この記事をまとめると
■ミニバンが多様化したことでワンボックスの定義が曖昧になった
■そこで今回はワンボックスの定義について解説
■おすすめの国産ワンボックスカーも紹介する
ワンボックスカーとは?
90年代以降、ミニバンが多様化したことで、ワンボックスカーの定義が曖昧になりました。テレビのニュース番組で、アナウンサーが「事故を起こしたワンボックスカーは……」などと説明しながら映像にはステップワゴンが映ったりすると、「ステップワゴンはワンボックスじゃなくツーボックスだよ!」とツッコミを入れたくなるマニア諸兄は多いことでしょう。
世間一般的に多用される「ワンボックス」と違い、「ツーボックス」と「スリーボックス」という言葉は、今ではクルマ雑誌ぐらいでしか使われなくなったので、ミニバンタイプのクルマはすべてワンボックスとひとくくりにされるようになっています。
ワンボックスの定義
本来、クルマのスタイルを大まかに識別する「ボックス」とは、エンジンルーム、居住空間、荷室の3つの箱のことを意味し、ハイエースのように、ひとつの箱のなかにエンジンルームと居住空間と荷室のすべてが収まっているクルマのことをワンボックスと呼びます(レーシングカーや運送業界でいう〝ハコ〟はまた別の意味で使われる)。
ツーボックスの定義
エンジンルームと、居住空間&荷室の2つの箱から構成されるハッチバックスタイルのクルマはツーボックス。
スリーボックスの定義
そしてセダンやクーペのように、エンジンルームと居住空間と荷室の3つの箱が完全に分割されたクルマはスリーボックスです。典型的な例はタクシーとして使われるクラウンコンフォートで、真横から見ると見事な凸型をしているのでわかりやすいですよね。
ミニバンとは
いまどきミニバンを知らない人はいないと思いますが、コンパクトミニバンは別として、いうほど“ミニ”ではないですよね。
元々、ミニバンとは1983年にデビューしたダッジ・キャラバンがその元祖といわれています。当時、フルサイズバンが商用車ベースのFR車だったことに対して、キャラバンは乗用車ベースのFFレイアウトを採用。いまでは当たり前になりつつある3列シートやスライドドアも備えるなど、実用性が高いことで大ヒットとなりました。
その後、GMやフォードといったアメリカの自動車会社がミニバンを市場に投入。
国内でも1980年代に入るとキャブオーバータイプのワゴンとともに日産プレーリー、三菱シャリオといったFF乗用車をベースとした3列シートのミニバンが登場。
1994年に登場したホンダ・オデッセイや1996年登場のホンダ・ステップワゴンが人気を集めたことで、ミニバンが市場に定着しました。
ワンボックスカーとの違い
冒頭で述べたようにフォルムが似ているミニバンとワンボックスが混同されますが、大きな違いは乗用車ベースか商用車ベースかであること。
また駆動方式がワンボックスの多くが後輪駆動なことに対して、ミニバンはFFが主流となるのも大きな違いです。
駆動方式が違うことでワンボックスは運転席がフロントタイヤの上に位置すること(キャブオーバー)もミニバンとの違い。
1990年代に入るまでは3列シートの多人数車は、キャブオーバーのワンボックス車をベースとしたワンボックスワゴンが主流でした。
1991年に登場した初代(バネット)セレナは商用バンと共用ボディを使用していましたし、トヨタ・ノアの源流は商用バンベースのタウンエースノア。
見た目こそ商用バンベースのワンボックスワゴンとFF乗用車ベースのミニバンは似ていますが、乗り心地や運転性能は乗用車ベースのミニバンが圧倒的に優れています。
1990年にデビューしたトヨタ・エスティマこそFF乗用車ベースではなく新規開発のミッドシップレイアウトを採用した変わり種ですが、商用車ベースのワンボックスワゴンは徐々に衰退。いまは送迎&商用メインのモデル以外で多人数乗車できるワンボックスワゴンは消滅しました。
高級車=スリーボックスは昔の話
クルマに高級感を求める場合、大きな熱やノイズを発生するエンジンが収まる箱と、荷物を積む倉庫のような箱は人が過ごすための部屋とは別々にあるべきなので、もっとも高級車に適しているのはスリーボックスのセダンやクーペといえます。ボディ剛性や静粛性の面でも有利となる要素が多いのは間違いありません。
最近はセレブの間でも内装が超ゴージャスで広大な空間をもつミニバンが大人気で、格式のあるゴルフ場の駐車場でもミニバンが多数派を占めているようですが、セダンかクーペにこだわっている人は、きっと「スリーボックスこそが真の高級車だ」と意識しているのでしょう。
ワンボックスといってもエンジンと乗員がダイレクトに同じ場所に居るワケではないですし、ハイエースの上級グレードは下手な乗用車より高級感があるのも事実なので、クルマをボックスの数で分類するのは無意味とする意見も少なくありません。
ミニバン以外のMRやRRレイアウトのクルマや、エンジンのない電気自動車の場合も分類が難しくなりそう……。今後も「ワンボックス=ハコっぽいミニバン」というイメージのほうが広く浸透していきそうです。
多くの荷物を積める
ミニバンと比べワンボックスの大きな特徴は、積載性に優れていることでしょう。エンジンの真上に運転席を設置することで、同じ全長のミニバンと比べると室内長を長く取ることができるのです。
商用を目的としたワンボックスの場合、荷室をメインとすることで多くの荷物が積めることはいうまでもないことでしょう。
