ケアマネジャーの業務負担をAIの力で解決。人手不足の介護業界を救う、AIケアマネジメント支援システム「SOIN(そわん)」開発秘話

2024.12.20 10:43
 急速に進む高齢化の影響で、人手不足の深刻化等、日本の介護現場はかつてないほどの緊急事態に直面しています。その最前線で中心的な役割を果たしているのがケアマネジャーです。


 ケアマネジャーは、「介護支援専門員」と呼ばれ、介護が必要な方々とそのご家族のために、介護サービスの計画と調整を行う専門職であり、利用者のニーズを的確に把握し、最適な介護プランを作成・実行することで、高品質な介護サービス提供を支援しています。


 しかし、介護保険制度の中心的な役割を果たすケアマネジャーも深刻な人手不足に陥っているのが現状です。ケアマネジャー数は減少傾向ながら、要介護認定者数は急増しており、その業務負担は益々増加しています。この状況が、ケアマネジメントの質と生産性に大きな影響を及ぼしています。


 こうした課題に対応するため、株式会社シーディーアイ(以下、CDIという。)は、AI(人工知能)を活用したケアマネジメント支援システム「SOIN」(そわん)を開発しました。
 「SOIN」は、基本情報の入力のみで、AIが膨大な介護データを瞬時に分析し、最も効果的なケアプランを提案します。このシステムを活用することにより、ケアマネジャーの業務が大幅に効率化され、ケアマネジメントの質と生産性を同時に向上させます。


 今回は、CDIが介護現場の生産性をどのように向上させ、ケアマネジャーを支援しているのか、その具体的な取り組みと成功事例を詳しくご紹介します。AIによって介護業界に新たな風を吹き込んだCDIの取り組みをご覧ください。
スタンフォード大学の研究者と組み、AIを使って介護のパラダイムシフトを起こす。
 2015年、訪問介護サービス大手のセントケア・ホールディング株式会社(以下、セントケアという。)で介護ロボット、AI等の新規事業開発を手掛けていた開発担当者は、シリコンバレーを訪れ、アメリカのヘルスケア産業におけるAI活用の現状を調査しました。
 当時、日本には介護保険制度を通じて蓄積された多くのデータがあったものの、十分に活用されていませんでした。現地のAI研究者との意見交換の中でその膨大なデータを活用した新たなビジネスの可能性について様々なアイディアが生まれ、開発担当者は「AIを使って新しい社会を創る」という確かな手ごたえを胸に帰国しました。


 その頃、日本政府はビッグデータやAIを活用し、「自立支援」と「予防・健康管理」に軸足を置いた新しい医療・介護システムを2020年までに本格稼働させるという方針を明らかにしていました。


 これは、まさに時代の要請でした。CDIは、株式会社産業革新機構(現:株式会社INCJ)やセントケアの出資により、2017年、世の中の期待を受けて誕生しました。


 CDIは、ケアプランの作成においてケアマネジャーの「経験や勘」に頼っていた従来のアプローチではなく、新たにデータに基づいた科学的アプローチが実現されることを目指しました。
 そして、要介護認定の際に収集された74項目のデータを瞬時に解析し、自立支援を目指したケアプランの原案を策定するシステムである初代AIケアプラン作成支援システム「CDI Platform MAIA」(以下、MAIAという。)をシリコンバレーのスタートアップ企業と共同で開発し、2018年には世界初(※)のAIケアプラン作成システムの商用化を実現しました。


※2018年10月自社調べ
AI内製化によるケアマネジャーの要望に迅速に対応した第二世代製品「SOIN」誕生。「AIによるケアプランの作成」から、「AIによるケアマネジメントの支援」へと進化。
 商用化を実現したMAIAでしたが、介護現場に受け入れられるまでには多くの困難がありました。開発元の米国企業と、日本の介護現場が求める製品機能についてのコンセンサスを得ることは文化的背景が異なることもあり、なかなかスムーズに進むことが出来ませんでした。また当時のAI開発に伴う膨大なコストをどう回収していけるか、ということも大きな課題となっていました。こうした課題解消の命を受け、2019年、濵岡邦雅(※)がCDIの新社長に就任しました。


※国内外のIT業界の第一線で30年以上のキャリアを持ち、2017年にセントケアに入社。現在セントケアグループのCIOも兼務。


 濵岡がセントケアに参画した当時、介護現場は依然として紙と電話に頼り、スマートフォンすら活用されていない状況でした。この状況を目の当たりにした濵岡は、介護業界が他の産業と比べて15〜20年遅れていると感じる一方で、「介護現場が変わったら、介護業界全体が大きく変わる、伸びしろがものすごく大きい」との大きな期待を抱いていました。


 まず、CDIで濵岡が着手したのはAIシステムの国産化でした。これにより、自社内でのバージョンアップが可能となり、ケアマネジャーの要望に迅速に応えられる体制を構築できると考えました。
 2020年には、第二世代の「AIケアマネジメント支援システム」である「SOIN」をリリースしました。
 新たに開発された「SOIN」は、その後およそ3ヶ月に1度のバージョンアップを継続し、「アセスメント支援機能」や「支援内容提案機能」を導入、厚生労働省が推進する「適切なケアマネジメント手法」にも対応しました。


 また、「生成系AI」も介護業界でいち早く導入しました。単に「ケアプランを自動作成するAI」を目指すのではなく、「ケアプラン作成だけではなく、ケアマネジメント全体の業務プロセスを支援するAI」を目指しました。


