国内70兆円の建設業界を最適化!建設テック『BALLAS』が仕掛けるサプライチェーンDX

2025.04.02 10:01
前年比で売上3倍、売上総利益4倍の成長スピード。サービス提供開始から3年で累計納品部材数3,500件を突破——。建設部材の最適な調達を実現し、生産性と創造性の両立を目指す株式会社BALLAS(バラス)は、このたびシリーズA総額18.4億円の資金調達を実施しました。


BALLASは、自らを「メーカー機能を備えたテックカンパニー」と位置づけ、リアル×テクノロジーの融合による新たな建設DXの実現に取り組んでいます。
その成長の背景と今後の展望について、代表取締役 木村将之 にインタビューしました。
株式会社BALLAS 代表取締役 木村将之
ーーー「最適化」に取り組むとは?建設業の今
- 中野サンプラザ再開発、区が計画「白紙」を表明
- 五反田TOCビルの建替えが延期
- 大阪万博「工事遅れ」
こうした建設計画の見直しや遅延のニュースを見かける機会が増えていませんか。


これは決して一部のプロジェクトだけの問題ではなく、建設業界全体が直面している課題の表れです。いずれも人手不足や、資材価格高騰といった外部環境の変化がきっかけです。
—— 建設業界が抱える課題
2025年の今年、団塊の世代が75歳以上となり、日本の高齢化はさらに進みます。建設業においても、60歳以上の技能者が約80万人、全体の26%を占める状況になっています。ベテラン技術者の引退が進む一方で、若手の育成が追いつかず、技術の承継が難しくなる。さらに、時間外労働規制の強化も相まって、建設業界を取り巻く環境は激変しています。
—— 建設部材を製作する製作工場が抱える課題
建物の一部になる建設部材の製作を担う製作工場に目を向けると、この20年で事業所数は約6万社から約3万社へと半減しています。この減少により建設工事会社は適切な仕入先となる製作工場を探すために多くの工数を費やす、あるいは必ずしも最適なQCD(Quality=品質、Cost=価格、Delivery=納期)ではない製作工場に依頼し続ける必要が生じています。
こうした状況においては、もはや一時的な対策や個別の業務改善だけでは、根本的な解決には至りません。各地域に根付いた基幹産業である建設業の持続可能性を確保するためにも、製作工場との取引の安定化・共存といったサプライチェーンの最適化や、業界全体の構造から見直すことが、より一層重要なテーマになっていると考えています。
ーーー 建設部材の作図をかえる、調達がかわる「BALLAS」とは?
大前提として、建設業界は何をつくるかの観点で「建築・設備・土木」、あるいはどのような技術要素の構成観点で「構造・設備・意匠」といった複数の区分方法があり、他産業と比べても複雑性が高いと捉えています。但し、どの切り口でも共通するのは、土地の条件が全く同一でない限りは少なからず物件の固有性が存在するという点です。要は一品一様であり、建設部材においても大小を問わずカスタマイズが必要です。
ーー 既成概念を取っ払う
弊社が強みとする金属の建設部材(製作金物)においても、現場の特異性に応じて、加工条件(長さ、高さ、厚さ、穴位置等)がわずかに異なる部材が多数存在し、それぞれが一品一様の加工品として扱われてきました。


弊社ではこうした部材の定数・変数を抽出し、パラメーターとして設定することで可変なモジュール*を生成しています。このパラメーターを変更することで自動作図が可能になり、作図工数を約67%削減しています。例えば、有象無象の仕様であった物流コンテナが20世紀には規格化・カスタマイズ化されたように、一品一様の建設部材においてもカスタマイズが可能な形で標準化を図っています。


*モジュール:建設部材を機能単位に分割し、機能的なまとまりとして定義すること。本件は一品一様の部材における共通項をパラメーターとして、数値を変更すると2D-CAD、3D-CADが可変するアルゴリズム設計を意味します。
設計データのモジュール化による最大のメリットは、マス・カスタマイズ生産による製作コスト改善です。


弊社では開発したモジュールを利用しながら、100社超のパートナー工場様と得意領域がマッチする建設部材でマスプロダクション(大量生産)に近い生産体制の構築を行っています。これにより、部材原価のトータルコストとして平均30%の改善を実現しています。


同じモノづくり業界の一つである製造業が、「規格化」によって「量産」することで実現してきた製作工場の稼働率向上、生産性の改善を、設計データのモジュール化によって建設業界でも実現しています。
ーーー BALLAS事業の着想になった出来事はありますか?
最初に入社した商社の双日での経験ですね。
2014年に新卒で入社して、金属・資源分野の輸出入、事業投資、事業会社の経営支援に従事し、金属3Dプリンター事業の海外展開のため、欧州へ赴任していました。


金属・資源分野では鉄やカーボンを扱い、基本的な輸出入業務から従事しました。その後、金属3Dプリンターのビジネスを担当したことが大きな転機の一つです。3Dプリンターの本質は、設計データを送れば材料と装置がある複数の場所で部材製作ができることと理解し、これをサプライチェーン変革の一つのアプローチだと捉えました。3Dプリンターにこだわらずとも、設計データの柔軟性によっては、カスタマイズしながらも大量生産と同じ生産性を追求できるのではないかと、これが現在のBALLASを考えるキッカケとなりました。
建設業界への関心は、設計士であった父の影響と語る木村
—— そこから、BALLASの創業につながるのですね。
あともう1点は、製造業向けに金属加工のマッチングプラットフォームや生産管理システムを手掛ける株式会社Catallaxy(カタラクシー)での経験ですね。


