プラスチック課題の解決に向けて取り組みを続けてきた日清オイリオ。キユーピーとの協働でPETボトルの資源循環に挑む

2024.11.28 10:00
(左から キユーピー(株)田頭さん、守矢さん、日清オイリオグループ(株)平野さん、白澤さん)
日清オイリオグループのプラスチック課題へのこれまでの取り組み 
日清オイリオグループは、事業活動を通じて持続可能な社会の実現・発展に貢献するため、地球環境に配慮した商品・サービスの開発、提供に取り組んでいます。


2030年までの長期ビジョン「日清オイリオグループビジョン 2030(以下、ビジョン2030)」におけるCSV目標の1つとして「プラスチック容器・包装の削減と資源循環の推進」を掲げ、①プラスチック使用量の削減、②リサイクル材・植物由来素材の利用推進、③リサイクルの仕組みの整備、を柱に取り組みを進めています。
これら3つの柱のうち、「①プラスチック使用量の削減」については、商品の容器の軽量化に取り組んでいます。今年発売した800gPETボトル入りの商品は、従来の900gPETボトルにあった「とって」をなくし、プラスチック使用量を約39%削減しました(900gPET比)。また、「②リサイクル材・植物由来素材の利用促進」については、1000gポリボトルの容器の一部にバイオマスプラスチックを導入したほか、PETボトル商品のボトルやキャップフィルムの一部に再生PET樹脂を導入しています。


そして、「③リサイクルの仕組みの整備」について、担当者の環境ソリューション室 白澤聖一さん(以下、白澤さん)と、商品の容器開発を担当しているホームユース・ウェルネス食品開発センター ホームユース開発課の平野尚美さん(以下、平野さん)が、これまでの取り組みを紹介。さらに、後半では、キユーピー株式会社と協働で行っている「使用済み油付きPETボトルの回収実証実験」について、担当者の皆さんに語っていただきました。
プラスチックのリサイクルの仕組み構築に向けて、容器回収の実証実験を重ねながら課題を知ることからスタート
一般的に、油の付着したプラスチックは、リサイクルの洗浄工程で油が残るため、再生後のプラスチック樹脂に着色が見られるなど、品質に影響を与えることが懸念されてきました。そのため、自治体で回収する際に「可燃ごみ」や「プラスチックごみ」に区分され、主にサーマルリカバリー(※)されています。油の付着したプラスチック容器のリサイクルを実現するためには、「回収の仕組みづくり」と「再生技術の確立」という課題を解決する必要があります。
※サーマルリカバリー…プラスチックなどの廃棄物を焼却した際の熱エネルギーを発電などに有効活用すること


リサイクルの実現に向けた最初の取り組みとなったのが、2022年に川崎市と協働で実施した、食用油・調味料の使用済みプラスチック容器回収の実証実験です。約2か月間、川崎市内の4か所に回収ボックスを設置して、市民の皆様から食用油・調味料の使用済プラスチック容器を回収し、これら容器の回収量や回収された時の状態を確認し、再資源化の可能性を検証しました。
担当者の白澤さんは、「リサイクルの仕組みの整備に向けて、最初は、何から始めれば良いのかすら見えていない状況でした。そのため、お付き合いのあった企業からリサイクル会社をご紹介いただき、さらにこの会社から川崎市もご紹介いただいたことが、具体的なアクションへとつながりました。まずは使用済プラスチック容器を回収して量や状態を把握するため、川崎市で容器回収の実証実験を行うことになったのです。」と、当時を振り返ります。実証実験では、回収ボックスを制作することから始めました。回収地域の市民のご意見も取り入れながら、屋外でも使え、転倒しないなどの安全性や、においや漏れなど衛生性に配慮して制作し、その後に続く取り組みでも活用しています。
専用の回収BOX
表示パネル


容器開発を担当する平野さんは、「プラスチック課題の解決に向けて、当社は早い段階からプラスチック容器の軽量化や再生材・バイオ素材などの導入に取り組み、出来る限りのことはやってきました。ただ、容器のリサイクルには着手できておらず、何をすればよいのか、リサイクル会社の方から勉強させていただいたのが最初の一歩でした。」と語ります。


回収の結果、容器は想定していたよりもきれいな状態で集まってきた一方、「調味料の容器は、形状が異なるだけでなく素材の種類が多岐にわたるため、マテリアルリサイクル(※)はハードルが高そうだと実感しました。」(平野さん)
※マテリアルリサイクル…使用済製品を新たな製品の原料として再利用するリサイクル方法


【参考】プレスリリース:
そして、同時期に行ったのが、使用済みプラスチックの再資源化に取り組む共同出資会社「株式会社アールプラスジャパン」に資本参加している3社を中心とした業界横断の回収実証実験です。2022年11月から約1カ月間、株式会社アールプラスジャパンが開発中のケミカルリサイクル(※)技術への適用を見据えて、千葉県東金市の道の駅で、油・調味料のボトルとお菓子・シリアルの袋の回収の実証実験を行いました。続く2023年には、12社が参加し、スーパーマーケットの店頭で約3か月間の回収実証実験を行っています。
※ケミカルリサイクル・・・使用済みの製品を化学的に分解し、新しい製品にリサイクルする手法


「道の駅での取り組みで回収手順や分析内容を検討し、続くスーパーマーケットでの取り組みにつなげました。スーパーマーケットでは回収の対象を広げ、弁当と納豆の容器も加えました。容器の大きさ・形状や食品の種類により、洗浄の状態や出し方にいろいろなパターンがあり、回収方法にも工夫が必要であることが分かってきました。」(平野さん)