 「SOIN」は、日本の介護現場が求める様々なカスタマイズの要望に応え、ユーザーの潜在的なニーズをつかむことに成功しました。その結果、有償利用者数は現在35,000人を超え、AIケアプラン領域で圧倒的な実績を挙げています。
実証事業が明らかにした「SOIN」の成果。ケアマネジャーの負担軽減とケアマネジメントの質の向上。
 進化を続けるAIケアマネジメント支援システム「SOIN」は、介護の現場に新しい風を吹き込んでいます。


 2023年度には愛媛県や静岡県で、ケアマネジャーに「SOIN」を実際に活用する実証事業を行いました。行政としても、介護現場の生産性向上が喫緊の課題であり、AIやICTの導入促進によるケアマネジメントの質の向上と業務の効率化の両立を求めていたからです。


 同実証事業では、AIを利用する前と後でアンケート調査を行い、「SOIN」を利用することでケアマネジメントにどのような変化があったかを効果測定しました。


 例えば、静岡県の実証事業では「アセスメント(課題分析)にかかる業務負担は軽減しましたか?」という質問を行い、AIを利用する前には3時間以上かけていた人の割合が全体の5.3%だったのに対し、AIを利用後には0%になりました。


 また、AIがケアマネジメントプロセスの各段階において「役に立つ(肯定的)」との意見が多く寄せられました。その他、ケアマネジメントの質の向上、業務効率化、適切なケアマネジメント手法の活用を支援する効果も確認され、高い評価を得ることができました。
様々なユースケースに対応できる有用性。ケアマネジャーとの対話から「SOIN」の強みを再認識。
 実証事業には苦労もありました。ケアマネジャーは常に忙しく、新しいツール導入に対して抵抗を示す方も少なからずいました。どんなに便利なツールでも、実際に触れてもらわなければその良さは伝わりません。


 そこで、私たちは多くのケアマネジャーと直接対話を行い、AIの活用場面や受け入れられている機能について徹底的に調査しました。その結果、思いがけない視点をもたらす新たな発見がありました。それは…。


 ケアマネジャーたちにヒアリングを行うと、ある人はアセスメントの課題分析時に活用し、ある人は利用者やご家族へのプランの説明に、ある人は地域ケア会議で、ある人は退院カンファレンスで活用するなど、様々なユースケースがありました。
 つまり、ケアマネジャーそれぞれにとって、得意・不得意な場面や手助けが必要な場面は異なっていたのです。


 「SOIN」は、単にケアプランの文章作成を支援したり、過去に選択されたケアプランを提案したりするだけのシステムではありません。ケアマネジメントプロセスの様々な場面で活用でき、ケアマネジャーの特定のニーズに対しても柔軟に対応します。
 これにより、ケアの質を向上させるだけではなく、業務の効率化や生産性向上にも大きく寄与することが実証事業を通じて明らかになりました。ケアマネジャーが不得意な場面を「SOIN」がサポートすることで、業務全体の負担が軽減され、結果的により多くの利用者に対して迅速かつ適切な対応が可能になるのです。


つまり、各ケアマネジャーの特定のニーズに合わせた多様な利用シーンを提供できることが、「SOIN」の大きな特長であり、強みであることを、この実証事業で私たちが教えられたのです。
CDIが目指すのは「AIと共創する持続可能な介護産業の実現」。「SOIN」がケアマネジャーの輝く未来をサポートする。
 AIは介護の未来をより良い方向に導く大きな力を持っています。私たちは「SOIN」を通じて、ケアマネジャーの皆さんが輝ける社会を全力でサポートしたいと考えています。
 時々「AIによってケアマネジャーの仕事がなくなるのでは?」という不安の声を耳にしますが、それは大きな誤解です。AIはツールでしかなく、ケアマネジャーのサポート役です。利用者やご家族のニーズを理解し、寄り添うことは人間のケアマネジャーにしかできない大切な役割です。
 AIは、ケアマネジャーの業務負担を軽減し、時間を有効に活用できるよう支援します。AIが得意な作業を任せることで、ケアマネジャーは人間にしかできないケアやコミュニケーションに集中できます。これこそが、人間とAIが協力して共創する未来の介護です。


 CDIが目指すのは、お客様が「ありたい自分」を選択できる介護の実現、そして自立支援型の介護社会と持続可能な介護産業の実現です。ただ単にシステムやツールを提供するのではなく、介護に携わるすべての人々がより効率的に働き、お客様一人ひとりに寄り添ったケアを実現できる環境を創り上げることを支援します。
 持続可能な介護産業を実現するためには、テクノロジーだけでなく、人間の知恵と創造力も不可欠です。 CDIは、AIと人の力を融合させることで、未来の介護の在り方を形作り、新しい介護モデルを構築するための取り組みを続けています。業界の先駆者として、CDIは変化を恐れず、未来を切り開き、お客様や介護産業に従事する全ての方々が共により良い未来を創造できるよう、常に挑戦し続けます。




《お問い合わせ先》
〒104-0031 東京都中央区京橋3-1-1 東京スクエアガーデン14階
担当 : 営業部シニアマネジャー 荒(あら)
E-mail: shijokaihatsu_tantou@cd-inc.co.jp
※セールス・勧誘を目的としたお問い合わせはご遠慮ください。


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