<介護休暇制度が江戸時代にもあった>驚きの事実が続々! 日本の古代から近世まで、介護の歴史をひも解く『武士の介護休暇』が10月22日発売!

2024.10.22 11:00
河出書房新社
団塊世代が後期高齢者となる「2025年問題」が喫緊の課題、歴史から介護を学ぶ画期的な一冊!
株式会社河出書房新社(東京都新宿区/代表取締役 小野寺優)は、高齢者福祉関連の記事執筆などに長年取り組んできた崎井将之氏が、古代から中世期、江戸時代までの日本の介護をめぐる長い歴史を解き明かした『武士の介護休暇』(河出新書)を、2024年10月22日に刊行いたします。

■『武士の介護休暇』について
「昔の日本人も、同じように介護が大変だった」――本書「おわりに」より

現在、日本人の平均寿命は80代ですが、江戸時代の平均寿命は30代くらいだったと言われています。しかし、全ての日本人が短命だったわけではありません。幼少期に亡くなる人の多さが全体の平均を下げているものの、実際には90歳を超える高齢者が一定数いたこともわかっています。つまり、江戸時代の日本人も高齢者介護の問題と直面していたのです。

○「看病断(かんびょうことわり)」という名の介護休暇制度
○かつて介護は長男の役割だった
○94歳まで働いた武士
○早期リタイアに憧れた人々
○日本では、約1400年前に公的なケア・サービスが存在した!?
○身寄りのない高齢者の最期とは……

などなど、日本の介護の歴史には、現在の私たちから見て、驚きの事実が多く存在します。

本書は、『大和物語』『今昔物語』といった文献から、江戸期の武士たちが書き残した日記、幕府史料や最新の研究資料などを丁寧にひも解きながら、日本人が高齢者介護とこれまでどう向き合ってきたのか、どのような歴史的背景、公的制度が存在したのかを明らかにした画期的な一冊です。

古代から中世期、江戸時代までの長い歴史の中から浮かび上がる、「昔の人も同じように介護は大変だった」「多くの日本人が、同じような苦労を古代からしてきた」という事実は、今現在、老親の介護に直面している方にとって心の支えに、また、団塊世代の全人口が75歳以上(後期高齢者)となる「2025年問題」を抱える私たちにとってのヒント、大きな気づきとなるのではないでしょうか。

■江戸期の武士が利用した「看病断」という介護休業制度
「御容体弥不宜ニ付、自分今日看病引相願候処、即願済之事」
(〔実父の〕ご容体が良くないので、私は本日藩に看病引のお願いをしたところ、すぐに承諾となった)――本書「第一章 江戸時代の介護事情」P13より

上記は、幕末期の沼津藩(現在の静岡県沼津市周辺)藩士・水野重教の日記(『水野伊織日記』〔伊織は重教の別名〕)に残された記述です。
この日記には、幕末維新における沼津藩の動きに加え、実父・金沢八郎が病気で倒れ、介護をし、亡くなるまでの様子について事細かに記されている貴重な史料です。

(前略)この八郎のケースで一つ注目したいのは、重教が介護をするにあたって、藩に対し
て「看病引」を願い出ている点です。これは「親の介護をしたいから休ませてください」
という、現代でいうところの介護休業のお願いです。沼津藩はこの申し出に対し、すぐに
許可を出しています。――本書「第一章 江戸時代の介護事情」P16より

幕府は1742年(寛保2年)に、父母や妻子が病気の際には無条件で、祖父母・叔父伯母の場合はその内容次第により介護休業を認める制度を整備しており、この規定と前後し、多くの藩でも同様の制度が設けられています。こうした制度を幕府は「看病断(かんびょうことわり)」と呼んでいましたが、藩によって名称が異なり、例えば沼津藩では「看病引」と呼んでいました。他にも「看病願」「付添御願」「看病不参」などの名称が各藩の記録で確認されています。
――同上

本書では、この江戸時代の介護休暇制度である「看病断(かんびょうことわり)」をはじめ、古代~中世時代の老いと介護の実情、また、江戸時代の老いに対する価値観、介護事情などがわかりやすくまとめられています。

