“画風をもたない” 孤高の日本画家・堀文子、1960年代の実験的作品が一堂に ──「堀文子のデカルコマニー」展 銀座のナカジマアートで5月29日(木)より開催

2025.05.22 12:01
株式会社ナカジマアート
画家・堀文子が挑んだ、心象と偶然が織りなすデカルコマニーの表現
《おんな》堀文子 1965年 65.0×90.0cm (C)一般財団法人堀文子記念館


生涯を通じて変化を恐れず、自らの表現を追求し続けた日本画家・堀文子。
その知られざる創作の一章である“デカルコマニー作品”に焦点を当てた初の展覧会が、銀座・ナカジマアートにて5月29日より開催されます。開廊30周年を記念する本展では、1960年代に制作された代表作をはじめ、未発表作や書籍の挿絵も含めた貴重な作品群をご紹介いたします。
「自分の内部、人生が絵になりそうだと思って、やれるならやろうと決心したんです。いままでの体験を絵に出せると思ったので──わたくしの中身から鬱積していたものが流れだしたように、いくらでも描けて、いくら描いても疲れないんですよ。」(雑誌『みづゑ』1965年より 堀文子 談)

2019年に100歳で逝去した日本画家・堀文子若き日に喪失と旅を経て、たどり着いた心象風景とは──
堀の作品は、作家自身が「画風をもたない」と語るように、時代とともに絶えず変化し続けてきました。その中でも特に異彩を放つのが、1960年代に制作されたデカルコマニー技法による作品群です。
堀は、1960年42歳のとき最愛の夫を亡くした喪失感から脱するため、約2年半にわたり海外を放浪します(訪問国:エジプト、ギリシャ、イタリア、フランス、アメリカ、メキシコ)。長い旅を終えて帰国後、カルチャーショックから一時は絵を描くことができなくなりましたが、やがてデカルコマニーという技法に出会い、その偶発性に惹かれて心象風景を描くようになります。
デカルコマニーは、紙と紙の間に絵の具を挟み、圧力をかけることで偶然に生まれる模様を用いた表現技法です。意図せず現れる地層のような模様、空白、いびつな形は、不思議な世界を生み出し、鑑賞者の想像力を刺激します。この制作体験について堀は、「自分の中に溜まっていたものが流れ出すように、いくらでも描けた」と語っています。
この技法は、海外滞在中に訪れたメキシコの印象をもとに描かれた大作《チアパスの夜》(1966年)や、《魔王の館》(1964年)などにも用いられ、1965年に日本橋高島屋で開催された初個展「堀文子作品展」に多数出品されました。しかし当時の堀のインタビューで、これらのデカルコマニー作品について「明らかに売れない」と話しており、作品の多くは堀のアトリエに長い間保管されていたのです。
本展では、その初個展に出品された作品に加え、未発表の作品や書籍の挿絵に使用された作品も展示いたします。これまであまり知られてこなかった堀文子の新たな一面を、ぜひご高覧ください。

「今のわたくしは、たいへんいいコンディションにいるので、かえって悲惨な絵が描けるんでしょうね。いちばん悲惨だったころに、肯定的な絵をかいていたんですから、面白いものです。」(雑誌『みづゑ』1965年より 堀文子 談)
展示作品には初公開の作品も多数
《デカルコマニ―》堀文子 1965年 24.6×16.8cm (C)一般財団法人堀文子記念館
挿絵使用作品 堀文子 1965年頃 20×12cm (C)一般財団法人堀文子記念館
挿絵使用作品 堀文子 1965年頃 10.8×18cm (C)一般財団法人堀文子記念館


開催概要
堀文子(ほり・ふみこ)
1918年、東京・麹町平河町に生まれる。女子美術専門学校(現・女子美術大学)卒業。在学中より、日本画の核心を目指す「新美術人協会」に出品し、戦後も創造美術、新制作協会日本画部、創画会といった革新的なグループで活動を続けた。1952年、第2回上村松園賞を受賞。新しい時代の日本画を担う若手作家として注目を集める。
1961年には、約2年にわたる海外放浪の旅へ出発。以後、感性が鈍ることを恐れ、堀は、「一所不住」(自身の造語)を信条とし、神奈川県大磯町、長野県軽井沢町、そして69歳でイタリア・アレッツォへと拠点を移していった。
画家のみならず、エッセイストとしても知られ、画文集やエッセイを多数発表。その生き方や言葉は、多くの人々の共感を呼び続けている。
生涯現役にこだわり、1997年(78歳)から2016年(98歳)まで、ナカジマアートにて毎年新作展「堀文子 現在(いま)」を開催。自然への畏敬や生命の不思議への感動を抱き続け、独自の感性と表現によって多彩な作品を生み出した。2019年、100歳で永眠。
近年では全国各地で回顧展が開催されている。
                        詳細:
[関連イベント]『デカルコマニー 体験教室』開催決定!!
堀文子が夢中になったデカルコマニーの技法を挑戦してみませんか?
詳細はナカジマアートまでお問い合わせください。(HP:

開廊30周年を迎えたナカジマアートで、今後開催される開廊記念企画展
1995年に銀座に開廊し、今年で30周年を迎えるナカジマアートは、Part.1「堀文子 デカルコマニー」を皮切りに、これまで収集してきた作品を一堂に集めた「ナカジマアート開廊30周年記念企画展」を開催いたします。Part.2「東山魁夷 版画 海と山」では、版画《海と山》シリーズ全10点を、当ギャラリーで初めて展示します。Part.3「日本画家の挿絵」では、武部雅子が辻原登著の小説『卍どもえ』の挿絵を手がけた原画をはじめ、新聞や雑誌に描き下ろした挿絵原画の数々をご紹介します。Part.4「ナカジマアートコレクション展」では、小磯良平、小林古径といった巨匠による名品のほか、近年活躍する作家による挑戦的な作品、そして初公開となる貴重な作品も多数展示販売いたします。
30年の歩みをお楽しみいただける本企画、どうぞお見逃しなく。

ナカジマアート開廊30周年記念企画
今後の予定の詳細はナカジマアートHPにて随時更新致します。(HP:


会場となるナカジマアートについて
株式会社ナカジマアート は、銀座五丁目・西五番街を拠点とする画廊で、絵画、特に日本画を中心に取り扱っております。
1995年の開廊以来、日本画の魅力を広く伝える場 として、巨匠から若手まで幅広い作家の作品を紹介してまいりました。開廊当初より、新作展を開催していた日本画家 堀文子をはじめ、片岡球子、平山郁夫 など、日本画の歴史を築いてきた作家の作品を扱ってきました。
近年では、若手作家の新たな挑戦の場として、企画展を開催し、次世代の日本画を支える取り組みも行っております。
2025年で開廊30周年を迎えたナカジマアート。これからも日本画の魅力を発信し、伝統と革新を共存させる画廊として歩んでまいります。

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