Catallaxyは製造業向けのサービスではありましたが、建設業の顧客も一部いらっしゃいました。この事業を通じて、建設業界での部材製作に関する解像度が一段と高まったのです。製造業と建設業では、それぞれの課題に起因するワークフローが大きく異なっていました。


製造業においてはQCDの観点でベストな製作パートナーさんを探索することに課題感がありますが、建設業は製作を依頼する前に工数の掛かる作図が必要という異なる課題感だったんですね。なぜなら、製造業は発注者側が詳細まで図面を書き、その図面にもとづいて製作工場に依頼しますが、建設業では発注者側が作成する図面は大まかなメッシュのもので、工場側で製作用の詳細な図面に書き直さないといけないんです。これを解決するのは当時は難しかった、、、
—— 作図する担い手が異なると…
建設現場では情報フローが後工程に行くほど具体化し、作図に必要な情報の粒度が細かくなります。建設業界ではこれを「図面バラシ」といいます。お客様である建設工事会社様が作成した図面をもとに、製作工場様が建設部材を作るための「図面をバラす」工程を最適化することがサプライチェーン上のボトルネックを解決する起点であると理解しました。実は、BALLASの社名はここからとっています。


国内の建設投資額は年70兆円規模と非常に大きな金額が動きますが、そのうちの35兆円以上を占めるのが、この調達領域。この最適化を進めることで、建設サプライチェーン全体に寄与していきたい。全体最適を目指し、業界の方々と一緒に「バラしてアップグレード」したい。そんな想いもこの社名に込めています。
ーーー 「リアル x テック」というアプローチ
BALLASは、建設業法第3条にて規定される建設業許可を取得しています。これにより、建設メーカーとして建設部材の設計・生産、および施工のデータ利活用を加速させるとともに、業界解像度の高いソフトウェアの提供を進めることで業界全体の更なる最適化に取り組んでいます。
OpenAIのChatGPT、GoogleのGemini、MetaのLlamaなど、、、
「生成AI」が注目を浴びるようになって久しいですが、ソフトウェア開発の現場でもAIを活用した業務の刷新、スピードアップが進んでいます。そのような現代において、テック企業がより業界への貢献を深めていくために重要となるのは「実業への解像度」と認識しています。


これまで注力開発・運用してきたサプライチェーンマネジメントシステム(以下、「SCMシステム」)においては、図面情報や帳票情報をAI分析することで共通基盤をアップグレードし、リアルなモノである建設部材のQCD向上を図っています。


また、ものづくり業界の共通言語である図面をもとにしたコミュニケーション機能をデータベースにオントップすることで、情報分断を防ぐ共通基盤ツールとしての展開を図る予定です。これらは、自らが建設メーカーとしてデータやノウハウを蓄積しているからこそ開発が加速できていると捉えています。
ーーー  生産性と創造性が両立する世界
最後に、建設業の工業化における歴史と、弊社が思い描く未来についてお話しさせてください。一品一様の建設部材でのマス・カスタマイズ生産は第一歩であり、これを起点としたサプライチェーン最適化の位置づけについてです。
弊社では建設業の工業化を「機械化、標準化、大量生産といった製造工場的な生産手法を取り入れて、生産性高く、高品質な建設プロセスを実現すること」と定義しています。


世界的には18世紀後半から19世紀前半にかけて起こった産業革命が契機となり、素材 / 機械 / 社会インフラが複合的に発展したこと、また特に日本国内では高度経済成長、都市部での人口増加などによる旺盛な住宅需要によって工業化が加速した認識です。一方、第一次~第五次産業革命と段階的に工業化レベルを上げて生産性が追求されてきた製造業とは異なり、新古典主義、歴史主義、モダニズム、ポストモダンなどと文化的な背景から揺れ戻しと定着を繰り返しているのが建設業だとも捉えています。
これは建設業が単に生産性を改善していくだけでなく、人類の歴史を創造的に紡ぎ続けるシンボルの一つであることを示唆している理解です。データ活用によるマス・カスタマイズ生産は先人たちが知恵や技術を磨き、生産性と創造性を追求してきた結果であり、これを起点に1500年近く続く人類にとって無くてはならない業界の持続可能性を高めること、そのためのサプライチェーンの最適化が我々の使命だと考えています。


「建設業を最適化し、人々を幸せに。」*に向かって引き続き邁進して参ります。
*株式会社BALLASのミッション。


BALLAS 「Entrance Book」
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BALLASでは、データを利活用した取引の構造的な改善や、AIを活用したプロダクトの開発に力を入れています。これに伴い、ソフトウェアエンジニア、機械学習エンジニアや、BIM/CADの業務経験を活かした設計・製図DX職を積極的に採用しています。営業職や建設・製造業出身者も広く募集しています。

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