【積水化学グループ】安心と価値をつなぐ住宅循環モデルへ。Beハイムが持続可能な未来を築く

2024.12.05 10:00
近年、空き家問題は深刻化の一途をたどっている。総務省が発表した住宅・土地統計調査によれば、2023年10月時点で国内の空き家数は900万戸に達し、2018年の前回調査から約51万戸増加した。これは調査開始以来、最多の数である。このような状況を受け、2023年12月には空き家の活用促進と適切な管理を目的として改正空家法が施行された。空き家になる前にストック住宅(既存住宅)として市場に循環させ、「住み継ぐ」という視点が求められる。


しかし、日本における既存住宅の流通シェアは約14.5%(2018年)にすぎず、これは欧米諸国の6分の1程度である。この低いシェアが市場活性化を阻む要因となっている。さらに、個人のライフスタイルを見ても「人生100年時代」が叫ばれる中、住まいは生活の場であると同時に、人生の各ステージに柔軟に対応できる重要な資産としても注目されている。こうした背景から、既存住宅を新たな価値へと再生し、次の住まい手につなげる買取再販モデルが注目されている。


積水化学は「地球環境にやさしく、60年以上安心して快適に住み続けることのできる住まいの提供」を理念に掲げ、高品質な新築住宅を供給してきた。そして今、持続可能な社会に向けて、住み継がれる住まいの提供も目指していく。そこで立ち上げたのが買取再販ブランド「Beハイム」だ。


あらためて「つくり手の責任」を見直し、持続可能な社会への貢献を目指す「Beハイム」。本記事では、この新ブランドを推進する責任者と、販売の最前線で営業に携わるメンバーが、その意義と展開について語る。
バリューアップした住まいを継いでいく Beハイム誕生の背景
自社グループの建築物件を直接買い取り、スマート性能の向上や、現代のニーズに合わせたリノベーションを施し、アップサイクル住宅として循環させていく。これが、積水化学が手がける既存住宅買取再販「Beハイム」の仕組みだ。2020年12月から首都圏、中部、近畿の3エリアで始動。現在は全国規模で展開が進む。住宅カンパニー不動産部長の三宅竜雄が、ブランドを立ち上げた背景を解説する。
積水化学工業 住宅カンパニー ストック事業統括部 不動産部 三宅竜雄部長


「空き家の増加が全国的な課題として深刻化する中で、住宅ストックを活用した循環型社会、SDGsの実現が求められています。私たちは、住宅のサステナビリティに着目し、『価値を継ぐ』という思想を持って新ブランドを立ち上げ買取再販事業を本格展開させました」


三宅はBeハイムの3本柱として、「価値の適正評価」「新たな価値の付与」「価値の続く家」を挙げる。


「『価値の適正評価』とは、1971年にセキスイハイムが誕生して以来蓄積してきた住宅生産履歴(建築時の使用部材・設備情報)と、売り手が住まいを大切にしてきたことを証明する診断・修繕履歴(建築後の定期診断・修理・修繕情報)に基づいて、物件の健康状態を見える化し、適正に評価することです。この情報が、住宅の品質と価値を適切に評価するための基盤になります。


『新たな価値の付与』では、住まいの健康状態に応じて、新築事業で培ったプランニング力を生かした適切なリノベーション(性能向上・設備刷新)で住まいをアップサイクルし、時勢・地域・ニーズに合った住まいへと再生します。


さらに、新たな住まい手には過去の住宅履歴とともに、新築時から60年間の長期サポートシステムを引き続き提供し、住み手が変わっても安心できる住み継ぎを実現しています。これが『価値の続く家』です」
セキスイハイム不動産 営業推進部 東京流通支店 リテール営業所 Beハイム営業店 上田卓哉
高品質と耐久性で築く信頼 Beハイムの住宅循環モデル
Beハイム創成期より営業に携わり実績を上げてきた上田卓哉は、「買取再販ではいかに良質な物件を仕入れ、顧客に訴求するかが販売の鍵を握っています」と語った。このクオリティを支えるのが、セキスイハイムならではの高品質・高耐久住宅である。工場で強靭な構造躯体をつくる住まいづくりについて、三宅が解説する。


「セキスイハイムは、工場内の自動溶接ロボットで独自のボックスラーメン構造のユニットを製造し、高強度で安定した品質を確保しています。ユニット同士をハイテンションボルト(高力ボルト)で頑強に接合し、一体化することで、より強い構造体を形成します」


Beハイム購入者の約7割が「建物の状態」「耐震性」「セキスイハイムの建物だから安心」など、建物の品質・性能を購入決定の理由に挙げる。高品質な住宅の耐久性や躯体の堅牢性が、将来にわたる暮らしを支える安心材料になっているのだ。


ボックスラーメン構造は、ライフスタイルに応じた「バリューアップ」にも貢献する。上田は、「時代を超えて住み継ぐ」Beハイムの理念とボックスラーメン構造の親和性を強調した。


「以前は中廊下型やLDK・和室分離型の住宅が一般的でしたが、現在はLDK・和室一体型のオープンな空間構成がトレンドです。コロナ禍を経て、LDKの広い空間でありながら、リモートワーク用のスペースが確保できるようなプランニングも求められています。こうした間取りをねらったリフォームの際、在来工法の住宅では柱や壁が妨げになりがちです。ボックスラーメン構造は主要な構造部分が強靭な鉄骨の角柱であり、内部の壁を取り払っても建物の強度に影響が少なくなります。このため、レイアウトの変更が比較的容易なのです」


