株式会社PR TIMESは、「プレスリリースの日」である2024年10月28日(月)に、少し変わった紙のプレスリリースを配布いたしました。
グレーの色を帯び、ところどころにまだらの模様。手触り感のある紙に、文章の間を流れる意味ありげな空白。
WEBのプレスリリース配信を手掛けるPR TIMESがなぜ、あえて紙で?その仕掛けと狙いについて、プロジェクトチームが語ります。
A4サイズ2枚にわたる紙のプレスリリース。空白と思われる中央に、4つの文章だけが書かれています。
「情報は、ウソを言ってしまうこともある。
情報は、誰かを傷つけてしまうこともある。
情報は、誰かを孤立させてしまうこともある。
情報は、社会を混乱させてしまうこともある。」
よく見ると、空白の上部には「情報に、光をあててください。」の文字が。
プレスリリースに付属のブラックライトを当てると、何も書かれていないかに見えた空白に、みるみると文章が浮かび上がってきます。
▼隠された文章全文
「1906年10月28日。それまで隠されることの多かった列車事故の情報を、ひとりの広報が、メディアにありのままを伝えました。それが、世界初のプレスリリースと言われています。
携帯電話も、持ち歩けるカメラもない時代。二度と事故をくりかえさないために、世の中へ広く情報を届けるには、メディアの存在なくして大きな共感を生むことはありませんでした。
その時から118年。時代は大きく変わっています。
スマホでつぶやいた一言が一瞬にして世界をかけめぐり、1枚の写真がSNSを通して拡散される時代。
情報は、ウソを言ってしまうこともある。
けれど、真実を伝えることもできる。
情報は、誰かを傷つけてしまうこともある。
けれど、誰かを勇気づけることもできる。
情報は、誰かを孤立させてしまうこともある。
けれど、出会うはずのなかった人とつながることもできる。
情報は、社会を混乱させてしまうこともある。
けれど、ポジティブな循環をうむ社会もつくってきた。
ひとつの情報に光があたり、それを世の中にどうしても伝えたいというメディアの思いによって広がり、社会的な価値になっていく瞬間を、私たちは何度も体験してきました。
伝えるべき情報を、できる限り世の中へ。118年前の、ひとりの広報とメディアの行動の先に、今があるように。
発信する人とメディアのあり方が、これからの未来をつくっていくのだと、私たちは思っています。」
情報に光を当て、世の中へ広く伝え続けるメディアに向けて
1906年10月28日、アメリカのペンシルバニア鉄道による脱線事故が起きた際、広報のアイビー・リーは事故現場に記者を案内し、事故当日から状況をまとめた公式声明を発表。ニューヨークタイムズではその声明を一言一句そのまま掲載しています。
この時に作成された公式声明が、現代に通じるプレスリリースとして実用化された世界初の事例だと言われ、彼はのちに"近代PRの父"と呼ばれるようになります。
事実を公に発表したアイビー・リーと同様に、ニューヨークタイムズ社がこの声明を掲載したことも、勇気や使命感が伝わる、価値ある行動だと思います。
前例や慣習に囚われず、今社会に必要とされている情報に光をあて、広く伝えていく。そうすることで、情報が次の誰かの行動をつくり、ポジティブな循環をつくっていくと私たちは信じています。これこそがメディアの役割であり、メディアにしかできないことだと考えています。
インターネットやSNSが普及した現代、一人ひとりの思いが込もった情報が伝わりやすくなったと同時に、真偽の不透明な情報がありふれていることも事実です。さまざまな情報であふれかえっている現代だからこそ、メディアの重要性は一層高まっていると考えています。
光をあてると浮かび上がる文章全体は、線路をモチーフに。列車事故を伝える情報からプレスリリースが始まったこと、そして未来に続く思いを線路に乗せました。
情報に光をあてることを、「体験」で表現するとどうなるか。
クリエイティブディレクターの石黒早恵実さん(武藤事務所株式会社)は、「光をあてる」という身体的な体験と、メディアの方が日常的に情報に光をあてる行動とがリンクすることを目指したと話します。
「今回は、メディアの方に届けるというものだったので、メディアの方が手にとったときに、どういう風に心が動かされるか、見たあとの読後感といったものを色々考えました。光をあてるとメッセージが出てくるだけでなく、そこに現れるのは “ポジティブな情報”にしたいと思いました。
場所や業種などに関係なく、誰かがなにかを成し遂げたり、挑戦しようと奮闘している行動は、あちこちで日々起きているのだと思います。そのような情報は、遠く離れた誰かを勇気づけたり、背中を押すことだってある。けれど、すべての情報が社会に出るわけではないのが現状です。
しかし、そのような情報に光が当たることで、情報が社会を前進させていくことがあることを伝えたいと思いました」
プロデューサーの武藤雄一さん(武藤事務所株式会社)は「基本的に全て初めてのことでした。そのため、失敗だらけでした。そんな中、重要なのはスケジュール管理なので、1日刻みでスケジュールを変えていきました。また、“間に合わなかった”というのではなく、間に合うためのスケジュールを変えていきました。そしてプロジェクトチームがやりたいことを妥協しないような環境をつくっていくことが重要だと思い進めてきました」と振り返ります。
