谷口真由美・袴田事件再審無罪を受けて「期日指定の法改正」求める

2024.10.01 19:30
2024.10.01 up提供:RKBラジオ
静岡県で一家4人が殺害された事件の再審で袴田巌さんに無罪の判決が言い渡された。逮捕から58年、無罪を勝ち取るまであまりにも長い闘いとなったこの裁判。法学者の谷口真由美さんは9月30日、RKBラジオ『田畑竜介Grooooow Up』に出演し、事件当時の取り調べの正当性や、再審に期日を指定する法改正を訴えた。
自白偏重主義だった事件当時
袴田事件、袴田巌さんの件についてです。改めて説明するまでもない事件だとは思うんですけれども、58年前にみそ工場で殺人事件があって、その犯人だとされた袴田巌さんが、58年間捕らえられました。

もちろん釈放されていたことはありますが、確定死刑囚として過ごしているという状況が58年続いている人生というものを考えたときにあまりに重い。

まず私たちは一般的に、警察や検察が嘘をついて、事件をでっち上げるんじゃないかということを想像していないと思うんですね。「正義の味方」だと思っていて、「悪いことをした人をちゃんと罰してくれる人たちだ」みたいに思っています。だけど、自白偏重主義というものがあって、事件当時=58年前などは特にそうで、本人の自白をすごく重視したという歴史があります。
事件の取り調べを体験するVR
実は今、地元の静岡新聞が袴田事件の特設サイトを作っているんです。これがものすごく重厚でよくできているんです。リスナーの皆さんも興味があったら静岡新聞の袴田さん事件の特設サイトを見ていただきたいんです。

https://www.at-s.com/news/hakamada/index.html

その中にVRを使って、袴田事件の取り調べを体験できるものがあります。自分が袴田巌さんになって取り調べを受けるというもので、静岡新聞がアプリ会社と一緒に開発したんです。

私はVR機器を持っていませんが、紹介ページを見てみると、例えば自分が袴田さんだとして、「このときどういう答えを選びますか」みたいなものがあって、どんな答えを選んでも検察などからウワァーっと取り調べを受けるというものなんです。もはや拷問です。

取り調べとか捜査というものが正当になされているのならいいですが、例えば黙秘権ひとつとっても、ちゃんと黙秘させてくれたかというと、袴田さんが30分以上黙っていたにもかかわらず雑談とかを持ちかけて、そこから口を割らせようとしているみたいなこともあったとか。
「疑わしきは被告人の利益に」を肝に据える
そもそも「疑わしきは被告人の利益に」が司法裁判の鉄則なんですけれども、法学を勉強したことがあると、法律というものは道具なので、すごく抑制的に使うというトレーニングを受けるんです。脳の思考方法として。

私もメディアに出るのでこれは自戒も込めてなんですけれども、何か事件が起こると、ワイドショー的に「この人が怪しいんじゃないか」みたいなことから、何となく世間が「怪しい人! やったんじゃないか」みたいな風潮を作り出してしまうというところがあると思うんですよね。

だからやはりメディアで発信する側が、いかにそれを抑制的に「疑わしきは被告人の利益に」ということが徹底できるかどうかというのは、これはもうマスコミの人とかもそうですし、メディアを使う人、もちろん今で言うとSNSなど自分のメディア使う人たちも、本当にそこをもう一度肝に据えないといけないなというのは感じるところなんですね。
検察は控訴断念を
証拠の捏造がなされていたということとか、証拠で出てきたあのズボンが小さすぎて、袴田さんが履くと太ももの辺りで止まって着用できなかったという写真があるんですけど、それが証拠として出てきました。

でもそのズボンを「証拠だ」と言い張った状況があるということを考えると、「捏造もされてしまうんだな」と思いますね。袴田さんにまず権利救済をすることが一番大事で、姉の秀子さんがずっと「無実だ」と訴えてきたことを重く受け止めて、本人と家族に対して補償していくという問題が私はあると思います。

