美しい海と豊かな自然に恵まれた、長崎県五島列島。その環境からさまざまな特産品が生み出されています。中でも、古来「椿の島」と呼ばれるほど椿の自生地としても名高く、日本一の自生本数を誇っています。
その五島椿から採れる高品質な椿油を活用した化粧品を2017年3月より展開している株式会社ドゥサンクィルは、2024年11月29日に五島の恵みをぎゅっと凝縮した「ピュア椿」を1,000本限定(※)で発売しました。
希少価値の高い五島椿の椿油100%にこだわった商品への想いやブランド誕生秘話など、代表取締役社長の金子高一郎さんにお聞きしました。
■木箱屋から創業90年で異業種の化粧品事業を立ち上げるまで
カインズ株式会社は昭和2年に私の祖父が木箱屋として創業、2025年1月で98周年を迎えます。
私は大学卒業後、半導体輸入商社に4年間勤め27歳でカインズ株式会社へ入社しました。その後、グループ会社で車載関連の事業を展開しているカナック企画に異動、先代の社長が急逝した32歳の時に社長になりました。カナック企画の社長を続け、またカインズ グループの代表に就いたのが39歳、グループを率いて15年になります。
木箱のリサイクル製造販売に端を発した物流業務からスタートしたカインズ グループですが、創業90周年のタイミングで株式会社ドゥサンクィルを立ち上げました。
グループの社長に就任した当初、時代の変化の中で4本の事業の柱をつくりたいと考えていました。そのようなカインズ グループが拠点としている東京・葛飾区のかつしか異業種交流会というコミュニティでさまざまな人とのご縁を広げていました。その中で『男はつらいよ』のロケ地を訪問して各地の行政や商工会と交流する活動をしている分科会に入会して、2回目の時に訪れたのが長崎の五島でした。
■『男はつらいよ』ゆかりの地をめぐる旅で出会ったご縁
長崎県・五島
現地で素晴らしいおもてなしを受け、五島にとても愛着が湧きました。訪問時に五島のご当主から椿油が非常に有名だということをお聞きし、さらに「その椿油を使って雇用を生むことを考えてくれないか」という相談を受けました。
当時はまだ「SDGs」という言葉も一般的ではなかったですし、インバウンドで五島を訪れる人も少なかったので、若い人が島から出て行って人口が減っているという課題がありました。『男はつらいよ』の山田洋次監督は、日本の原風景を残すために作品をつくられたので、ロケ地となった場所には今でも映画の風景が残っているんですよね。他にもさまざまな土地を訪れましたが、美しい景色はあってもなかなか観光客が訪れない場所がたくさんある。この課題感をどうにかしたいと思い、五島を始め地域のPRや特産品を販売してもらう産業フェアを開催するなどさまざまな活動でサポートしてきました。
その後、五島の椿油を有効に活用すること、地方に雇用を生み出すこと、そして五島の素晴らしい恵みを全国の市場へ広めていくことを目的とし、2016年に株式会社ドゥサンクィルを立ち上げ、翌年2017年に五島産椿や塩、はちみつ、ワインなど五島の恵みを使った基礎化粧品の販売をスタートしました。
■五島だからこそ生まれるクオリティをかたちにするために…
化粧品事業へ参入するにあたって、かたちになるまでにはずっと苦労しましたね。まず商品をつくることを先行しようと思い立ったものの、これまで全くやったことのないことでしたので、何をどのように始めたらいいのか……。そう悩んでいた時に、葛飾区内にある化粧品のOEMメーカーの社長が退任されたという話を聞いて、商品づくりに協力してもらいました。さらに、有名化粧品ブランドでゼネラルマネージャーをやっていた方に顧問として就任してもらい、つくった商品をどのように販売していくのかアドバイスを受けたり。さまざまな人とのご縁があって、商品化に至りました。
五島の人たちはおおらかな人たちが多く、変わらない大自然に恵まれた五島の土地でその土地の人々が本当に丁寧に愛情をもってものづくりに向き合っていらっしゃる。だからこそ生まれるクオリティがある。そういった五島の価値を商品化して販売するということが、われわれにとってものすごく大事なことなのかなと思っています。
