「日本の暮らしを、世界で一番、かしこく素敵に。」のミッションのもと、リノベるでは統合型リノベーションプラットフォームを構築し、リノベーションをスタンダードな選択肢にすべく取り組んでいます。
2025年1月、リノベるのボードメンバーに、品質管理のプロフェッショナル小林俊雄が加わりました。
【Vol.98】新取締役就任。品質管理のプロフェッショナル小林俊雄が加わりリノベるはどう変わる。
そして、2月、三菱HCキャピタルとの資本業務提携を発表、更なる成長に向けてガバナンスの重要性も増しています。
今回はボードメンバーの中でも、「監査等委員(※)」を務める常勤監査等委員長の鳥居秀明(とりいひであき)、社外取締役監査等委員の大野瑛(おおのあきら)、そして砂川佳子(すなかわよしこ)の3名に、監査等委員としての立場から、リノベるの更なる成長への期待などについて、代表山下智弘とともに話を聞きました。
※監査等委員とは、取締役の立場にて取締役会に参加し、取締役の業務執行を監査する役割を有する。監査等委員会は過半数が社外取締役(3名なら最低2名以上)で構成され、経営外部からの視点をもって監査機能を発揮している。リノベるは2021年4月、「監査等委員会設置会社」に移行した。
公認会計士、弁護士、経営管理のプロフェッショナルがそろう
―まずは監査等委員の皆さんの経歴、専門領域について教えてください。
砂川:公認会計士と税理士をしています。監査法人に約20年勤務し、企業の会計監査、内部統制の整備・運用評価などのアドバイザリー業務を担当していました。2013年に独立し、会計事務所を開業するとともに税理士法人を立ち上げました。専門は企業の財務、経理、内部統制です。リノベるでは2021年から社外取締役監査等委員を務め、現在はリノベるを含む3社で社外取締役監査等委員、あるいは社外監査役を務めています。
大野:弁護士・公認不正検査士としてコーポレート・争訟案件を中心に仕事をしています。企業法務と不動産領域を専門とする法律事務所で、大手ハウスメーカーやデベロッパー、サービサー(債権回収会社)などの法律業務を担当する等の経験を経て、2018年に独立しました。独立後は、スタートアップやベンチャーキャピタルの法律顧問としてサポートしています。現在、事務所全体で約130社のスタートアップを支援しています。リノベるには2018年6月から、社外監査役として参画したので、まもなく7年になりますね。社外役員として関わった企業はこれまで9社、現在はリノベるを含む4社で兼任しています。
鳥居:私は常勤の監査等委員長をつとめています。新卒で三井物産に入社し、食糧·食品のトレーディングや、エレクトロニクスなどのICT関連の業務に携わりました。インドネシア駐在(含留学)、中国・上海の関係会社への出向、北京の現地法人の董事・部長を務めた経験もあります。帰国後、本店では内部監査部や経営企画部に属していました。2018年、三井物産から出向者として派遣されたのがリノベるとの最初の関わりです。その後、いったん三井物産にもどりましたが、その3年後には三井物産を退社し再びリノベるにジョインしました。専門領域としては内部統制、経営企画・管理といったところです。
―代表山下との出会いや印象、また会社の印象はどうでしたか。
砂川:知り合いから紹介されてリノベるを初めて知りました。この表参道のオフィスで山下さんと初対面したと記憶しています。夢をストレートに伝えてくださるところに、いい意味での熱さを感じたのがいちばんの印象です。山下さんはいろいろなアイデアをお持ちで、これまでにさまざまなことに挑戦されてきていますが、方向転換もできる柔軟性があると思いましたね。
会社として印象的だったのは、以前「株主の会」に参加した際、大勢の株主を前に司会をしていたのが、新入社員の皆さんだったんです。明るく物怖じしない姿に、リノベるの社風を感じました。数カ月の社員に任せる上役の決断も素晴らしく、そこにリノベるのすべてが表れています。
大野:スタートアップ業界の知人の紹介がきっかけでした。多くのスタートアップを見てきた中で、会社の成長には社長の熱量や渇きが不可欠だと感じています。そんな中、山下さんは常に変わらぬ熱量を持ち続けておられる。ミッション実現への想いが強く、成長しても会社の本質は変わっていないと感じます。
社員の皆さんも明るく、会社全体にポジティブなエネルギーが溢れている。それは、社長も従業員も成長を求め続けているからこそで、これからの成長の原動力にもなると思います。
鳥居:先ほどお話ししたように、三井物産からの出向がはじまりでした。着任して最初に感じたのですが、リノベるの従業員の皆さんは非常に元気に、はつらつと働いていて、その姿がとても新鮮でワクワクしました。その後、三井物産に戻りましたが、結局またリノベるに戻ってきました。この会社が好きになっていたんでしょうね。
山下さんと初めてお会いしたとき、堂々と夢を語る姿がとても印象的でした。自信がある一方で謙虚さも持ち合わせていて、非常にバランスの取れた方だと思いました。三井物産にいた時代、関係会社や現地法人などを回る中で、うまくいっていない会社や組織には共通して、マネジメントと現場の距離が遠いとか、従業員の皆さんに活気がないといったことを感じたのですが、リノベるにはそういったことはありませんでした。「あっ、この会社はいいな!」と直感的に感じたんですよね。社員総会の盛り上がりや風通しのよい雰囲気にも惹かれました。もちろん、スタートアップとしての課題は数多くありましたが、皆さんの実行力をもって着実に改善が進み、2度目に戻ってきたときには非常に成長していました。
砂川佳子氏。実家がリノベーションをしており、自分のステージに合わせて既にある住まいを住みやすいよう変えていくことに親近感があった。
―山下さんから見た監査等委員の印象はどうですか?