何より「検察が控訴しないでほしい」っていうことは強く訴えたい。これ、まだ決まってないわけで控訴するかもしれないという状況です。

今の科学の力で「血痕などをDNA鑑定したらおかしい、捏造されたものである」みたいな話になってきているにも関わらず、それを頑なに認めようとしない検察の態度に対して、国民世論も含めて皆さんの「やっぱりおかしいんじゃないか」という市民の声も考えて、もう控訴しないでほしいと願っています。
再審の期日を決められるよう法改正を
それと併せて、再審請求に時間がかかり過ぎているんです。もう本当にこれがひどいんです。再審って実は期日を決めなくていいんです。法律上、裁判というのは公判日を決めなきゃいけないんですが、再審の日は決めなくていいんですよ。そういう法律の規定になっていて、法律の不備が指摘されています。少なくとも改正してもらって、再審の期日もちゃんと決められるようにしてもらいたいです。

じゃあ法律ってどこで改正するんだ? って言ったら国会がやるわけですよ。だから、ちゃんとした国会論戦がなされる社会の中では、こういった再審の話もきっちりと議論されるんだろうと思いますが、なんか世間がややこしいから法律改正するだけ、みたいな話はやめてもらいたいし、さっさと改正して再審の期日が決められるようにしてほしいというのが大きいですね。

袴田さんの再審、長すぎるんですよ。それって人生がどんどん壊れていくということになりますので、ちゃんと再審を早くするということが必要です。今、実は法学者の声明を出そうとしていて、九州大学の田渕浩二教授とか豊崎七絵教授とかも呼びかけ人になって、もうすぐ声明が出ると思います。

私も賛同人になっていますが、法学者たちもやっぱりおかしいと思っていますので注目していただけたらと思います。
田畑竜介 Grooooow Up放送局:RKBラジオ放送日時:毎週月曜~木曜 6時30分~9時00分出演者:田畑竜介、橋本由紀、谷口真由美
出演番組をラジコで聴く
田畑 竜介橋本 由紀
※放送情報は変更となる場合があります。

あわせて読みたい

ドーム球場の屋根で発電できる!?ノーベル化学賞が有力視される発明とは
radiko news
松尾潔「兄弟が組んだときの化学反応を誰よりも知っている」Oasis再結成
radiko news
御代田町の複合施設「MMoP」内各店舗にてクリスマスを彩るフェア開催
PR TIMES Topics
〈三島バイク交通死亡事故〉嘘の証言繰り返し反省ナシの加害者に、実刑判決は出るか…遺族の“闘い”
集英社オンライン
〈袴田さん再審無罪確定へ〉「私は刑務所で彼ほど“無味無臭”な男を見たことがなかった」拘置所で面接を重ねた元刑務官が語る「袴田巌の純真性」
集英社オンライン
あなたの動画を自然に翻訳!「AI動画翻訳くん」とは?
antenna
【袴田事件】約半世紀の獄中生活を経て、ようやく「再審無罪」へ…袴田巌さんの心の深淵を描く迫真のドキュメンタリー
現代ビジネス
「うつ病だった私が…」傍聴に通った24歳女性が“袴田事件は人生そのもの”と語るワケ
女子SPA!
ロキソニンにまつわる素朴な疑問を薬の作り手が解決! 小さな錠剤に込められた想いとは
antenna
国連の委員会が日本政府を審査!?谷口真由美「人権の理解深める機会に」
radiko news
静岡県警が生んだ《昭和の拷問王》の呪縛に終止符か…再審判決「袴田事件」が突き付けた冤罪大国・日本の「司法のいい加減さ」
現代ビジネス
Hugh Morganよりクリスマス限定スイーツコレクション登場
PR TIMES Topics
元暴力団組長が出資し、袴田事件の冤罪を訴えた「実録映画」の「知られざる秘話」…袴田巖さんを演じた「主演俳優」のハマりっぷり
現代ビジネス
【袴田事件】死刑判決後、34年も極限状態に留め置かれて…そして袴田巌さんは「神になった」
現代ビジネス
幅広いシーンで活用できる「フラップ付き二重構造クリアタンブラー」登場
PR TIMES Topics
幼児誘拐・売買事件…映し出される中国社会の一断面をウォッチャーが解説
radiko news
総選挙から一夜明け谷口真由美「女性議員が増えて変わることがある」
radiko news
約36年ぶりの新商品!歳時菓子「おはぎ新嘗(にいなめ)」新発売
PR TIMES Topics
松尾潔「公益通報のスタンダードを変える時期」兵庫県知事パワハラ疑惑
radiko news
「一度も無罪判決を書いたことがない」裁判官がいるという「驚愕の事実」…なぜ刑事系裁判官は無罪を出すのに躊躇するのか?
現代ビジネス