大人数が乗れる
また、ハイエースグランドキャビンなど送迎向けモデルについては、ミニバンより座席を多く配置することも可能です。
ボディサイズが近いFFのメルセデス・ベンツVクラス(エクストラロング)が乗車定員7人乗りに対して、ハイエースグランドキャビンは10人乗り。多人数での移動をメインに考えた場合、FFのミニバンよりワンボックスが一歩上を行きます。
アウトドア・ビジネスシーンに便利
荷室が広いことでワンボックスがビジネスに使い勝手がいいことはお伝えしてきたとおり。広いだけでなく荷室にユーティリティナットを備える車種が多いことで、バーやフックを取り付けることが可能。業務内容に合わせアレンジすることができるのもメリットといえるでしょう。
荷室がアレンジできるのはビジネスだけでなく、アウトドアなどレジャーに最適な空間を作ることも可能。ワンボックスはホビーユースにも適した車種といえます。
乗り心地には期待できない
先程からお伝えしているように、ワンボックスは商用車ベースで開発されています。そのためサスペンションの形式やセッティングは積載性を重視。当然、乗用車のミニバンには、乗り心地が及びません。
また走行性能、とくにハンドリングなどはミニバンに劣るモデルばかり。快適に移動したい場合はミニバンを選択したほうが幸せなカーライフを送れます。
ミニバンより快適装備が劣る
乗り心地同様に商用車ベースのワンボックスはミニバンと比べて、快適装備やインテリアの質感が劣ることもデメリットといえるでしょう。
またミニバンと比べモデルチェンジサイクルが長いことで、いまどきのクルマに必須の先進運転支援装備が充実していない車種があることも同様。
このあたりはミニバンより大きく劣る、ワンボックスのデメリットであることは間違いありません。
トヨタ・ハイエース
ワンボックスといえば、多くの人がイメージするのはハイエースでしょう。
現行モデルとなる5代目(200系)は2004年に登場。デビューからすでに長い年月を経ているものの販売力や商品力に衰えが見えません。
荷物の積載から人の送迎まで多彩なジャンルで活躍できることで、日本のみならず世界各国で人気なのも同車の特徴。その人気は2007年から7年連続で盗難被害ワースト1に輝くなど、デメリットを抱えてしまうほどです。
ハイエースの魅力は数多くありますが、多彩なバリエーションを誇ることで商用車に求められる細かいニーズに対応していることも人気の理由。商用バンをはじめワゴン、コミューターをラインアップするハイエースは、会社が求めるニーズに合わせて選択しやすい1台といえるでしょう。
日産キャラバン
ハイエースとともに知名度が高いワンボックスといえばキャラバン。現行モデルは2012年に登場した5代目となりますが、NV350キャラバンとしてデビューしましたが、2021年に行われたマイナーチェンジでガソリン車はキャラバンと改名(ディーゼル車は改名されなかったものの2022年からキャラバンへ変更)しています。
ハイエースほどの人気を得てはいないキャラバンですが、荷室の広さがクラスナンバー1ワンなど、ボックスに求められる積載性など高い実力を備えたモデルであることは間違いありません。
またエマージェンシーブレーキをはじめ、踏み間違い衝突防止アシストや日産自慢のアラウンドビューモニターなど先進安全技術も装備していることも特徴です。
スズキ・エブリイ/エブリイワゴン
軽ワンボックスとして高い人気を誇るのが、エブリイ&エブリイワゴン。エブリイが商用車、エブリイワゴンがエブリイをベースとした乗用モデルとなります。
現行モデルは2015年に登場した6代目となり現在までに改良が施されていきました。
2019年にはステレオカメラ方式のデュアルカメラブレーキサポートを装備するなど、安全装備の性能を大きく高める仕様変更を実施。
2022年には「セーフティサポート装着車」にバックアイカメラ付きディスプレイオーディオをオプションとして設定するなど、安全性能をより高めました。
ダイハツ・アトレー/ハイゼットカーゴ
エブリイのライバルとなるのが、アトレー&ハイゼットカーゴ。現行モデルは2021年にフルモデルチェンジしました。
現行モデルの大きな特徴は、乗用モデルとなるアトレーが4ナンバーになったこと。従来までアトレーはハイゼットカーゴをベースとした5ナンバーワゴンでしたが、荷室サイズを重視したことがその理由です。
また現行モデルはトヨタのTNGAをベースにしたダイハツの新たな取組「DNGA」を軽商用車として初めて採用し、基本性能や安全性能を進化。また今年から適用された商用CAFE規制(企業別平均燃費基準)に対応すべく、燃費を向上させています。
先代と比べて商用車として重視される荷物の積載量がアップしたことも大きなトピックス。荷室上部をスクエア化し区間を拡大することを可能としたほか、荷室側面や床面をフラット化し、効率的に荷物を積載することができるようになったことも積載量拡大に寄与しています。
まとめ
クルマに興味が薄い人にとって、ワンボックスとミニバンの違いがわからないのはある意味当然なのかもしれません。
そんな人たちにその違いを説明するのもやっかいなこと。両車ともに広い室内を備えたクルマではありますが、ワンボックスは商用メイン、ミニバンは乗車であることを理解してもらえば問題ないないでしょう。