米カーネギーメロン大学AI留学手記・冨田勝氏の話題作『ゲーム少年の夢』電子書籍化

2025.02.18 15:21
サイアンスアカデミー
留学経験から生まれた感動の実体験が、次世代に貴重な示唆をもたらします。

 世界的に著名な科学者・冨田勝氏(67)が33歳のときに執筆した話題作『ゲーム少年の夢』が、電子版として再刊行されました。
 本書は、1970年代から1980年代に青春時代を過ごした冨田勝氏の人生を描写し、当時大流行していた「インベーダーゲーム」に熱中した経験が、彼の科学者としての原点となったなど、ユニークで痛快なエピソードが詰まっています。
 音楽家・冨田勲氏の長男として生まれた勝氏ですが、父親とは全く違う道を歩み、AI研究を志してアメリカのカーネギーメロン大学に留学しました。ノーベル賞受賞者のサイモン教授の指導のもとで博士号(Ph.D)を取得するまでの道のりは、数多くの苦難があり、決して平坦なものではありませんでした。しかし、彼の前向きな生き方は悲壮感が全くなく、とても爽快です。
 留学を目指す若者はもちろん、親世代や教育関係者にも多くの示唆を与える内容であり、未来社会を生き抜くためのヒントが詰まった必読の一冊です。

【書籍情報】
タイトル: ゲーム少年の夢 復刻版 Kindle版
著者  : 冨田勝
価格  : 99円(税込)
発売日 : 2025/2/13
サイズ : 6766 KB
ページ数: 147ページ
発行元 : Amazon.co.jp
ASIN  : B0DX52GCHN
URL  :
【目次】
序章 ゲーム少年の夢
第一章 少年時代回想記
第二章 インベーダーゲームの名人
第三章 ゲームソフトを作って売って儲ける
第四章 コンピューター将棋と人工知能 -
第五章 アメリカ留学の夢
第六章 博士号への道のり
第七章 夫婦で勉強した話
第八章 網膜剥離症で突如の入院
第九章 アメリカでの出産日記
第十章 人工知能と自動翻訳
第十一章 博士号を授与された日
復刻版あとがき 「その後の人生」

【オリジナル版序章より抜粋】
 私がコンピューターを専攻し、人工知能を研究するためにアメリカに渡り、博士号を取るという道を歩く事になったきっかけは何を隠そう「インベーダーゲーム」なのである。少年時代からゲームが好きだった私は、昭和五十年代に大流行したインベーダーゲームのとりこになり、想像を絶する量の時間とお金をつぎ込んだ。
 やがて私は、こんな面白いインベーダーゲームの中身はどうなっているのだろう、と興味を持ち始めた。 独学でプログラミングを勉強し、当時出始めたばかりの「アップルII」というマイコンを駆使して、数多くのオリジナルゲームソフトを開発した。そしてそれらを秋葉原のマイコンショップに売り歩き、当時の私としては大金をせしめたのである。
 さらに私は、もっと「知的」なコンピューターゲームを作ってみたくなった。 そこで小学校時代から将棋が好きだった私は、人間と対戦する「コンピューター将棋」の開発に挑戦した。
 これが私にとって「人工知能」という学問との出会いだった。
 当時日本では人工知能は学問として確立されておらず、本格的に勉強するなら、発祥の地アメリカに渡るしかなかった。そしてアメリカの大学院に留学し人工知能の分野で博士号を取るんだ、という当時の私にとってとてつもなく大きな夢を抱いたのであった。
 ところが現実は厳しくTOEFLとGRE(米国大学院共通試験)の点が思うように伸びず、何度も夢を断念しようと思った。 しかしどうしても夢を捨てきれなかった私は、一年浪人して次年度の受験にかけるという英断を行った。同期が次々と就職する中、留学予備校に通うことは、かなり屈辱的なことだった。
 翌年、人工知能の権威でノーベル賞学者のハーバート・サイモン博士のいるカーネギーメロン大学(CMU)から合格通知が届いた時は、天にも昇る気持ちだった。私はサイモン博士に弟子入りさせてもらおうと夢を大きく膨らませて、CMUのあるアメリカ・ペンシルベニア州ピッツバーグ市へと向かったのだった。
 飛行機の窓からのぞくと太平洋の彼方に、雄大なアメリカ大陸が朝日と共にゆっくりと近づいてくるのが見えた。私はこの時武者震いが止まらなくなった。夢の第一歩が実現した喜びと、何年続くかわからない留学生活への不安が入り乱れた複雑な心境だった。
 隣の席には結婚してまだ間もない有子が眠っていた。アメリカに連れていくことに反対する声もあったが、結局連れてきてしまった。
 すべてが挑戦であった。この時私の心が希望と情熱とに満ちあふれていたのを、今でもはっきりと覚えている。
 本書はそんな勉強嫌いのゲーム少年だった私が、アメリカ留学を目指し、博士号を取得するまでの道のりを記したものである。
(平成3年1月7日 当時33歳)

【著者プロフィール】
冨田 勝(とみたまさる) 
科学者・教育者・実業家
慶應義塾大学名誉教授
一般社団法人 鶴岡サイエンスパーク代表理事



1957年東京生まれ。慶應義塾大学工学部卒業後、米カーネギーメロン大学に留学し、AIを専攻して修士課程(1983)と博士課程(1985)修了。その後、カーネギーメロン大学助手、助教授、准教授、同大学Center for Machine Translation副所長を務めた。1990年に慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス開設とともに帰国。環境情報学部助教授、教授、学部長を歴任。生命科学分野に転身し、2001年に慶應義塾大学先端生命科学研究所(山形県鶴岡市)を開設し、22年間所長を務め、その間に多くの慶應鶴岡発ベンチャー企業を創業支援し、世界的なサイエンスパークを築き上げた。
主な受賞: 米国National Science Foundation大統領奨励賞(1988)、日本 IBM 科学賞(2002)、文部科学大臣表彰科学技術賞(2007)、大学発ベンチャー表彰特別賞(2014)、第5回バイオインダストリー大賞(2021)、第27回安藤百福賞大賞(2023)。
情報科学(Ph.D)、分子生物学(医学博士)、電気工学(工学博士)、地方創生(政策メディア博士)の4分野で博士号を取得。
真相報道バンキシャ(NTV)、サイエンスアイ(NHK)、NEWS23(TBS)等のコメンテータを務めた。近著に「脱優等生のススメ」(早川書房)、「AIとバイオテクノロジーの未来社会」(かんき出版)がある。

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