今回の体験型プレスリリースについて、プロジェクトチームの山口拓己(株式会社PR TIMES 代表取締役)は、以下のように語っています。
「スマートフォンとSNSの普及により、個人の発信が一瞬で世界中に広がり、それがニュースとして報じられる機会が増えました。
その一方で、プレスリリースは報道資料の枠を超え、メディアの記者や編集者だけでなく、多くの生活者やビジネスパーソンに直接届くようになっています。SNSやプレスリリースといった一次情報が大量に流通し、多くの人々に直接影響を与える時代となり、その影響力と重要性はかつてないほど高まっています。
こうした時代だからこそ、社会全体を見渡し、客観的かつ中立的に事実を伝えるメディアの役割が、ますます重要になっていると感じています。私たちは、メディアとプレスリリースが相互に作用し、共に社会を前進させていく強い決意を、この紙のプレスリリースに込めました。」
役目を終えた古新聞が、新たな情報をのせ、社会へめぐっていく
今回のプレスリリースには、全国から集められた古新聞でできた再生紙を使用しています。広島県 コトブキ印刷の「めぐる、手漉紙。」のご協力により実現しました。この手漉紙は、捨てられるはずだった廃材に再び命が吹き込まれて生まれた紙で、障がいのある方の手漉きによって生まれます。一枚一枚、手作業で新たな紙へと生まれ変わります。
これにより生まれた紙は、手すきの紙ならではのあたたかみや厚み、繊維感のある手触りを感じられます。全国から集められたたくさんの古新聞からつくられているため、紙一つひとつで新聞の断片の残り方も異なり、表情もさまざまです。
クリエイティブディレクターの石黒さんは、「情報にスポットライトをあてるメディアのように、ブラックライトで照らすとメッセージが浮かび上がるプレスリリースに、世の中に広く情報を届ける役目を終えた新聞紙が新しい情報をのせてまためぐっていくという文脈をのせています。
また、再生紙がもともと新聞紙だったという名残りを感じてもらいたいという面でもこだわっています。ところどころに新聞の破片が見えているのですが、その残し具合にもこだわりました」と語ります。
有限会社コトブキ印刷
左/宗藤 利英(むねとう としひで)さん 右/宗藤 正典(むねとう まさのり)さん
ご協力いただいたコトブキ印刷の宗藤正典さんは、「役目を負えたものを紙として新しい命を吹き込む『めぐる、手漉紙。』の文脈を、このプロジェクトで見つけてもらったというところがありがたいと思いました」と話してくださいました。
また活版印刷を提案した経緯について宗藤利英さんは、「手すきの紙に印刷するのに印刷方法が限られているというのもありますが、今回の話をきいてアイビー・リーが活躍していた時代背景的にも、活版印刷がよいのではないかと考え、提案しました」と振り返っています。
実はこのプロジェクトの話を聞いた当初、手すきの紙は一般的な紙よりも表面に凹凸があるため、ブラックライトインクがきれいに乗るかは難しいのでは、と思ったそうです。しかし「やったことのないことだからこそ、試してみよう」とすぐにブラックライトインクを購入し、テストを実施。版を押す際の圧力やインク量を何度も調整しながら、手すき紙でのブラックライト印刷を実現していただきました。
情報の伝播においてデジタルが当たり前の時代、あえて紙でプレスリリースを出したということに対し、コトブキ印刷は「時代に逆行しているということもありますが、だからこそ大事にしたいという思いがあります。人と人がコミュニケーションする時に、紙の第一印象で質感、肌ざわり、匂いなどで会話を生んだり、膨らませる不思議な力があると思っています。なので、何かを伝えたり生んだりすることにおいて、紙は今も必要ではないかと信じています」と、紙だからこその魅力を語ってくださいました。
約300部を全国のプレスリリースエバンジェリストから手渡しで配布
印刷が完了したプレスリリースは、「プレスリリースエバンジェリスト」からメディアの方々へ直接手渡しで配布いただきました。プレスリリースエバンジェリストは、プレスリリースの活用を促進することを専門とした、当社が公認する資格者です。プレスリリース発信文化を広め、情報発表によって活動を前進させられる人を増やすことを主な役割としています。
▼プレスリリースエバンジェリスト第三期発表(2024年10月28日)
自信をもって情報発信する人の背中をエバンジェリストが押し、発信された情報に光を当てるのがメディアだと私たちは考えます。情報発信者を後押しするプレスリリースエバンジェリストの手から、メディアの方の手へと、プレスリリースが配られました。その数は約300部です。
私たちは、社会に必要な情報に光をあてるメディアのみなさまとよい関係を築きながら、よい社会をつくっていきたいと考えています。
PR TIMESは、メディアが行動者発の情報にスポットライトをあてるための情報源として、今後も活用され続けることを目指します。
◆「光をあてるプレスリリース」制作協力
クリエイティブディレクター/コピーライター/企画:石黒早恵実(武藤事務所株式会社)
プロデューサー:武藤雄一(武藤事務所株式会社)
アートディレクター/デザイナー:渡邉真衣(アイルクリエイティブ株式会社)
手漉き紙制作/印刷:有限会社コトブキ印刷