■椿油のクオリティの高さとクリアさが特徴の「ピュア椿」
椿の実と種
当社の「ピュア椿」の最大の特徴は五島椿から採取した椿油のみを100%使い、更に不純物を可能な限り取り除いているという点。
椿油って濃い黄色のイメージがあると思うんです。熟した実から油を採取すると黄色みが濃くなります。また、椿油独特のにおいがあります。
そもそも椿油って大量には採れないものなんです。椿の木はすぐに大きくなるので高所の実の採取が大変なのと、五島の椿の種は小さいので1つの種から採れる油の量も五島椿は少なく希少性が高いです。
「ピュア椿」に使用されている椿油は大手化粧品メーカーが使用するような高性能遠心分離機に二度もかけて丁寧に精製されています。種を蒸してから搾油するのですが、熱を入れすぎると酸化してしまうため、種から油になるまでの工程に熟練の技が必要になります。また、搾油の前に不作の種は丁寧に1つ1つ目視で何日もかけて取り除かれます。この作業をすることで不作の種の油が混じらないのでクオリティが上がります。
■“うそをつかない”「ピュア椿」を1,000本限定(※)で商品化した理由
「ピュア椿」
これまでも「ピュア椿」を期間限定や販路限定でセット販売をしたことなどはあったのですが、リピーター様のお声やもっと多くの方に五島の椿油の良さを体感してもらいたいという思いから、商品を本格的にリプロダクションして商品化することになりました。
過去に有名外資系化粧品会社で15年以上勤務していた弊社社員からも「これまでいろいろな化粧品を使ってきた中で、「ピュア椿」のシンプルなオイルの肌なじみやしっとり感に感動した」「絶対にこのオイルは商品として残したほうがいい」という声もありまして。
とはいえ自然のものですので椿油が取れる時期にも限りがあり、どうしても当たり年と不作の年があります。さらに先程も申し上げたとおり五島の椿の種は小さく、その年に採れる量にも限りがあります。それだけ希少価値の高い五島の椿油ですが、「ピュア椿」をつくるために1,000本分の椿油をなんとか確保し、商品化に至りました。
また、今回の商品化にあたりボトルにもこだわりました。オイルのクリアさがより伝わるように椿のイラストがオイルの後ろから透けて見えるようなデザインにし、「ピュア椿」ならではのクリアさをアピールしました。
■純度の高い椿油だからこそ「スキンケア」に使ってほしい
「ピュア椿」の椿油は無農薬・オーガニックで苗木から生産管理されて育てられた椿から搾油しています。
椿油といえば髪に使うイメージが強い方も多いと思いますが、「ピュア椿」はスキンケア オイルです。もちろん髪や身体にもお使いいただけますが、スキンケア アイテムとしてお使いいただきたいです。
シンプルケアがお好きな方でしたら、洗顔後に「ピュア椿」をお肌全体に馴染ませるだけでもしっとり感をご実感いただけると思います。おすすめの使い方は、化粧水のあとに「ピュア椿」を塗布していただき最後にクリームを重ねる使い方。ベタつきがないのにしっとりした感触になります。
素材にこだわって化粧品を選ばれる方はもちろん、きちんと肌のケアをしたいけれど、できるだけシンプルケアで済ませたいという忙しい日々を過ごされている方にもぜひお使いいただきたい商品です。
年齢や性別を問わずお子様からお年寄りまでお使いいただけますので、今お使いの化粧品にプラス一品していただき、お肌のうるおいキープにお役立ていただけたらと思います。ちなみに私は髭剃りの後に使っています。
■日本各地の地域創生を目指して――
先日も五島に行ってきましたが、あらためて人のつながりの深さ、大事さを感じて帰ってきました。「五島がよかった!五島だからよかった!五島に行ってよかった!」と思っていただける仕掛けを作らないといけないですね。
ドゥサンクィルを立ち上げる時に、縁あって自分たちが訪れた場所に本社を置いた事業を日本各地に展開していくことで日本の地域創生を目指していくことを思い描いていましたので、今後は五島のみならず日本各地の特色を生かした商品を展開していけたらいいなと考えております。
※ 搾油できる椿油の量に限りがあるため、1シーズンに搾油できた分で1,000本生産