Beハイムは、内装の刷新や先進設備への更新、立地やトレンド、ニューノーマルに対応したプラン変更や性能向上など「付加価値型」のリフォームを行ってから販売する※。アンケートでも「リフォーム済」「最新設備が良い」と回答した購入者が約7割おり、リフォーム内容への満足度は高い。


※物件の状態、プランの条件などにより事前リフォームを行わず、別途リフォームの提案を行う場合があります。
次代に住み継ぐ、新たなモデルへ ある夫婦のケーススタディ
Beハイム営業の前線に立つ上田は「子育て世代からのご支持を感じます」と語り、特にファミリー層からの関心が高いことを強調した。ここでは、住まいのコンディションを見える化し、地域のニーズに応じたアップサイクル・販売を実現させたケースを紹介する。


1995年に竣工した神奈川県平塚市の住宅。子供の独立を機に高齢の夫婦が新築マンションへ住み替えを決め、売りに出したものだ。25年間、丁寧に維持管理され、定期的にリフォームが施されており、既存住宅市場での評価も高かった。


平塚市は「子どもを育む環境づくり」「安心・安全で快適なまちづくり」を掲げており、子育て世帯には適した環境がある。コロナ禍で30代夫婦が多く移住する背景を踏まえて、この物件は共働き子育て世帯向けにリノベーションされた。従来は中廊下型で、1階はセカンドキッチンが付いた和室二間と洋室に分かれており、2階にLDKがある二世帯同居の間取りだったが、1階に壁を取り払ってLDK一体型のオープンな大空間を造った。さらに、テレワークスペースやアイランドキッチン、食洗機を備えるなど、共働き家庭が快適に過ごせる設備を導入した。
購入したのは、30代の夫婦だ。「成長していく子どもを見守りつつ、両親との同居も視野に入れたい」という思いから、マンションではなく戸建て住宅を望んでいた。当初は注文住宅も検討していたというが、時間の制約もあり、リノベーション住宅か建売住宅の2択で検討を進めたという。


「2階に上がる階段がリビングにあることが重要でした。子どもたちは、リビングを必ず通って部屋に行ってもらいたいからです。そして、収納スペースがたっぷりあることも条件でした。そこで出会ったのが、Beハイムの物件だったのです」(夫)


購入ポイントに合致していたことに加え、広さや軽量鉄骨構造、耐震性、バリアフリー対応の洗面スペースにも好印象を抱いた。上田は「Beハイムの特長である『価値の適正評価』も決め手の一つになったようです」と補足する。

「フルリノベーションを経たこともあり、既存住宅だからという不安は少なかったですね。自分たちで安心R住宅※やホームインスペクションを確認し、信頼性の裏付けを取っていました。さらに、この家は特にセキスイハイムの履歴がしっかり確認できたので、その安心感が購入の決め手になったのです」(妻)


時代と世代を超えた住み継ぎの成功例だが、このケースをはじめ、Beハイムは売り手が納得のいくプロセスを重視する。上田は営業メンバーが大切にしている思いに触れる。


「売主様が思いを込めて建て、守られてきた住まいです。その住まいをスムーズに、そしてバリューアップして引き継ぐことで、売り手のみなさんにも喜んでいただきたい。それが私たちの信念です」


強靭で可変性を備えた駆体と、時代にマッチしたリフォーム提案力、そして売り手と買い手に寄り添ったフォローが、納得のいく住み継ぎを支えたのである。


※国の登録を受けた事業者団体の構成員(会員企業)が販売・仲介する既存住宅において、国が定めた要件などに適合する旨が表示された住宅
持続可能な未来へ 成長戦略と環境への貢献
Beハイムは2024年度グッドデザイン賞を受賞した。この賞では機能性やデザインにとどまらず、「社会的意義や価値」も審査され、Beハイムもその点で高く評価されている。市場でも、全国で325棟の買い取りと272棟の販売を達成(2024年3月現在)しており、特に2023年度には102棟を販売するなど、順調に成長している。三宅は「2025年度には全国で150棟の販売」という目標に向け、マーケティング力の強化とグループシナジーの活用に注力する方針を強調した。


「集客の主導線になるWebコンテンツの充実や、VRや模型で建物の仕組みを学べる体感型ショールームなど、デジタルとリアルを融合した情報発信を強化していきます」


また、セキスイハイムの新築住宅部門、オーナーのサポートを行うファミエス部門、Beハイムを手がける不動産部門の連携により、住まいの価値を継承していくグループシナジーの重要性にも触れる。


「当社グループが責任を持って連携することで、売り手と買い手の双方に高く評価いただけると信じています」


Beハイムは、アップサイクル住宅の提供を通じて持続可能な社会に貢献していく。上田も「サステナブルな住まい」への関心の高まりを実感するという。


「お客さまと接していても、太陽光発電システムや家庭用蓄電池、HEMS(家庭用エネルギー管理システム)を備えたスマートハウスへの関心が高まっています。今後は、環境に配慮したさらなる提案が求められるでしょう。そして、不動産営業としての原点も大切にしていきたい。物件の仕入れやリフォームプロセスにも積極的に関わり、Beハイムの営業としてお客さまに貢献していきます」


不動産営業の原点に言及した上田に対し、三宅は事業の原点に目を向けた。


「Beハイムというネーミングは『Be』(~である)という英語の動詞に由来します。セキスイハイムのメーカーとして責任を持ち、住まいを次世代に引き継ぐことで、住まいが『ハイムであり続ける』ことを目指しているのです」


住む人にとって安心・安全な住まいであるために。そして、社会や環境にとってやさしい住宅であるために。ストック住宅に光を当て、価値を高めて次代につないでいく。Beハイムは、課題先進国のわが国で、住宅循環の「動詞」として動き続けていくのだ。


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