山下:砂川さんは会計士ですが、堅い数字の世界の人という印象がまったくありません。言葉が柔らかく、伝わりやすい。できないことをただ「できていない」と指摘するのではない表現方法や提案に、人間としての愛を感じます。
大野さんはスタートアップ支援のご経験から、僕らのようなスタートアップにも理解しやすく道筋を示してくれます。実はランナーで、休みの日に走る姿を見かけることもあり、僕自身もラグビーをやっている身として、アスリートという点でも、気が合うような感覚が初めてお会いしたときからありました。
鳥居さんに対する印象は、自分が変わったことで変わりました。以前は「株主の代表」からの言葉として、一歩引いて捉えてしまっている部分がありました。でも三井物産を辞めてリノベるに飛び込んできてもらった今では、当時と同じ言葉だったとしてもメッセージの伝わり方が違うように感じます。数字の桁がまったく違う商売に長年携われてきた方だから、見ている視点も違っていて、気づきを与えてくれることも非常に多いです。
―リノベるの強みや魅力、今後の可能性についてはどう考えていますか。
砂川:既存の建物の価値をどう高めていくかというのは社会的にもますます必要になっていくと思っています。個人の住まいだけでなく、ビルや施設なども含めて、事業としても楽しみな分野だと感じています。
大野:ここ数年は若手とシニアのエネルギーが融合し、層の厚みが増していますよね。知恵を持つ方々が若手を支え、サポートできる環境は心強く、大きな力になっていると思います。その点で、スタートアップの中でも異色の領域に入ってきていて、成長を止めない形で会社として大人になってきていると感じます。
山下:リノベるには平均年齢が70歳以上の方々が施工の技術的支援で参画してくれているのですが、皆さん楽しんで仕事をしてくれているんですよね。若いメンバーたちの叱咤激励を生きがいとしてくれています。若手も愛情を感じてついていっていて、若手とシニアの融合は僕もこの2~3年すごく感じるところです。
前列に並ぶのは、歴50年超のベテラン支援者。若手とワンチームで施工現場を支えている。
大野:リノベるは個人向けリノベーションから始まり、そのノウハウを活かして法人が所有するビルや施設などの一棟リノベーションという大型案件へと展開していますよね。個人と企業のニーズが共通していることに気づき、それを社会に還元する形で成長してきたのだと思います。特にここ数年の法人向けリノベーションの広がりは想像以上でした。次はどんな挑戦をするのか楽しみですし、さらに新たな領域に踏み込んでくれるだろうと期待しています。
鳥居:リノベるの魅力は、社会的課題に堂々と正面から取り組んでいる姿ですね。これは創業当時から今に至るまでまったくぶれていないと思います。その姿がマーケットにもよく見えはじめ、評価されているのでしょう。成長率の高さがまさにそれを裏付けています。
大野瑛氏。家具が大好きで、デンマークを旅行した際は数々の名作家具を制作したフィン・ユールの自邸にも足を運んだほど。
取締役会で同じ一票を有するからこそ、真剣な議論が交わせる
―監査等委員として心がけていることがあれば教えてください。
砂川:会計士としてはリスクは最小限にしたいと職業的に考えてしまうのですが、経営にはときにリスクを冒さないと成長できない場面もあります。社外役員の仕事をするようになってからは、リスクをどう回避するかではなく、リスクをどうおさえながら成長できるかを考えるようにしています。私は経営の経験が豊富なわけでもありませんから、アドバイスというよりは、どうやって一緒にやっていけばいいかという気持ちで携わるようにしています。ストップをかけるわけでも、ただ応援するわけでもなく、バランスを大切にしています。
大野:法律家という立場から、まずコンプライアンス上、道を踏み外してはいけない部分に関しては確実にブレーキをかけます。監査等委員としてガバナンスがきちんとされているかを見続けるのも当然の役割です。しかし、それだけでなく、砂川さんがおっしゃったように、リスクを見える化して経営陣に提示し、リスクをきちんと取れる意思決定ができるようサポートすることも求められていると考えています。
「監査等委員社外取締役」は、取締役会において議決権の一票を持っています。「監査役」という立場だとその一票が持てない(※)。その点で、議論に参加するマインドは変わりましたね。リノベるが監査等委員会設置会社に移行してからは、監査等委員が取締役会で発言する内容も変わってきましたし、より踏み込んだ発言がしやすくなりました。
※「監査役」は取締役の職務執行を監査する役割を持ち、個々の監査役に監査の権限が属する。また、取締役会に出席する義務があるが、議決権は持たない。一方「監査等委員」は取締役であり、監査の権限は監査等委員会に属する。取締役として取締役会の決議に参加し、議決権を有する。
