この記事をまとめると
■スーパー耐久第5戦の鈴鹿サーキットにシビックRSが展示された
■シビックRSの魅力を語るトークショーも開催
■シビックRSの開発責任者である明本禧洙氏が熱い思いを語った
スーパー耐久で沸く鈴鹿サーキットにシビックRSが登場
9月29日(日)に三重県鈴鹿サーキットでスーパー耐久「第5戦SUZUKA S耐」が開催されました。そして、パドックに設置されたお祭り感が満載のS耐横丁のステージで、発表されたばかりのシビックRSの魅力を語るトークショーが行われました。
登壇したのは11代目シビックRSの開発責任者である明本禧洙(あきもとよしあき)氏と、スーパーフォーミュラやスーパーGTなどで活躍するレーシングドライバーの佐藤 漣選手、MCはモータージャーナリストの藤島知子さんです。
明本氏はワンダーシビックが登場した時期にホンダに入社し、「一貫してエンジンの出力を高めたいと突きつめてきました」といいます。
明本氏は、インテグラのVTECエンジン、レジェンドやプレリュードの開発、そのほかにもS2000のエンジンプロジェクトリーダーを務め、2005年にはF1エンジンの研究開発責任者も務めたほど、ホンダのエンジンを支えてきた方です。最近では新型ヴェゼルのパワートレイン開発責任者を務め、e:HEVの開発も行ってきており、今回のシビックRSの開発責任者としてRSを作り上げました。
電動化に向けて舵が切られている逆風のなかで開発がスタートしたといいます。
「ホンダはトップダウンで物ごとが決まらず、ボトムアップで決めていくことが多い。今回のシビックRSも、サスペンションのエキスパートやステアリングのエキスパートなど、各方面のエキスパートが多くいて、それぞれの熱い思いを集めていったらRSが誕生しました」。
「シビックは全世界130の国や地域で販売されており、その地域にあわせた製品があるわけで、それらのなかからいいものを選んで行ったらすごくいいシビックができそうだとなっていったわけです。最初からRSを作ろうとしていた訳ではなく、現場のさまざまなアイディアが集まってできた集大成がRSです」と開発経緯を語ってくれました。
MCの藤島さんが、「現在売られている11代目シビックが登場したときに、1.5リッター直噴ターボ、2リッターのe:HEV、2リッターターボのタイプRと3種類のエンジンを用意し、そのなかで1.5リッター直噴ターボにMTが設定されたことが、ある意味で衝撃的でした。ここでMTが設定されていなかったら、今回のマイナーチェンジでMTのRSというクルマは誕生しなかったのではないですか?」と水を向けます。
「当初、3割くらいの方がMTを買ってくださったのですが、いまでは5〜6割とMTの比率が上がっています。そういう土壌があったからこそ、RSのMTを登場させられたと思います」と明本氏はいいます。
運転していて楽しい「ロードスポーツ」に仕上がったシビックRS
一方、レーシングドライバーの佐藤選手は、「タイプRはサーキットを攻めるような硬派でアグレッシブな走りに対応してくれます。RSはものすごく上質でしっとりした乗り心地で、ドライバーの走りたいという要求に素直に応えてくれるクルマだと感じました」とシビックRSを評価。
「FFのレーシングカーも乗ったことがありますが、FFだとフロントが引っ張っていってくれる一方でアンダーステアになっていくというイメージがすごくあります。しかし、RSに関してはアンダー感がなくてFRのような走り方をしても問題なく走れる。そしてスタビリティが高い。テストコースを全開で攻めても暴れるような感じがしない。シビック全体のレベルが高いと感じました」とファーストインプレッションを語ってくれました。
街なかからワインディングまで、快適に走れるように制御もさまざまな部分で改良を施して乗りやすいクルマに仕上がっているそうです。
なかでも走りに関する部分では、タイプRにも装備されている『レブマッチ』という制御が組み込まれているのもトピックです。これは、変速時に目標のギヤに最適となるようにエンジン回転数を制御してスムースな変速を行えるシステムです。
シフトダウン時にブレーキを踏みつつアクセルを煽るヒール&トゥは車体がふらつくことや回転がうまく合わないときもあるでしょうが、それを機械的にスムースに繋いでくれます。
「ブレーキを踏みつつアクセルを踏むと車体がグラグラしてしまうことがあると思いますが、そういうこともありません。スーパーフォーミュラやスーパーGTのマシンでも、シフトダウン時にブリッピングをしてくれる機能があります。RSのレブマッチもレーシングカーっぽくて、まるでレーシングカーに乗っているような気にさせてくれます」と、このシステムが効果的かつ乗っていて楽しい機能であることを紹介してくれました。
MCの藤島さんも「このS耐には多くのシビックタイプRが出場しており、私も以前、前型のFK8でS耐に出場させてもらいましたが、みんなこのレブマッチを使っていました。レースのなかでもブレーキに集中できるのはとてもいい機能ですよね」と実際に役立つ機能だということを力説していました。
そして、シビック「RS」というグレード名について話が進むと、明本氏は「以前のホンダでは、ハイウェイを悠々と走って楽しいということで、『ロードセーリング』という意味で命名していました。当時は高速道路をラクラク走れるクルマというのはそれほど多くなく、そんなかでシビックは悠々と走れるクルマということを意味していました。しかし50年たったいま、クルマのポテンシャルも劇的にあがり、ほとんどのクルマが高速道路を軽々と走ります。そこで定義付けを、一般的に想像されるような『ロードスポーツ』という意味に変更しました。RSらしい走りがいのあるクルマにしていこうという気もちです」と、当初のRSに込められた由来とは別に、ロードスポーツに向かっていくという意気込みが込められていることを教えてくれました。
「運転していて楽しいクルマですし、安全装備に関してもしっかり考慮されています。MT車が減ってきているなかで、いまMT車に乗っている方はもちろん、以前ホンダのMTに乗っていた方にもぜひとも戻ってきていただきたい。他車に乗っている方にも乗っていただきたい。お店に行けば試乗できるように店舗配備も行っていますので、ぜひ体験してください」と明本氏はいいます。
S耐横丁のグランプリスクエアに展示されたe:HEVとタイプR、そしてシビックRSに多くのファンが注目していました。