、相手の強みと自分の強みを掛け合わせることを常に考えられるようになるため、どんな人とでもうまくやっていけるようになります。
日本の一般的な組織にも「多様性」は存在する
ー多様性というと、どうしても海外企業の方が進んでいるイメージですが、日本企業にとってCQが重要である理由は何でしょうか?
例えば、本書の中で紹介した丸井グループの事例が典型的です。彼らはさまざまな意見を出し合い、自分から手を挙げてプロジェクトに参加すること、上の言うことにとらわれすぎないことを大切にしています。


これは相手が自分と違う意見を持っていることを理解・尊重しながら、自分の意見をきちんと言うことを意味しており、まさに「CQ」の実践の最たる例だと言えます。


イノベーションを起こすには「多様性」が必要だと言われます。しかし、単に多様な人材を集めればイノベーションが起きるわけではありませんし、そのままではただのカオスになってしまいます。きちんと相手の立場や考えを「理解」して、自分自身や組織に落とし込むこと。それがイノベーションにつながるため、「CQ」が重要であると言えるのです。
経営層の多様性スコアが高い企業は、イノベーションによる売上の割合が大きいことを表す調査(
より引用)
ー日本企業の組織文化にある特徴的な課題は何でしょうか?
日本の組織における特徴的な課題は、「垂直的多様性」をいかに認識して前に進めるかということです。


「垂直的多様性」とは、組織内の階層や権限の差における多様性のことです。こうした「垂直的多様性」のある組織では、組織内のさまざまな階層の人が、互いの立場に関係なく意見を交わし合って物事を進めていくことが重要です。


日本では、かつてトップダウン型の組織運営がうまく機能していた企業が、現在もその文化を大きく変えられず、現場から上層部への意見が通りにくい状況が続いていることがあります。その一方で、「上司から何か言うと、『パワハラ』になってしまうから……」と意見を飲み込んでしまうことも少なくありません。このように「垂直的多様性」が硬直化し、相互理解に進めていない組織がまだまだ多く存在します。


そうした状態から脱却するために、違いを受け入れて前に進める「CQ」が必要になってきます。
ーCQが低いことによる具体的な問題例はありますか?
CQが低いと、自分の言うことだけを押し付け、周りはそれに従うだけになります。そのせいで、エースが突然辞めてしまったり、最近では若い人がすぐに辞めてしまったりということが起こりえます。その背景には、互いのことがきちんと理解できないこと、つまり「CQの低さ」があると思います。


CQが低いと、お互いに言いたいことを言えなくなります。例えば、世代間の問題として「パワハラになるから若い人に注意ができない」と上の世代は思う一方、若い人は「もっと教えてほしい」と思っていても、その会話ができなくなってしまうのです。その結果、お互いに不満が溜まり、企業へのエンゲージメントが低くなるのはもちろん、イノベーションや組織改革ができない状態となってしまいます。
「違いを楽しむ」—CQを高める具体的なアプローチ
ーCQを高めるために、日本企業や個人ができることは何でしょうか?
まず、「人は違っていて良い」ということを理解することが大切です。日本では「人に迷惑をかけないように」と教えられますが、「迷惑」の定義も人によって違います。違いを認め、相手の視点を理解することから始まります。
それをする上で、まず自分たちがどれだけ“違い”に関して理解のある組織であるかを知る必要があります。本書にも掲載している、「共創できる組織かどうかのチェック項目」が有効です。


CQの高め方については、それぞれの組織によって違うため、ぜひ本書に目を通していただきたいです。
P.216ページ掲載/共創できる組織かどうかのチェック項目(Source:東海大学山本志都教授)
ーこの本をどのような方に読んでほしいと考えていますか?
組織を持っているリーダーの方々に読んでほしいと思っています。私は組織のイノベーション力を高めるためにコンサルタントとして企業をご支援することが多いですが、組織文化変革は常にリーダーから始まるものだと実感しているからです。5人程度の小さなチームを持つ方から大企業の部長クラスまで、チームを引っ張る立場の方々に届いてほしいですね。
ー最後に、組織開発に悩む方々へのメッセージをお願いします。
人は違っているのが当たり前ですし、違っていることは素晴らしいことなのです。しかし、違っているからといってバラバラに好き勝手に行動するのではなく、その中で緩やかにつながり、互いに理解し合い協力することができると、大きなパワーになります。


例えるなら、雨粒だと思っています。雨はバラバラと違う場所に降りますが、最終的には地球に落ちて、一つになります。バラバラだけど、最終的にはうまくつながる。そこにパワーがあるんです。


自分と違う人や方向性が合わない人を「ダメだ」と判断するのではなく、まず「違っていて良い」ということを受け入れるところからトライしてみてほしいと思います。そして、組織をさらに良いものにするために、CQを活用していただければと思います。


CQの高め方や生かし方はさまざまですし、組織によって目指すべきゴールは全く違います。組織作りに悩んでいる方々にとって何かヒントとなるようなことを、本書から得ていただけたらうれしいです。
書籍のご紹介:強い組織は違いを楽しむ CQが切り拓く組織文化
【こんな方におすすめの一冊】
・組織に課題感がある人事担当者
・組織文化の変革に取り組みたいマネジャー・経営層
・多様性を活かしたリーダーシップやチームマネジメントに関心のある方
・異なる背景や価値観を認識し、チームとして最大化する思考を身につけたい方


【書籍情報】
タイトル:「強い組織は違いを楽しむ CQが切り拓く組織文化」
著者:宮森 千嘉子(アイディール・リーダーズ株式会社 CCO/一般社団法人CQラボ 代表理事)
監修:ディヴィッド・リヴァモア
発売日:2025年4月26日(土)
Amazon発売日:2025年4月28日(月)
定価:2,090円(税込)
出版社:株式会社日本能率協会マネジメントセンター
ISBN:9784800593221


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https://mail.ideal-leaders.co.jp/lp/CQ-book-shoplist


プレスリリース:

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