「取り組みを始めた当初は手探りでしたが、実験を行ってみると、容器を出してくださる消費者の方は協力的で、きれいな容器が多く集まり、懸念していたにおいや汚れなどボトルからのトラブルも可能性が少ないことがわかりました。」(白澤さん)


【参考】プレスリリース:
同じ課題に取り組んでいたキユーピーとの協働を開始
2024年5月から取り組んでいるのが、キユーピー株式会社との協働による「食用油の使用済みPETボトルの店頭回収」です。これまでの実証実験では、プラマークがついている容器を回収対象としてきましたが、2社での取り組みでは食用油やドレッシングの「油が付着した使用済みPETボトル」を対象に回収を実施。規模を拡大して、千葉市内の8店舗で約半年間にわたり回収の実証実験を行っています。
回収対象商品一例


2社協働の取り組みについて、キユーピー株式会社 経営推進本部 サステナビリティ推進部 環境チームの田頭さん、研究開発本部 食創造研究所 設計開発推進部の守矢さんにお話を伺いました。


かねてより再生プラスチックをドレッシングボトルに使用する取り組みを続けてきたキユーピー株式会社。担当の田頭さんは、取り組みを進めていくなかで「再生プラスチックを使うだけではなく、自分たちで再生していかなければならないのではないか。」という課題意識を持つようになったと語っています。
「2社で話をするなかで、同じゴールを目指していることがわかってきました。それであれば、2社協働で行うのがいいのではないかと。目的が同じであれば、一緒に取り組むほうが技術的な知見も広がるでしょうし、評価サンプルも集めやすくなります。より良い取り組みができるのではないかという期待がありました。」(田頭さん)


「同じような素材を扱う食品メーカー同士で取り組むことで、この先、リサイクルの社会実装に向けて良いインパクトを与えられるのではないかと思い、共に手を取り合って2社で新たな挑戦を始めました。」(平野さん)
2社の経験値や考え方、知識をかけ合わせることでリサイクルへの道を探る
取り組みを進めていくうちに、お互いの違いが見えてきたことも、協働による気付きのひとつでした。
「油の付いたPETボトルを資源循環したいという大きな方向性は同じでも、その山の登り方は1つではありません。検証を進めるにあたって、どのような評価が必要となるのか、そのためにはどのようなサンプルを作る必要があるのかといった入口の歩調合わせが必要でした。大変な部分ではありますが、2社が全く同じ考え方では協働する価値が薄まってしまいますので、違いを知ることができるのは大きなポイントだと思っています。」(田頭さん)


それぞれが持つネットワークを活かすことで、多くの関係者からお話を聞くことができたといったメリットもありました。


一方、自治体によって、廃棄や収集のルールに違いがあるため、「過去の自治体での経験をそのまま別の自治体に活かすことができない」と平野さんは語ります。


「回収ボックスを置かせていただく自治体の廃棄物処理法を守ることが前提ですから、そもそも回収実証実験を行えるのかどうか、今回集めるものが廃棄物扱いになるのかといった確認も必要でした。」(田頭さん)


店頭回収と並行して再生利用の技術検証にも着手しました。
「やはり、すんなりといくわけはなく、課題があるなとわかったのが現状です。どのような実験系を用いて、どのような検証結果が得られれば再生可能という理論構築ができるか、難しさを感じています。」(守矢さん)


「初の試みですから、評価基準、分析ポイントも定まっていないわけです。互いの過去の取り組み事例も参考にしながら、分担し、協力しながら検証を進めています。」(平野さん)
循環型社会の実現に向けて、さらに仲間を増やし、より大きな成果を生み出したい
今回の店頭回収を通じて、平野さんは「お客様にどう情報を伝えていくのかを考えることが重要だと思いました。油付きPETボトルが回収対象なのですが、油の“ガラス瓶”を回収ボックスに入れた方もいれば、“飲料”PETボトルを入れた方もいました。また、PETボトルではないポリ容器や食品トレイも混ざっていて、何を回収するのかを伝えることの難しさを感じました。」(平野さん)


課題が見えてきた一方、守矢さんは「希望を感じた」と言います。
「リサイクルの実証実験をしますという呼びかけに対し、参加してくださったお客様がこれだけ多くいらっしゃるということがわかったのは、今回の実証実験の成果の1つだと思います。ただ、回収対象ではないものは実証実験の対象から外さざるを得ません。リサイクルしようというお客様の気持ちを無駄にしないためにも、企業として正しく情報をお届けし、認知を広げていきたいと思いました。」(守矢さん)
店頭での回収は11月に終了しますが、2社の取り組みが実を結ぶのはこれからです。
今後は、回収したボトルを用いて技術検証を進め、使用済みの油付き PET ボトルから再び PET ボトルに戻す水平リサイクルや、その他の用途に活用することの可能性について幅広く検討し、最適な資源循環スキームの構築を目指していきます。また、この取り組みを通じて、油付きPETボトルが「資源」になることを多くの方に知っていただき、回収が促進されるよう、社会の意識を変えていきたいと考えています。ここをスタートとして仲間を増やしながら、油を使用した商品の PET ボトルが資源循環される社会を目指していきます。
使用済み油付き PET ボトル循環のイメージ


【参考】プレスリリース:

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