Thinkingsが運営する「組織再考ラボ」のフェロー、永島 寛之 氏に「戦略的組織開発」についてインタビューを実施しました。
メディアや企業の方向けに取材・講演テーマについても伺っていますので、ぜひご参考いただければ幸いです。
■組織再考ラボ
「企業における組織づくりのあり方について再考し、経営層や人事部門の皆さまに対して有益な情報発信を行う」をミッションに掲げ活動しています。
フェローへの取材、講演、企業コンサルティングなどは、こちらからお気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ先:
「人と組織の可能性を解き放つ戦略的組織開発」 永島 寛之 氏
元ニトリホールディングス 理事 / 組織開発室室長
中央大学 企業研究所 客員研究員
Thinkings 組織再考ラボ フェロー
トイトイ合同会社 代表
ソニーUSAを経て、ニトリHDで採用改革・組織改革を実現。人事責任者として似鳥会長直下で2030年に向けた人材ポートフォリオの刷新、タレントマネジメントの視点での組織改革を指揮。その後、再生可能エネルギーを扱うレノバで執行役員CHROを経て、現在はトイトイ合同会社を設立。採用ブランディングから戦略的配置転換、アルムナイ組織の構築まで、次世代の組織づくりを支援。
■プロフィール
早稲田大学商学部卒業後、東レ株式会社でB2Bマーケティングとセールスに従事。その後、ソニー株式会社でグローバルマーケティングを担当し、ラテンアメリカ市場でのマーケティング活動を推進。2013年、株式会社ニトリに入社し、人材採用部長として新卒採用人気ランキング1位(マイナビ調べ)を達成。その後、採用教育部長、理事/組織開発室室長として、タレントマネジメントシステムの導入や組織開発を推進。2023年、トイトイ合同会社を設立。複数の企業で「問いと対話」を起点とした組織開発を支援。また、中央大学の企業研究所にて、客員研究員として「退職者価値の研究」に従事。
●キャリアを意識し、人事の道を歩み始めた原点
──永島さんが今のキャリアを築かれた原点と、どうして人事領域に進まれたのか教えてください。
ソニーUSAでマネージャーに就任後、「スタッフのキャリアを考えたコミュニケーションが取れていない」と人事部長から厳重注意を受けました。雇用契約の解消が容易なアメリカでは、スタッフは当然の権利としてキャリア支援を要求します。この経験から、マネジメントには数値目標だけでなく部下のキャリアにも向き合う必要があると学びましたが、当時の私は自身のキャリアについてはまだ深く考えていませんでした。
転機となったのは40歳前。ニトリの似鳥会長(当時社長)との入社面談で「もっと未来に向けて大きな志を持たないと大成しない」という言葉をいただき、本当の意味で自身のキャリアや仕事の意義を考えるようになりました。
その後、ニトリに入社することになり、ニトリの店舗勤務を通じて30年の増収増益を支える「優秀な人材が次々と育つ仕組み」を体感し、組織に興味を持ちました。採用や育成に携わる中で、新しい役割を与えると驚くほど成長する社員の姿を目にし、個人と組織の成長に貢献したいという思いが一層強くなっていきました。
●ニトリでの人事部長時代:失敗から学んだ人材配置
──それから実際に、ニトリで人事部長としてご活躍されましたが、当時を振り返って印象深いエピソードはありますか。
人事部長として人材配置を担当した時、「優秀な人材はどこでも活躍するはず」という思い込みがあり、優秀な店長を本部の要職に抜擢しました。しかし彼は半年で現場復帰を希望。私の采配は失敗となりました。本人のWillを確認せず、配属理由や期待を明確に示さなかったことが原因です。
この失敗経験から、社員個人が30年先までの将来を考える「30年キャリアプラン」という自己申告制度を導入しました。さらにタレントマネジメントシステムも活用し、データに基づく人材配置を確立。評価や適性検査など多角的な条件で人材プールを作成し、「評価が低いが実は優秀」や「コミュニケーションは苦手だが成果は高い」など、表面的な評価では見落としがちな才能を発掘できるようになりました。