山下:8人のボードメンバーのうち、監査等委員の3人が全員「ノー」と言ったら話が進みません。だから、僕は皆さんを納得させることができる話をしなくてはいけないし、皆さんもより詳しく話を聞く必要が出てくる。それはお互いに議決に対する同等の1票を持っているから。真剣勝負感がありますよ。
大野:リノベるのボードメンバーには社外取締役が非常に多いですよね。それは社長に対して、外部の役員が意見する場が非常に多い仕組みを作っているということです。一般的には、こうした体制を嫌がる社長も多いのですが、今のリノベるにとってはメリットになっていると思います。
山下:僕がいちばんの大株主で代表でもあるので、思った方向に会社を進ませるスピードが速まるという良さがある反面、間違った方向に進むスピードも速いということになります。裸の王様にならないよう、周りにしっかりけん制してもらうためにも、外部の人に同じボートに乗ってもらい、一票を持ってもらうことが重要だと思い、この形にしました。これは大正解だったと思います。
―鳥居さんは常勤取締役の監査等委員ですが、お二人とは視点が違うのでしょうか。
鳥居:ガバナンスも内部統制も基本はコミュニケーションだと思います。皆さんとface to faceで話し、良い面も悪い面も感じ取る必要があると思っています。システムや書類を通じた監査はもちろん必要ですが、それ以前に、直接のコミュニケーションを重ねることで、個人や組織の課題を洗い出し、経営に活かしていくことが付加価値を生むと思い、実践しているつもりです。個人的に学んでいたコーチングの手法を少し活かして、皆さんとのコミュニケーションの質を上げようと取り組んでいます。ただ、時にはより業務執行に近い話題で盛り上がってしまうこともあり、少々出しゃばりな監査等委員になっているかもしれないですね(笑)。
大野:社外取締役として、鳥居さんが現場の情報を収集し、それを監査等委員会で共有してくださることが非常にありがたいです。社外取締役は現場の空気感や状況が見えにくいのですが、鳥居さんのおかげで現場が見え、適切な議論ができていると感じます。
鳥居:監査等委員設置会社に移行し、社内の情報共有のシステムも整い、委員会内外の透明性が一段と高くなりました。監査等委員会内のコミュニケーションも一層深まったと思います。取締役会や経営会議など意思決定を行う場では、その案件に関して、皆さんがどれだけ準備して臨んでいるか、それまでのプロセスが適切で、議論はしっかりと深まっているか見るように心がけています。
鳥居秀明氏。インドネシアには3年、中国には6年ほど駐在していた。電子書籍事業会社の取締役としての出向経験も。
―最後になりますが、皆さんがリノベるに感じている課題についても教えてください。
砂川:個人のお客様が多いので、コロナや戦争など、ここ何年かは外部環境の影響を受けやすかったと思います。外部環境に左右されず、事業が安心して続けられる仕組みが必要だと感じます。それから個人的には、リノベるの掲げるミッションの「日本の暮らしを」が「世界の暮らしを」に変わる日が来てほしいですね。
大野:シニア社員が増え、品質向上と品質管理の真の意味での確立に全社が向かっています。「リノベるクオリティ」を確立できるかは、ここ数年が正念場だと思います。品質をより安定させた上で、さらに向上させ、世間一般から認知してもらうことがリノベるの課題であり、力を入れてほしい点です。品質にこだわる姿をぜひ見せてもらいたいです。
鳥居:大きく2つあります。1つめは課題というよりお願いですが、この会社の素晴らしいミッション、ビジョン、バリューを常に忘れず、Back to Basicsとして継続してほしいということです。もう1つは、ノウハウの継承基盤の強化です。最近では特に法人向けの様々なリノベーション案件が増え、皆さんの経験や知識がより一段と積み上がっていると思います。それらをしっかりと次に繋げるためにも、言語化を一層進め、ひとりひとりに浸透させることができれば、成長の速度がさらに速まるのではないかと思っています。
山下:本当に勉強になりました。近年、稀有な出来事が続き、経営環境は激しく難しいですが、スタートアップには課題を価値に変える大チャンスでもあります。変化できるかが大事だと思います。スポーツで例えると、固まった筋肉ではケガをしたり、変化しようにもできませんが、ボディバランスを変えていく、しなやかさをもつということが今の企業に求められているのだと感じます。しなやかさとは何かというと、コミュニケーションですよね。お客さま、スタッフ、ボードメンバー、株主の皆さまと丁寧にコミュニケーションを取ることでしなやかさが出るのだろうと改めて思いました。
全力疾走しているので風当りも強いかもしれませんが、引き続き愛をもって叱っていただければありがたいです。