医療が未発達で、現在のような介護保険サービスも整っていない時代に、日本人はどのように介護に取り組んだのか。まさに目から鱗、誰も知らなかった意外な事実の数々を、ぜひご堪能ください。

■本書目次
はじめに

第一章 江戸時代の介護事情──介護休暇を取った武士──
日記に残された「武士の介護」/武士が利用した「看病断」という介護休業制度/武士の「近距離介護」/「看病断」の申請手順/当時の要介護状態となる原因とは──『孝義録』から読み解く──/なぜ幕府は「孝行」を重視したのか?/江戸期の日本人に多かった眼病・盲目の人/中風で半身麻痺に/江戸時代の認知症/庶民層の介護の実態/オランダ人医師ポンペが見た貧困の中の介護/非血縁者による介護

第二章 江戸時代の「老い」の捉え方
時代によって変わる高齢者区分/江戸時代の高齢者人口は?/江戸時代では何歳から「高齢者」?/生前相続としての隠居/高齢でも働かされた武士/庶民の隠居事情/早期リタイアを夢見た人々/『養生訓』『鶉衣』にみる老い

第三章江戸時代以前の「老い」──古代~中世期の高齢者観──
古代~中世期では何歳から高齢者?/高齢世代まで生きられた人はどのくらいいた?/尊敬の対象・強者としての高齢者/高齢者は神に近い存在/『万葉集』における老いの見方/『枕草子』『方丈記』『徒然草』における高齢者観/変化する理想の老後/若く見られたがる愚かさについて/江戸時代とは異なる古代~中世期における高齢者観

第四章 江戸時代以前の介護事情──古代~中世期の介護──
当時の要介護状態となる原因とは/老いた親が鬼になる/中世期の脳卒中/白内障で失明/身内が介護しないと批判の対象に/見捨てられた老人を介護した女性の正体/身内がいない貧しい要介護者の末路/古代にも存在した驚きの介護制度/律令制度の要介護区分/ケアをすれば功徳を積める/名も知らぬ老僧を介護して家を得る/身寄りのない高齢者の介護・看取りの実情

第五章 古代~中世期の「姥捨て」
親を捨てた人々の物語/「運搬用具型」の姥捨て物語/「老親の知恵型」の姥捨て物語/「老親福運型」の姥捨て物語/「枝折り型」の姥捨て物語/救われる老親と棄老の実情/当時の人々が介護をした理由とは 1.愛情や感謝──「情」の論理──/2.中国からの影響──「儒」の論理──/3.仏教からの影響──「仏」の論理──/4.ギブアンドテイク──「互酬」の論理──/四つの論理の弱点と介護放棄

第六章 江戸時代の「介護に向かわせる」価値観
江戸時代に身寄りのない高齢者はどう介護された?/「地域社会で高齢の要介護者を支えるべし」/幕藩による高齢者の救済制度/幕府による朱子学の採用と「孝」「長幼有序」の重視/武士・庶民への儒教・朱子学の教化/老親ケアを教えた出版物/当時の人々を介護に向かわせた価値観とは 1.老親や主人への愛情・感謝──「情」の論理──/2.まずは家の中で対応を──「家」の論理──/3.家で対応できないときは地域で──「地域社会」の論理──/4.幕藩が教化──「儒」の論理──/介護放棄の実例

おわりに

■著者紹介
崎井将之(さきい・まさゆき)
1976年生まれ。首都大学東京大学院社会科学研究科後期博士課程単位取得退学。修士号2つ取得(哲学、国際市民社会論)。在学中からフリーのライター・執筆者として活動し、介護分野では10年近くにわたって、大手老人ホーム検索サイトのHP作成支援や高齢者福祉関連のニュース記事執筆などに従事。著書に『哲学のおさらい』(自由国民社)。

■書誌情報
書名:武士の介護休暇(河出新書)
著者:崎井将之
仕様:新書判/並製/ 264頁
発売日:2024年10月22日
税込定価:1,078円(本体980円)
装丁:木庭貴信(オクターヴ)
ISBN :978-4-309-63179-0
書誌URL:

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