●未来の価値を伝え、ブランド力に頼らない採用を
──組織開発に関係する永島さんの知見を伺います。採用における「ブランド力」とは何を指すのでしょうか。
まず、押さえておくべきは企業ブランドと採用ブランドが異なる点です。多くの伝統的な大企業が用いるのが、企業ブランドです。これは現在の強みや過去の実績や歴史を中心に語るものです。一方、採用ブランドは「未来の姿」を示すことが重要です。例えば10年かけて会社がどうなっていくのか、そこでどんな人材が必要になるのか。現時点でブランド力が高くない企業でも、この未来像を語ることで大手企業と対等に渡り合えます。
そして、最も重要なのは未来に向かうストーリーの描き方と伝え方です。これは「価値創造ストーリー」と言われ、人的資本経営でも最重要視されるものです。成長環境を求める若い方が増えており、そのような方は未来に向かって伸びる姿勢を示している企業を選ぶ傾向があります。目の前のエビデンスよりも、その企業で働く未来価値とそこに至る道筋を示すことで、優秀な人材の心を動かすことができるのです。優秀な人ほど、自分の時間をどこに投資するか、その未来価値を吟味するからです。
●アルムナイ人材×組織開発
──中央大学に企業アルムナイ研究会を立ち上げたと伺っております。アルムナイ人材に注目される理由、今後の展望について教えてください。
企業と退職者が持続的な関係を保つことで、双方に価値が生まれます。企業の規模や離職率によって異なりますが、年々退職者が増えていけば、企業規模に匹敵する「元・社員」のコミュニティが形成されていきます。この人材プールは、再雇用や業務委託の候補となるだけでなく、リファラル採用や外部ネットワークの拡大など、様々な形で組織に貢献し得ます。活躍する卒業生の存在が、現役社員にとっても誇らしくなることもあるでしょう。
現在、こうした価値創出を実現できている企業は少ないのが現状です。アルムナイ組織が機能すれば、商談機会の創出や情報交換など、様々な価値が循環する仕組みができます。会社時代に得た能力や経験を互いに認識し、共有できる場として、アルムナイは重要な役割を果たすでしょう。今後は企業側も積極的に関わり、新たな組織の財産として育てていく必要があります。
①未来を創る人材の採用
・企業の未来価値で創る採用戦略 - 未来の事業と組織から逆算した価値創造のための採用設計とその実践
・採用ブランディングの再構築 - 規模やネームバリューに頼らない採用市場での差別化手法
・人材要件の設計と見極め - 10年後を見据えた求める人材像の策定と選考プロセスの構築
・中長期的な活躍を予測する - データとコミュニケーションを組み合わせた選考手法の確立
・採用から育成までの一貫設計 - 入社後の成長を見据えた採用基準づくりとオンボーディング
②戦略的配置転換
・経営戦略と人材ポートフォリオ - データで導く組織変革に必要な人材要件の設計
・テクノロジーを活用した人材プール構築 - タレントマネジメントシステムのフル活用。テクノロジーと人の目を組み合わせた戦略的人材配置
・活躍支援プログラムの設計 - 新任者の成功を支える体系的なオンボーディング手法
・適性診断の新しい形 - 人と人、人と業務のマッチング時代。コンピテンシー評価とキャリアの意向を組み合わせた配置決定
・配置後のパフォーマンス追跡 - 定期的な面談と評価による戦略的異動の検証と改善
③「退職者」との協業(アルムナイ)
・退職者と企業の新しい関係構築のすすめ - 人材流動化時代における価値共創の仕組みづくり
・アルムナイ組織が生み出す経営価値とは - 元社員ネットワークを活用した事業機会の創造と拡大
・現役社員のキャリア観を変える - アルムナイの活躍が組織に与えるポジティブな影響と効果
・戦略的なアルムナイプラットフォーム設計のやり方 - 企業と退職者の持続的な関係構築に向けた実践手法
・次世代型人材プールの構築方法 - 社内外の境界を越えた新しい働き方とタレントマネジメントとは
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