積雪の重みから屋根を守る、軒先タルキ折れ防止金具「腕じまん®」開発ストーリー

2025.02.18 10:00
滋賀県の東部、犬上郡多賀町にある株式会社 丸由(まるよし)。創業は明治7年(1874年)、瓦の製造からスタートし、現在は建築・屋根工事をはじめ宅地建物取引、太陽光発電工事を専門とする建設会社として、地域密着で事業に取り組んでいます。


 同社のある地域では、冬季の積雪が多く、近年では大雪による住宅被害も増加しています。特に2021年12月末から翌年にかけて警報級の大雪が続いた際には、降り積もる雪の重みに耐えきれず、屋根が破損する住宅被害が続出。同社には修繕依頼の問合せが殺到し、対応に追われる日々が続きました。

 代表の岸邉由朗さんは、この時、壊れた屋根を前にして不安と恐怖におびえる地域の人々の姿を目の当たりにし、なんとか力になりたいと考え、屋根の破損を防止する商品の開発を決意。材料や形状、機能について試行錯誤を繰り返し、軒先タルキ折れ防止金具「腕じまん®」を作り上げました。そこにはどんな工夫や思いが込められているのか、開発のストーリーをお聞きしました。
●積雪による屋根の破損が続出。修繕に追われる中で聞いた住人の悩みを解決するために商品を開発
──最初に、「腕じまん®」を開発された背景を教えてください。
きっかけは、2021年12月末から翌年1月にかけて、彦根市や多賀町で発生した雪害です。降り続く雪の影響で積雪量が増し、なかなか解けない状況が続いた結果、特に古い日本家屋では、屋根の軒先が折れる被害が相次ぎました。「何とかしてほしい」と修繕依頼の電話が鳴りやまない状況でしたが、すぐに行きたくても、大雪で現地に行くことが難しく、一度に対応できないので待っていただくしかありません。不眠不休という言葉がありますが、まさにそんな状況で、修繕を2年待っていただいた方もいたほどです。
 一度そういう被害を経験すると、修繕してもまた壊れるかもしれないという不安が残ります。お客様からは「もう壊れるのはいやなので、ずっと直さなくてもいいようなものを作ってほしい」という声を何件も聞きました。壊れた屋根の修繕には多くの費用が掛かりますので、それなら被害を未然に防げるものを何か考えようと思ったんです。
●軽くて丈夫、取り付け簡単。費用を抑えた雪害対策を実現するための工夫
──特にどんなところに工夫されましたか?
たくさん費用がかかると、お客様も大変だと思うので、ちょっと器用な人なら電動ドリルなどの工具さえあれば取り付けられるようなものがいいかなと。あまり大がかりなものになると、できる人が限られ、費用もかかり、すぐに対応できないことも出てくる、そのへんをどうしたらいいか考えました。
ヒントは、壁の棚を支える金具。そこから強度を増す構造を考えていきました。手に入りやすい材料を使い、自社で加工することができ、取り付け工事も簡単にできる、そして軽くて丈夫なものという条件をあげ、試行錯誤した結果、部材には鉄骨の建物に使う鋼材を使うことにしました。錆びることを考えればステンレスやアルミがよいのですが、加工がしにくく、価格も高い。軒先に取り付けるので雨には直接あたらないため、錆びの問題は、例えば海の近くで使う場合は専用の錆止めを塗るなど、塗装の工夫で対応を可能にしました。
──「腕じまん®」の特長を教えてください。
まず、取り付けが簡単なこと。市販の耐震金物用ビスで固定することができます。製品自体の1個の重さは、レギュラータイプで1㎏。軽量でありながら、この1個で3tの重量を支えることができます。
 また、屋根の角度は住宅によってさまざまですが、取り付け時には軒先の角度に合わせて調整できるようになっていますので、どんな角度の軒先にもしっかり取り付けられる構造です。
少し専門的な話になりますが、タルキ現しの真壁仕様だけでなく、プリント側張り仕様の大壁でも施工できます。タルキが破損していなければ、タルキの取替も必要なく、取り付けるだけで雪害対策ができる商品です。
●費用は修繕の半分程度。被害を未然に防いで安心を手にいれる、大切な家の延命の一助になれるよう日本各地の皆さんに届けたい。
──実際に修繕、取付工事をされていた時は、どんな状況だったのですか?
この「腕じまん®」の販売を開始した時は、取付工事よりも屋根の修繕に追われていた時期でした。「まさか、うちがこんなことになるとは思っていなかった」とおっしゃる方がほとんどで、せっかく直してもまた壊れると困るからと、修繕と同時に取り付けられた方が多かったです。取り付け後は「もう安心やわ」と皆さん喜んでいただいています。
仕事柄、私たちは見慣れていますが、自分の住む家の屋根が壊れてしまった状態を見た人は、「とんでもないことになった」とパニックになって震えている人、泣きついてくる人もおられました。被害にあってはじめて防災対策の大切さに気付くこともあります。被害にあっていなくても、対策をしておけば安心ですし、家も長く持ちます。切羽詰まってから直すより、早めに手当てをしていただきたい。「腕じまん®」が家の延命の一助になればと考えています。


──これまで取り付けた住宅はどれくらいですか?
発売後、地元を中心に40件ほど取り付けました。問い合わせをいただいて現場を見に行くと、いろいろなご相談を受けます。折れてしまった軒先の修繕には多くの費用がかかりますが、その半分以下でこの防止金具を取り付けることができるので、出費も抑えられるというお話をさせてもらうこともあります。地元の多賀町ではリフォーム補助金の対象工事に認定していただきましたので、地域の方には活用していただきたいと思っています。
 外壁の状況や住宅の構造によって取り付けが難しいところもあるのですが、屋根だけでなく建設業として、さまざまな経験と実績がありますので、いろんな観点からお手伝いすることができます。お悩みや困りごとの解決方法をご提案できますので、ご相談いただきたいと思います。
●住宅産業を通じて、お客様に幸せを届け、社会に貢献していきたい。
──今後はどのような事業展開をお考えですか?
会社としては、代々続けてきた屋根工事を継承し、より一層、皆様のお役に立ちたいと考えています。その一つとして、今回、開発した「腕じまん®」を、滋賀県に限らず、他の地域でも使っていただけるよう展示会などを通じてPRに努めているところです。
 昨今は経済状況も厳しく、少子高齢化で住宅建築も減少傾向で、古い家や空き家も目立ってきています。そうした中で建築の部分では不動産の事業にも力を入れ、宅地造成など地域の開発に取り組んでいきたいとも考えています。
 もう一つ、これは自分たちが欲しくて開発したのですが、現場の声から生まれた仮設足場用の屋根シート「Base101®」という製品を作り、商品化しています。雨の日でも仕事がしたいというニーズに対応するために作ったもので、工務店の方々にも注目いただいています。今後も困りごとを解決できるような商品開発にも取り組みながら、事業を充実させていきたいと思います。
●「腕じまん」紹介動画
●公式ラインアカウント
■株式会社 丸由(まるよし)
代表者:岸邉 由朗
所在地:〒522-0341 滋賀県犬上郡多賀町多賀1039

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